待っていてくださった方がいたら、感謝感激です!
修行、初日である。
専用機組は全員ISを装着。高重力下での戦闘は、果たして役に立つのかって?曰く、とりあえず動きが変わるらしい。この人は頭が良いくせに無駄に解かりにくく説明するんだ。生身ならわかるが、ISを纏うとどう違うんだよ。
一応二倍の重力を受けている沙紀と萌は、自分たちは何をすればいいか解らず、取り合えず渡された拳銃を見て混乱している。
「IS組は動きを高めるために俺と模擬戦をしてもらう。勿論、俺対全員だ。まずは十分間俺の攻撃を避け続けろ。一発でも喰らえばやり直しだ。いいな?」
よくないと言いたいが、言っても無駄なので諦めよう。
「はあ?それだけ?いくら何でもあたしたちのこと舐め過ぎじゃないですか?」
「そうですわ。いくら高重力下でも、ひとりの攻撃を避け続けるのは簡単でしてよ。」
プライドの高い組はブーブー言っているが、彼女たちは解っていない。たったそれだけが、地獄だということを。
そんな言葉(文句?)を涼しく受け流し、自身のISを起動する。ああ、始まってしまう。
「さっきも言ったが、お前たちには地獄を見てもらう。ああ、安心しろ。命が消えるギリギリで止めてやる。本当に死なれたらそれこそ計画が狂う。」
凄い事言ってるよ。だがこれからは本当にそんなことが起るんだよな。
「立花と嶋田は『月衣』にソイツを仕舞えるようになれ。要はとっととウィザードに覚醒しろ。」
それだけか、と若干余裕が表情に生まれる。沙紀、萌。この人がそんな甘い事を言うと思ったか?
「但し、出来ない場合は昼と晩の飯は抜きだ。就寝時間まで続けてもらう。安心しろ。朝飯は食っていいぞ。」
「「え?」」
その言葉にふたりの顔が絶望に染まる。
「あの、コツとかは・・・。」
「知らん。」
「月衣ってどうすれば出来るんですか・・・?」
「自分で何とかしろ。素質は有るんだ。すぐに出来る。」
あんまりにもあんまりな言葉だ。この人人間じゃねえ。あ、半分悪魔だったか。
「さあ、始めるぞ。早々に死んでくれるなよ。」
装甲を人型に独立展開する『メディウム』でパーツを分離し、先生は最低限の装備とISスーツ姿になる。魔法と科学の両攻撃で来るのだろう。
そして、戦闘態勢に入った。
地獄の修行の始まりだ。
~~以下ダイジェスト~~
チュドーン! グワーッ!
「篠ノ之!更識妹!一箇所だけに集中するな!」
チュドーン! グワーッ!
「凰!オルコット!隙が大きすぎる!もっと細かく動け!」
チュドーン! グワーッ!
「デュノア!ボーデヴィッヒ!受け止めようとするな!まずは回避に専念しろ!」
チュドーン! グワーッ!
「会長!元亡国企業!まだ無駄が多い!反撃は考えるな!」
チュドーン! グワーッ!
「旺牙!マドカ!お前らは経験者だろ!簡単に当たるんじゃない!」
フンヌヌヌヌヌ・・・
「立花!嶋田!雑念は捨てろ!」
~~なんてことがありました~~
「し、死ぬ・・・。」
「体が動かない・・・。」
「痛みが、ひきませんわ・・・。」
「顔を上げるのも辛い・・・。」
「食べ物が、喉を、通らない・・・。」
「軍の訓練が懐かしい・・・。」
「あれはなんだろう、彗星かな・・・。」
「私の時はまだ手加減されてたのね・・・。」
上から一夏、箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪、楯無さんでございます。
初日からこれか、などと思えない。
メディウムの攻撃を避けたと思ったら先生の魔法が飛んでくる。逆もまたしかり。敵はたった二体なのに、攻撃が避けられない。イヤらしいほどいい位置に飛んでくるのだ。本人の腕と性格がよく出てる。
一対十二で、あわよくば反撃に出ようとした者は速攻で撃墜された。しかも時間もおかずに狙われるものだからすぐに態勢を立て直さないとまた撃たれる。
実際、今日は終了時間まで十分間生き残った者はいなかった。と言うか三分も持たなかった。
「まあまあ、それでもなんか腹に入れておけ。明日以降もあるんだからな。」
簡単なものを作ってみんなの前に並べていく。シャルロット、せめて一口は食え。簪、精神崩壊はしないでくれよ。
「相棒はなぜ平気なんだ?」
「そういえばマドカも余裕があるね。」
お、ちょっと復活したか。
「俺の場合は『向こう』でやってたから魂が覚えていた、のかな。それでも動くのがやっとだ。」
「私は以前この手の訓練を受けていた。流石に十倍は厳しいがな。」
ああ、やっぱり経験者だったか。取り合えず時空が歪んでる結界に突っ込むんだよなあの人。出る時が時差ボケが酷いんだよなこの修行場。
「「・・・・・・。」」
沙紀と萌は、うん。拳銃を睨みつけている。目が血走っててかなり怖い。しかも本当に飯抜きだから集中力も無くなってきた頃だろうから余計に上手くいかないだろう。やはり安東先生は悪魔だ。
声を掛けようにもそんな雰囲気じゃない。そのまま撃たれそうなオーラを纏っている。
「ん?スコールとオータムは?」
「ああ、自分の分の食料確保したらすぐに部屋に戻ったぞ。」
「馴れ合いはしないって意味でしょうね。」
一応一緒に戦うんだから、最低限の交流もしてほしいんだが、まあ難しいんだろう。
「ところで、旺牙とマドカはどれくらいこの空間で過ごしたの?」
「俺は一年ぐらいだったか。こんな内容じゃなかったがな。」
「私は・・・四年だ。」
「「「四年!?」」」
全員が声を揃えて驚く。
えっと、つまり、年上?
「元々私はお前たちより年下だ。この結界内で四年間過ごして、結果的に同年齢になったまでだ。」
そ、そうだったのか。やけに達観しているというか、落ち着いているのはそういう事か。
「達観してるのは旺牙もだよ。」
「俺は前世分も生きてるから良いんだよ。」
「「ヴァ~~~~・・・。」」
おお、沙紀と萌が帰ってきた。なんだかもうゾンビみたいになってる。
飯を食わせてやりたいが、晩飯抜きが言いつけられている。可哀想だが後を考えるとここは心を鬼にして。
「「水・・・。」」
水分補給も無しだったのかよ!減量中の格闘家か!
さすがに酷かったのでコップ一杯の水を提供。
「コップが重い・・・。」
「まあ、頑張れ。」
それしか言えねえ。全員二倍の重力を受けているはずだが、ギリギリ耐えている。だがこの二人はフィジカル訓練はそれ程受けていないので、大分きつそうだ。
「お前ら、そろそろ自室に入れ。明日も変わらずにやるぞ。」
悪魔の降臨だ。お、今みんなの心が一つになった気がするぞ。
―――三日後―――
シュンッ!!
「で、出来たっ!」
沙紀の声が結界内に響く。
どうやら拳銃を消した。つまり月衣内に収納出来たらしい。その後も何度も出し入れしている様子を見ると、完全にコツを掴んだようだ。
いくら極限状態とはいえわずか三日で月衣の制御、つまりウィザードとしての覚醒の一歩を踏み出せたのは凄いな。相当の才能があったのだろう。隣の萌がいまだに唸っているのが証拠だ。
「へえ、やるじゃないか立花。なら次はコイツを扱ってみろ。」
先生は自身の月衣から何かを放り投げる。
あ、アレはまさか・・・。
「そいつはガンナーズブルーム。魔銃使いの武器だ。そいつの出し入れを完璧にしろ。目標は一秒以内。その後は顕現から砲撃を難なくこなせ。」
「え?あの、コツは・・・。」
「自分で見つけろ。」
「魔法とかは・・・。」
「残念ながらお前に攻撃魔法や治癒魔法の才能は無い。」
心の底まで悪鬼羅刹だよこの人。あ、沙紀が倒れた。
「ほら、お前らもボケっとすんな。続きを始めるぞ。」
「「「・・・やってやらーーーっ!!」」」
沙紀の覚醒に奮起し、全員がさらに力を入れる。
てかやらないとこれ以上は死ぬ。
(だが立花沙紀。もしや・・・。)
―――さらに三日後―――
「出来た・・・。」
力の無い声で萌が呟く。何度も何度も、確認するように拳銃を月衣に出し入れする。これでふたりがウィザードとして覚醒したことになる。
「よし。嶋田は・・・水の攻撃魔法の才があるな。まずは水を球状に現出させることから始めろ。勿論コツは教えない。自分で何とかしろ。ひとつだけ言うなら、イメージすることを大事にしろ。」
萌が灰になった。
~~~ダイジェストは続く~~~
―――三週間後―――
「ハァ、ハァ、ハァ・・・。」
「・・・十分経過。まさかこんなに早く第一目標を突破されるとはな。」
「あはは・・・、どんなもんよ・・・。」
「やり遂げましたわ・・・。」
「き、きつかった。」
「え?第一目標?」
先生は一夏たちに拳銃を放り投げると、残酷な言葉をぶつける。
「次はウィザードとして覚醒してもらう。立花と嶋田がやったやつをお前たちもやるんだ。なに、ISの展開と同じようなもんだ。目標は〇、五秒。出来るまで昼晩の飯抜きは続行だ。」
各自の顔に絶望の色が浮かぶ。
まあ、非覚醒組はそれとして、覚醒組はどうするんだ?
「旺牙はメディウムの攻撃を耐え続けろ。休憩はISが決める。だから感覚はまばらだ。お前から手を出すなよ。」
「マジすか・・・。」
ああ、もう砲撃態勢に入ってる。
こうなったらやってやらあぁぁ!!
「マドカ、会長、スコール、オータムは俺との戦闘継続だ。時間制限は無い。とにかく生き残れ。」
「ちょ、ちょっと待てよ!私たちにはウィザードの修行は無いのか!?」
「ああ、そのことなんだが、お前たちふたりには才能が全くない。いくら頑張っても無理だ。」
「はあ!?」
「それでも大事な戦力なんだ。鍛えるに越したことはないだろう。」
「本当に、そうかしら?」
「・・・どういうことだ?」
「本当に、私たちには欠片も才能が無いと?」
「・・・さて、何を言ってるんだかな。」
「テメエ!」
「待ちなさいオータム。」
「でもよスコール!」
「ここは彼の言う通りにしましょう。後でなんとかすればいいんだから。」
「・・・ちっ!」
本当にあいつらには才能が無いのか、はたまた・・・。
真相は先生にしか分からないか。
チュドーン! ベムフン!?
忘れてた!?もう攻撃してきた!
耐えろったって、今の一撃かなり強かったぞ!?
ああ、もう!ここは地獄だ!!
それからさらに三週間、非覚醒組はなんとか月衣を使いこなせるようになり(確認方法は全員にスコールとオータムが放った銃弾が止まるかどうかで判断した)、沙紀と萌もそれぞれの目標をクリアした。
~~~以上、非常に簡略化した第二段階である~~~
「つ、疲れた・・・。」
「ウィザードってこんなに大変なの?」
「いや、大体はいつの間にか勝手に覚醒してるもんだ。今回みたいに無理矢理覚醒させるなんてのはまずありえないことだぞ。」
全員の射殺さんばかりの視線が先生に向けられる。が、本人はどこ吹く風だ。口笛まで吹いている。
だがここまで無理をするということが、今度の戦いの厳しさ、激しさを物語っている。
「まあ、お前らよくやったよ。もしかしたら死にかける奴が出てもおかしくなかったからな。」
「「「十分死にかけたわ!!」」」
ほとんどの声が揃う。
「そういうな。まあ、一か月半でここまで来れたんだ。そうだな・・・。昔話をしようか。それも、別の世界の、な。」
「せ、先生!それは!?」
「良いだろう?そうだ、まずはお前の話からしてやれ。失敗談から始まる恥ずかしい話をな。」
「うぅ・・・。」
あれは完全に黒歴史なんだよなぁ。
「安東先生、昔話って?」
一夏が尋ねる。まあこいつは『こっち』での事はほとんど知ってるからな。
俺が、俺達がこれから話すのは。
「一応知っておいてもらおうと思ってな。それ次第で俺達に着いていきたくないと思ったら戻ってもいい。」
これから話すのは、『ファー・ジ・アース』での俺達の話だ。