人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1028 / 2530
桃源郷

天逆毎【何の真似だ。何故私に肩入れする?紛れもない利敵行為だと知っての事か】

ギルガメッシュ「無論知っている。そして知らぬなら付け足しておけ。天上天下、森羅万象は総て我に裁定される事象。故に、我の為す事が法でありそれを覆すも施行するも我が決める事。我等は赴くまま、より事態を愉悦のままに動かすのみだ。それにな、──我が財を侮るなよ?今や奴等に、我の逐一の指揮など必要すら無いのだ。ふはは、研鑽は万全よ!」

【・・・恐ろしき自負だな】

「そう褒めるな。それに、この戦い・・・ロストベルトの戦いに『悪の歴史』などあってはならぬからな」

【何だと?】

「敗北して当然、或いは滅びるが確約した歴史。善悪が明確に定まった戦いなど我等は求めぬ。
ただ駆除し、ただ踏み潰すだけの蹂躙では何も得るものなど在りはすまい。
異なる歴史と言うならば、それを踏破するに値する宝を持たなくてはならぬ。ただの憎み合い、殺し合いに終始する野蛮な戦争の何処に愉悦が産まれようか。
我の庭に踏み入り、我の紋様に異を唱えるというならば。『異聞帯(きさま)』らは我に獲得されるに値する宝を持たなくてはならんのだ。歴史の競合に勝った際の、我が手にする報奨としてな。
──だが、今の貴様は自らのカタチが揺らいでいよう。真に求めるものすら見えていまい」

天逆毎【・・・】

「知りたくば付いてこい。そうさな──母に向ける『情』と『言葉』くらいは土産にくれてやる」

【・・・──】

その言葉を聞き、不可解ながらも。天逆毎はすぐさま王の背を追い掛けていた。

ギルガメッシュ「あぁ、そうだ。一つ耳寄りな事実をくれてやろう。──あの桃を造ろうと言い出したのはな、貴様が産み出した鬼神だぞ?」

【・・・!】



『どうせあのババァ、まともなもん食ってねぇだろ!この皆が祝福してくれた桃で、ほっぺた落としてやるかんな!』



【・・・・・・・・・あの、鬼が・・・】

少しだけ──あの時の味が、口に拡がった様な気がした




四凶・四神・四霊

「霊脈!青龍!奪還誠におめでとうございまぁす!楽園かるであのマスターはリッカ様だけではない!脇を固める精鋭達の奮戦もまた万全!実に素晴らしい事です!さぁおむすびをどうぞ、おにぎりをどうぞ!作ったのタケちゃんですけど!!」

 

電撃作戦を終え、高天ヶ原へと帰還したマスター一行。高天ヶ原は少しずつ活力を取り戻している事が見て取れ、格が低い神霊、強い精霊などといった存在がちらほらと散見する様になっていた。戦っている間、ヒルコは高天ヶ原の拡張と神々の呼び込みに精を出していた事が読み取れる。穢れに満ちた禍肚よりへばりついた汚れが、浄化されるように落ちていく感覚を一行は感じながら中央にて食卓を囲みおにぎりをかっこむ。程よい塩に、噛みごたえを計算された米の柔らかさが、一口噛む毎に身体に染み入る感覚に舌鼓を打つ。

 

『ぐっちゃんが獲得した青龍の霊脈、要するに東の方角と中央・・・。二つの霊脈を確保した形になるのね。進展なのは間違いはないけれど・・・』

 

「何かしら。まつろわぬなんちゃらを蹴散らしに蹴散らした項羽様の活躍にケチでもつける気?オルガマリー」

 

『そうじゃないよ、ヒナコ君。マリーは戦線の広大と防衛の難儀さを憂いているんだ』

 

陣地を獲得すればする程防衛対象は増え、そして配置しなくてはならない戦力は増える。地の理はあちらにあり、自身らの得意な環境を作り上げるのは僅かな空間のみ。まだ優勢とは言えないとの認識をロマンが代弁する。

 

『まさか京の守護神をまるごと邪神にするとは悪魔的発想だと言わざるを得ないよねぇ。日本ってそういうのめっさ厳しいんじゃなかったっけ?』

 

『あちらの世界では邪神や神・・・というかイザナミの縁者に信仰とか要らないんでしょうね。強さと殺戮性能が高ければ神として高ランク。分かりやすくてゾッとすると言いますか』

 

『いつまでもタケル殿やリッカ君に頑張って貰うのも心苦しいよねぇ。ヒルコ様、ちょちょいと一柱ぐらい喚べたりはしないかな?』

 

「出来ますよ!」

 

『そうだよねぇ~。出来るわけ・・・出来るのかい!?』

 

想像以上にあっさりめな了承に身を乗り出す後衛組。ヒルコ的には、召喚は霊脈を確保さえすれば喚ぶことが可能となるらしい。但し──四方の守護者達には『格』があり、準備次第で強くも弱くもなる・・・つまり、準備が欠かせないというのだ。

 

「守護の担当は一体を呼び出せば決まります。一体でも喚べれば、後は自動的に召喚が出来るくらいに四柱の絆は強いもの。あの四凶に対応する守護者の力を借りた人は悪神を討ち果たす力を四神から授かり、一体一体と真っ向から立ち向かう力を手に入れる事が出来るのです!」

 

「青龍の方角を取り戻せし真祖には、龍の加護が宿るだろう。それぞれ白虎、玄武、朱雀・・・お前達が今攻略している方角は、四神がお前達を誘ったのやも知れぬな」

 

カドックは白虎、朱雀はアルトリア、玄武はアイリスフィール。決戦の際には、それぞれの方角に纏わる者達を討ち果たす役割をカドック達は担うという。恐らく、あと三つの霊脈を奪い返せた時が決戦の時なのだろう。

 

「僕達が、あの凶悪な邪神を倒すか・・・。日本の神っていうのは随分人間と距離が近いとつくづく思うよ」

 

「割と今回は他人事じゃないのよね・・・四凶って中国の方の悪神だし。あんまりいい気はしないから、さっさと狩ってやらなくちゃ。イメージダウンよ、イメージダウン」

 

「アイリスフィール、亀だそうですね。甲羅に乗って飛べるんでしょうか。顔と手足を引っ込めて、空中を自在に飛び回って・・・」

 

「・・・あら?そんな映画が確かあったような・・・」

 

「神様と高天ヶ原の調子が良くなれば、もしかしたらもしかすると『四霊』を喚べるかも知れません!召喚要請はどちらか、一度きり!タイミングはよーく、よーく考えてくださいね!」

 

『・・・四霊?四神の上にも、位の高い者達がいるのかい?』

 

流石にそれは初耳だったのか、日本の出身以外のメンバーは顔を見合わせる。あれ、私言ってませんでしたっけ・・・とタケちゃんに視線を送り、肯定を以て目を伏せるタケちゃん。あまりにそそっかしいが故の伝達ミスであった。

 

「あ、では説明します!四霊というのは」

 

「四霊。四神が神獣クラスだとするなら、四霊は竜種・・・或いは戦う必要すら無い存在と言っていい。天空を覆い尽くし天変地異を支配する『応龍』、国の吉兆を告げ駆け抜ける『麒麟』、七色の虹を軌跡に飛びし聖炎の霊鳥『鳳凰』。一つの島と見紛う大きさの『霊亀』。時に四神の上位に位置付けされる、旧き世界の覇者達だ」

 

「説明取られたもう!?そ、そうなんです!四神よりもしかしたら強いかもしれなくて、でも召喚コストも難易度も桁が違っちゃう日本のエンドコンテンツ的な守護者も・・・ひょっとしたら喚べるかな?なんて思ってもみたり・・・?」

 

どうやら招き寄せる存在には更に上があった様だ。入念な手間をかけ、そして準備さえすれば。更なる強力な存在を呼び寄せられる可能性が食卓にて示唆された。

 

「・・・厳しい条件って、具体的なものは解るのか?」

 

「それはもう!四神の召喚は霊脈を取り返したなら可能になりますが、四霊の召喚は其処に更に三種の神器が揃い、神々の神威・・・主神クラスが四人いれば応えてくれる筈です!四神の力はサーヴァントと自身を超パワーアップ!四霊はきっとマスターが戦えるようになりますよ!」

 

法外極まる難易度とパワーアップ内容に一同は顔を見合わせる。あの京の四凶に真っ向から戦えるようになる程の守護者とは、一体どのような存在なのだろうか。

 

「カッコいいですね・・・ロマンがあります。やりこみ要素の四霊、リッカならどちらを選ぶでしょうか」

 

「朱雀や鳳凰、どっちも見てみたいわね・・・どれくらい大きな亀なのかしら。見上げちゃうくらいかしら・・・?」

 

「応龍か・・・。やっぱり土地柄、龍は馴染みが深いって事なのかしら」

 

『カドック、キリンにしましょう。可愛らしく首を伸ばすあなたが見てみたいわ』

 

「ジラフじゃない、麒麟だ!ビールにラベリングされてるあの麒麟だよ!・・・まぁ、取らぬ狸の皮算用をしても仕方無い。まずは絶対不可欠な霊脈の確保を優先しよう」

 

「ほーい!そんなグランドマスターの皆に私からのプレゼント~!四神キャラお弁当~!私が挑戦したキャラ弁、是非食べて食べて!勿論、ヒルコ様にも!」

 

「あなやっ?」

 

「当たり前だよ~。ヒルコ様は私達の帰る場所を護ってくれてるもん!はい、黄龍弁当!感謝と共に、召し上がれ!」

 

「たたたた、タケちゃん!!私は座に還ってしまいそうですっ!主に感嘆と、感涙でっ!!」

 

わいわいと騒がしく、神々やサーヴァント達も続々と集まる中、タケルはとある想いを懐く。──中央の守護神の不在だ。

 

(あの禍肚の中央には何もいなかった。こちらには黄龍が位置する場所に、何も。・・・中央の守護神に位置する邪神も、果たして用意されているのか)

 

自身がヒルコにいち速く味方出来た理由。それは自身が強く望んだ事でもある。──それに重ね、呼ばれた使命に位置する『何か』があるのだとしたら。その時は──

 

「タケちゃん!是非一緒に食べましょうタケちゃん!あっ──ぜ、是非食べてあげてください!」

 

「タケル殿~!この見た目の拘りはメシテロに違いありませんぞ!!」

 

「──フッ」

 

何も心配する事はない。礎になるがサーヴァント。今度こそ、この身は未来に捧げると決めている

 

『武尊、茶会へ招かん』

 

「ワゥン!」

 

「応じよう」

 

次は、神による施設造り。一休みの騒がしい時間を、白と赤の神官服に身を包んだ黒髪の丈夫は彼なりに楽しむのであった──

 

 




桃源郷・寺子屋屋敷&畑

天逆毎【・・・なんだこの建物は】

(屠殺場にしては落ち着いているが・・・)

ラマッス仮面『お邪魔しラマッス』

【!?】

『今日、一緒に汎人類史を勉強しご飯とか農作業とかするラマッス仮面ラマッス。よろしくお願いラマッス』

【・・・ギルガメッシュとやらは何処へ?】

『王はガチャを引くために預金を下ろしにいったラマッス。さぁさぁ、天逆毎さま。一緒に疑問を解き明かすラマッスよ』

【・・・・・・】

『まずはこの地に伝わるはなよさん作『四本角のおにがみさま』を読むラマッス。朗読は得意ラマッスよ~。行くラマッス』

【・・・・・・変なヤツだ】

『先入観を持たせないよう、ニュートラルに接したい』とのエアの願いにより現れた謎のラマッス仮面に、天逆毎の偽り無い感想が向けられた──

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。