デュラララ!! -神木仁の物語-   作:Red_Night

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第6話

 

 

 カズターノ救出から数日。

 仁は買い物帰りの袋をひっさげ公園で一休みしようとしたところ、バーテン服を着た男を見つけた。

 金髪にサングラスと見るからに近づきたくない印象を押し付けてくるこの男だが、名前は見た目に反している。

 平和島静雄、それがこの男の名前だ。

 

 それからもう一人、黒いライダースーツに猫耳型の黄色いフルフェイスメットを被った女性。

 セルティ・ストゥルルソン。

 声を出して話すことは一切せず、黒いPDAに文字を打ち込んで会話する。

 その正体は首無し騎士、デュラハンと呼ばれる存在だ。

 仁がセルティと知り合いとある問題を共に解決した時に、その正体を知ることとなった。

 

 そして、池袋でもやや人目につきやすい二人がそろって公園のベンチに座っているのだ。

 

「何してるんですか? お二人で」

「ん? おぉ、仁か」

『こんにちは仁君、いや? もうこんばんは、かな?』

「相変わらずセルティさんは礼儀正しいですよね、人間より人間らしいと言うか」

『それは褒めてるのか?』

「ですです、随分人間社会に馴染んでるなぁって思いますよ」

『そう言われるとなんだか嬉しい気分になるな』

「ところで、お二人は何か取り込み中ですか?」

『私は臨也から仕事が入って今は待っている途中だ』

「俺はたまたまここを通りかかってセルティを見つけただけだ、お前は?」

「買い出しです」

 

 片手に下げた袋を上げ、そういえばと袋からプリンを取り出す。

 

「よかったら食べます? 衝動買いしちゃって」

「いいのか?」

 

 プリンとスプーンを手渡し、仁はセルティの隣へと腰かける。

 

「それにしても、折原さんからの仕事なんてロクなもんじゃないでしょ」

『そうだな、この間は粟楠会への届け物だった』

「あのゴミ虫め、まだ生きていやがったか」

「ほんとですよ、いい加減くたばってくれないかなぁ」

『おいおい、そこまで言うのか』

「あの人のおかげで俺は静雄さんに殺されかかったんですけどね」

「そうだ、あのゴミ虫のおかげでこんないい奴を殺しちまうところだったんだ」

「「だからアイツは絶対にぶっ殺す」」

『そ、そうか……ただ、程々にな、人の往来もあるんだ』

 

 殺意を振りまいたせいか、周囲を歩いていた人達が驚いた顔をしながら早足で歩き去っていく。

 その後は暫くだらだらと話しながら過ごし、さて帰るかと立ち上がった時だった。

 目の前を駆け抜けていく一人の女の子。

 白いブラウスにスカート、首には目立つ傷痕があった。

 

「お前は……」

『っ!』

 

 突然セルティが立ち上がり、女の子を追いかけた。

 後を追うように仁と静雄が追いつくと、セルティが女の子の腕を掴み、女の子は叫んでいた。

 

「おい、ちょっと落ち着けって」

「お前、ひょっとして……」

 

 園原の手帳に張られていた写真を思い出そうとしていると、静雄がボールペンで刺されていた。

 ズボンを赤く染める静雄が痛がる素振りすらみせず、刺した犯人に向き直る。

 

「彼女を離せ」

「矢霧、誠二っ」

 

 誠二が起こした行動で呆然としまったセルティの隙を見て逃げ出す女の子、後を追おうと一歩踏み出し振り返ったセルティに、静雄さんが待ったをかける。

 

「あぁ、俺は大丈夫だから、痛くないし……なんだか分からないけど、おっかけなきゃやばいんでしょ? ははっ、一度言ってみたかったんだ! ここに俺に任せて先に行けってな」

 

 静雄の言葉に肯定で返したセルティが後を追う。

 仁もまた、静雄を一人残してセルティに続いた。

 

 セルティがバイクに乗ったのを見逃さず、すかさず後ろに乗る。

 

「気にしないで、追ってください」

 

 PDAを取り出さず頷いたセルティ、安全のためにと影でできた黒いヘルメットをかぶせられた仁は、気遣いのできる人だな、と思いつつセルティの腰に捕まった。

 

 後を追っていると、見知った後姿が女の子の手を引いて地下へと降りていくのが見えた。

 

「あれは……セルティさん、あの子を連れて行ったのが誰か、俺は知ってます、とりあえず静雄さんの所へ戻りましょう」

『分かった、すまない』

「いえ、事情は知ってますから」

 

 セルティの運転するバイクは音がしない。

 代わりに馬の嘶きが聞こえるのは、これがバイクではなく馬だからだ。

 最初に言われた時には理解できず、納得もしなかったが、目の前でバイクが馬になったら流石に信じるしかなかった。

 

 神木仁は何より自分の目で見た物を一番に信じるタイプの人間だからだ。

 だから、他人げ見聞きしたものを参考にすれど、鵜呑みにすることはない。

 

 静雄と合流しようと街中を歩いていると、絆創膏で血を止めようとしている静雄を見つけた。

 

「静雄さん、いくら痛くないからって絆創膏は雑ですよ、ちゃんと手当しときましょう」

「仁と、セルティか、あの女の子は追いかけなかったのか?」

『地下に逃げられた、バイクじゃ後を追えん』

「それに、あの女の子を連れて逃げた奴には覚えがあるんで、大丈夫です、セルティさん、明日学校が終わる時間に校門まで来てくれますか?」

『分かった』

 

 セルティはお詫びとして静雄の怪我を新羅に見させると言って連れていき、仁は一人でアパートへと帰った。

 

 


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