IS×NW~世界を渡りし者~《更新停止》   作:戒炎

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旺牙)早かったな。

作者)あんまり待たせるのは悪いかと思って。

旺牙)こんなののために皆様時間を割いてくださっているんだ。もっと感謝しろ。

作者)毎度、ありがとうございます(土下座)


加速する混沌・後編

 

―――VSエトワール―――

 

「それじゃあ、あたしたちも始めましょうか。」

 

 シャルロットとラウラの前に立ちふさがるのは、金色長髪の美丈夫。少々濃い化粧が別の凄みを醸し出しているが、闘気は本物だ。

 ゆっくりと武術のような構えを取り、ふたりと相対する。

 服の上からでも分かる分厚い筋肉がさらに重圧を与える。

 

「ふん、外見程ふざけてはいないようだな。」

 

「ちょっとラウラ、あんまり刺激するようなこと言わないでよ・・・。」

 

 敵の力量を測りつつ、ラウラはわざと挑発する。

 これで気を乱すようならそれまでの相手なのだが。

 

「あら、失礼しちゃうわね。これでもお化粧には人一倍時間をかけてるのよ?」

 

「いや、普通に返されても。」

 

 案外軽いノリにシャルロットひとりが置いて行かれている。と、見せかけて、彼女も先程から隙が無いか観察しているのだが、見つけることが出来ない。簡単には攻め込ませてはくれなそうだ。

 

「ンもう、じっと見てくれちゃって。あたしに見惚れちゃった?でも残念。あたしたちは敵同士。だから。」

 

―――こっちから往くわよん。

 

 その一言の後、エトワールが拳を振りかざし突撃してくる。速さはそれほど無いが圧力はかなりのものだ。

 ふたりは散開しその一撃を躱す。余裕を持って避けたはずだが、空気が削ぎ落されたように錯覚した。

 だが、その一撃は次への繋ぎ。わざとふたりを引き離した。そして次に超高速の蹴りがシャルロットを襲う。

 彼女はそれが見えていた、または予想していたのだろう。シールドを顕現して防御する。しかし。

 

「くうぅ!?」

 

 ただの一撃で体勢を大きく崩される。よく見るとシールドが凹んでいる。ISのシールドが、侵魔相手とは言え一撃で、である。受け止めたシャルロットはその威力に戦慄した。

 

「この、化け物が!」

 

「美の化身と呼んで頂戴っ!」

 

 距離を詰めてきたラウラのプラズマ手刀の連撃を難なく払いのけ続けるエトワールに毒づくが、それすら涼しい顔をする。

 最初攻勢に出ていたのはラウラだが、エトワールの手刀の速さが増していき、気が付けば攻守が逆転していた。

 

「ファントムほどじゃなくても、これくらいのラッシュは出来るのよ~?」

 

「くそっ!?」

 

「ラウラ、援護するよっ!」

 

 シャルロットがライフルを撃ち気を引こうとするが。

 

「甘い甘い甘い!甘いわね!」

 

 ラウラを吹き飛ばした後、ライフルの掃射を真正面から受け止める。否、『全て摘まみとる』。エトワールが手を開くと弾丸はパラパラと落ちていく。

 正直、全て受けきってもダメージは無かった。だがそれでは芸が無い。華も無い。わざとこうすることが、『美しさ』と本気で信じているのだ。

 

「さあ、次は何をしてくれるのかしらん?」

 

「・・・正直手が見つからないんだけど。」

 

「いや、まだだ。まだ試していないものもあるだろう。」

 

「そうそう。その小さなフロイラインの言う通り、まだ玩具が残っているでしょう?」

 

「小さなは余計だ!」

 

「ペースに巻き込まれないでよラウラ。」

 

 ラウラの、シュヴァルツェア・レーゲンの武装。『AIC』。停止結界ならばと。

 彼の動きを止め、その間に必殺の一撃を叩き込む。

 

「さあ、いくわよ!」

 

「・・・今だ!」

 

 無策に突撃してきたエトワールに対し、ラウラはAICを発動する。

 

「あら?動けないわね?」

 

「この距離なら防ぎようがあるまい!」

 

 肩の大型レールカノンを、ほぼ接敵して撃つ。自身にもダメージはあるだろうが、相手にも深手を与えられるだろう。

 そう確信し、射撃体勢に入る。だが。

 

「残念♪噴ッ!!」

 

「なっ!?ぐあっ!」

 

 裂帛の気合いだけでAICを吹き飛ばしたエトワールはその勢いでレールカノンの弾丸さえも弾き飛ばし、そのままラウラの顔面に掌底を叩き込んだ。

 

「ごめんなさいね、あたしは男女平等主義なの。あら?」

 

「これで、どうだ!!」

 

 盾殺しをエトワールの腹部に叩き込むシャルロット。自身の最大攻撃力を出したはずだが。

 

「ふーーっ。惜しかったわね。」

 

 それすら片手で受け止められる。

 

「AIC殺しにパイルバンカー止め・・・。出来るのは相棒くらいなものかと思っていたが・・・。」

 

「旺牙以外にもいるもんだね。規格外って・・・。」

 

「当たり前でしょう?ウィザードにできて侵魔には出来ない、なんて話は通用しないのよ?ほら、もっとあたしと闘いましょう!美しく!凄絶に!」

 

 

 

―――VSサヴァン―――

 

「はああっ!」

 

「おっと。」

 

「せい!」

 

「まだまだ。」

 

 箒と簪のふたりを相手に、サヴァンは防戦一方にも見えた。だが、戦いを支配しているのはサヴァン。

 紅椿の刀を、打鉄弐式の薙刀を時にひらりと躱し、時にステッキで止める。反撃こそしないものの、確実にふたりのスタミナを奪う動きで攻撃を捌いていた。

 その顔には微笑みを絶やさず、である。

 

「はあ、はあ・・・。」

 

「くっ、何故当たらん!」

 

「まあ落ち着きなさい。君たちが私と切り結んでおよそ十二分、秒にして七百二十秒。・・・と言っている間にも十二秒が過ぎたようだ。まず話でもしよう。」

 

 疲れを見せぬ敵の姿に、怒りより焦燥感を募らせるふたり。こうしている間にも、仲間たちが自分たち同様厳しい戦いを強いられているかと思うと、早く援護に行きたいのだが、それも許してくれない。

 四人の中で最もひ弱そうに見えて、これでも親衛隊の長。完全に戦いを支配している。

 そしてサヴァンは、まるで詩でも詠うように語り始めた。

 

「戦う理由、それは人それぞれだ。世界の平和。愛。怒り。憎しみ。様々な感情がある。君たちが戦うのも、何かのためだろう。思いは一見複雑に見える。だが、元を辿れば単純なものだ。難しいものではない。」

 

 ふたりは息を整えることに集中しているのか、それともサヴァンの言葉に聞き入っているのか、動きを止めていた。

 

「君たちには想い人がいる。彼らの力になりたいのだろう。それだけでいい。そう、まずそれが『1』だ。」

 

 サヴァンが指を一本立てる。

 

「そして想い人が、たとえその想いに応えてくれなくとも、共にいてくれる。それが『2』だ。そんな単純なものが繋がり、結びつき、数は大きくなっていく。だが、始まりはいつも『1』なのだよ。」

 

「何が、言いたい?」

 

「ははは、人生を難しく考えるんじゃない、ということだよ。」

 

「そんな学校の授業みたいに言われても・・・。」

 

「ふむ、教師か。私が人間だったら、興味くらいは持っていただろうかな。」

 

 すでに戦場の空気ではなくなってしまった両者の間の空気だが、それを引き裂いたのは意外にもサヴァンの方だった。

 

「しかし何もしないのではパツィア様に叱られてしまうな。仕方ない、少しは『戦闘』をしよう。夢大きく未来あるメドモアゼル。どうか、死なないでおくれよ。」

 

 サヴァンが右手を向ける。その掌に黒い魔力が集まり、ある程度の大きさになるとふたりに向かって二つの魔力弾が射出される。

 

「「ッ!?」」

 

 ふたりはそれぞれを回避し、再び戦いに意識を戻す。

 箒は雨月、空裂を、簪は春雷を駆使しての中・長距離戦となった。

 小さな塊だが、向かってくる度に危険信号が発せられる。一撃を受けてもダメージは必至だというのに、それをサヴァンは連射してくるのである。

 近接戦闘でも、遠距離戦闘でも分が悪い。ならばこのまま討たれるのを待つのか。それだけは、いや、命をくれてやるのも御免だった。

 

「全砲門ロック完了・・・。これで、、行って!」

 

 戦闘の最中、密かに山嵐のマルチロックを全てサヴァンに向けていた簪はここでそれを解き放った。

 全四十八発のミサイルが敵を焼き尽くすべく殺到する。巻き起こる爆発。

 全ての牙が喰らいつき、黒煙が風によって徐々に晴れていく。

 

「ふむ、なかなか思い切りが良いが、この程度では私は焼けんよ。」

 

「嘘・・・?」

 

 サヴァンは魔力壁で全てを防いでいた。その光景に、一瞬簪の戦意が下がりかける。

 そこを逃すほど、『敵』は甘くは無かったようだ。

 黒い弾丸が簪を直撃する。

 

「きゃあっ!」

 

「簪っ!?くそっ!?」

 

(何故だ!何故私はこんな時に何も出来ん!?一夏が、みんなが苦しんでいるのに!『絢爛舞踏』も未だ使いこなせない!私は、こんなにも無力なのか!?)

 

 自身への怒りも混じり、箒の戦意は揺れていた。

 それがまたも大きな隙になっていたことも忘れ。

 

(ふむ。少し大きいのを出してみようか。)

 

 サヴァンはステッキを一時消失させ、両手で魔力を溜め始める。それは巨大な光の球となり、熱量を増していく。

 

「これは『ジャッジメントレイ』。今の君ではISを纏っていようと直撃すれば消滅必死だろう。さて、どうにかして見せてくれたまえ。」

 

 凶悪な光の奔流が、極大の魔法が箒に向かって放たれる。その命を焼き尽くすために。

 

「箒ィーーーーッ!」

 

 それは誰の声だったか。それさえも判別できないほどの『死』が目前まで迫っていた。

 

(私は死ぬのか・・・?ここで?)

 

 走馬灯のように、多くの思い出が流れていく。

 もう受け入れてしまおうか。そう諦めかけた時。

 一夏の姿が浮かんだ。

 

(嫌だ!こんなところで!)

 

『戦闘経験値が一定量に達しました。【穿千】をアンロックします。』

 

 自然と手が伸びた。何かを握るように。そして。

 

 起きる爆発。その場にいた、敵味方問わず全ての者が目を向けた。

 

「・・・これは、少々驚いた。」

 

 サヴァンの放った極大魔法はかき消され、彼自身にまで『何か』は飛び掛かり、その手袋を焼き切り火傷を負わせていた。

 

「これは・・・。」

 

 箒自身も今何が起こったのか理解していなかった。

 だが情報が頭に流れ込んでくる。

 クロスボウ状のブラスターライフル。銘を『穿千』。

 

(これがあれば、もしかしたら!)

 

「やれやれ。これは。少し本気を出すべきか。」

 

 箒の期待に反し、サヴァンは告げる。そして初めて殺気を纏ってみせた。

 全身が震えるほどの恐怖が襲う。

 自分はまだこの新たな力を使いこなせていないというのに、奴は今のは本気では無かったと言うのか。

 奮いかけた闘志が萎えかけた。

 

 その時だった。

 

「ちょっと待ったーーーーっ!!」

 

 IS学園生徒にとって聞き覚えのある声が、戦場に響いた。

 

 

 

    ☆    ☆    ☆

 

 

 安東先生のチート移動能力によって俺たちがみんなの元に到着した時には、仲間たちは大分激しい戦闘を行ったのだろう。ボロボロになっている者までいる。

 

「おや、『元』神とその使徒のご到着かね。」

 

 紳士風のおっさんが手をはたきながら先生を見る。笑顔だが、こちらを深く観察している様子だ。

 

「どうするのサヴァン。流石に今のあたしたちじゃ『アレ』相手には分が悪いわよ?」

 

「こういう事態になったら撤退しなさいとも言われている。私たちの仕事はあくまで『勇者』と彼女たちの現状把握だよ。少々楽しくなってしまったがね。」

 

 なんだ?なんだかあちらさんの戦意が一気に無くなったようだ。

 あの銀色は忌々し気にセシリアと鈴を睨んでいるが。

 まさかもう終わりなのか?

 

「今日はここでお暇しよう。失礼するよ。」

 

「じゃあねん、可愛い子ちゃんたち♪」

 

「また美しき闘争を!」

 

「いずれこの借りは返すぞ。」

 

 そう言って姿を消す四人の侵魔。ルーラーがいなくなったため、月匣も消える。

 ・・・何か最近の俺、変なタイミングに突入するな。と言うか、何もしてなくない?いや、何事も無いなら良いんだけどさ。

 いや、今はそんなことよりみんなのことだ。

 

「みんな、大丈夫か!?怪我は!?」

 

「もう、遅いわよ!」

 

「大変でしたのよ!?」

 

「えぇ・・・、俺が怒られるの?」

 

 ちょっと理不尽じゃないか?

 

「旺牙・・・。」

 

「どうした、簪。」

 

「本当の侵魔って、あんなに強くて、怖いものだったんだね。」

 

 簪の言葉に、全員が言葉を失う。

 そう言えば、上級侵魔とまともに戦うのはこれが初めてか?

 トルトゥーラの時は、結局俺が倒したし、全員で戦ったしな。

 今回は話に訊くと少人数で戦うことになったらしい。

 

「・・・そうだな。みんなこれが『本格的』に奴らと戦うことになったのか。・・・どうだ?怖くなったか?」

 

 怖い。その一言に一瞬空気が固まる。だが。

 

「・・・冗談じゃない。あんな奴らを放っておけるかよ!」

 

 一夏の言に、凍りかけた空気は融解した。

 

「そうよ!あんの銀色、今度は消し飛ばしてやるんだから!」

 

「次こそは、奴の厚化粧を剝がしてやろう。」

 

 仲間たちから熱い言葉が出る中、箒が安東先生に向き直る。

 

「・・・先生。私は今回の件で自身の未熟さを痛感しました。」

 

「そうか。・・・ならどうする、篠ノ之。」

 

「私を、鍛えてください。奴らに負けない、いや勝てるように!」

 

「・・・当たり前だ。篠ノ之だけじゃない。お前たち全員死ぬ気で鍛えてやる。今はその準備をしているところだ。時が来たら修行開始だ。」

 

 みんな熱くなってくれてたようだが、俺の頭には一つの疑念が生まれた・・・。

 

 

 

    ☆    ☆    ☆

 

 俺と先生の魔法で傷を治癒、学園に帰還し、各々が自分のISの修理に向かった後、俺は先生を呼び止めた。先程からのモヤモヤをぶつけるためだ。

 正直な答えが返ってくるとは思っていない。だが、どうしても聞いておきたかったんだ。

 

「先生。今回の件だが。」

 

「なんだ?お前が空気だった件か?」

 

「それは、置いといて。・・・先生は今回、全部が罠だったことを知っていたんじゃないか?」

 

「・・・。」

 

「思えば、先生がこんな簡単な偽情報に引っかかるのがおかしいと思っていたんだ。本当の目的は、まだ本格的に覚醒していないあいつらに侵魔の力と戦い方を直に体感させるため、じゃないのか?」

 

「だとしたらどうする?」

 

 この・・・。涼し気に言ってくれる。

 

「俺は『昔』も『今』もあんたに着いていく。命だって惜しくないのは変わらない。だけど・・・。」

 

「だけど、なんだ。」

 

「・・・あいつらに何かあるようなら、いくらあんたでも俺は反旗を翻す。どんな恩があろうと、義理があろうと。」

 

 俺たちの視線が重なる。正直震えを抑えるので必死だったが、これが今の思いだ。

 今の俺は、この人よりあいつらを優先するだろう。かつて世界を裏切ったように、その時はこの人を裏切る。

 裏切り者と罵ればいい。それでも、俺はあいつらが好きなんだ。

 惚れた女も、いることだしな。

 睨み合っていると、ふっ、と先生が笑った。

 

「俺以外に支えが出来たんだな。その心、大切にしろよ。」

 

 そう言って、俺に背を向けて行ってしまった。

 なんだか拍子抜けしたが、とても大事なことを言われた気がする。

 先生以外の支え、か・・・。確かに、そうかもな。

 あの時の俺に無かった心の余裕が、今はあると、そう思う。

 あいつらのためなら、俺はなんだってできるような気がする。

 たとえ、命を懸けてでも・・・。




サヴァンの台詞の数字は打ち間違いではありません。一応意味を持たせたくてあえてこうしましたが、なんだかよくわからないことに・・・(´・ω・`)

てか何言ってんでしょうねあの人。僕もわからな(グシャッ)
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