人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マシュ「『今も煌めく、楽園の旅路(ロード・シャングリラ)』───!!!」

マシュが素早く、魔力塊の爆発を阻む。僅でも着弾すれば消し飛ぶソレを、真っ向から受け止める楽園最硬の盾を躊躇いなく解放する。

同時に王の財の波紋から、別世界の援護射撃が勢いを食い留める。拮抗する破滅。そして──

温羅「──ありがとうな、皆!」

リッカ「ウラネキ!?何を──」

リッカと、マシュの前に温羅は立ち──

「──すぅうぅう───ッ!!!」

マシュ「え、えぇえっ・・・!?」

なんと、温羅は息を吸い込み──魔力塊の落下を防ぎ──

「──ぶはぁっ!!!」

リッカ「嘘ぉお!?」

一息に、全てを呑み込み桃源郷の危機を救ったのだった──。

温羅「皆・・・」

リッカ「ど、どったの?」

「アタシの世界が・・・本当にすまんッ!!」

同時に、温羅の頭が地面を割った──。


決戦前夜(?)の作戦会議!

「良かった、無事に戻ってきたね!いや心配はしていないけれど、だからってそんなに性根は変えられないからね!良かった・・・!」

 

「たわけ。楽園のマスターであればあの程度の窮地は日常茶飯事よ。それはそれとしてよくぞ戻った!では早速、二度目の剪定世界からの挑戦の対策と概要を始める!オルガマリー!」

 

王の号令と共に、一同がブリーフィングルームへと集合し概要を把握する。新たなる特異点反応の到達先は、既に特定されている。それは──

 

「はい。茨木童子と、先に残された手がかり、そして単独顕現と先遣隊を担ってくださった二柱からの情報を断定し、日本の都、『京』であると捉えたわ。私達は其処の特異点反応への対処を全員で行うの」

 

「特異点反応・・・?特異点そのものじゃないの?」

 

「あぁ。特異点としてはあまりに例外的ケースが横行していてね。まず、この京の反応に聖杯の反応は見受けられない。同時に、この特異点はまだ『完成』していないんだ」

 

ダ・ヴィンチちゃんの言葉の通り、この特異点はまだ完成していないという。京は今、茨木童子の呪詛の何倍以上にも満たされている。そしてそれは完成した瞬間に人類史を脅かす厄災となると予想された。それがまだ、完成していないと言うのだ。

 

『四凶、阻まれ合流は叶わず。しかし、その手掛かりに値する成果は得たり』

 

将門公が提出した手掛かり、京を護る四凶の身体の一部。耳、片腕、片足、翼等を小手調べで獲得してきたと言う。その際に、アマテラスの様子がややおかしいと感じ撤退してきたとも。

 

「クゥーン・・・」

 

「そうだよね、あまこー・・・異なる世界と言っても、イザナミさまが敵なのかも知れないんだもんね・・・」

 

肉親との戦いを有り難がる者などいてはならない。──しかし、あの存在・・・天逆毎にこの世界の道理は存在しないとの確信が其処にはあった。破壊を美徳とし、愛より破滅を好む。その思考回路は、到底理解できるものではない。同時に聖杯無しで特異点を製作できる事からも、その圧倒的な力の片鱗を感じさせるに充分な衝撃を与えている。

 

「だが我々も黙って消される訳にもいかん!何せ楽園のみが異世界、異界に対抗できるノウハウを持っている唯一無二の組織なのだ、我々がお手上げをするわけには絶対にいかん!」

 

「今更過ぎますよゴルドルフ副所長。邪神からの挑戦状を乗り越えたんです。ただじゃやられはしませんって!」

 

「ムニエルの言う通りだ。ボクも将門公が持ち帰ってくれた身体の一部分を触媒に、呪詛への対抗魔術を編み上げた。未知の術式を既知の術式に置換する・・・ニャル君やBBに道理をねじ曲げて貰ったりもしたけれど、この際形振り構ってはいられないからね!」

 

ゴルドルフ、ロマン、ムニエルの意気込みと同時に、人類に力を貸す人ならざる者達も顔を出す。ニャル、そして空間が裂け金髪の美女が扇子を片手に一同に語りかける。

 

「今回は私もレイシフトのサポートに回るわ。向こうの邪気は尋常でない・・・。万が一マスター達に悪影響を及ぼした際に、速やかに回収出来るようにね」

 

【なぁに、有り得ざる歴史と言えど肩肘を張る必要はない。どうしても共存、共栄を選ばないと言うならば再び滅んでもらうまで。責任は全て私が持つ。トラペゾヘドロンを振るうといい】

 

「手を差し伸べても、それを振り払う輩はいるものよ。それは差し伸べた側でなく、その行為を理解できない側に問題がある──あんなものが妖怪の祖だなんて名誉毀損にも程があるものね。打算もプライドも抜き。一個人として協力させていただくわ」

 

「二人とも・・・ありがとう!これなら、絶対行けそうだね!」

 

「自信はいいが、油断に繋がらないようにな。どうやら今回の特異点、君だけに快進撃をさせるにはリスクが大きい。邪気の中で活躍する問題から、僕達も君を補佐する要因として戦わせてもらう」

 

カドックを始めとしたマスターチーム達も準備を終えている。観測の結果、霊脈も汚染されきっており召喚も難しいらしく、完全に現地サーヴァントの召喚は期待できないという。最低でも霊脈の確保から始めなければ、まともな攻略もままならない。深海攻略にも等しい以上、単独のみの派遣は危険と楽園は判断したのだ。

 

「敵は都に陣取っている。小癪にも我等を待ち構える厚顔さよ。──故に面白い。我等は常に挑む側。その配置、大いなる悪手であると教えてやろうではないか!」

 

しかし王は微塵も揺らがない。いや、或いは脅威とも捉えていないのだろう。切り捨てられた歴史、未知の脅威。それらは紛れもなく愉悦となる。新しきを知る喜び、それもまさしく娯楽であるのだから。

 

「守護神めの把握によれば、京の四方に地脈を乱す邪悪たる神獣が配置されており、余すことなく妖怪と兵が配置されている様だ。勝手知ったる歴史ならば敵陣に真っ向から向かい叩き潰すのみだが、今は全容が見えぬ。故に『現地にて抵抗するサーヴァント』と合流するぞ」

 

「えっ!?召喚は期待出来ないんじゃないの?もう召喚はされてたとか?」

 

『然り。数は二つ・・・。一柱はやや脆弱な神気なれど、もう一柱は一早く現れ、抵抗せり。合流は四凶に阻まれ叶わず。不覚也』

 

サーヴァントは二騎、先んじて抵抗を続けていたという。──まずはそのサーヴァントとの合流こそが始まりと楽園は方針を定める。

 

──無関心、故の殺意・・・。ワタシにはその感情は理解が叶いませんが、だからといって今を生きる全ての明日と未来を譲る理由にも、拒絶する理由にもなりません。侵略という手段を取るならば断固とした意志を示し、理解できぬならばこちらの意志を示しましょう!大切なものを尊重する。それは、迷いなく護るために戦うという事でもあるのですから!

 

(──エアは皆に影響をもたらしたと同時に、影響も受けたみたいだ。その闘志、リッカちゃんにそっくりだね!)

 

一同の準備は整っている。ならば、どのような苦難、困難であっても楽園は戦う迄。全員の顔ぶれが揃った後、王が高らかに叫ぶ。

 

「よし!我等は此より、二度目の異聞帯との戦いに臨む!世界の命運を懸けた戦い、我等にとって相応しき舞台よ!」

 

そう。人類同士の戦いなど楽園にとっては役不足。本領を発揮せしは世界そのもの、未来と歴史を護る戦い。

 

「正義や道理などで未来は掴めぬ!ならば我等の歴史が正道であるモノを示すは何か!──今に至るまでを紡いできた英雄達(われら)!そして今を生きる貴様等の奮起と生命に他ならぬ!!」

 

何度も危機を乗り越え、今日に至るまでの歴史を紡いできた。ただ漠然と歴史を積み重ねてきたのではない。あらゆる苦難と、あらゆる困難を乗り越えて来たが故に今の繁栄がある。

 

「貴様等の歴史、今日に至るまでの総て!!簒奪者にくれてやるほど易くはない!我が認めよう──未来に挑む貴様らの奮起こそ、我等の最高の娯楽である!!」

 

ならば侵略に、敵対に、道を譲る道理はない。──挑み、乗り越え、示すのみ。数多の困難を踏破する輝きこそ──

 

「此処に在りし貴様等の総て!!人類史を背負うに相応しき勇者である!心せよ!!我等こそが繁栄に足る歴史であると、常勝無敗の理と共に謳うがいい!!さぁ挑め!戦え!!汎人類史(わがざいたち)よ──!!!

 

「「「「「「英雄王万歳!!英雄姫万歳!!英雄!万歳───!!」」」」」」

 

(うんうん、やっぱりこれだよね!)

 

──久し振りでも!王のカリスマ発破は健在ですっ!

 

極限以上に高まる士気。今、二度目の有り得ざる歴史との決戦が始まる──!




茨木童子「・・・ん~・・・おい、楽園の人間」

リッカ「あ!ばらきー!」

酒呑「ほぉら、きちんとお礼言わんと」

茨木童子「うむ・・・。世話をかけた、人間。また酒呑と逢えたのは汝のお陰だ。ありがとう・・・っで、良いのだな」

リッカ「どういたしまして!無事で良かったよ!」

茨木「む、無論助けられてばかりではない!特別に、本当に特別に!汝をマスターとぎゃわっ!?」

頼光「あぁ、リッカ!よく頑張りました!母は信頼と心配を同時に行い胸がいっぱいでした・・・!」

リッカ「ふぁ!ふぁふぁふぇ、ふぁりふぁほふぉふぁまふ!」

茨木「我はあちらに召喚された故、滞在できるかは知らぬが・・・消滅まで力は貸そう、期待せよ(小声)」

酒呑「ふふっ。やれやれ、ほんとまぁ・・・」



紫「大丈夫?」

温羅「・・・心配、してくれるのか」

紫「妖怪を人でなしと思われるのは心外よ。むしろ、恩義と情に篤いのが普通なの。・・・これからの戦いは、あなたの肉親、あなたの世界が敵。覚悟はある?」

温羅「──ありがとうな、発破かけてくれて。勿論だ!・・・さっき言ったよな。手を差し伸べても、それを振り払う輩はいるって」

紫「それが、どうかしたかしら」

「あっちの世界に、そんな概念は生まれもしなかった。アイツは言ってたろ。善意を理解出来なかったって。まんまの意味だ。あの世界に、共同や協力、慈悲なんて概念は無い。──滅びて当然の世界だ。むしろ、最初から無けりゃ・・・」

紫「ソレはダメよ」

温羅「なんでだよ」

紫「あなたが生まれないじゃない。人類史を護る鬼神は、あの世界でしか生まれなかったのだから。──あなたの存在だけでも、あの世界が在って良かった理由にはなるはずよ、個人的にはね」

温羅「~~ばっ、おま・・・おまえ、おまえなぁ・・・そういうの、真顔で・・・ばかやろぅ!」

紫「ふふっ。それはきっと、彼女らも同じよ」

リッカ「ウラネキー!見てみてー!」

モモ「桃源郷の皆から山盛りのお弁当が!これなら百人力ですね!力の限り頑張りましょう!」

温羅「──あぁ。なら・・・誰の未来が見たいかなんて、一目瞭然だな!!」

紫「そうそう。示しましょう。妖怪だって、人と共に生きる歴史の一部である、とね」



少年「おっとぅ・・・おっかぁ・・・おなかすいたよぅ・・・」

天逆毎【──ひもじいのかい。坊や】

「え・・・?」

【おまんじゅう】

【これを、お食べ】  

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