(有り得ん、アレは私があのヒルコから奪い取った際に妾直々に呪をかけたもの、最早同じ空間にいるのみで死に絶える程の呪詛を吹き込んだ要石、それが何故・・・!?)
【あ、天逆毎。こ、これは一体どういう・・・】
尋ねる答えに、呼びかかる声は無い。──大切なものは、無くして初めて大切と気付くのだ。黄泉の静寂が、一層イザナミの耳に痛んだ。
【・・・ぬぅう・・・ま、まだだ・・・!まだ、四凶は墜ちておらぬ!まだ諦めぬ、諦めぬものか!妾が負けては、負けては汎人類史に呑み込まれ、消え去るのみなのだ・・・!】
・・・イザナミは理解する事が出来ない。今戦う相手は、『滅ぼす』以外の手段を相手に出来る事が可能なのだと。
最早泣くことも、すがる事も出来ない黄泉の女神の孤独が・・・彼女達の歴史の、今の『限界』を示していた──
高天ヶ原
『あなたがリッカちゃん?私は鳳凰。四霊で一番綺麗で美麗な鳥なの♪よろしくね♪』
「はい!藤丸リッカです!──親しみやすいんですね、皆さん!」
『それはそうよ、私達くらいになるとわざわざ人間達に偉そうにしないの。私達には人間が必要だってちゃんと理解してるもの。化粧品は作ってくれる人達がいなきゃいけないでしょ?人を脅かすのは、畏れさせなきゃ生きていけない低級な輩だけ。金持ちと強者は喧嘩しないの♪』
リッカ「ふわぁ・・・超越者・・・!」
『色々話したいことはあるけど、今はあっちね。私の力・・・しっかり見てもらいたいわ♪』
「それではガレス、行きますよ。一番槍はまさに、あなたこそが相応しい!」
「はい、マスター!円卓の騎士ガレス、楽園とマスターに勝利の栄光を捧げます!」
【グゥウ、ゥウゥオ・・・!】
もはや邪気は封じられ、情勢は完全に反転した禍肚の都。南の方角に奉られし鳳凰の力を纏うアルトリア、並びにガレスが翼を持つ虎キュウキを追い詰める。七色に輝く七色の魔力を司る衣装を纏うアルトリア神威の強さ、並びに魔力を受けるガレスの前に完全にキュウキは気後れしている。
「それでは、参ります!──いざ!!」
【ウグガッ、ガァアァアァ!!】
向かうガレスに、キュウキが怒りも露に襲い来る。武神でもなきたかが小娘に遅れを取る筈がない。いや・・・彼等は『自身より強い相手』との交戦が余りにも少ない。タケルとの戦いも、何故負けるのか、何故勝てないのかを微塵も省みはしなかった。故に──
「やっ!はっ!てぃ!とぉおう!!」
【グギィイ!!?グギャハァアァ!?】
四凶と互角の存在足る四神、その遥か格上の神格たる四霊、その祝福を受けたガレスとアルトリアの圧倒的な力・・・その絶望的な迄の隔たりすら気付かず、ガレスの槍の猛攻に一方的に叩きのめされる無様を晒すキュウキ。突進は盾で受け止められ、槍の攻撃は防ぐこともままならずに直撃し吹き飛ばされる。戦いというには余りにも一方的な力の差が発生している、先の状況とはまるで異なる展開がキュウキをひたすらに叩きのめした。
楽園が招いた柱が四神であったなら、此処まで圧倒的な差は生まれてはいなかった。地脈の効果もあり、互角程度には抑えられただろう。しかし楽園は困難な道筋の四霊の召喚に挑み、そして成し遂げた。苦戦すらする筈もない神威が発揮された今では、弱きものを貪るしか出来なかった四凶の一角などに勝ち目は決して有り得ない。
「ガレス、援護します!コードキャスト・『
【ウグゴォオォオ!!??】
並びにアルトリアの攻撃も脅威的だった。リッカの龍の鎧と同等クラスの最高品質の礼装、四霊礼装の一つ『鳳凰』。その礼装から放たれる五色の色の魔術──『五大元素』による無数の魔力放出がキュウキに壊滅的なダメージを叩き込んでいく。
「まさか私が、アベレージ・ワンの素養を使えるなんて・・・。これが、最強の守護者の力・・・!」
鳳凰は五色の色を担い、五色の声で鳴くとされる神の鳥。それが司るは即ち五行、転じて五大元素。鳳凰の礼装は着用者に五色五行の魔術行使の権限を授ける。即ち魔術師が持てる魔術属性の限界を越え、アルトリアは五属性の魔術を自在に操れる力を得たのだ。神霊の力を借りるということは、人間の常識や範疇を容易く飛び越える事に他ならない。
「凄いです、マスター!では私も──参ります!『
その五色の魔力放出に圧倒されるキュウキに、だめ押しのガレスの宝具が牙を剥く。あらゆる騎士を馬上槍で薙ぎ倒し、騎士王に猛り狂う狼とまで称えられた怒濤の槍捌き。魔力を受け七色に輝くその連続攻撃は、巨体極まるキュウキをひたすらに打ちのめし、叩きのめし、押し込み、叩き伏せていく。打ち込まれる度に、鳳凰の神威が叩き込まれ霊格の破砕が加速度的に進んでいく。それほどまでに大きい力の差。──勝負とすら呼べぬ、討伐の儀である。
「数多の罪なき魂を喰らい、悪逆非道を繰り返した悪しき獣!このガレスとマスター、鳳凰さまの力を借りて成敗致します!」
【──!】
「この一撃で──!・・・って、あれっ!?」
一撃で破砕、討伐が叶うと言うところで、四凶は四凶たる所以を見せる。紛れもない危機、不利を悟ったキュウキは翼を羽ばたかせ、空へと飛んだのだ。ガレスの槍が、猛々しく空を切る。
「逃げるのですか、こらーっ!散々悪いことをしてきて裁きも受けないとはなんと悪辣な!」
【ガァア、グァアァア!!】
誇りも無く、生きるに執着するモノに正道は通用しない。一目散に逃げ去るキュウキに憤るガレスを、アルトリアが静かに諌める。
「いいえ、ガレス。逃がしません。一刀の下に決着を着けましょう」
「え!ま、マスター!?」
瞬間、アルトリアはクラスカード『アーサー』をインストールし、聖剣エクスカリバーを握り締める。──逃がしはしない、此処で仕留める。そう決意し空を睨むアルトリアに、鳳凰の加護は形となる。
翼が展開し、七色の膨大極まる魔力放出が絶大な推進力と変化し、空を飛翔するための動力を速やかに確保する。四霊の礼装は、サーヴァントだけではなくマスターにすら一騎当千の力を与える。
「行きますよ、ガレス!──翔びます!!」
「ええ、ええ、うひゃわぁあぁあぁ!!?」
手をしっかりと掴み、暗雲の空を切り裂く虹を描き猛烈極まる速度で飛翔するアルトリア、並びにガレス。その速度は凄まじく、何百メートルも離れた筈のキュウキとの距離を数秒でみるみる内に詰めていく。飛行能力を取っても、四霊の存在は何者にも遅れを取ることは有り得ない。
【!?】
キュウキが驚愕する間も無く、アルトリアは行動を起こす。魔力放出を使いキュウキを釘付けにし、そのまま空中にてガレスに勢いを付け──キュウキに向けて投げ付ける。
「逃がすものですかーーーッ!!」
咆哮と共に、ガレスの馬上槍が真っ直ぐキュウキに向けられ、加速と重力を武器に魔力を込めた必殺の一撃が四凶の身体を深々と貫く。──動きが、止まる。
【カ──】
「──『
その機を逃すアルトリアではなかった。魔力を最大にし、超加速にてキュウキに接近し、光輝く聖剣でキュウキの羽根を超高速にて叩き斬る。翼をもがれ、成すすべなくもがき続け地上に落下していくキュウキ。そしてアルトリアはガレスを引き寄せ、空中にて聖剣を振りかぶる・・・!
「『
咆哮と共に振るわれた聖剣の一撃は、キュウキに真っ直ぐに振るわれ輝きを増しながら軌道上の総てを焼き尽くし猛進していく。高々と掲げられた聖剣から立ち上る輝きは、空にかかる暗雲総てを一瞬にして吹き晴らす規模の圧倒的な光量を誇った。それを向けられたキュウキに、最早成す術等ない。
【グ、ァ、ギャ、グゲァアァアァアァア─────!!!!】
聖なる焔の奔流に、最早逃れられぬ死を悟った刹那に懐く感情はなんなのか。耳をつんざく断末魔と共に、聖剣の放つ奔流に飲み込まれ、細胞一片まで焼き尽くされ消え去っていくキュウキ。最早形を成すことも赦されぬ、聖なる浄化の一閃であった。その斬撃は都の北側総てを輝き照らし、闇を撃ち祓いまつろわぬ魂ごと土地を清め癒し抜く。
「──良かった。私達も、リッカちゃんみたいに出来ましたね」
「ま、マスター!凄いです!私、感動しちゃいました!これでマスターも立派な、リッカ系女子ですね!」
「あ、それはなんだか複雑です。あんなにストイックには生きられないですから。・・・まぁでも・・・」
少なくとも、これでキャラ被りやキャラ薄い問題による同じ顔の皆さんに埋もれる事は無いかな・・・。自身のアイデンティティーに関するアドバンテージを得る事が出来、そっと胸を撫で下ろすアルトリアでありましたとさ。
「・・・この礼装、今日だけなんでしょうか・・・」
貰えないかな、カッコいいし・・・。マスターとして、是非とも使い続けたい程の礼装に、想いを馳せながら。
──残る浄化の方角は、残り三方。
アルトリア「リッカちゃん、北方無事奪還しました。どうです?これでリッカちゃんが無理や無茶をする機会は減る筈ですよ」
リッカ『ありがとう!すっごくカッコよかったよ!アルトリアドランザー!』
アルトリア「ドランザー・・・?まぁカッコいいので良しとします。後は任せましたよ。──アイリスフィール」
アイリスフィール『了解、お疲れ様ね!私達もやるわよ、セイバーライオン!』
セイバーライオン『がおっ!!』
鳳凰『お疲れ様~♪ね?あんなダサいヤツなんかに負ける道理なんか微塵も無かったでしょ?勝つのは美しい方って決まってるの♪』
アルトリア「本当にありがとうございます。あなたの美しさと助力、けして忘れません」
鳳凰『いーのいーの♪力在るものが力無きものに力を貸すのは当たり前なんだから♪他の連中の頑張りも応援してあげましょ?ま、美しいのは私達が一番でしょうけど!』
アルトリア「はいっ。──時に相談なのですが、もしよろしければ・・・」
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