《然り。かの反転の女神は呪いを解くために桃を喰らった。アレは世にも珍しき人の善徳が詰まりし果実。それに我等が解呪を強化した改良を施した。それを喰らった事により、かの女神は絶対性を揺らがされている。鬼神めの言によれば、アレの世界に善意は産まれなかった。餓死の折に白米の握りを口にした様なものだ、その至福はさぞ衝撃な美味であったであろう。神ですら抗えぬ程な》
モモ「本来なら、太陽にて焼き払う事を繰り返せば我等に糸口は限られしもの。しかし天逆毎は加速度的に自己矛盾を引き起こしています。こちらの世界にあり、あちらの世界にないものを食らった事により」
「まさに禁断の果実を口にした、という事よ。さて──見物よな。善徳の味を知りし女神が、打倒されるべき魔神でいられるか否か──」
──異世界の神に、人の美徳はどう移るのか・・・。ところでギル、そのスタンプは如何に?
《あぁ、これは恥ずべき方の善意だ。このスタンプを見るがいい。一柱の女神の名前が無いであろう?そしてエルキドゥとエレシュキガルには視察を提案したのだ。実はな──》
建国にはメリットばかりではない。ハプニングイベントも発生する。端的に、下の事例を見ていただこう──。
「き、きき、緊張するのだわ・・・。リッカの故郷の神々の地に、まさか冥界代表として交流をする日が来るだなんて・・・」
「大丈夫さ、エレシュキガル。自信を持って。僕の見立てによれば、今fateで最も乗ってるヒロインは君なんだ。真面目で勤勉、そんな君こそ、ウルクの神の代表を名乗るに相応しい。僕も鼻が高いよ」
『冥界の一輪の華』『グランドヒロイン』『エレちゃん大勝利なのだわ』『エレちゃんまじ天使』といった鉢巻とたすき、前掛けに頭にろうそくを刺したローマもかくやの広告絢爛女神状態にメイクアップされたエレシュキガルが、エルキドゥにくいくいと背中を押されている。彼女はこれから魂を癒す槍檻・・・そして念願のエレシュキガル神殿を立てて貰おうとヒルコに御願いに行くところなのだ。攻めた提案ではあれど、主導はいつものエルキドゥなので。ウルクのキレた斧の奔放さに威厳が対処できずマナーモードばりに振動するエレシュキガルを、ニコニコとフォローしている緑の人。グッズは彼の手作りである。
「立地は僕とフォウで見繕っていたから大丈夫。立地条件は厳選し妥協せず、そして皆の許可も得た。後は君がいれば完璧さ」
「で、でも大丈夫?割と真ん中と言うか、目立つと言うか・・・端の端でも私は大丈夫だけれど・・・」
「君だからこそ目立つ場所がいいのさ。ほら、なんだろここって右も左もわからず、とりあえず暖簾を押してみたら優しい素朴な女神が話しかけてくれるシチュエーションはとてもいい。ってフォウが言ってたからね」
(エアと一緒にいないと割と俗なのだわあの元災厄の獣・・・でも、アマちゃんやリッカが迷わない様な道標になるくらいなら、それはそれでよいことなのだわ)
冥界はマルドゥークやブイン族の仲間たちのお陰でとても暖かく優しくなったが、それはそれとして冥界定住出来なさそうなリッカの魂の、神の世界どこでも安心できる止まり木的な場所が欲しい。そんな風に考え、長考の際に神殿建てを了承したエレシュキガル。友達相手に献身的なのがウルクの冥界の女神さまなのである。すころう。
「じゃあ早速・・・って、あれ?エルキドゥ?どうかした?急に立ち止まって」
やるのだわ!一念発起したエレシュキガルの背後のエルキドゥが硬直する。日本の神々の場所を散策帰りしていたので、二人は少し中央からは離れていたのだが・・・
「──ごめんよ、なんだかおぞましい邪神を祀る本尊が見えた。真偽を確かめるから先に行くね」
「え、あ、ちょっと!?どういう事なのかしら──!?」
目が据わりに据わり、キングゥの1000%の速さでカッ飛んでいくエルキドゥに瞠目しながらも、スカートの裾を擦らないようたくしあげながら走って追うエレちゃんであった。走る最中ガゼルが並走し『草原をガゼルと走る冥界の女神』なんていう一枚スチルが出回ったとかなんとか。そして──
「な、なんじゃこりゃあぁ~~~!!!??」
ひーこら辿り着いた時・・・冥界の女主人の絶叫が響き渡った──
~
「なんだいこの邪教の本拠地は」
開幕一番からの目が据わりまくったエルキドゥがそれを糾弾する。其処はエレシュキガルとエルキドゥが親しみやすいデザインがいいね。気軽に来て欲しいのだわ。と話し建設予定だった立当地。其処にはこれから建つべき神殿の予定が組まれていた筈であるというに建っていたのは──
「あら、泥人形にはこの崇高な神殿の意図が解らないのかしら?これが私が天命にて思い付いた、八百万なんて飽和寸前な神々を活かすシステム!『イシュタルマネーイズパワーシステム』よぁあぁあぁ!!?」
「知りたくもない」
端的に吐き捨て斧を投げまくり破壊活動に移るエルキドゥを制止しに入るイシュタル。いつもの殺意溢れるトムジェリモードに入った二人の横で口をパクパクしている中、ヒルコが感激最中に語り出す。
「いやはやウルクの女神様は目の付け所が違います!『集まる神々のパワーを物理リソース、具体的は宝石とか貴金属とかに変換して真に善なる神の力とする画期的機能』を製作するとは!これなら人類史を護る神の更なる強化が図れます!これで前線に立つタケちゃんや皆様が少しでも楽になってくれれば!自己より他者!あのイシュタル神様はとても素晴らしい神様です!ヒルコ感激して天を衝く大きさの神殿を拵えてしまいました!」
(やりやがったのだわあの女神ーーー!百歩譲って神殿建ては譲っても理由付けが完全に詐欺のそれ!『他の神々に配るとは言ってない』とかそういうやつ!善良な他所の神様を契約の穴で攻める暴挙──!!)
間違いなく善である。『八百万の神々のパワーで善なる女神(つまりイシュタル)をフル強化してサクッと解決!おまけに宝石無限供給できてウハウハ!天才か!発明の化身か!』なる理論であらゆる全ての契約をぶっ飛ばして建築を勢いで押し切るパワープレイ。(私が定めた)秩序(を)・(よしとする意味)善でも何故。エルキドゥが皆の許可は取っていたと言った筈なのに?
「『私が皆の分働くわ・・・だからこの施設を優先してほしいの!事後承諾しても納得させられる魅力が、このマシンにはあるっ!女神ヒルコ、お願いできないかしら!』等と言われたら、はいっていうしか無いですよね・・・!そこまで世の為人の為に決意された女神であれば!国造りに携わるものとして応えねば無礼ですとも!」
「あは、あははは・・・メソポタミアの恥なのだわ・・・」
おそらく『はい』と言った瞬間に全ての準備が終わるプランニングをしてたのだろう。設計図や構成を完全に終わらせておき、それを提出して建築完了。空も山も水も綺麗なのだわ・・・とのんきしてた自分とは格が違う手際の良さ。流石は天の女主人と言った所である。其処は最早勝負にもならない。完敗であった。
「無駄よエルキドゥ!既に私はヒルコの許可を取り、(生暖かい笑みと一緒に)他の連中からの許可も取った!どれだけ暴れても無駄よ無駄!一度建てられた神殿は壊せない!何故なら私は、これで皆の役に立てるという確信があるから!ありがとう八百万の神々!あなたたちの
「──。北欧のバルドルの母親と同じ様な事をしたわけだね。いいだろう。君が曲がりなりにも高天ヶ原の主から許可を取ったと言うなら、僕は引き下がろう」
エルキドゥ、存外に早く矛を納める。こんな生ける蝗の様な存在にかかずらう事が無駄と判断したんだろう。
「あら、物分かりが良いのね?なら見ていなさい。私が日本の神々から力を巻き上げ、力を借りて、日本を救う大明神イシュタルとなる瞬間を!グガランナ・typeシシマイやゆくゆくは天の女主人イナンナの霊基になって楽園を代表するスーパーサーヴァントに!『なんということだ!ゴージャスの座は貴様に譲るしかあるまいイシュタルよ』なーんて吠え面かくギルガメッシュに神殿掃除させて~・・・・・・──え、ちょ、なに、うそ」
喜色満面、転じて顔面蒼白。突然イシュタルの周囲に落ちた雲影。かの天の女主人が震え上がる程の原初の神威。
「だが君は無礼に過ぎたね。──かの英雄神の嫌う『神の不義理』を行った」
──眼を紅蓮に輝かせた、山より巨大なる姿を見せた英雄神マルドゥークが、右拳を振り上げていたのだ。
「ま、ま、ま──待って!待ってください御兄様!ちゃんと今回は許可を取った!とりました!ほら見てください!ちゃんとスタンプラリーしたんですから嘘じゃないです!」
「本当にかい?本当に『全員』に許可は取ったかな?マルドゥーク神は自分は別にいいと言っている。だが君は忘れていないかな?」
「誰か!?この私がそんな余りにもなうっかりする訳──!・・・ぁ」
「あわ、あわわわ・・・あわわわ・・・」
(躾のなってない子供を叱るくらいの)キレたマルドゥークに、腰砕けになっているエレシュキガルを目にした時、イシュタルは全てを理解した。してしまった。天上と地上を駆け回り、何を忘れていたか。楽園の神々やあのギルガメッシュが『何故』みすみすと許可を赦したのか。──即ち。
「───
『BAKAYAROOOOOOOOOOOOOーーーーー!!!!!』
いじめ、仲間はずれ、ハブり、嫌がらせ、陰キャライジメにバカッター。それら全てを赦さぬマルドゥークの躾の天罰拳がイシュタルマネーイズパワーシステムに降臨し、破片の一つも残らずアルミ缶の様にブッ潰れたと同時に、イシュタルの戦いつつ懐を潤す八百万神威巻き上げ作戦も粉々になりましたとさ──。
イシュタル「うぅう・・・」
『私は国辱女神です』
ヒルコ「大変申し訳ありませんでした!すみません!本当に申し訳ありませんでしたぁ!(平謝り)」
タケちゃん「(連帯謝罪)」
エレシュキガル「だ、大丈夫なのだわ。押しの強いセールスに押されてしまうことは誰にでもあるもの。イシュタルも、傍迷惑極まりない善意でやった事だし。悪気は無かったのだわ」
エルキドゥ「だから質が悪いんだけどね。マルドゥーク神がやけにぷんすこしていたのはこういう訳か。公正さに感謝しなくてはね、流石は神々の王にして兄だ」
マルドゥーク『NAKAYOKUNE( ̄^ ̄)』
「ありがとうなのだわ、御兄様!・・・そっかぁ、皆こうなるの予測してたかぁ・・・そっかぁ・・・」
イシュタル「こんな扱い方ってバレてるの私・・・?聡明で頭脳明晰な私のキャラは何処に・・・」
エルキドゥ「イシュタルマニュアルの精度は完璧だね。これはウルクの民に配るべき最高の教材だ」
イシュタル「は?イシュタルマニュアル?──ちょっと、まさかソレ──」
シドゥリ(AI)『王が二つ返事で認可した際に、お気付きになられなくては・・・全くもう』
「シドゥリ───!!まさかのあなたの紹介かーい!!」
・・・──この後、きちんとしたエレシュキガル神殿と『善意なのは間違いないから』とエレシュキガルの真正面にイシュタルの納屋が建てられた。イシュタルの魔力と財力を吸い上げ、マスターやサーヴァントに力を分け与える金の泉である。
エレシュキガルは魂を癒す神殿を造り、ますますもってその天使ぶりを発揮しましたとさ。
作成目録
イシュタルの納屋神殿(イシュタルの魔力と財を消費しつくもっち、サーヴァントをパワーアップ)← アグレッシブ!
エレシュキガル神殿(冥界の護りを全員に付与)← 大和撫子なのではないのでしょうか
神様は個性!恵みばかりでないのは御愛敬! ヒルコ
悪徳セールス撃退事業所望 武尊
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