人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
「いやいや、ロムルスを倒すとは・・・」
宮廷の奥から現れし、緑色の服に身を包んだ男。右手には、黄金の杯
「ようやく現れたか節穴。宮廷魔術師を名乗る分際で王の危急を見過ごすとは。節穴の上に愚鈍、無能とはつくづく使えん駒よ。だから貴様は節穴なのだ」
「黙れ使い魔風情が。正しい英雄のつもりか?マスターがいなければまともな現界も叶わぬ儚い存在の分際で」
「器はどうあれ、顕れし魂は紛れもなく我のモノよ」
――!
「王とやらの使い魔の貴様がほざいたところで虚勢にしか聞こえぬわ。貴様には魂どころか自由意思すらあるまい。当ててやろうか?貴様は先の特異点の責を問われねぐらを追い出され後始末を押し付けられた。我が財を掠めとり、他の英雄どもに渡し、滅びを促進させる腹積もりであったのだろう。――だが」
――そう。ロムルスは、ローマと世界の滅びを望まなかった。だから
「貴様が出向かなければならなかったと言うわけか・・・!」
『ははっ、お笑い草だぞレフ教授!この時代、君のような人類の裏切り者は一人もいなかったわけだ!』
「ふはは、笑ってやるなロマン!ヤツも必死だったのだ!懸命に使命に取り組んだ節穴を笑っては可哀想であろう!我は見ていたがな!ふははははははははは!!」
「――ほざけカスども!!貴様らなんぞに期待などはしていない!!」
「激したか。人は図星を突かれると激昂するというが事実であったか!使い魔、尻拭い、宮廷魔術師、特異点制作!何一つ成し遂げられない貴様が一丁前に激するか!その無能、節穴ぶり!最高だ!貴様はこれ以上ない道化よなァ!!く――はははははははははははははは!!!」
「サーヴァント風情がァ・・・――!!」
憤怒に顔を歪ませるレフ・ライノール。――弁舌で、器に勝てると思わぬ事だ
「聖杯を渡して!レフ・ライノール!!」
マスターが叫ぶ
「一丁前な口を効くようになったな、カスマスター。高々英雄王なんて上等なオモチャを手に入れたくらいで調子に乗るなよ!」
「私は、あのときとは違う!ギルにおんぶにだっこな私じゃない!」
「あぁ、君は成長した!無駄にあがけば無駄に苦しむ事に気付かないその愚かさが成長したとも!!」
「そのマスターに目論見を潰されたのが貴様だ!マスターが滓ならば貴様は滓以下、塵屑にも劣る人間以下の微生物よ!いや、微生物に礼を失したか?そも――人に使役されなければなにもできん術式の分際で頭が高いわ!!」
「――ッッッ、貴様――!!!」
――的確に器が冷静さを奪っていく。財の選別を行っていく
「ならば見せてやろう!我が姿!我が王の寵愛!貴様らを滅ぼす尊き姿を――!!」
『レフ』
――そのとき、静かに
「――あぁ、いたのか、オルガ」
オルガマリーが、ゆっくりと口を開いた
『――ギル』
「許す。思うがままを告げるがよい」
頷くオルガマリー
『――あなたは、人類を裏切っていたのね。それは、いつから?』
「いつから、だと?2000年も前に決まっているだろう!貴様ら人類は無意味に、無価値にすぎた!これ以上付き合いきれんと見限ったにすぎない!!」
『そう――なのね。なら――』
オルガマリーが、確かめるように口を開く
『何故、私を助けてくれたの?慌てて、狼狽えるだけだった私を』
「オルガマリー・・・」
「所長・・・」
「――なぜか、だって?ははっ!決まっているだろう!」
『・・・』
「お前が!最高に愉快な見世物だったからだよ!少し優しくしてやれば救いを得たかと言わんばかりに陶酔の眼差しで見上げてきたお前が!堪らなく愉快だったからだ!!」
「あいつ・・・!!」
「待て、マスター」
「ギル・・・!」
「レフ、レフと尻尾を振りながら私を頼るお前は最高に滑稽だった!プライドとコンプレックスに悶え苦しみ、潰れていくお前は最高の見世物だった!!そのお前の顛末を見るために!煩しいお前の嘆願を、願いを!吐き気をこらえながら聞いていてやっていたんだよ!!オルガマリー!!」
――――・・・・・・・・・・・・・・・
「お前は私の玩具!!私の人形!私がなくば、まともに動けない出来の悪い無能なのさ!!すがってみるかい?レフ!助けてレフ!いつでも私を助けてくれたじゃない!ってね!!助けてやるとも!今度は確実に裏切り、殺してやるがね!!はははははははははははははははははははははははははははは!!!」
「・・・――」
『・・・ごめんなさい』
「・・・――は?」
口汚い罵倒への返礼は、――謝罪だった
『私の稚拙な依存が、貴方を困らせていた』
「――・・・」
『私の自分勝手な期待が、貴方を辟易させていた』
『所長・・・』
『・・・ごめんなさい、レフ。そして――ありがとう』
「――なん、だと?」
『それが、欺きであったとしても。偽りの優しさであったとしても・・・私は、その優しさに、助けられていたから』
オルガマリーが、感謝を紡ぐ
『ありがとう。レフ・ライノール。貴方は、私の恩師です。――たとえ貴方が、どのような存在だったとしても』
「――なんだ、それは」
震え出すレフ・ライノール
「なんだそれは、なんだそれは、なんだそれは!!貴様は違う!貴様は私の知るオルガマリーではない!!」
『――・・・』
「見るな!そんな目で、そんな目で私を見るな!!人間が、人間風情が――我らを『憐れむ』な!!」
「節穴め。貴様が知る、だと?当然であろう。そんなオルガマリーはもうおらぬわ」
――そうだとも。ここにいるのは
「――ここにいるのは。我が認め、我が守護する
『――はい。リッカも、マシュも。ロマニも、ギルも。皆・・・』
「――黙れ!!!良いだろう!!ならば、貴様らを、力でねじ伏せる!!」
聖杯を飲みくらい、レフの姿が醜悪に変化していく
『これは!?神とも幻獣とも違う、――これは『魔神』の反応か!?』
「魔神!?」
「フ、ハハハ、ハハハハハハハハハハハハ!!!」
顕れしは、肉の柱。大量の眼球をくくりつけたおぞましき肉の塊――!
「キモッ!!!!」
「醜い!!この世のどんなものより醜いぞ貴様!!」
「それはそうだろう!!この醜さが貴様らを滅ぼすのだ!我が名はフラウロス!レフ・ライノール・フラウロス!!72柱の一柱!!!」
『72柱の・・・それは、まさか!そんな筈は――!!』
「フォウ、キャウ!(醜悪だ。これは書かなくていいや)」
「貴様らの未来を、焼却せし御柱よ!!焼け、死ね!無駄な動きをするな!!」
蠢く肉柱。こちらを敵と定め襲いくる!!
「――もう、良いのか。オルガマリー」
『――はい。どうしても・・・お礼を言いたかったから』
「そうか。――別れを済ませたならば。後は我の仕事だ」
黄金の波紋から、右手に黄金の乖離剣をつかみ取る!
「貴様の成果を見せよ、オルガマリー!貴様の運命を弄びし肉塊に、お前の真価を見せるときだ!!」
『はいっ!!英雄王、私に勇気を!!――聖杯、カルデアスに直結!シバ、トリスメギストス、疑似掌握!!』
高まる魔力、高まる気迫!
――ここに、アニムスフィアの極致が顕現する――!!
『固有結界、指定投射!!顕れて、私の心象!!』
其は、魔術の最奥――世界を書き換えし大魔術――!!
『――『
――辺りには、吹雪が巻き起こっていた
「これが・・・!?」
空は果てしなき暗雲。大地は草ひとつない不毛の大地
乾ききった大気、果てしなく続く空寒いがらんどうな空間
「所長の、心象・・・?」
『・・・』
「ふ、はははははははははははははは!!なんだこれは!?これはなんだ!?こんな寂れた景色がお前の風景だと!?これが貴様の固有結界だというのか!?」
『――・・・』
「魔術の最奥にたどり着いたと驚いてみればとんだ肩透かしだ!!目をかけていたが、本当に私は節穴だったようだな!!オルガマリー!!」
「――・・・」
――・・・
「英雄王!貴様も節穴という点では私と同じ!!聖杯などという奇跡をそんな小娘にくれてやるとは!!無意味!無意義!!無能の極み!!」
――――黙れ
「万能の願望機を、そんなゴミを救い取るために使うとは!!何が英雄王か、何が最古の英雄か!!貴様は全く」
――黙れ!!!!!
展開される砲門、1000門!放たれし財がフラウロスなる柱を徹底的に打ちのめしていく!
「ぐぉおぉおおぉおぉおぉおぉおぉおぉお!!!!!!????」
それ以上の侮辱は許さない。それ以上の狼藉は看過しない。それ以上の不敬は容認しない
「ギル!!」
「――大儀であった。オルガマリー。よくぞ固有結界をモノにした」
『ギル・・・』
「後は、我の仕事だ――よく見ておけ。我の真価を。お前たちを治めし、真なる王の姿をな」
――オルガマリーの頑張りを、誰にも無価値とは言わせない!何より、何よりも――
「待たせたな、節穴。その汚物に劣る魂、もはや見るに堪えぬ――!!」
――――この器を――英雄王ギルガメッシュを侮辱することだけは――
「その醜悪な姿を晒した不敬!その醜悪な口で我が財を汚した罪過!!――その存在そのものが!万死絶刑に値する――!!!」
魂に懸けて、赦さない――!!!
「猛れ『エア』よ!死力を尽くし、価値を示した少女の献身に、今こそ応える刻だ――!!」
唸りを上げて風を巻き込むエア!三つの石臼が限界を遥かに越えて取り込まれた暴風は、空間を切断する程の凄まじき暴圧となりて悲鳴をあげる!
「――!!!???」
「その肉塊、その魂総てを以て、原初の地獄を識るがいい――!!!『
巻き起こる空間断層!三層がぶつかりあい犇めきあい重なりあい――真紅の刄となりて!!
「『
――世界を含めた森羅万象を、切り裂き吹き飛ばし原初の地獄へと叩き込む――!!
「先輩っ!!!」
「マシュ!!」
「ガ――――ァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァア――!!!!????」
荒れ狂う時空断層の余波はフラウロス『ごとき』を巻き込むだけでは飽きたる道理もなく
暗雲を天空ごと切り裂き
乾いた大地を残さず砕き割り
寂れた大気を真空に昇華し
その総てを――フラウロスごと虚無の果てへと消し飛ばす――!!
――原初の地球、生命の存在を赦さなかった原初の地獄
それを砕き割り、星を回した力の具現
――
無銘の剣が真価を発揮せしときにつけられる真名
それが――無限の財を所持せし王が持つ、絶対究極の一
世界すら切り裂く、英雄王最強の。『人類最古の地獄』であるのだ――
――やがて、切り裂かれし心象は朽ち果て
オルガマリーの、新たな心象が姿を見せる――
「わぁあぁ――!!」
感嘆に声を漏らすマスター
「ここは・・・!」
そこは、山頂の天文台。吹雪は止み、雲一つない蒼空に、真紅の星と太陽が煌めく
そして――
「空に、華が咲いてる――!」
大きく花弁を咲かせる、白き華が、カルデアを飾るように咲き誇る――
「フッ、随分と熱の入った景色ではないか。由来はあるのか?オルガマリー」
『・・・カルデアはその地形上から、吹雪が常に吹いています。ですが一年に数度、吹雪が止んで、こういった景色が見れるんです』
「マシュマシュ!すごいすごい!ずっと向こうまで空と山が続いてるー!」
「――・・・ぁ、あ・・・綺麗・・・」
『・・・私が初めて、カルデアに来たときに見た景色がこれなんです。・・・それが、ずっと心に残っていて』
「――そうか。――悪くない心象だ。此を切らずに済んで助かったな、オルガマリー?」
『はい。――これは、いつか』
『・・・所長』
『ええ、ロマニ。これは、かつて私が見た景色。そして――私が、また皆で見たい景色』
――人理を、救った後に。見上げるソラ・・・か
(・・・この景色を、初めて見せてくれたのはレフだった)
目を閉じるオルガマリー
(・・・ありがとう、レフ。煩わしいと思っていたとしても、私は貴方に救われたから)
そっと、訣別をつげる
(貴方に頼るのは、もうおしまい。私は皆と、歩み、進んでいく。所長として、オルガマリー・アニムスフィアとして)
『――だから。さようなら・・・レフに、依存していた私』
――輝く星と、咲き誇る華
――オルガマリーの幼年期が、今この瞬間より、終わりを告げたのだ――
ランクE・EX 種別対界補助宝具 最大捕捉 カルデアに所属している人員にて変動
オルガマリーが習得した大魔術・。カルデアスの機能とオルガマリーの聖杯を使用して心象を観測、投射して発動させる固有結界
二重構造となっており、コンプレックスとプライドに塗り固められていた生前の心象、奇跡により生まれ変わった心象の二つが展開される
始めに展開されるのは生前の心象。吹雪が吹き荒れ、なにも存在しない暗雲広がる不毛の大地
敵のステータスを三ランクダウンさせ、敵味方問わないスリップダメージ。何らかの要因でこの心象が『切り裂かれた』場合。世界の廃棄物が切り裂いた攻撃のブーストとなり威力を補助上昇させる。こちらはEランクとなる
切り裂かれた後に展開されるのは、晴れ渡る山頂の天文台。太陽と真紅の星、カルデアに咲く大輪の華が顕れる世界になる
『カルデアに所属しているマスター・サーヴァント』の体力と魔力を全回復させ、一ターンごとに自動回復を付与する。令呪が使用されていた場合は即座に補填され、サーヴァントはステータスが二ランクアップする
オルガマリーの『所長として皆を引っ張る』という覚悟と『初めてカルデアに来たときに見た景色』が融合されたカルデア戦力絶対援護空間
強力無比な効果であるが、原則としてカルデアの電力と聖杯が無ければ起動できず、カルデアの召喚システムで召喚された英霊にしか作用しない弱点がある
大前提として、Eランクの心象を切り裂かれねばこちら側の心象は発動しないため、対界宝具を持つサーヴァントがいなければ、原則としてこの固有結界はEランクである
カルデアのサーヴァントの数に効力が左右されてしまうので『確定数値測定が叶わない』という点と、対界宝具を持つサーヴァントなどほぼ存在しないという点から『使いにくさが極まっている』という点で、規格外のEX評価が下されている