『桃源郷徳利』『神便鬼毒徳利』
酒呑「温羅はんに借りた準備はこれでよし。後はリッカはんがどれだけやれるかやけど・・・」
(なーんも心配しとらんよ。茨木のこと、ほんによろしゅう──)
温羅「──聞いてくれ。恐らくババァの狙いは──」
ロマン『──それは、つまり・・・』
「あぁ。おそらく今の騒ぎは氷山の一角だ。多分だが──」
ギル「成る程。それは確かに愉快な催しとなろう。楽園が挑むに相応しき難題だ」
温羅「あぁ、だから、その為に──」
~
モモ「鋼牙さま!縁壱さま!」
ザルバ【どうだモモちゃん!やれそうか!】
モモ「はい!後は日ノ本の神威を操るリッちゃんがなんとかできれば・・・!」
縁壱「大丈夫。彼女の神楽なら、きっと出来る。彼女は──私の生きた証だ」
鋼牙「そうか。──なら、俺達も負けてはいられないな」
モモ「はい!後一息、頑張りましょう!」
【【【【【◼️◼️◼️◼️!!!】】】】】
ザルバ【鋼牙!一気に蹴散らせ!】
鋼牙「ああ。行くぞ、お前達!」
縁壱「──『日の呼吸』」
モモ「はい!イヌヌワン、フワイサム、アンク!──皆、参りましょう!!」
【オォオ・・・ォオォアァアァァアッ!!!】
茨木童子が荒ぶり猛る。身を蝕む呪いを捩じ伏せる為に、鬼としての自身の力を最大限に解放しているのだ。しかしそれは燃え尽きる寸前の蝋燭。その輝きは決して長くは保たない。──その身から、呪いを引き剥がす必要がある。
『往くよ、皆!『天照神楽』──!』
秘策があるとの酒呑の言葉を信じ、将門公の勾玉を首に掛け、神々に捧げる舞を行うリッカ。日輪の化身より賜った神楽を、二つの刀を構え迅雷の如くに一歩を踏み出す──!
【ガァアァアァアァアアァア──!!】
『おぉおぉおぁあぁっ!!!』
ぶつかり合う邪気と覇気。紅蓮の龍と紫電の雷、怨嗟の焔が山頂にてぶつかり合う。サーヴァントの汚染の危機を案じ、一人で挑むは両親を殺した以来の事だ。神楽にて紡がれる攻撃の数々が、茨木を取り巻く呪詛を神威により刈り取っていく。
「ほぉれ、とびきりのうらみつらみをたんと喰らいや。それを寝かして、蕩かして。浴びるくらいのお酒を造らんとねぇ」
ウラから預かった秘宝の徳利を置き。そして自身が持つ徳利に呪詛と怨嗟を取り込んでいく。酒呑の徳利は呪詛を吸い込み、極上の酒に変換できる。リッカに叩き斬られ、霧散した茨木の呪詛は極上の素材でもある。神威に溢れたリッカでなければ、位の斬撃でなくば呪詛は斬れぬ。どうしても、リッカの獅子奮迅が必要であるのだ。期待と輝きに胸躍らせ、酒呑はリッカと茨木の大立ち回りを静かに見守る。
両脇に浮かんだ腕と、茨木の攻撃を刀で受け止め、槍でいなし、弓で射抜く。受け止めたなら蹴り飛ばし、いなしたならば刀で斬り、射抜いたならば間合いに踏み込む。無限に等しき無形の神楽が、茨木の攻撃を完全に封殺して退けている。
【グゥウ、ぐ・・・ォ、ぉ・・・!!】
斬られる度に、怨嗟を焼き尽くす火炎と雷が迸る。茨木ではなく、巣食った呪詛をひたすらに斬り刻み、救うための刃を振るい続ける。人を活かす為の刃で鬼を救う。そんな酔狂にリッカは挑み続ける。疲れを知らず、心胆萎えぬ限り続く神楽の舞に、茨木・・・否、操る呪詛は斬られ続ける。
【グ、ァァアァア──!!】
『ッ!?』
瞬間、一際高い絶叫と共に茨木より呪詛が這い出、空へと立ち上った。辺りを埋め尽くすそれは、見上げる呪詛の鬼の形を取りリッカを虚ろな瞳で見据え、恐ろしき腕の一撃で潰さんと迫り来る。
『させるかぁッ!!』
リッカの身体が呼応するように輝き、煌めきの龍達が巨大な鬼と拮抗し相争う。泥が昇華された純粋無垢な無色の魔力が、リッカの願いと心に呼応し力となる。光の龍が闇の鬼を喰らう度に、呪詛は徳利に吸い込まれていく。彼女の手勢は衰えず、止まらず、茨木の呪詛を斬り祓い消し飛ばしていく。
『絶対に助ける!絶対に──!!』
【──ッ・・・なん、なのだ。なんなのだ貴様は・・・!】
その微塵も揺らがぬ勇往邁進、勇猛果敢の化身に、呪詛に蝕まれた茨木は自己を更に刺激される。其処に介在した意志は、人間に圧倒される屈辱でも恐怖でも無い。ただ、その恐ろしい迄の一気貫徹の意志の不屈さへの疑問と懐疑だ。
【何故だ、何故そこまでする!鬼だ、吾は鬼だ!貴様ら人間を襲い、喰らい──】
『知ってるよ!!』
天照神楽・頼の型。雷光抜刀。目にも止まらぬ居合いの一閃が、茨木の問い掛けごと呪詛を切り裂いた。
【吾は貴様など知らぬ!関わりも浅い!命を懸ける謂れなど無い!】
『理由が無きゃ、助けちゃいけないなんて道理は無い!』
天照神楽・狂乱月弓。射ち放つ弓矢が、茨木にのし掛かる呪詛を厳かに貫く。
【縁も縁も薄いのだ!其処までするなど、吾にその様な価値が有るというのか!?】
『価値の無いものなんて、私達の紡いだ歴史には無い!』
天照神楽・混沌武槍。龍を使役する槍の一閃が、爪となりて呪詛を薙ぎ払う。
【何故だ、何故だ・・・!理解できぬ、解らぬ、納得できぬ!吾に何故其処までする!!貴様ら人間は、理屈や道理が無くては──!】
『誰かを助ける!理屈や道理なんてその後でいい!!』
皮肉にも、茨木の悪意に蝕まれた霊基は加速度的にバランスを取り戻していた。自身に向けられた感情と使命感が、ひたすらに激烈であるが故に。己に突き付けられた実直な想いへの疑問と困惑が、狂おしい情熱となりて茨木の魂を揺さぶっている。それは、今を生きる人間がもたらす熱さと激しさ。そして、鬼が本来向けられる事なき『誠実』であるが故に茨木に尽きぬ疑問を与えているのだ。
『強いて言うなら──あなたは、私の大切な人の隣人だもん!』
【何・・・!?】
『私は人類史・・・この世界の総てに助けられた!私は、この世界の全てに支えられてきた!私にとって、この世界の全部が大好きなもの!勿論あなただって!茨木童子・・・あなたは酒呑童子の相棒でしょ!』
刀を構え、リッカは告げる。酒呑童子と共に暴れ、歴史に名を遺した恐ろしき鬼、茨木童子。酒呑童子には、かつて鬼の在り方と自由な生き方を教わった。酒呑童子は、自身に沢山のものを残してくれた。
金時や、頼光四天王と激闘を繰り広げた茨木童子。その存在だって、歴史に名を馳せた存在の一つ。自分は知らなくても、『あなたの事が好きな人が必ずいる』。なら、それだけで命を懸ける理由には充分とリッカは吼える。
『あなただって、人類の歴史の大事な一部!別の世界の誰かに使い捨てられていい筈無い!酒呑だって、金時兄ぃだって!あなたが苦しいままなんて嫌に決まってる!』
【貴様──】
『だから助ける!絶対に助ける!あなただって、私を救ってくれた世界の一部だから!!』
【──ッ、グ、ぉおオォオぉ!!ならば、ならば・・・!!】
ならば──応えねば。猛る龍がごとき人ならば、吼え荒ぶる人ならば。醜態を晒す無様などをいつまでも披露などしていられない。自身は、呪詛の怪物などではない。自分は、自身の名は──!
【ならば──立ちはだかってくれる!!受け止めて見るが良い、この『茨木童子』の全身全霊!!】
瞬間──業火が猛り、燃え盛る焔となりて拳を造る。それは呪詛ではない。真紅に滾る茨木の魂の具現。取り戻した矜持にして、切り落とされし自らの宝具となりし右腕──
【受けよ藤丸龍華!!『羅生門大怨起』ィイィイ──!!!!】
『───天照神楽・終極の型・・・!!』
迫る巨大な右腕を前に、リッカは雷位を開帳し呼吸を最大限に集中させる。紅蓮の炎、煌く光、走る迅雷。総てを束ね、一息に走り抜ける。其は、日の呼吸にて舞う神楽の終にして極の一閃──
『
迫り来る右腕に、龍吼村正の真紅の一撃が叩き込まれる。呪詛を纏めて吐き出したソレを、真っ正面から叩き斬り霧散させた。そして──茨木に振るわれるは、リッカが母より賜った極の一刀。雲曜を懸ける神雷が、神に奉じられ銘を変えたが故の名。幕を下ろせし神楽の終を飾りし業の銘──
『
【───ッ、ア──】
雷がごとき速さにて、呪詛を一刀両断に切り離されし茨木童子。完全に動きを止めるその刹那。
【──そうか・・・汝を支えていたのは──】
その姿。闇を斬り裂き光を放つその姿に、確かに寄り添う母の姿と──
【──敗れる、筈だ──】
──太陽がごとき、人の祈りの強さを見た。
酒呑「お見事お見事~!ほな、充分溜まったさかい、御祓と行こかー」
溜まりに溜まった自らの徳利の美酒を、ウラから受け取った徳利に移し、厳かに立ち上がり傾ける。
「黄泉返りの時間やね。そぉれ──」
満たした酒が床に落ちた瞬間、辺りを満たす清らかな空間が澄み渡る。そしてリッカと茨木、酒呑童子を御祓の場所へと招く。清廉潔白な空間への入り口となりし酒を鋳造せし、温羅の持つ徳利の宝具。その名こそ──
「『山紫水明・明鏡止水』──」
リッカと共に、茨木は鏡のごとき酒に呑み込まれ──
~
茨木童子「──ぷはっ!!」
温羅「お、来たか。良かった良かった、上手く行ったな!」
叩き込まれしは清廉なる湖。各所から支給されたあらゆる浄化手段を合わせた場所に茨木が叩き込まれる。──瞬間、彼女を包んだ呪詛は消え去った。跡形もなく霧散したのだ。
茨木「う、温羅か汝は!?此処は、一体・・・!」
温羅「此処は桃源郷。人の善意と優しさに満ちた地だ。入ってるのは神桃の湖。神威に満ちた、御祓の湖だ」
酒呑「この酒で招けて、浄化したんよ。さんざん迷惑かけて、困った子やね茨木は」
茨木「酒呑!」
リッカ「もう、大丈夫っぽそうだね!良かったぁ・・・」
邪気は去った。茨木の霊基は問題なく取り戻されたようだ。一同は、ほっと胸を撫で下ろす──
温羅「──企みは御破算だ。出てきたらどうだ、ババァ」
リッカ「えっ・・・!?」
【──ヒヒ、気付いていたかい。だが、そうするしか無かったのはもどかしかったろう。お前がそちらにつかなければ、一手遅れる事も無かったろうにねぇ】
響く声。見上げる一同。そこに浮かぶは、みすぼらしき一人の老婆。
【不老の象徴、桃源郷の神桃・・・ようやく見つけたよ。そんな下らぬ鬼の一匹に、御苦労だったねぇ・・・】
手にし、口にせしは──不老にして、若返りの桃。
リッカ『何を──!!』
温羅「いや、まだだリッちゃん」
『えっ!?でも・・・!』
邪魔せんとするリッカを、温羅が抑える。──そして、桃を口にした老婆が、みるみる内に変化を遂げる。
【──我はその鬼に黄泉の飯を喰わせ腐らせた。そして一縷の理性を赦し放り捨てた。さすれば必ずや助けを求め暴れ出すと踏んでいたからな】
老婆が若々しく、瑞々しく変わっていく。髪は白く、そして澄み渡る曇りの無き──邪気。
【そなたらは必ず助け出すと信じていた。業腹の汎人類史の王達。不出来な鬼であろうと見捨てれぬ強欲さを我は信じた】
そして、現れしは・・・──厳かにして凄烈極まる、魔力をみなぎらせし異界の刺客。
【我は温羅の存在を楔にし、復活を遂げた。そして、素晴らしき我等の世を正しき歴史と成し遂げる。──善き働きだったぞ、我が娘】
その名こそ──温羅の世界を、剪定させし張本人。
【ババァでは呼び辛かろう。なれば真名を伝えよう。──我が名【
温羅を産み出せし異聞の妖怪神が・・・此処に姿を現した。
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