———異変化解決後。
紅魔館の中は咲夜などのメイドたちがあわただしく動き回っていた。
メイド「メイド長、このお酒は何処に運べばいいでしょうか!?」
咲夜「それは、門の前に運んでちょうだい!そこで美鈴が待っているはずだから!」
メイド「はい!分かりました!」
メイド2「メイド長これはどこですか!?」
咲夜「それも門の前よ!」
異変終了後はどうやら博麗神社で宴会が催されるのが恒例だそうで、異変首謀者が食料などを提供しろと紫に言われ紅魔組は大慌てで整理と運び出しを行っているのだ。
一方霊夢と魔理沙は紅魔館のレミリアの部屋で紅茶を飲みながら話をしている所だった。
レミ「というわけで、これからよろしくね霊夢、魔理沙。」
魔理沙「おう。よろしくなんだぜ。」
霊夢「…。こちらこそよろしく頼むわ。」
魔理沙「…?」
霊夢が少し間をあけて挨拶をしたことに魔理沙は疑問を持ったようだがそれを聞く前にレミリアが口を開いた。
レミ「それで…。地下に開いた穴どうするの?あれの修理結構ばかにならないんだけど。フィーが怒ってたわよ?」
霊夢「あー…。言っとくけど…私はやって無いからね?」
魔理沙「あ!霊夢お前ずるいぞ。お前も同罪だぜ!?」
霊夢「なによ。あんたが派手に穴開けたんでしょ!?私関係ないから!」
レミ「まーた始まった。二人とも喧嘩しかできないわけ?」
何故か始まる口喧嘩にレミリアは呆れてそう突っ込む。しかし二人にはもっと別に聞きたいことがあったようだ。
霊&魔「「ところで、フィーって誰(なんだぜ)?」」
レミ「え?」
しーんと場が静まり返った。
再度レミリアは口を開く。
レミ「うーん。おかしいわね。異変には参加できないとは言ってたけど。一度も合わないなんて、どこかに行ってたのかしら?」
フィー「わわっ!?」
レミリアが誰に向けたわけでもない言葉を言い終えた直後、突如霊夢の後ろから変な言葉が聞こえた。
霊夢「ん?」
そこにいたのはフィーゼルと紫だった。
それを見た霊夢はひどく嫌そうな顔をする。
紫「そんな嫌そうな顔しないで霊夢。今回は別にあなたにどうこうってわけじゃないわ。」
魔理沙「じゃあ、何しに来たんだ?」
誰について話すのかは分かったが何を話すのかはわからなかった魔理沙が霊夢の代わりに紫に質問を投げかける。
紫「それはこの子の紹介よ。」
2人がそこへ視線を向けると気恥ずかしそうにわずかに頬を紅らめた少女がこちらを見つめて立っていた。
□ □ □ □ □ □
う~ん。どこかレミリアに似てるわね…。
目の前の少女を見つめながらそう霊夢は考える。しかしレミリアと違ってこの少女には吸血鬼に本来あるべき翼がないのだ。そこを考慮すると何とも言い難い考えになる。
やっぱりレミリアの姉妹なのかしら?
そう結論付けて霊夢は少女が口を開くのを待った。このときの霊夢の読みは当たっていた。翼がないのは伯父に取られてしまったから。その事実を霊夢が聞くのはもう少し後の事となる。
フィー「えーと。スカーレット家の次女に当たるフィーゼル・スカーレットです。よろしくお願いします。」
魔理沙「ああ。よろしく頼む。私は霧雨魔理沙だ。気軽に魔理沙と呼んでくれるとありがたいのぜ。」
霊夢「博麗霊夢よ。私の方も気軽に霊夢と呼んでくれればいいわ。」
2人の返しを聞いてフィーは何処か安心したような表情で頷く。
その他にも基本的な事についての紹介を終えたところで紫は何やら楽しそうにレミリアにこう告げた。
紫「レミリア。フィーを大切にしてあげなさい。それと、もっと愛情を注いであげて。」
フィー「なっ!」
レミ「?」
そう告げて紫はさっさと隙間の中に消えて行ってしまった。
残されたフィーゼルの方に視線が集まる。フィーゼルは顔をはじめより一層紅くしながらレミリアの後ろに隠れるのだった。
それを受けレミリアの方は頭に浮かぶ疑問符はさらに増える一方。
このときフィーゼルは次合う事があったら紫を〆ようと割と本気で決意を固めたとは紫には知る由もないことだった。
そして時は経ち、宴会の時間となると紅魔館の一行は博麗神社へと歩き出す。博麗神社が近くなると魔理沙や魔法の森に住む人形遣いと会ったり、その他にも様々な妖怪たちと出会う。
そして宴会は始まった。
博麗神社に集まった様々な妖精や妖怪、人間などが楽しそうに笑いながら宴会を楽しみ始めた。異変の主犯組であるスカーレット家はというと…。次女のフィーゼルは宴会の奉仕組である咲夜の手伝いをしたりなどをしていたが、レミリアはほかの参加者と一緒にお酒を飲んで楽しそうに話をしているようだった。そんな中1人つまらなそうにしている姿がポツンと1つ。フランドールだ。フランも初めのうちは少しお酒を飲んでいたのだが、全く酔えず、退屈していたのでぼーっとフィーゼルを見ていた。しかし何かを思いついたのか、小走りでフィーゼルのもとへ向かい声をかける。
フラン「ねえねえお姉様。お姉様も一緒に飲もうよ。おいしいよこれとか。」
フィー「そうですね…。分かりました。咲夜あとはお願いします。」
咲夜「分かりました。フィーゼルお嬢様こそわざわざお手伝いしていただきありがとうございます。
フィー「大丈夫ですよ。大変そうなら、また手伝いに行きますのでしばらくよろしくお願いしますね。」
咲夜「ありがとうございます。」
フィー「それで、どれがいいんですかフラン?私も少し飲んでみたいです。」
フィーゼルは家族思いで特にフランに対して甘いのでフランのお願いを割と何でも聞いてしまう傾向がある。
フラン「これこれ。お姉様も飲んでみて。」
フィー「はい。分かりました。」
ゴクッ
これがいけなかった。スカーレット家の父は酒に強かったが母は実はとても酒に弱い。レミリアとフランは父よりなので酒に強いがフィーゼルは母よりなのでとてつもなく酒に弱いのだ。
フラン「…?お姉様大丈夫?」
酒を飲んで以来どこか虚ろに空を見上げるフィーゼルを心配に思いフランが声をかけると、フィーゼルはフランを見つめ優しく微笑む。
フィー「フラン…。」
フラン「…///」
フランがその雰囲気に少し照れかけたその瞬間!
???「ハックション!」
近くの参加者が大きな声でくしゃみをしたようだった。
フィー「ひっ…!」
突然の大きな声に驚いたせいなのか先ほどまでの雰囲気は瞬く間に崩壊し急にフィーゼルはぐずりだす。
フィー「フラン。こんな何もできないお姉ちゃんでごめんなさい。でもこんなお姉ちゃんでもいらないとか思わないでくださいね?」
フラン「え?え?うん。そんなこと思うわけないよ。?…それよりも一回水を飲んだ方が良いと思うよお姉様。」
フランはフィーゼルの急な態度の変わりように若干困惑するが、姉の身を案じ水を進める。ここからがフィーの黒歴史となりうる最悪の失態の始まりだった。
フィー「大丈夫です。別に私は酔っているわけでは無くてフランに要らないと思われたくないだけなんです。なので水いりません。」
フラン「お姉様落ち着いて?ほら一回水飲んで?私要らないなんて絶対に思わないから。」
フィー「そんなこと言って要らないとか言われたら私泣きますからね?水を飲めばいいんですか?はい。」
フラン「それ水じゃなくてお酒だよお姉様!」
フィー「ふぇ!?…ヒック……なにいってぇるんですか?どうみたあってみずじゃああなあいですか。…ヒック。」
フラン「もう何言ってるの?それはお酒だよお姉様。」
フィー「こんなとうめいなんだからあ、みずですっで。もーうフランはおっちょこちょいですねぇ。…ヒック。」
フラン「もうお姉様ったらのみ過ぎだって!」
まだ二杯しか飲んでいないのだが余りの酔い用につい声が大きくなってしまうフラン。それに驚いたフィーゼルによって状況はさらに悪化してゆく。
フィー「う。ううぅぅうぅぅぅう~~~~~。そんなおこらないでくだしゃい。ふぇぇフラン~。みてみて?私は誰でしょう?フィ~ゼルでした~~~~!!ヒック…。にゃ~んちゃて…?」
フラン「いったん落ち着いてお姉様。」
フィー「んぅ?フラン?わざわざぁ…ヒック…ありあとうございまあう…ヒック。」
フラン「もう落ち着いた?とりあえず水を飲んでお姉様。」
フィー「わかいましたあ~。ところええ~、どうしてフアンがさんにんもいうんですか?」
フラン「………。」
これを聞いてフランは手に追いきれなくなってきていることを自覚し、とうとうレミリアに手伝いを求めた。既にフィーゼルの状況は情緒不安定を通り越してわけのわからないことになっている。ただ、こんな状況ではあるが、こうやってフィーゼルに甘えられるのも悪くはないとも思ってしまうフランであった。
フラン「レミリアお姉様-!ちょっと手伝って!」
フランがそう呼びかけるとレミリアがこちらへやってくる。そしてフィーゼルの状況を見て絶句する…。
レミ「ちょ…。フランあなた何をさせたの?こんなにも酔うまで飲ますなんて…。」
フラン「いや違うのレミリアお姉様。お姉様はお酒を二杯飲んだだけでこうなって…。」
レミ「そ、そんな訳ないでしょ?ま、まあその話は後とりあえず後でじっくり聞くことにするわ。今はとりあえずフィーを寝かせましょう。」
フラン「そうだね…。」
そういいながらフランはあたりをぐるりと見まわす。多くの人がこちらの様子を見て酒の話にしているのが気に食わなかったが、こうなったのも大元は自分のせいなので今はスルーした。フランが探しているのは霊夢だ、博麗神社の一室を借りようと思ったのだ。
フラン「あ、いた。霊夢!」
そう言ってフランは霊夢のもとへ駆け寄るが
霊夢「あら、フランじゃない?どうしたの?」
魔理沙「うぇ~い!フラン!お前も飲むんだぜ!」
その他「うぇ~い!」
こっちもこっちで霊夢以外はかなり出来上がっていた。とりあえず霊夢に事情を話し、一室を借りる許可を得たフランは急いで姉たちの元へ戻るのだが、2人の会話は一向に進んでいなかった。
レミ「ほら!フィー?一回向こうに移動しましょ?」
フィー「なにいってんでしゅかおねえさあ!…ヒック。わあしは…ヒック…まだまあ、のいたりましぇん!…ヒック。んぅ?フアーン、あなたもおっちにきえ…のみましぇんか?…ヒック。」
フィーゼルの顔はすでに真っ赤で、まともに立つことすらできない状態だ。
フラン「お姉様?部屋を借りたから飲むならそこで飲も?」
フィー「ヒック…わかいましゅた。どおですあ?あっち?そっい?っくしゅん。」
フィーゼルが自力で動けないことはすでに分かっているのでフランはレミリアと協力して運ぶ事にしたようだ。
フラン「レミリアお姉様は足持って!」
レミ「分かったわ。」
レミ&フラ「「せーっの!」」
この時の様子は意外とシュールで酒を片手に笑うものもいれば、心配をする者もいて様々であったが、ちょっかいをかけてくる者はおらず無事フィーゼルを部屋で横にさせることには成功した。横になってもしばらくは喋っていたのだが気が付けばフィーゼルは眠っていた。
フラン「ふ~~。疲れたあ~。」
レミ「まったく…。どうしてこんなことになったの?ちゃんと説明しなさいよ?」
レミリアにそう言われ事の顛末をしっかりと説明したのだがレミリアは何処か信じられないようだった。そこからもフランがレミリアの気に事についていくつか説明をしているうちに、
かなりの時間が経っていたようでレミリアは宴会の片づけのために呼ばれ会場に戻っていった。
そこからしばらくすると———
フィー「う…ん…?ここは…?」
フラン「あ、お姉様起きた?」
フィー「はい。どうしてここにいるのかは覚えていませんが、なぜこんなことになってしまっているかは、おおよそ予測が付きます。フラン。あの…迷惑をかけてしまいすみません。」
フラン「いや…別に迷惑ではなかったんだけど…もとはと言えば私がお酒を飲ましたのが悪いんだし…。それよりも…その…記憶がないみたいで良かったねお姉様…。」
フィー「え…?と、そんなにひどかったんです…?」
フラン「うん。」
フランの返答に少し恥ずかしそうに下を向くフィーゼル。そんな彼女を気遣うようにフランは慌ててフォローを入れる。
フラン「まあでもみんな酔ってたし、きっと忘れてるって。お姉様だけじゃないよ。」
フィー「そうだと…いいんですけれどね…。」
そう言ってフィーゼルはフランに自分はもう大丈夫だという事を伝えるためか優しく微笑むが、
フィーゼルのその薄く微笑む顔を見てフランはさらに顔を曇らせる。今までずっと一緒に過ごしてきたフランだからこそ知るその顔は明らかに無理をしているときの顔だ。
フラン「お姉様、体調の方は大丈夫?」
そう気遣わし気に声をかけるフラン。
フィー「そうですね…。えっと…少しだけですけど…頭痛と吐き気が…。」
これを聞いて、フランはいよいよ先程の考えを確信する。
何故ならいつもの普段通りの体調のフィーゼルであればこのような質問には、必ずと言っていいほど大丈夫という答えが返ってくるのだ。つまり、ここで体調の悪さをフィーゼルが進言するという事は少しなどではなく、かなり悪いのだろうということが容易に推測できる。
見ると顔色もだいぶ青ざめてきていてかなりきつそうだ。
そんなフィーゼルにフランが何か声をかけるよりも先にフィーゼルに声をかけられた。
フィー「フラン、すみません。少しお手洗いに行くのを手伝ってもらえませんか?私一人では少しつらくて…。」
フラン「うん。大丈夫だよお姉様。ほら、手を貸して。」
吸血鬼さながらの回復力で酔いは完全に冷めているようだがむしろ先のお酒のアルコールの影響とそれによる体調の副次的な悪さが重なっているのだろう。その体は小刻みに震え、その手は少し汗ばんでいるが、嫌になるほど冷たい汗だった。このことからもまだ快調ではないことが如実に表されている。
フラン「お姉様、大丈夫?」
もう何度目になるかわからないフランの姉への投げかけにフィーゼルは微笑みで返す。が、波は確実にフィーゼルを蝕んでいるようだ。
フィー「だい…じょうぶですよ。」
そうフランに伝えてはいるがその目尻には涙がたまっている。
フィー「うっ…!はぁ…はぁ…。フラン、すみません。すこし急いでもらえると助かります。」
少し進んだあたりでついにフィーゼルはフランにそう告げる。もう限界は近そうだった。
フィー「うぷ…。」
フィーゼルが手を口に当てた時、トイレはもう既に目前まで迫っていた。フィーゼルはそれを見つけると急いでその中へ駆け込んでいく。残された少女は不安げにトイレを見つめ、姉が出てくるまでそこで待ち続けたのだった。
フラン「もう大丈夫?」
フィー「はい。もう大丈夫ですよフラン。いろいろと迷惑をかけてしまってすみませんでした。」
体調を心配する妹の問いかけに答える少女の顔はまだどこか青い。
2人が戻った頃には宴会もかなり閑散とし始めており、残っているのは酔いつぶれた参加者とそれを介抱する者、主催者組に紅魔館のみんなであった。
レミ「もう平気そうかしら?」
フィー「はい。ここまで回復しましたので、もう大丈夫ですよ。咲夜、初めに言ったことを守れずにすみません。」
咲夜「とんでもありません。フィーゼルお嬢様こそしっかりご休養なさってください。」
レミ「そうね…。フィーは帰ったらしっかりと休みなさい。それと当分はアルコール禁止よ。分かったわね?」
フィー「はい、お姉様。お酒が飲めるようになるまではお酒は控えないとですね…。」
そう言い終えたフィーゼルの視界にどこかそわそわしているフランの姿が映った。
フィー「?どうしたんですかフラン?」
フラン「えっと…。今日はお酒を飲ませてごめんなさい。」
謝るフランの姿は本当に申し訳なさそうで、悲しそうだった。
フィー「気にすることはありません。私が飲めないのがいけないんですよ。それに私もいずれは飲んでいたと思うのでフランが気にすることはないと思います。」
フラン「でも…!」
レミ「大丈夫よフラン。フィーだってそんなに柔くはないわ。そこは信用してあげなさい。それに今は早く帰ることの方が先決でしょう?」
フラン「うん。分かった。でもお姉様、ほんとにごめんなさい。レミリアお姉様も手伝ってくれてありがとう。」
フィー「大丈夫ですよ。」
レミ「気にすることはないわ。」
こうして話は切り上げられ紅魔組は帰投したのだった。
この時のフィーゼルの覚えていない間の事を覚えているのは霊夢、レミリア、フラン、咲夜の四人だけであった
———第一章 終
かなり速いペースで進んではおりますが、今回の話いかがだったでしょうか?
酒が弱いのとは別に監禁されていたころの体が弱いという設定も一枚噛んできてはいるのですが、そんなに影響はしていません。
あと最近フィーゼルが泣き過ぎとか、そういう事を気にしてはいけないのです…。