IS×NW~世界を渡りし者~《更新停止》   作:戒炎

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作者)皆様のおかげで新たな大台も見えてきました。

旺牙)これも全て時間を割いて読んでくださる方々のおかげです。

作者)おかげがかぶったな。

旺牙)すいません。何年たっても語彙力ないんですこの子。


平和な日々、揺れる心

 右手の火傷も(隠れて治癒していたせいか)完全回復し、全く不自由しなくなった今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 俺は何故か学園の屋上で昼食を取っています。

 それだけなら何の変哲もないのですが、メンバーが簪、沙紀、萌、そして楯無さんなのです。ん?それが何の問題かって?

 数日前、俺に対して、その、『好意』を持ってくれているらしき少女たちの集まりなのである。あの朴念神とは違うと思っていたが、俺もたいがい鈍かったらしい。いや、そんなことはどうでもいいんだ。

 

「あ、沙紀ちゃん、この卵焼きひとつ頂戴。」

 

「はい。ひとつと言わずにどうぞ。」

 

「ダメだよ沙紀。お姉ちゃん意外と食い意地張ってるから。」

 

「ならそんな沙紀には私のソーセージをあげよう。もっと食べて大きくおなり。」

 

「・・・・・・。」

 

 なんだこの和やかお昼ご飯は。

 まあなんだ、オリムラヴァーズも四六時中ギスギスしているわけではない。普段は普通に仲が良い。一夏が絡むとおかしくなるだけなのだ。

 じゃあこの状態はなんだ?俺居なくてもよくないか?などと考えていると。

 

「この集まりは旺牙くんが中心なのよ。」

 

 と楯無さんに心を読まれた。なに?俺の周りの女性も読心術が必須科目なの?

 俺も頭バグってるから何とも言えないが、と言うかオリムラヴァーズの例を挙げておいてなんだが、こういう状況ってもっと、牽制するところじゃないの?

 

「そう言う考えはもう古いよ旺牙くん。女の友情はそれくらいで崩れたりしないしないもんなの。」

 

「うん。汚い取り合いして本人に嫌われて友達とも疎遠になっちゃったら元も子もないもの。」

 

 そういうもんですかねえ。少女漫画はあまり詳しくないので参考にならん。ドラマかなんかだともっとドロドロするもんだと思っていたが、この子たちが特別なのだろうか。

 

「つーか、俺が聞くのも野暮だけど、こんな野獣のどこが良いんだよ?」

 

「ホントにそれ聞くんだ・・・。」

 

「うーん、私としては、器用そうに見えて存外不器用なところよね。お姉ちゃん心をくすぐられちゃったというか。」

 

「俺、そんなに不器用?」

 

「それに気付けないくらいにはね。」

 

 うんうんと四人が頷く。いや、三人は同い年だろ。

 なお、自分を不器用と称する人間はそれが言えるくらいには器用なのだとか。

 だが、やっぱりこの状況は落ち着かないというか、照れる。

 

「は、はい旺牙。唐揚げ、あーん・・・。」

 

「あーん・・・。うむ、美味い。・・・は!」

 

 なぜか反射的に口を開けてしまった!

 他の三人は・・・なんだその優しいというか、温かい目は。

 

「簪だけはズルいな。私のもあーんしたげる。」

 

「お、旺牙くん、あーん。」

 

「はい、お姉ちゃんのお弁当もありますよ。」

 

 控えめに言っても美少女たちが俺に食べさせてくれてる。あ、天国ってここっだったのか。

 いや、帰ってこい俺。取り合えず・・・。

 

「おい、ドアの向こうの者ども。いい加減出て来い。」

 

 若干殺気を放ちながら言い捨てる。

 ビクッと反応したのち、一夏一味がぞろぞろと現れる。

 

「いやー、邪魔しちゃいけないかと思って。」

 

「いちいち気配を感じる方が鬱陶しいわ。」

 

 鈴とシャルロットが苦笑しながら歩いてくる。いやー、シャルロットまでそっち側に回るとツッコミがいなくなるんだわ。すっかり逞しくなりやがって。

 箒とセシリアは少し気まずそうに出てくる。そんな顔しても一応共犯だよ?

 ラウラとマドカは「なるほど」とか言ってるけど何がなるほどなのかな?そもそもマドカも染まってきたな。

 最後に一夏。頭の上に『?』を浮かべるな。お前は状況を読め。

 

「その、邪魔じゃないか?」

 

「あんなところにいられたほうが邪魔だ。出歯亀してないでお前らも飯食え。時間ないぞ。」

 

「そ、それではお邪魔したします。」

 

 何だか軽く怒りが沸いてきた。それが出歯亀されていたからか、それとも彼女たちとの時間を邪魔されたかのどちらかなのか、俺にもわからない。

 みんなは平気なの?なんで『仕方ないなぁ』って顔してるの?聖女なの?俺の心が狭いだけなの?

 

「私も兄さんと食事が出来れば・・・。」

 

 マドカさん?君は何を言っているの?君ら一応兄妹だろ。ちなみにあの人も大概鈍いぞ。

 

「相棒はハーレムでも作るのか?」

 

「よーしラウラ、お兄さんとお話しようか。」

 

「ぬぐおぉぉ・・・。アイアンクローは、い、たい、ぞ・・・。」

 

 何を言い出すのかこの娘は。思わず手が出てしまった。

 ・・・お嬢さん方?何を黙っていらっしゃる?今のは我が相棒の戯言ぞ。

 箒たちも『ソレが出来れば』みたいな顔するな。

 

「ね、ねえ。明日は休みだから、レゾナンスに行かない?」

 

「うん。午前はみんな部活がありそうだから、午後からならどうかな。」

 

「お、いいね。その後旺牙くん組と織斑くん組に分かれて行動とか。」

 

「・・・うん、生徒会も午前中で片付きそうだから、大丈夫そうね。」

 

 勝手に話が進んでいる!?しかも一夏たちも巻き込んでるし。

 マドカ以外も乗り気になってるんじゃねえよ。それでいいのかお前ら。

 

「私は兄さんの手伝いを。」

 

「いや、生徒が教師の手伝いって、いいのか?」

 

 仕事内容による、のかなあ。

 

「それにしてもみんなで買い物か。なにか買いたいものでもあるのか?」

 

 だからこの男は意味が解っていっているのだろうか。それともわざとじゃないだろうか。

 俺が言うのも何だが、同じ男として頭が痛い。

 などなど色んな話をしていると、そろそろ昼休みも終わりの時間に近づいてきた。

 全員が片付けに入る中、一夏が話しかけてきた。

 

「あー、俺ちょっと旺牙と話したいことあるから、みんな先に戻っててくれ。」

 

「構わんが、時間はあまりないぞ。」

 

「少しだけだから大丈夫だよ。」

 

「俺にも了解とれよ。まあいいけどさ。」

 

 女の子たちを先に行かせ(なんか語弊があるかもしれん)野郎ふたりが残る。

 こいつが俺に話とは、いったいなんだ?

 

「なあ旺牙。実は、みんなのことなんだけど・・・。」

 

「みんな?ああ、いつもの五人のことだろ。」

 

「なんでわかるんだよ。」

 

「空気でなんとなくな。」

 

「・・・いまだにお前に口で勝てる気がしないよ。いや、腕っぷしでも勝てないから、人として完敗か。」

 

 何を言い出したこいつ。急に卑屈になりだした。

 

「旺牙はさ、その、簪たちのこと好きなのか?」

 

「ブンバッホッ!?」

 

 マジで何を言い出すのかこの野郎!

 

「ちょ、俺は、その、『そういう意味』で好きなのは、ひとりだけど、みんなのことも無下に出来ないっていうか・・・。ああもう!?最低野郎かおれは!?」

 

「お、落ち着けよ。まあ、好きな子がいるのはいいけどさ。俺はどうなんだろうってさ。」

 

「どうってなんだよ。」

 

「俺はみんなのこと、どう思ってるんだろうって。」

 

 え、なんか一夏が凄い事言ってる。

 

「あの日、学園が侵入された日なんだけど、旺牙と別れた後色々あってさ。なんか、みんなのこと、その、ちゃんと女の子として見るようになったというか。」

 

 驚いた。以前のこいつからは考えられないことが起っている。何が起こっていたのかは詳しく教えられていないのだが、一夏もなにか気持ちが変わることがあったのか。

 えっと、何て言おう。

 

「なあ、どうすればいいのかな?」

 

「どうすればって。・・・自分の心に従うしかねえだろう。誰を好きになるのか、誰の想いに応えるのか。結局はお前に委ねられてるんだから。こういうのは簡単な問題じゃないぞ。」

 

「そうか・・・。もしかして時間を掛けなくちゃいけない事なのかな。」

 

「ま、そういうこったな。・・・お互い、難しい問題にぶち当たってるな。」

 

「ホントだな。・・・さて、俺たちも戻ろうぜ。」

 

 一夏にとっても初めて女の子を意識することになったのか。

 男として、ちゃんと答えを出さなきゃいけないのかな。

 簪のことが好きなのは変わらない。ただ、それで誰かを傷つける。

 どういうのが優しさなのか、優しさを求めてはいけないのか。

 恋って難しいなあ。

 

 

 

 

    ★    ★    ★

 

 

 

「で?今日はなんだ?乱心したか?」

 

「酷過ぎないか?いやいや、久しぶりに会ってからふたりで飲みに行くことは無かっただろ?たまにはどうかと思ってな。」

 

 土曜の夜、一樹は千冬を食事に、正確には酒に誘っていた。間に真耶が挟まっていることが多かったが、ふたりで飲みに行くのは久々、いや初めてと思われる。

 

「たまにはも何も・・・、急に私たちの前から消えておいて何を言っている。」

 

「そう言うお前も俺が行けない場所に行った側だろ、てそんな言い合いしに来たんじゃないんだ。そろそろ着くぞ。」

 

 今日は喧嘩をしに来たわけではない。ただ何も考えずに話したかったから飲みに誘ったのだ。

 そして辿り着いたのは。

 

「ここ、か?」

 

「なんだ、文句あるか?」

 

「いや、特にないが・・・。」

 

 やってきたのはよくある大衆酒場。静かな雰囲気もムードも何もない、賑やかな飲み屋だ。サラリーマンが部下に仕事について語ったり、大の大人が野球中継を観て語り合っている。ある種の有名人である自分たちが入っても誰も何も言わない。

 

「俺の行きつけの飲み屋だよ。こういうノリが好きなんだ。取り合えず座ろうぜ。」

 

「ああ。」

 

 ごく自然に隣り合って座る。千冬も千冬で迷いが無い。

 

「なんだ、戸惑うと思ってたんだがな。」

 

「私自身、こういう店の方が性に合う。クレッシェンドは真耶のような同僚と行くところだ。」

 

「なら大丈夫だな。大将、とりあえず生二つ、ジョッキで。」

 

「あいよ!生二つね!」

 

 店主の豪快な声を聞きながら、ふたりは息を吐く。

 別に緊張しているわけではない。ただ落ち着いただけだ。

 

「何頼んでもいいぞ。今日は俺の奢りだ。」

 

「本当にどうしたんだ?いつものお前らしくないぞ。」

 

「いいだろ。そういう気分なんだよ。」

 

「明日は雪が降るな。」

 

「ははは、こやつめ。」

 

 そんな言葉を交わしつつ、一樹と千冬は笑顔である。店の雰囲気がそうさせるのか、そもそもこのふたりがそういう間柄なのか。

 そうしているうちに生ビールが運ばれてくる。無言で乾杯し一気に流し込む。

 ぷはぁ、という息までぴったりだった。

 

「あとはそうだな、出汁巻き二皿お願い。千冬は?」

 

「まずは枝豆だろう。それが風情というものだ。」

 

「ジョッキ飲んでて風情もないだろうに。まあ、枝豆も追加で。」

 

 つまみを注文し、運ばれてくるまで少しづつビールを飲む。

 先程までと違い、静かな空気が間に流れる。

 その空気を打ち消したのは、一樹の方だった。

 

「すまない。」

 

「なんだいきなり。なにを謝る。」

 

「俺は、お前の弟を死地に追いやろうとしている。そのことだ。」

 

「・・・そのことか。」

 

 いつか起こりうる決戦。それに対し、一夏は最大の意味を持ち、切り札となる存在だ。ゆえに、いつか一樹は一夏たち『ウィザード』の素質のあるものに厳しい修行をつける気でいる。

 

「生き残るために鍛えてくれるのだろ。ならばそれでいい。」

 

「千冬・・・。」

 

「それにお前もそのつもりで修行をするんだ。誰よりも生徒たちを思っているのはお前だろう。それくらいわかっている。お前は不器用な男だから、口には出さんだろうがな。」

 

「・・・ありがとうな。」

 

 照れたような困ったような笑みを向ける一樹。それを受けた千冬は顔が熱くなるのを感じた。

 それを隠すかのようにジョッキの残りを飲み干し、二杯目を注文する。

 つまみも来て、ふたりは無言で食べ始める。千冬は先程とは違い複雑な思いでいた。

 

(私はまさか気が多い女なのか?いや、そんなはずはない!一樹や旺牙にそんな気を持つことなど無い!そもそも旺牙は弟分だろうが!)

 

「どうした千冬?」

 

「うるさい!いいからお前も飲め!」

 

「もう飲んでるよ。」

 

 なんだかいつもと違う様子の千冬に一樹は怪訝な顔をする。この程度で酔うのは彼女にとってあり得ないと思っていたからだ。

 まあ放っておいても大丈夫だろう。もし潰れたら学園まで運んでいけばいい。

 その間、もし知り合いに見られたらなどと言うことは考えていない一樹であった・

 

「そういえば束とはよく会うのか?連絡は取り合っている様子だったが。」

 

「ああ。何だかんだで近況は電話してるし、学園に赴任するまではちょくちょく会ってたぞ。あいつらとは今後の予定を話し合ったりしてたし、ISの相談もしてた。あと、旺牙ほどじゃないが俺も飯は作れるから栄養補給をさせていた時期はあったな。」

 

「・・・そうか。」

 

「ん?なんだか機嫌がわる」

 

「何でもない!大将、もう一杯!」

 

 威勢がいいね、姉ちゃん。店主は満面の笑みで注文を受ける。

 吃驚したのは一樹の方だ。

 

「お、おい。大丈夫か?」

 

「ふん!無論だ!」

 

(なんだこの胸のモヤモヤは!こいつが束と会っていたからなんだというのだ!)

 

 ここでふと思い出す。こいつも昔からそこそこモテていたなと。現在も一部女子から人気だったし、千冬との勝負以来畏怖する生徒も増えたが、同時にファンになった生徒も増えたらしい。

 裏ではどうにか付き合えないかと本気で考えている生徒もいるほどだと。

 その事実が、余計にイライラさせる。

 第一転生者だかなんだか知らんが、一樹は少々落ち着き過ぎだ。モヤモヤするのは自分だけだと。いや、なぜ自分はこいつに対してこんなに悩んでいる?

 

(私はこんなにも独占欲が強かったか・・・?)

 

「ホントどうした?まさか気に入らなかったか?」

 

 ゲシッ!と足を蹴る。

 

「痛っ!何すんだよ!?」

 

「ふん!こんないい店を隠していた罰だ。」

 

「なんなんだよ・・・。」

 

 

―――それからしばらく―――

 

「大将、お会計頼むわ。」

 

「あいよ!お連れさん寝ちまったな。ところで、兄ちゃんの『コレ』かい?」

 

 店主は小指を立てて見せるが、一樹はいやいやと手を振る。

 

「昔馴染みだよ。それじゃ、またな。」

 

 まいどー!という威勢のいい声に押され、一樹は千冬を支え店を出る。

 あれだけの戦闘力を持ちながら、彼女の体は軽く、簡単に背負うことが出来た。

 

「・・・悪いな。色々心配かけて。」

 

 涼しくなった夜道を歩く。学園の最寄りまでタクシーでも頼むかと思ったが、この重さを支えながら歩くのも悪くないと思った。

 

「・・・いつきぃ・・・。」

 

「・・・何だ?」

 

「少しは、近くに・・・。」

 

 そう呟くと、そのままスゥスゥと寝息を立てはじめた。

 寝ちまったか・・・。一樹は身を任せてくれる信頼感を受けて苦笑する。

 

「ああ。離れねえよ。」

 

 何時までは分からねえけど。今はそれだけしか言えなかった。




作者)この世界では新型コロナウイルスはないということになっています。念のため。

旺牙)一応、そう位置づけております。

作者)あと、一夏たちが電脳世界で何を経験したかは原作を読んでください。

旺牙)何故?

作者)本当に申し訳ないのですが、旺牙の視点に関係ないと思ってしまったからです。

旺牙)すいません。削れるところは少しでも削りたいんです。
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