デュラララ!! -神木仁の物語-   作:Red_Night

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第5話

 

 

 迎えにきた車に乗り込んだ仁、運転席には渡草、助手席には門田、その後ろに狩沢と遊馬崎が乗っていた。

 

「こんばんはです」

「おう、悪いな付き合わせて」

「何の、カズターノにはお世話になってますから」

 

 それで、何だってカズターノを探しているのかと聞けば。

 ここ数日見なかったのはただ仕事の都合上姿を見なかっただけ、それが先程「皿割れた」と言うメールが来たと言う。

 

 露西亜寿司で食事を取っていた門田達は、皿が割れたなら買えばいいのにと言いながらも、露西亜寿司から古い皿を貰い、ついでに寿司を持って行くのに、久々にカズターノに会わせようと仁を誘ったんだとか。

 

 車を走らせ、カズターノの住んでいる場所の近くで降りた仁達、訳ありの人間が住んで移送な薄汚いアパートへと入っていく。

 

「カズターノ、お寿司持って来たよ」

「おーい、露西亜寿司で古い皿貰って来たぞー」

 

 ドアの前で声をかけながら中に入ると、部屋の中にカズターノの姿は無く、荒らされた形跡があった。

 

「あの、さっき来たメール、皿が割れたんじゃなくて、攫われたの間違いじゃ……」

「あぁ……」

「どんぶりっスよ」

 

 遊馬崎が欠けたどんぶりを片手に門田に見せつけている、だから何だと言いたい。

 その時、カシャンと言う音に目を向けると、渡草が座り込んでいた。

 

「カズターノは人間狩りの連中に攫われたんだ、もう二度と見つからねえ……カズターノ無しで俺はこの先どうすりゃいいんだ! 一体何を支えに行きてきゃいいんだ!」

 

 大げさだな、と思いつつも、カズターノが渡草にとって魔法使いであることに変わりはない。

 それは、仁にとっても同じことだ。

 聖辺ルリのコンサート、その際全席を二人分取ってもらったことは今でも忘れられない。

 

「メールが来た時に攫われたなら、そう時間はたってない、連中がカズターノを納品する前に見つけ出して、取り戻すんだ」

「どうやってです? 充てがあるんですか?」

「僕、やつらの車を見たよ!」

 

 部屋の前に、浅黒肌の男の子が立っていた。

 男の子は車の車種、色を教えてくれた。

 

「ハシム!」

「きたー! 最強弟系お助け妖精キャラ!」

 

 こんな時でもブレないな、と仁は思いつつも、すぐにカズターノを探しに皆でアパート出た。

 アパートを出てすぐ、門田は誰かと電話していた。

 

「あぁ、連中がいつ、どこで商品を上に引き渡すかは分からない、だが一刻も早く助け出したいんだ」

 

 それからニ、三会話を続けると、電話を切った門田は渡草の愛車のバンの傍にいる浅黒肌の少年、ハシムに向き直った。

 

「ありがとな、ハシム」

「うん」

「寿司、食べられる?」

 

 狩沢が窓から寿司の入った袋を出していた。

 ハシムは嬉しそうに答え、頷いたが、少し不安な顔をしている。

 

「これ、わさび?」

 

 子供にわさびいり寿司はつらいだろうが、今すぐ変わりを用意することはできない。

 

「入ってるよー」

「大丈夫、露西亜のわさびはからくないから」

「嘘を教えちゃダメっすよー」

「まぁまぁ、そろそろ行かないと」

「そうだな、渡草」

「おう!」

 

 その後、仁達はカズターノを攫った黒いバンを必死に探した。

 思いつく限りの場所でカズターノの行方を捜したが、一向に見つからない。

 一度集合しても、皆浮かない顔をしている。

 

「思ったんですが、こっちからカズターノの携帯にかけてみてはどうです? 交渉できるかもしれないですよ」

 

 はっとした顔をした門田は、すぐさま携帯を取り出してカズターノに電話をかける。

 

「なんだ? お前」

 

 どうやら相手はカズターノではないらなしい、だが、カズターノを攫った相手でもなさそうだ。

 

「南池袋の大勝軒のななめ前だな? 分かった、すぐに行く」

 

 電話を切った門田だったが、最後に電話口からものすごい破壊音が聞こえたのが気になる。

 

「相手、誰だったんですか?」

「恐らくは折原臨也だろう」

「は? あいつが人間狩りをしてたんですか?」

「いや、どうやら道端で寝てる奴の携帯がなっていたから出たらしい」

「どうしたってそんな奴がカズターノの携帯を」

「さぁ~、理由はわかんないっすけど、とにかく居場所が分かったなら向かうっすよ~」

「だな、お前ら乗れ!」

 

 再び車に乗って南池袋を目指す。

 大勝軒のななめ前にはゴミ袋が積み上げられ、そこにピンク色のパーカーを着た若い男が眠っていた。

 脇にはカズターノの携帯らしきものがある。

 

「起きろ! おい起きろ!」

 

 渡草がパーカー男につかみかかって揺するが、男は起きる気配がない。

 その様子を見た遊馬崎と狩沢が懐から物騒な物を取り出す。

 

「そいつはよせ、永遠の眠りにつくだろうが」

「けど! 急がないとカズターノが!」

「そうっすよ! 納品されたら処理されちまいますよ!

「落ち着いてください、こいつが人間狩りの一味なら使い道があります」

「ん?」

「渡草さん、こいつ携帯もってますか?」

 

 パーカー男から離れた渡草が、仁に携帯を渡す。

 パカリと開いて着信履歴を見る、一番上にある番号へかける。

 

「何するつもりっすか?」

「こいつの仲間にカズターノの引き渡し場所を聞いてみます」

 

 数回のコールの後、電話が繋がる。

 

『はい』

「あぁ、俺、俺だけど」

『あ、金沢? 目ぇ覚めた?』

「わりぃ、今からそっち行くわ、てか、引き渡し場所どこだっけ」

『たく、しょうがねえな』

 

 引き渡し場所を聞いた後、すぐに向かうと返して電話を切ると、携帯はゴミ袋の群れへと投げ捨てた。

 

「んじゃ、行きますか」

「あぁ、その前に」

 

 奇妙な合掌を始めた門田達、目覚めた金沢と言う男に、渡草が渾身の右ストレートを放ち、男はまた眠りについた。

 

「はぁ、気が済んだぜ、行こう」

「えぇ、はい」

 

 さっきのは一体なんだと思いつつも、深くは知ろうとしない仁であった。

 引き渡し場所は高速道路の高架下、ハシムの情報通り、黒いバンが止まっていた。

 

「どうする? あいつら降りてるぜ」

「後ろにつけてください、俺が殺ります」

「程々にな」

 

 殺気十分、仁はやる気満々で拳を構えた。

 黒いバンの真後ろにぴったりとくっつき、仁は車から降りる。

 皆も降りたところで、黒いバンを囲んだ。

 

「カズターノ!」

「今助けるからな!」

 

 降りていた人間狩りの二人、太った男と優男が鉄パイプとナイフを構えた。

 

「そう簡単にいくかな」

「しゃらくせぇ!」

 

 そんな二人に、狩沢はどこか嬉し気に「レトロなセリフ」と笑い、遊馬崎は「しゃらってなんすか」とツッコミを入れていた。

 

「両腕ぐらいは貰っていくぞ」

 

 そして、拳を握りこみゴキリと音を鳴らし、仁が対峙する。

 そこへ馬の嘶きが響き渡る。

 

「セルティさん?」

 

 ふと視線を後ろへ向けると、50メートルぐらい後ろに黒いバイクが止まっていた。

 

「く、首無し!?」

「値引き覚悟で親父にしたのにっ!」

「もうしません! もうしません!」

「お願いします! 許してください!」

 

 二人の男は後ろに乗っていたカズターノの手錠を外して外へ放り出すと、そのまま車に乗って走り去っていく。

 

「あ、逃げた!」

「追うぞ!」

 

 急いで車に戻ると、ドアを閉める間もなく渡草が車を走らせ始めた。

 

「っぶね!」

 

 荒っぽくドアを閉めると、渡草はイキイキとしていた。

 

「逃げられると思うなよ! 右! まがりまーす!」

 

 ドリフトかと思えるぐらいの曲がりを見せるバン、窓の外を見ると、遠くにセルティがこちらを視線だけ追いかけ、そのまま逆方向へと向け走って行った。

 

 カーチェイスの後、なんとか人間狩りの男を捕まえた仁達は、逃げ遅れた太った男をバンのトランクへと押し込んだ。

 

「さ、商品をどこに納入してんのか、さっさと吐いたほうがいいぜ」

 

 凄む渡草だったが、太った男は腕を組み顔を下げ目を瞑って黙秘を貫いている。

 

「いやいやいや、拷問無しで吐かれちゃつまんないじゃいすかー」

 

 一緒に残っていた遊馬崎が楽し気にそう言い、数冊のラノベを取り出して太った男の前に置いた。

 

「ま、一冊選んでください」

「本の内容にちなんだ拷問にするから」

 

 撲殺天使ド○ロちゃん、どうやら本気らしい。

 流石の仁も肝を冷やす勢いだ。

 この二人の拷問は並外れている。

 渡草はしかめっ面をして二人を見上げると、苦言を呈した。

 

「おいお前ら、何でもいいがこの前みたいに車ん中でガソリン使う名よ?」

「ガソッ?!」

 

 黙秘を貫こうとしていた太った男も、ガソリンというワードには黙秘できなかったようだ。

 そうこうしているうちに、コンビニに行っていた門田とカズターノが戻ってきた。

 

「トグサーノ! 朝の儀式するね!」

「おう!」

 

 仁と遊馬崎、狩沢を残し降りた渡草は、朝日に向かって門田、トグサーノと並び1ℓの牛乳を一気飲みしていた。

 

 結局、太った男は遊馬崎と狩沢の持って居る拷問器具を見せられてあっさりと納品先の場所を喋ってくれた。

 

「矢霧製薬……ね」

「えらく立派なとこだな」

「ホントにここなんすかねえ? 人体実験してるの」

 

 矢霧製薬……確か紀田のクラスで入学初日から「学校来ない宣言」した奴の名前が矢霧誠二だったはずだ。

 そして、友達の張間美香を探す園原は、張間美香が懸想していた矢霧誠二と関わってから姿を消した。

 無関係ではない、そう思った仁だった。

 

 外側から見ると立派な製薬会社にしか見えないが、その中までは見えない。

 

「まぁ、それはいいとしてよ、どっかでメシでも食ってくか」

「そっすね~」

「露西亜寿司の朝定いくね!」

「うわーいいね、いこいこ!」

「よっし決まり! 仁、お前も来るだろ?」

「勿論ですよ」

 

 こうして、カズターノ誘拐未遂事件は終わった。

 だが、矢霧製薬と人体実験、そして人間狩りと言うキーワードは、ずっと仁の頭に残り続けるのであった。

 願わくば、友人たちが関わらないようにと願いながら。

 

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