人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ヒルコ「鬼門、ですか?」

イシュタル「えぇ。とびきりゾンビが密集している方角があったんでちょっと調べて見たんだけど、御札がびっしり張られた空間の入り口があったわよ。確か日本の方角って、鬼が出てくる方角あったわよね?そこにもしかしたら、宝って安置されてるんじゃない?」

「鬼門に、呪具を置く。そして、地脈と周りに呪詛を満たす・・・理には叶っておりまする・・・!」

イシュタル「試しに行ってみたけれど、アレはダメね。地脈とがっちり絡み合ってる呪詛の出所だから、神だって入れやしないわ。四匹の化け物がいなくなって、漸く入れるくらいに薄まるかもしれない、ってくらいね」

エルキドゥ「逝けば良かったのに」

「あんた漢字違ったわよね今の!?」

ヒルコ「えーと、宝があると思わしき場所は鬼門で近付けず、近付くには四凶を追い払わないといけなくて、地脈を確保して四凶から護って、誰も死なないように食い止めて・・・」

イシュタル「・・・尋常じゃない総力戦ね。鬼門には多分、大量の鬼でも置いてるわよ。メンバー、考慮した方がいいんじゃない?」

ギル「人類史上稀に役に立ったなイシュタル、誉めてやろう。鬼門と来たか・・・マルドゥークであれば楽であろうが、特異点が消し飛ぼうな」

(さて、仕込みはどう動くか。愉しみの細工は粒々だが──)




天逆毎【・・・敵対した今、決戦の今、何を迷う】

(考えず、迷わなければいい。我はイザナミの、歴史の尖兵として在るのみ)

【・・・焼き払う。それで終わりだ。それでいいのだ──】


禍肚奪還作戦~青龍~

「進め!我が大江山のつくもっち達よ!まつろわぬ民達、何するものぞ!いざ進めェ!!」

 

「「「「「「うぉおぉーっ!!」」」」」」

 

羅生門を蹴り開け、雪崩のように禍肚に雪崩れ込む茨木童子。それに連なる百鬼夜行・・・ではなく、豪華絢爛にして十人十色なつくもっち。鬼の大将たる統率力を活かし、つくもっちの指揮を一手に担う。まつろわぬ民達を押し留め、受け止め、そして兵力の拮抗を見せる神在りしつわもの達との戦いが幕を開ける。──その成果は、迅速にして如実に現れた。

 

「・・・凄いな」

 

まつろわぬ民達に満ち溢れるは黄泉の呪詛。それに対し満ちるは神威の祝福。その激突の結果に、カドックは感嘆を漏らす。一進一退・・・全く互角のぶつかり合いを呈しているのだ。まつろわぬ民達は無軌道にして無秩序の暴虐。それに対し、指揮する茨木はつくもっち一体一体の特性を理解し、的確な指揮を行う事により前線、陣形を押し上げ中央の基礎霊脈を守護し四方八方からの攻撃から敵を押し留める。押しては引いて、引いては押すの繰り返しを変幻自在に執り行う。四方向を攻める楽園の拠点の足掛かりを、懸命に全力で護り抜いているのだ。鬼でありながら、武将もかくやの成果を上げている。

 

「流石は大江山の大将だ!アレほど周りに気を配れる鬼は茨木だけだろうなぁ!」

 

「うっふふふ。本人に言うてあげると喜ぶよって、うらはんもきちんと応援してくりゃれ?」

 

「おーっ!!いけいけばらきー!やれやればらきー!よっ!あんたが一番!日本一ーっ!」

 

「馬鹿な事を叫ぶな、鬼神!口より手を動かさぬか!全く酒呑といい、強すぎる者は余裕にかまけすぎるという、──さぁ行け人間!今四方はやや手薄であるはずだぞ!」

 

茨木の奮戦と言葉の通り、四方に存在する四神に対応する四霊脈へ向けて進軍するマスターへの道が拓ける。つくもっちを作った者達の奮闘と熱意を、無為にする訳にはいかない。

 

『了解した・・・!カドック、霊脈の奪還に向かう!誰か一人でも辿り着き、取り返した場合は即座に撤退だ!無茶をせず、確実に成果を出すんだ!』

 

『アルトリア、了解です!』

 

『アイリスフィール、解ったわ!』

 

『ヒナコ、承知したわ。任せておきなさいよね!』

 

それぞれが懸命に、まつろわぬ者達を突破せんと契約した、そしてカルデア在住のサーヴァント達の力を合わせ土地の脈を奪い返さんと奮起する。一瞬でも気を抜けば呑み込まれる脅威の軍勢を相手取り、それぞれの役割を達成せんと立ち向かう。

 

──その一方で、天空にて武神は四つの凶を睨み、縫い付ける。人の奮闘を、結実させる為に──

 

 

【・・・】

 

【グガ、ガガ、ガッ】

 

【ウゥ、グルル】

 

【──、──・・・】

 

【・・・、なんで動かないんだろう・・・】

 

戦い、受け止め、四凶を押し留める役割を持ったタケルとリッカ。その相手の四凶に相対する最中に、リッカは不気味な四凶の行動に違和感を覚える。

 

そう、彼等は攻撃に移る動きを見せず、遠巻きに二人を眺めるのみの行動に徹していた。タケルの間合いに決して入ることなく、不気味に呻きながら一定の距離を保っている。間合いを詰めれば下がり、一歩下がればにじりよる。膠着状態と言っていい戦況だ。油断せず刃を構えるリッカを背に、タケルは静かに事の成り行きを見守っている。

 

【タケル殿、どう思う?こっちの思惑と言えば思惑通りだけど・・・】

 

明らかに不気味で、明らかにおかしい。こちらの術中に入っているにしては、一同からは余裕と笑いを感じ取れている。隙を見せれば、一気に戦況が傾く。漠然ながらも確信めいたその直感に従い、睨み合いの硬直を維持していたのだが・・・──

 

「──・・・」

 

【わ、わっ!?タケル殿!?】

 

不意に、タケルが動いた。リッカの額に手を当て、レイラインを励起したのだ。そしてそれを自らの神威に伝播し、辺り一帯に伝わるように細工を行う。オープンチャンネル、といった状態だ。タケルの行動の真意に思い至る、その瞬間──

 

『こちらヒナコ!喜びなさいリッカ、項羽様と蘭、達人のお陰で青龍の方角の霊脈に辿り着いたわ!今ヒルコとロマニで浄化してるから、時間が経ったら撤退──』

 

【──グォオォオォオォオォオッ!!!!】

 

【!?】

 

その通信を聴いた、全く同じタイミングにてキュウキは動いた。翼を広げ、目にも止まらぬ速さで空を駆け抜け真っ直ぐと向かったのだ。青龍の方角──ぐっちゃんのいる方角へ。

 

【ッ!させるもんか──ッ!!】

 

その行動に、リッカは迅速に対応してみせる。龍の鎧の各部に雷位の電流を流し、神楽より速さに秀でる極みの一閃を以て、数百メートルの距離を一瞬で踏破しキュウキに肉薄する。そのまま自身に奮われた前肢の爪の一撃毎、龍吼の一閃にてキュウキの首を叩き落とした。時間にしてコンマ一秒以下の攻防だ。

 

──四凶は、悪辣という点にて行う個々の行動に抜群の統率を見せた。

 

【───!!】

 

瞬間、沈黙を保っていたコントン、トウコツ、トウテツが猛烈な速度にて行動を起こし、瞬時にリッカ目掛けて飛来し三方を囲い入れた。完全に奥義の隙を狙われた形となるリッカに付け入るように、牙と爪が向けられる。計ったかのような万全のタイミングであったのだ。其処でリッカは、瞬時に思い至る。

 

(これを狙ってたんだ!他のマスターを狙いに行くと見せ掛けて私に迎撃させて、その隙を狙って仕留めるマスター狙いの戦術・・・──ッ!)

 

機動力の高い虎の身体に翼を持つキュウキが先行したのも道理だった。一飛びで大きく距離を稼ぎ、引き離す必要があったのだ。彼等に協力の意思はない、ただ、理解しているのだ。相手が最も嫌がる手段を。相手に最も効果的な手法を。戦術とは、相手の嫌がる事を衝くのが定石であるが故に。

 

【くっ──!!】

 

即座に防御を固めるが、悪辣な穢れに染まった四凶の攻撃を一度でも受ければ、取り返しのつかない汚染を受けるのは火を見るより明らかだ。リッカの龍の鎧がどれ程の汚染に堪えられるかの領域の賭け、運任せのままに三匹の禍が噛み砕かんとした、──その時だった。

 

【・・・カッ?】

 

【──!?】

 

瞬間──トウテツの首が落ちていた。遥か彼方、タケルがいた方角より飛来した『何か』に、一撃の下に首が叩き落とされたのである。それだけに、その反攻は留まらなかった。先にタケルの元から来た『ソレ』は、瞬間反転し他の邪悪へ襲い掛かる。

 

【──剣・・・!?】

 

その飛来した物体、四凶を切り刻むもの。それは深緑の『剣』の形を取った神剣。タケルが投げて寄越したその神剣が、まるで意志を持つかのように縦横無尽に飛来しリッカを護り、敵を滅ぼしていく。

 

それこそは、タケルが所持する宝具の一つ『草薙剣』。軽く魔力を込め、無造作に投げ入れたその刀剣は、破魔の矢の如くに敵を蹴散らしたのだ。リッカの傍に、タケルが静かに瞬歩にて現れる。

 

『聞こえるかいリッカ君!どうやらこの霊脈には、特殊なロックがかかっているようなんだ!将門公が用意した身体の破片に反応した所を見ると、四凶の身体の一部が一定数必要な様だ!』

 

【身体の一部・・・!】

 

『無茶を言ってすまない!でも何とかしてタケル殿と協力して四凶の身体の一部を・・・──うわぁあっ!?』

 

瞬間、タケルの行動は迅速だった。斬り落とした四凶の一匹の身体を無造作に掴み取り、軽々と持ち上げ力の限りに青龍の方角へと投げ付けたのだ。中央上空からの禍肚の端──何千メートル近くも離れている果ての呪詛の中心へと、触媒を正確に叩き込んだのだ。

 

「掌握しろ」

 

『りょ、了解!──よし、出来た!霊脈掌握完了!四凶の身体から離れるんだ!また霧散してしまう!皆撤退してくれ!まつろわぬ者達も四凶もすぐに復活する!女神もくるかもしれな──』

 

【───!!】

 

──ロマンの把握は、的中していた。遥か上空の姿を、リッカとロマニは捉える。

 

【・・・消え去るがいい】

 

地表一切を焼き払わんと、黒き灼熱の太陽の生成を始める天逆毎の姿を──

 

 

 

 




天逆毎(何も考えず、迷わなければ全て終わる。今ならば撤退も間に合うまい。必ず何者かが命を落とす。それで最早完全無欠は名乗れまい・・・──)

オルガマリー『ッ!ロマニ!強制退去!!』

ロマン『やってます!でも広すぎて間に合わないっ──!』

リッカ【令呪を以て願う!!アンリマユ、アレを全力で止める──!】

タケル「・・・・・・」

天逆毎【消え去れ──!!】

チビテラス『──わぅ~~~ん!!』

天逆毎【!?】

(あれは・・・あれらは、なんだ・・・?神の傀儡?からくりか・・・?)



これで、皆の力になれるといいなぁ!



【ぐ、ッ──・・・!?な、なんだ・・・っ、この、感情は・・・っ!】

瞬間、天逆毎の頭には沢山の感情と想いが殺到していた。数々の者達が手掛けた『つくもっち』。善なる神威が発する善意の波動が、女神たる天逆毎の神格を揺さぶったのだ。

『あのからくりを作るのにどんな想いがあっただろう。どんな手順があっただろう。どんな願いが込められていただろう』

【ぐっ、ううっ・・・、っ、ぅ・・・!】

『壊してしまっては無くなってしまう。知りたい事を、知らないままでいてしまう。それは、本当に正しい選択なのか?』

【っ、なんだ、なんだこの声は・・・っ。私の、私の内からの声か・・・?】

『考えを止めるな。悩み続けろ、求め続けろ。答えは全て其処にある。目をそらすな、耳を塞ぐな』

【ぅ、あ・・・ぉおぉ・・・!!】

『──無価値の歴史と定まるか否かは、全てこの身にかかっている──』

【ッ───!!】

内から涌き出る声に惑いながら、天逆毎は消え去る。その隙を見逃さず、一秒の差で全転移をロマニが完了させた。迷わなければ、全てが太陽に焼き付くされる寸での時間差であった。

温羅(──自己矛盾が起きてるみたいだな、ババァ・・・。一度知った疑問は、晴らさなきゃ苦しいままだぜ・・・!)

ギル《フッ、最早神威を振るえぬまでに神格に異常を来したか。エアよ、いよいよ我等の出番が近いのやも知れんぞ?》

──はい。手助けを行いに行くのですね。あの方達の歴史を、『無価値の歴史』にしないための──

その様子を、鬼神と王は所感を別としながらも見据えていた──

獲得霊脈 

黄龍(中央)

青龍(東)

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