事実は小説よりも奇なり、という言葉がある。
確か大昔の詩人の言葉だったと思う。
うろ覚えであるが、確か『世の中の実際の出来事は作られた小説よりもかえって不思議で波乱に富んだものであるということ』という意味で、俺は今現在進行形でその言葉を実感しているのだった。
「アンギャアアアアアア!?」
俺はある夜何か大きな存在に支えられるような感覚を感じ、次に何か落ちるような感覚を感じた。
そして寝起きると山羊頭の怪物に成っていた。
俺は、俺の頭がおかしくないのならば、21世紀の日本に住む一般男性であった。
だがある日起きると、山羊頭の巨人、所謂フォモールという種族として生誕していたのだった。
フォモールとは確かアイルランドの神話に登場する山羊頭の巨人で、正確には魔物ではなく神族っぽい存在だったはずである。
ただ現代ではファンタジーに登場するモンスターの一つ程度の認識だった。
そして俺が転生したと思われるフォモールは後者、所謂そこそこ強い魔物、ないし亜人的な存在の一種族のようである。
俺の生まれた一族は雪が吹雪く人間ならばとても住めないような寒く険しい山岳地帯にすむ一族のようだ。
住居は洞穴で火を使用する程度の知識はあるようだが、文明レベルは原始人程度である。
まあそれで特に問題ないというのが文明が発達しない一番の理由なのだろうが。
おっと焼いただけの謎の生物の肉を食いながら考え事をしていたら眠くなってきた。
生後二日目なのでショウガナイヨネ。
・・・・生後二日目で肉の丸焼きって・・・草食ですらないのか・・・・
おはよう諸君。
俺だ。
フォモール改めレッサーフォモールに転生した元日本人だ。
既に俺が生まれて5日ほど経過している。
晴れて洞窟から外へ出ることを許可されて俺と同年代のレッサー達と共に洞窟前の広場的な場所へと集められている。
周りを見回すと、俺を含めて20数匹ほどのレッサー達、その倍ほどの数のフォモール達、そして俺達の前でメスのフォモール(オスと区別がつかない)を侍らしている大柄かつ不思議な入れ墨を掘ったフォモールが一匹いるようだ。
「コレからオマンら自分のショクリョウはジブンで取ってコンとシヌそワリャアアア!!」
「「!?」」
今まで親たちから食料を与えられていたレッサー達は自身の命に関わるイキナリの宣言に驚愕している。
俺も驚愕した。
ただし狩り自体はそうだろうなと予想していたので別に構わないのだが、大柄のフォモール、族長フォモールとしよう、の話し方とソレを普通に理解できる俺自身に驚愕してしまった。
う!喋り方、フォモール、雪山・・・何か思い出しそうだ・・・。
「ワカッタらサッサとカチコんデコイヤアァァァ!!」
「「!?ガアァァァ!!」」
何か思い出しそうになっていると、族長の発破の掛け声とともに周りのレッサー達が駆けだしていく。
俺はハッとして周りを見回すがレッサー達は我先に駆けだして既におらず俺は一人立ち止まっていた。
「・・・?キサンなんでウゴカんのんジャイ?」
「ガアアア!(え?・・・・ぶ、武器は?)」
「自分で手にイレルんヤ!!あとはキアイじゃああァァァァ!!」
「ガ、ガアアア!!(わ、分かりましたああ!!)」
族長の無駄に威圧感のある声に押されるように俺は他のレッサー達が駆けだした方向へ駆けだした。
雪山に飛び出して数分。
既に他のレッサー達の姿は見えなくなっており、俺は独りそこら辺にあった石を持って歩いていた。
ひとまず俺は少し標高の高い場所を見つけて上り周囲を見渡すことした。
時間にして30分ほどだろうか。
レッサーフォモールというのはレッサーと名が付く割にはやはり人間よりも優れた身体能力をしているようだ。
あくまで地球の人間基準であるが、普通腰みの一つでこの吹雪の吹く渓谷を30分も踏破出来ないし、試しに拾った石を結構力を入れれば握り砕けるのだ。
しかも石と言ったが、人間基準なら結構な大きさであるし、体格も成人男性程度はあるので確実に以前の俺よりも身体能力は高いだろう。
まあこんな剣と魔法の世界だからきっとよくある小説のように人間もSランク冒険者で俺TUEEEEとかいるのだろうけど。
予定通り周囲よりも少々高い丘、というよりは渓谷に到着した。
周囲を見渡すと、遥か遠方に鹿のような動物の影が見えており、丁度渓谷の下あたりに4本腕の熊が1匹いた。
流石ファンタジー4本腕とかどんな進化の仕方をしたのやら。
俺は熊を確認してすぐさま地に伏せ息を殺す。
え?さっきまでの強気はどうしたのかって?
そんなもの今捨てましたよ。
何故かって?
熊は食事中なのだが、どう見ても俺の同胞、レッサーフォモールの内臓を美味しく頂いてるもの、無理ですよ。
俺は匍匐前進しながら渓谷の下、熊をのぞき込む。
そこには内臓を食べ終わって口を赤く染める熊がレッサーの頭部を齧り始めていた。
「ファッ!?」
遂声を上げる。
「グルッ?」
物音に反応して渓谷を見上げる熊と咄嗟に口を押え地面に這いつくばる俺。
どうやら俺の存在には気づかなかったようであるが何かしら不審に感じたのかゆっくりと熊が渓谷を登ってくる。
何分角度が90°近いのでペース的には遅いのだが数分程度で此処までやってくるだろう。
(逃げるか?)
逃げようと思い、自分が昇ってきた方向を振り向くと其処には3頭の4腕熊とそれと同じ数のレッサーの遺体。
俺は再び地に伏せる。
(レッサーヤラレ過ぎだろおおおお!?俺なんて此処じゃあ底辺も良い所じゃないか!?)
自身の同類と今の状況から大自然の厳しさを学ぶことが出来た。
そんな現実逃避を行いつつ俺は決意、あるいは自棄になる。
同じ死亡フラグでも3匹よりは1匹の方がマシということで、俺は意を決して一度渓谷の下を確認してからそちらへと身体を向ける。
火事場のバカ力か、通常ならば例えこのレッサーフォモールボディーでも持てないであろう大岩を持ち上げ、ソレを下の方に向けながら登頂中の熊目掛けてダイブするのであった。
「オマエヤルじゃあネエカ!!」
その日の夕方、重力加速度という素晴らしい力を使い、なんとか熊の頭部を岩で砕き、無事熊の遺体を持って洞穴へと帰還することが出来た。
俺の担ぐ四腕熊を見て大人のフォモール達は喝采を上げ、族長も満面(邪悪)の笑みを浮べて俺を称える。
それに対して俺は全身あざとスリ傷だらけだが五体満足で帰還できたことを喜び、族長に熊と帰りに襲い掛かってきたので力づくで潰した白いスライムのようなものを渡し気絶するのだった。
夜に起こされて熊の心臓と頭を食わされた。
嫌々食べたら非常に美味であった。ウマー!!
やあ元日本人、現レッサーフォモールのフォモ吉だ。
熊ダイブ事件から既に一月が経過した。
今の俺はあの危機的状況から頭のネジが外れたのか、若干はっちゃけながら日々狩りを通して己を鍛えている。
俺と俺の同期たちは既に生まれた時の半分まで減っているが皆それぞれ巧いことやっており最近ではよほど下手なことをしない限り死ぬようなやつはいなくなった。
まあ俺は基本単独で狩りに言っている為、若干ボッチ化していること以外問題は無い。
最近では一回り体も大きくなりLV98まで上がった。
俺の素質次第であるが、もう少しでLV100を迎えて【
因みにこの世界ゲームのようにLVの概念があり、フォモールは亜人ではなく魔物に分類されるため本人の素質次第であるがLV100迎えることで上位の種族に存在進化することが出来るのだ。
尚、亜人や人間種は「存在進化」はしない代わりに「職業」という概念がありついた職により能力値の補正や何か必殺技のようなものを覚えることが出来るらしい。
「グワアア(ちょっと狩りに行ってきます。)」
「シャアー!大物を狩レバ今日で大人にナレルかもシレナイゾォォ!!」
族長の発破を受け俺は日課の狩りに出発する。
尚、レッサーフォモールはまず間違いなくフォモールへと進化できるので存在進化することが成人の儀式のような扱いとなっているらしい。
そして成人することで初めてフォモールの雌と番うことを許されるのだがソレについては興味がない。
俺が枯れているとかそういうことではなく、単純に胸がある以外オスもメスも山羊頭のムキムキ巨人の外見なので中身が人間の俺は同族に欲情出来ない。
寧ろ出来たら日本でいう高レベルなケモナーということだろう。
いつもの狩場を通り過ぎ俺は渓谷の端にある雪に閉ざされた森についた。
最近知ったのだが此処には貴重な薬草も自生しており、それを求める動物も多い。
また人間の住む領域に近いので上手くいけば人間に会えるかもしれないという打算もある。
まあ何度か来ているが一度も見ていないので確率の低い望みかもしれないが。
俺はそんなことを考えつつ、薬草を集めまた以前倒した白いスライム、まんまホワイトスライムを気合で潰しゼリーのように飲み込む。
うんほのかな甘みで美味いな。
「グガアア♪」
久しぶりの甘味に気分を良くして俺は薬草をヒョイヒョイ積んで木の枝で編んだ籠に入れていく。
そんなことをしていると・・・突然火の玉が3発俺に向かってきた。
「!?ファッ!?」
偶々薬草を積んで、伸びをするために上体を後ろの逸らしたところを火の玉が通過していく。
驚く俺。
籠を投げ捨て後ろに下がりながら火の玉が飛んできた方向を見ると其処には3人の人間がいた。
杖を持った爺さん、盾と剣を持って爺さんの前に立つ戦士風の男、弓矢を持った女であった。
コレはもしかするともしかするのではないか?
「■■■!!」
人間は何か言っているが全く分からない。
どうやらフォモールとは言語体系が違うのだろう。
そうだよね、そりゃ口の形状も文化も違うのに異種族同士で小説みたいに言語が統一な訳ないよね。
また火の玉が飛んできて避けた先に目を狙って矢が飛んでくる。
ヤバいな。最初から殺意がMAXだ。
とりあえず意外と葛藤なく魔法使い風のジジイを始末しようかと思った瞬間、死角からの風切り音。
背後に4人目がいたようで盗賊風のおっさんが背後からナイフを首に振りかぶっていた。
どうやら近くの木から飛び降りてきたようである。
「!?」
運よく俺の持っているスキルが作動して気配を掴む。
そのままナイフを避けて盗賊風の男へ棍棒を振るうが掠りもせず避けられて、他の三人の元まで退避された。
【空間識覚】と【気配察知】そして【立体起動】
この三つのアビリティを俺はあの崖ダイブを通して習得したのだ。
前者2つにより不意打ちにも反応出来たのだ。
「■■■っ■■■!!」
不意打ちを全て避けられて動揺しているのか何か揉めている。
ふう。
予定外過ぎて動揺するのは分かるが、焦るくらいなら俺に不意打ちなんかしてくんじゃねえよ。
憎悪と怒りに視界が真っ赤に染まる。
取りあえず人間相手だからと特に動揺もないので、俺の命を狙ってきた不届き者は命で贖って貰おう。
「グ、グガアアアアア!!」
俺は気合の雄たけびと共に連中へ跳びかかり、全力で棍棒を振り下ろす。
重力の勢いも加えて凄まじい衝撃で地面を抉る。
人間は4人ともそれを避け、俺を中心に囲む形で散る。
渾身の振り下ろしのスキを狙って盗賊風と戦士風の男が駆け寄ってくるが・・・
「ガッ!?」
今までの狩りで鍛えた【投擲】効果を乗せた指弾を双方に打ち込み動きが止まったところへ棍棒を投げつけ、もう片方、戦士風の男の背後に回り思い切り首を腕で締め上げる。
ゴギッ!
首が本来曲がらない方向へ曲がり倒れる戦士風の男。
続いて男を女とジジイへの盾にして盗賊風の男を見ると頭から血を流しピクピクしていた。
まだ生きているので容赦なく山羊っぽい蹄の着いた足で頭を踏み砕く。
もう一度残りの二人へ目を向けると・・・
「■■■!」
女がこちらへ矢を撃ちジジイは全力で逃走していた。
ジジイは活き汚く感じるが良い判断だ。
だがレッサーフォモールの腕力と鍛え上げた【投擲】を舐め過ぎだ。
そこら辺にあった大きな石を思い切り無防備なジジイに投げて頭をバーン。
女はそれを見て木を盾にして逃げようとするが、御免、俺、【立体起動】持ちなんだ。
山羊の脚力で木を足場に空中を駆けて女の上を取る。
後は単純に腕力で吹き飛ばし女を地面に叩きつけた。
「■■■っ・・・」
女、よく見る猫っぽい獣人のようだが何か言っている。
まあさっぱり分からないが動けないから命乞いだろうか?
とりあえず俺は他の三人の絶命を確認すると、久しぶりの俺の嗜好に会う女体だ。
元々命を狙ってきた相手だし精々楽しませて貰おうと思い、鎧を引きはがす。
俺のいきり立った愚息、女の腕サイズの、がイキリ勃つ。
「ガアア!!(頂ます!!)」
この世界でやっと童貞卒業かと思ったが出来なかった。
毒でも仕込んでいたのか獣人の女は自決していたのだ。
流石に死姦趣味は無いので使える装備を剥ぎ取り4人とも喰らった。
味は熊の方がおいしかった。
集落に戻り、人間について報告する。
族長は少し考え込んだが証拠はすべて俺の腹の中か持ち帰っていることから問題ないと判断したらしく普通に人間を警戒するよう周知して終了した。
その夜、俺は調子が悪かったので寝床へ泥のように倒れ込んだ。
眠りにつく瞬間、
[レベルが規定値を迎えました。
特殊条件《格上殺し》《特異行動》《異邦の魂》をクリアしている為、【
《YES》《NO》]
俺はやっとかと思いながら《YES》を選択する。
[フォモ吉は《時空と星海》を司る【大神の加護】を得ました。]
[【異界の神造体】を得ました。分解し再構成します。・・・・・フォモ吉は【
ふええっ
ナニかよく分からない情報が流れ込んでくるよお。
次の日起きると、予想通り俺は存在進化して種族名から「レッサー」が取れた。
かわりに混沌異種とか余計なものが付いたが。
そうそう俺は生まれ変わってから何か既視感というか違和感のようなものを感じていたのだがその疑問が解消されたのだ。
「この世界は「Re:Monster」の世界だったんだよ!!」
どうも俺はネット小説のRe:Monsterの世界へ転生したようだ。
《時空と星海》を司る大神の加護を得た際に色々されて知識も流れ込んだ結果分かったことである。大神も俺の記憶を見ているようで面白がっている気配を感じた。
それで俺が此処にいるのは以下のような流れがあったようである。
・【異邦人】を作るために地球人の魂をコピーしよう。
・あ、基になる魂が落ちた。
・フォモールに転生。
・せっかく用意した【異界の神造体】どうしよう・・・。
・コイツ面白いやん!【存在進化】したし加護与えるついでに【異界の神造体】をぶっこも!
・【終焉と根源】のも【誕生と叡智】のも面白そうなことやるみたいやし彼らに
関わっても良いんやで?
(#^ω^)ビキビキ
フザケやがって。
主人公とか生まれて1年足らずで最強格になるような化け物だし、救世主も頭イッチャテルキチガイ女じゃねえか。
正しく
「こんなところに居られるか!俺は自分の部屋に戻らせてもらう!!」
をやりたくなるような相手じゃないか。
まあ冷静に考えるとソレやったら俺捕食される哀れなフォモールAになるか異端審問的な奴で殺されそうだし。
今は原作前っぽいし「クーデルン大森林」行って主人公が手が付けれなくなる前に始末するか?
いや仮にゴブ時代に始末できてもこの世界には規格外の奴は数多に存在する。
寧ろ恩を売って彼の仲間となれば過酷かもしれないが勝ち組になれるのではないだろうか。
うむ《時空と星海》を司る大神への崇拝とか欠片も無くなったが冷静に現状を考えられたことと加護自体は有用だった。もう少し体を鍛えたら主人公にゴマをすりに「クーデルン大森林」へと向かうとしよう。
フォモ吉は
【職業:異界の闘士】を取得した!
【職業:投擲者】を取得した!
【異界の神造体】を取り込み、人間性を取り戻した。