人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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日本が建ち上がった日に、この節目を迎えた叙事詩。

この物語を、いつまでも支えてくださったあなたに、この投稿を捧げます。

尽きぬ感謝と、万感の想いを胸に。

最早言葉は不要。ただ、どうかこの瞬間を味わっていただけたなら幸いです──


1000話~万感の想いの、ありがとう~
叙事詩を照らす、開闢の星


──此処は・・・?

 

総ての準備が整った楽園。いよいよその時刻を迎えんとしたその日。その瞬間を心待ちにしていたエアが立つその場所は、来た覚えの無い場所だった。大空に穏やかな草原。そして空に架かる虹にオーロラ。おおよそこの世のものとは思えない美しいその場所とは・・・

 

『此処は、マルドゥーク神の中枢部分。人類史の歩みと人の存在を学び、学習し続けている英雄神の心の内とも呼べる場所でございます。麗しき英雄姫、ギルガメシア様』

 

その柔かな声に振り返る。聞き覚えの、馴染みも深いその声音は決して間違えない。自分などよりもずっと王の傍らにあり、王を支え続けし献身の女史・・・

 

──シドゥリさん!フォウも!

 

(やぁエア!いよいよこの日を迎えられたね。本当に・・・本当に嬉しいよ!)

 

AIであり、マルドゥーク神に魂を幻霊の要領で定着させしシドゥリに、エアの永遠の朋友フォウが抱えられながら現れる。王を、ギルガメッシュという存在を誰よりも近くで見守りし生前の女傑に、フォウを受け止めた直ぐ様にエアは深々と頭を下げる。

 

「はははっ、そんなに畏まらなくてもいいんだよ。エア、此処に招いた者は、今回は君に用があるんだからね」

 

ふわりと現れし麗しい、緑なる王の友。唯一無二の天の鎖たる存在、エルキドゥもその集いに参ずる。かつてのウルク、あの時代にて時を過ごした、敬愛せしギルガメシュ叙事詩の主賓達の集いに否応なくエアの心結は高ぶり背筋が伸びる。

 

「想いを振り返るというならば、これは外せない。僕達という過去の記録であり影法師たるものでなく、今を生きる魂として彼に寄り添う君に・・・心からの想いを伝えたいと言う者からの、ね」

 

──それは・・・

 

『ふふっ。さぁ、王?生前にはいなかった姫君への所作と作法、お手並みをしかと拝見したく存じます』

 

シドゥリの呼び掛けに、困惑するエアの前に現れる者。エルキドゥが柔らかに呼び称す者など、彼を除いては有り得ない。

 

《全く気ぶりの輩どもめ。無礼や粗相が無いように、なぞ貴様らは我の両親か!今更我とエアの間に余計な格式など要らぬというに、全く・・・》

 

そう。常に自身を導き、護り、共に在り、王の威光と広き視点にて世の総てを垣間見せ、今の自分を形作る銘に、肉体と研鑽の場を含めた総てをもたらしてくれた、敬愛と感謝をいくら捧げても足りぬ英雄王。ギルガメッシュが今、生前の至宝と共に目の前に立っているのだ。マルドゥーク神の中枢ならばこそ出来る、互いの姿と存在を両立させるまさに神業に他ならぬ光景。今、どちらも自らの脚で立っているのだ。

 

──王・・・。いえ、ギル・・・皆様も揃って、これは一体・・・?

 

《なに、そう畏まるな。不敬も無礼もお前に限っては有り得まい。──まずは、何も言わずに受け取るがいい》

 

エアに歩み寄り、そのまま彼女に王は賜した。絢爛な宝石ではなく、煌めく財宝ではない。しかし紛れもなく彼が手掛けたもの。それは・・・

 

《我らの間に今更無粋な言葉は不要であり、お前の魂に華美な装飾など無用である。であるが故に、我があの日以来に手掛けた驚天動地の粗品である。慎ましく心苦しいが・・・お前に似合う冠など、手製でなくば拵えられまい》

 

──それは、王がエアの為に作り編み込んだ冠。『姫』として真に彼がエアを認め、自らが一つ一つ編み込んだ神業の華冠だった。エアの頭に、彼がシドゥリやエルキドゥと共に考案した相応しき華冠が咲き誇る。それは、王が自らの手で総てを計算した世界に二つと無い品。華の一つ一つに、彼女を表す言葉と祈りを込めた逸品である。

 

天真爛漫、アジアンタム。献身、アセビ。尊重と愛情、イチゴ。輝かしき日々、グロキシニア。尊敬にして信頼、ゼラニウム。謙虚の心、バイモ。純粋にして無垢、ユリ・・・その冠は、ギルが目の当たりにし、エアが獲得してきたものの全てが込められていた。華が宿す言葉と、冠としての形を崩さぬ完璧な造形は、まさにそれが一切の妥協が無い事を示している。

 

──こんな、こんな素晴らしいものを・・・ワタシに・・・?

 

《全くお前は手間のかかる。お前は何も欲しがらぬ故、市販の物品などを与えては我の沽券に関わる。こうして、贈り物を一つとっても全霊を賭さねばならん。あの女神の奔放と違い、心地の良い手間だがな》

 

王は柔らかく笑った。それはかつての生前に、友と補佐たる女史がいた頃の原初の笑みであり。友と女史が見たこともない慈しみの眼差しであった。今此処にいる王は、過去にも未来にも存在しない無二の王であるということの証に他ならない。

 

「僕からも、これを。君には、飾らずとも引き立てるものが似合うはずだから」

 

エルキドゥは、そっとエアにペンダントを託した。それはフォウと共同で作ったもの。小さいフォウに天の鎖が添えられた特注のもの。チェーン部分がエルキドゥの天の鎖で編まれた、触媒としても機能する至高の逸品に他ならない。

 

「かつて僕は、君にギルの無二の存在であってほしいと願ったね。この旅路を歩む中で、君は素晴らしい成長を行い、鮮やかに僕の願いを叶えてくれた。──ありがとう、無垢にして尊き姫君よ。かつての僕の過ちを、君はその在り方で祓ってくれた」

 

──そんな、エル!ワタシはただ、王に恥ずかしくないように懸命に生きて、愉悦を求めただけで・・・!あなたに感謝を、頭を下げられるような事は・・・!

 

『いいえ。王も、エルキドゥも、勿論私も。あなたの在り方には深く深く感銘し、感謝しています。王の傍に、かつていなかった姫君たる貴女がいらっしゃる。・・・私達は、誰もが祈り願った未来を貴女に見せていただいているのです』

 

そう。それは有り得ずとも、ウルクの民が、あの日に生きた人間全てが望み思い描いた未来。友と離別せず、何も失わず。愚かながらも絶対的な王として成長していたならば、と。その傍らに、友と支える祭祀長が在ったままに生を全うしたならば。そんな有り得ざるかつての王の姿。そして今ある王の姿。それを結びつけた当代の至宝にして『姫』たるエア。──シドゥリは告げる。

 

『貴女を傍らに寄り添わせし王、それは全ての民がそう在ると信じて疑わず、分かたれた友との別れにて不死に囚われる事の無かったもしもの王。暴虐なれど愉快にして痛快。誰よりも笑い謳う・・・ウルクの思い描いた、愉快にして御機嫌なる王。我等が在りし日に思い描いた、理想の王の具現だと。私は考えています』

 

友を失い、不死の旅にて国を滅ぼし、そして建て直した王とはまた違う王の在り方。喪うことなく友と笑い、生き、そして笑顔を絶やさず国を繁栄させ輝く、完全無欠の王。そんな、民達の微笑ましき夢物語の王が、エアがもたらした御機嫌なる王の姿だと。

 

『ありがとう、英雄姫。誰もが願わずにいられなかった王の姿を目の当たりにさせていただいて。貴女がいてくれたからこそ、人類の危機に全霊で挑む王の勇姿をこの目に焼き付ける事が出来たのです。私は、我等は。あなたへの感謝を永遠に忘れません』

 

──そんな、そんな・・・そこまで、言ってくださるなんて。シドゥリさんの献身に比べたら、エルの紡いだ友情に比べたら。ワタシが王に捧げたものなんて、とても・・・

 

《──たわけ。比べずとも良い。比べずともよいのだ、エアよ。友との友情、祭祀長の補佐。そして、お前の尊重と敬愛。等しく我が唯一無二の価値を誇る宝だ。比べる間もなく我が懐きし至高の財だ》

 

そう告げ、王はエアを抱き寄せた。かつておらず、そして今はこうして此処に在る、至宝たる彼女を。

 

《一度しか言わぬ。その魂に刻むが良い。──お前こそ、この叙事詩にて我の傍らに相応しき至尊の姫である》

 

──!

 

《故に──お前の旅は我の旅だ。お前が世に愉悦を見出だす限り。我はお前と共に在る。未来永劫、時の果てまでな。なればこそ、お前は我の至宝である》

 

その言葉は、エアの価値とエアの存在を、永遠に傍に置くに相応しいとする王の決定であった。それほどまでに、エアと共に過ごした日々は、生前の日々と同じように──

 

《片時も我の傍を離れなかった敬愛の姫よ。これより先も我等は未来へ進むのだ。共に愉しみ、共に立ち向かい、共に駆け抜けながらな。その生き様を以て、我の胸を躍らせよ。良いな、──英雄姫、エア=レメゲトン》

 

──はいっ・・・はいっ!誓います・・・!ずっと、ずっと一緒です!王、皆・・・!ずっと・・・っ!

 

王の裁定を、涙を流し受け入れるエア。──その優しく強い決定を、彼女は静かに受け入れた。

 

王道は、これより先も続いていく。かけがえのない、至尊の旅路として──。

 




──ぐすっ、ぐすっ・・・ひっく・・・

エルキドゥ「ほらほら、泣き止んで?写真撮るから、姫様が泣いてちゃいけないよ?」

──すみません・・・エル・・・でも、こんな暖かい御祝いに涙しないのは、ワタシには無理です・・・

シドゥリ『配置はどうしましょう?横並びでよろしいでしょうか?』

ギル《今一インパクトに欠けよう。やはり此処は姫様抱っこしかあるまい!》

フォウ(意義なし!)

エルキドゥ「よーし!(ひょい)」

シドゥリ『なんと!エルキドゥ、積極的な・・・』

ギル《・・・・・・》←抱っこされた

エルキドゥ「(o^-^o)」←抱っこした

──これはギルガメシュ叙事詩の関係性の再現ッ!割りと原典で王は泣き虫!

フォウ(シドゥリ!シャッターだ!)

シドゥリ「はいっ!」

《撮らんで良い!えぇい離せ、変わらぬな貴様は!》

「だって僕達メソポタミア最強夫婦じゃん?」

──確かに・・・!

その後、結局ワンペアずつ撮る事になり、全員が全員でペアを組んだ後、全員で撮ることとなった。

三人の中に、輝く白金の姫も加わる此処のみの写真。この叙事詩が産み出した無二の輝きとして、1000話の祝辞が取り為される。

エルキドゥ「撮るよー。はい、笑って~!」

シドゥリ『はい、一+一は?』

──に~っ!

《ふははは!今になって小学生の問いなど片腹痛いわ!!》

・・・この旅路はこれからも続く。この瞬間も、懐かしむ日がきっと来るのだろう。

それでも、此処に至るまで支えてくださった『あなた』に、この物語を捧げよう。終わる日まで、駆け抜け続けよう。

叙事詩を読み解き、読み進めるあなたに。

──この物語の、欠かすことの出来ない存在である。他ならないあなたに。

・・・──尊き姫を生んでくださった、人の美徳の体現者たる、あなたに──

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