遊戯王OCGでお砂糖まみれのローファンタジーラブコメを 作:SOD
時は四月に遡る。
学校に登校してくる生徒たちは、すでにグループを作り終わり、会話に華を咲かせている。
放課後に何処へ遊びに行こうか?今日の授業中に食べるお菓子の話し。スマホを替えた話し。
それぞれが思い思いに、しかし決して空気を乱すまいとしながら、仲の良い友だち付き合いを騙る。
しかしここに、その空気を乱す男が登校して来た。
境夜「ふぁあああ~~」
神条 境夜だ。
彼がただ欠伸をしただけで、その場にいた生徒、更には教師までもがビクリと身を震わせる。
その様子をたまたま理事長室から見下ろしていた女性が、偶然用事で理事長してに訪れていた教頭先生に声を掛ける。
理事長「教頭先生。あのバカでかくて人相の悪い生徒は誰だい?」
教頭は窓の外の神条の姿を確認する。
教頭「ああ、神条くんですね。普通科の一年生です。
彼は昔、不良のチームに所属していた元バッドボーイなんです。」
理事長「バッドボーイて……。
ん。元??その割には金髪だわメッシュだわピアスだわで、随分ヤンキー臭が抜けていないみたいだわさ。
そのチームってのは有名なのかい?」
教頭「はい。私も三年生の生徒から聞いただけなのですが。
たしか、【有罪 夜行】という『愚連隊』と呼ばれる種類の少数チームだそうですが、神条くんはそのチームの【特別攻撃隊隊長】という役職だったとか。
曰く。昔少年兵として戦争に徴兵された経験があるとか、その拳で人の首や飛行機のエンジンを走行不能レベルに破壊したとか、尾ひれの付いた噂もあるようです。」
理事長「愚連隊の特攻隊長か。道理で危険な瞳をしているわけだよ。厄介なのが入学して来たねえ。うちは
やれやれと頭を抱える理事長。
教頭「ところがですよ。」
理事長「???」
ふいに教頭のテンションが変わり、掛けていたメガネが熱気で曇りだす。
教頭「なんと彼、今年の新入生の入試と新入試験で最高得点を叩きだしています。」
理事長「何の冗談さね?新入生のテスト結果ぐらい、当然アタシの元にも報告が来ているよ。
トップはアタシの孫の秀一だと聞いたよ?」
教頭「はい!私も驚きました。理事長の孫にして英才教育を施された眉目秀麗。女子に間違えられそうなほど可愛い
刷るだけケツ拭く紙くらいにしか役に立たないラノベの糞テンプレだとばかり思っていた私にはまさに天啓!!」
理事長「おい今なんつった?」
教頭「時間内ならいくらでも回答して点数を増やせる当校の平均点は、五教科で573点!!
秋堂 秀一君の総合点数は801点!そしてそして、元ヤンキー神条君の総合点数は!!」
理事長「……点数は?」
ゴクリと息をのむ理事長に対して強烈なドヤ顔で告げる
教頭「名前の記入漏れにて0点です!!」
理事長「おう、いい加減にしろやコラ。」
予想はついていた。が、それでもこの茶番はあんまりだろう。そんな気持ちで不満をあらわにする理事長に、教頭は続けて言葉を紡ぐ。
教頭「名前の記入漏れが無かった場合の神条 境夜の総合点数は3000点を下りませんでした。飛び級って凄いですね。学園長の孫なんて生ゴミですよ生ゴミ。」
理事長「さ、三千!?何を寝惚けた事をほざいてるんだい?
そいつはつまり、一教科の平均が600点以上と言うことだよ?仮に問題が小学一年生のレベルだとしても、一回のテストの時間は45分だ。我が校--極北高校は上限が無いだけで真面目にやってれば時間は100点分程度の時間しか与えていない。
アンタ、あの男が270分の時間で解くべき量の問題の答案用紙の読み、解答、記入の動作を、45分で全て行ったと言うのかい?
どんな頭の回転をしていたとしても、それを記入する時間が足りるはずが無いだろう!?」
今年で47歳の理事長が、血圧を上げながらも常識の範疇の異論を唱える。
それは本来は理事長に軍配が上がる主張のハズだった。
だが、唐突に室内に響いた教頭のスマホ着信音が、総てを狂わせた。
教頭「おや……理事長。神条くんが少年兵として軍に配属されていたことに関して、セキュリティーに確認が取れました。」
理事長「……それで?」
教頭「彼は『マシーン・ソルジャー』という某国の裏戦闘軍の少年兵で、最前線の別名
理事長「……別に、珍しいことじゃないさね。少年兵とは……消耗品という扱いなのだから。」
眉をひそめながら、心底気に入らないと言う様子で心情とは真逆の、諦めの言葉を紡ぐ理事長。
教頭「その部隊で彼は、
理事長「自爆特攻に軍医だって?死んでこいという部隊に医者だと?
まるで自殺した犯人を法廷で死刑にするために手術をする闇医者のような存在だね。」
教頭「彼の手術の成功率は100%だそうです。憶測ですが、死してなお少年兵を戦わせるための存在だったのかと……。」
理事長「…………。」
教頭「彼がどうやってその軍を脱退したかは、トップシークレットで分かりませんでしたが、近年彼は『
理事長「………つまり今までの話をまとめると、あの顔面凶器の生徒は。
元少年兵で?元軍医で?
愚連隊の特攻隊長で?
常人の6倍の速さで頭が回り、飛行機を生身で壊せるバケモノってかい?」
教頭「確かに。まさにバケモノですね。ああ、一応他にも武勇伝があってですね。飛び級とか。」
理事長「いや聞きたくねえよ。」
教頭「街を歩けばヤクザに当たり組を潰すわ、買い物に行けば強盗と勘違いされて警察沙汰になって‐‐!!」
理事長「聞きたくねえつってんだろ!?何だお前アイツのファンにでもなったのさね!!」
教頭「ヒーローショーで悪役に間違われて‐‐!!」
その後しばらく、うんざりするような教頭の報告が耳を掠めては脳まで辿り着かないまま考えた理事長が、一つの考えを纏め、理事長室の電話のダイヤルを押す。
理事長「…………何かさらっと流したけど、アイツさっき飛び級つったか??」
これは、限りなく人外に近い少年。神条境夜(14)高校生活のお話である。
境夜「それでも俺は、やってない。」
警官「はいはい。続きは署で聞くから。」
境夜「冤罪だ。俺は、カツアゲなんかしていない。」
神条境夜は割と不幸な目に会う。
例えば今朝、登校中にたまたま目の目で自販機のジュースを買ったサラリーマンのおじさんが財布を落としたところを目撃した彼は、親切心からそれを拾い上げ、落とし主に声を掛ける。
「あの、少しよろしいでしょうか。」
しかし、その第一声は、身長230㎝体重105㎏の日常的に人を殺っていそうな目をした男からのもの。
檻から出たライオンか、ゴジラを前にしているかのような恐怖が、失禁と言うカタチて現れたサラリーマン。
そして結果として……
境夜「俺は、カツアゲしていない。」
警官「いいからとりあえずパトカー乗って。このままの状況の方がキミにとって良くないんだよ?」
お巡りさんからの職務質問と言う名の強制連行という状況に帰結する。
どうでも良いことだが、警官が指さしているパトカーはミニパトで、恐らく境夜は狭くて入れない。
そんな時だった。
???「あーあ。またかよ……お~い、キミもう行っていいよ。
あとは俺が引き受けるから。」
別のパトカーが現場に到着し、くたびれたスーツを着た中年の男が助け船を出してきた。
下っ端警官「ご、後藤警部。お疲れ様です。しかし現行犯の連行ぐらい警部にお手を煩わせずとも‐‐」
後藤「で?今度は何して
下っ端「……は??」
質問に対して右手に持っていた財布を差し出す境夜。
それだけで全て理解した後藤は、境夜を解放し、学校へ向かわせる。
下っ端「ご、後藤警部、お知り合いですか?」
後藤「……ああ。まだこいつの顔面が『ヤバいガキ程度』だった頃からな。
-‐最近、顔面のヤバさが上がってるよなお前。まあ、いい奴さ。
大方、あのツラのせいで拾ってやった財布を渡し損ねたとこで偶然お前に発見されて勘違い。そんなとこだな。
ったく、せめてお前を理解してくれる恋人の1人も居てくれれば、少しは違うんだろうがな…………。」
善意で動き、悪意に見られるそして警察とのお話。これが学生としての神条境夜の日常だった。
事実の話として、一日の中で親や友達よりも警官と会話している時間の方が長い十四歳。
こいつは本当に泣いていい……。
ココまでがエピローグです。
レンと違い、才能と能力に恵まれた境夜。ちっとも羨ましいと思えない彼の生い立ちは、それでも全主人公の中では一番マシな境遇で、様々なチャンスと選択の余地がありました。
リアルファイトではまず負けないでしょうし、自分の力だけで好き勝手に生きるくらいは出来たでしょう。
そんな彼の望んだ道は、誤解と不理解の茨の道でも、彼は前に進みます。
蝕まれても傷つかない強靱な身体で…………