リッカ「おぉーい!霊亀さーん!」
『・・・・・・・・・』
リッカ「おっきいからかな、聞こえてないのかなぁ・・・おーい!」
『・・・んん?おぉ、ワシに話し掛けてたの?すまんな、ワシほら、ちょっと図体大きくて・・・聞こえにくいんじゃ。或いはほら、ちょっとほっといたら大陸がな、形がな、変わってたりするし・・・』
リッカ「スケールが違いすぎる!?」
『でもね、だからこそワシだけの持ちネタがいくつかあるんじゃ。可愛いお嬢さん、聞いとくれぃ』
リッカ「はいっ」
『いやー、わし、寝て起きたら大陸離れとった。甲羅に苔ならぬ甲羅に島もできとった。空を見上げたら星がならんどった!皆、寝過ぎは身体によくないぞい!何せ、見上げた星が無かったりするからの!わははははは!』
リッカ「──(スケールがでかすぎて理解できない顔)」
『でな?ワシの同期があやつら三匹でな。応龍と麒麟、鳳凰はワシの甲羅を掃除してくれてな・・・』
そのまま、マイペースな霊亀の対話にリッカ達は付き合い続けた・・・
──南。北の反対、この一帯は建造物を含めたあらゆる物体が正しい形を為していない。欠け、崩れ、壊れ、そして齧られている。全ての物質がある生物の腹の内にしまわれ、喰らわれ、輪廻の輪から外れまつろわぬ存在へと変じてしまい吐き出される。地脈を汚していたのがあの呪詛ならば、まつろわぬ民を吐き出し魂を汚染していた元凶は紛れもなくこの存在と断定して良いだろう。
【ゲッゲッゲッ!!グガガッ!グガガッ!!】
「がおぉおんっ!!」
セイバーライオン、並びにアイリスフィールと対峙せしは食欲と暴食の化身、トウテツ。南に一歩でも脚を踏み入れた存在を敵味方問わず喰らいつくしていった特級の危険因子が、新たな餌と認めた二人のコンビに貪欲に襲い掛かる。牙と爪、巨体を総動員し噛み付き喰らわんと不気味な鳴き声を発しながら戦いを続けている。いや──戦いではない。かの存在が求めているものはただ一つ。『食事』以外に無いのだろう。自分以外の全ては腹を満たすもの。喰っても喰っても無くならない無限の食卓。誇りも礼節も家族も仲間もいない食欲の成れの果て。だから目の前の存在がどんな存在でも関係無い。どれほど力が離れていようと関係無い。
【ゲッゲッゲッ!グガガガッ!】
あの白い肉は旨そうだ。今まで喰った肉はどれも黒ずみ美味くはなく、ただ量だけがあった。喰らえば喰らうほどに腹に感覚が溜まるのが心地よい。量は飽きるほどに喰らった。ならそろそろ質を求めてもいい頃合いだろう。この自分にまとわりつく目障りな奴を殺し、一本一本四肢の先から噛んで味わっていこう。その為に自身は生きている。喰らっても喰らっても、満たされたと感じることはなかった自分が満足できそうな御馳走がある。──其処には無論、誇りも何も介在してはいないが真理があった。
【腹が減った。満腹になりたい】という何の雑じり気もない欲望の発露。自身の状態も、世界の行く末もトウテツにはどうでもいい。ただ、多く食べられればそれでいい。美味ければそれでいい。
【ゲガガガガガガガガァ!!!】
そのスタンスは戦いにも現れている。攻撃を受けども受けども、微塵も怯まない。セイバーライオンの攻撃に噛み付き、突進に噛み付き、防御に噛み付く。戦いのノウハウやいろはなど微塵も無い。単純に欲望のままに牙を振るい続ける巨大な畜生そのものだ。もっと食を、もっと美食を、もっともっと満腹を、満足を・・・!
「がおぉおんーーーっ!!!」
・・・だからこそ、トウテツは気付かなかった。或いは、気付く事が出来なかった。気付こうともしなかった。セイバーライオンの攻撃が確実に、着実に、『己の命を削っている』事実そのものに。
まず、片足がもげた所で違和感を微かに覚えた。走りにくくなったと片跳びで食らい付いた。もう片足が落ちた時、やけに動き辛いと感じながら跳び跳ね牙を剥き出しに食らい付いた。攻撃を交わされ目を潰された際には臭いを嗅ぎ付け、適当に狙いを定めて噛み付いた。たまたま其処に獲物がいた。どれだけ傷付こうとも、身体が無くなろうとも、口と腹があればそれでいいとトウテツは笑っていた。
【グッガッガッガッ!!ググギャギャギャギャギャギャ!!】
あぁ、美味しそうな臭いがすぐ近くにある。足は無くても、目が潰れていても、胴体が別れようとも逃がしはしない。あの白い肉はきっと美味しいぞ。絶対に食べ尽くしてやるぞ、絶対に───
【ガ、ガガ、──グガガガァ──ッ!?】
瞬間、トウテツの身体にいくつもの『樹木』が突き刺さった。鋭利な刃と化したその緑の枝は、突き刺さった瞬間にトウテツを遥か上空へと押し上げていく。飛び道具ではない。これは霊亀から賜りし礼装が披露せしかの亀の力、『活性』と『生長』の力の権限である。
「ありがとう、セイバーライオン!これで決めるわ!」
「がおぉおんっ!!」
アイリスフィールの魔術回路に、辺り一帯に神代の魔力『真エーテル』が満ち溢れる。溢れ出す生命の息吹が吹き荒れ、トウテツが喰らい土壌が汚染された禍肚に生命とかつての世界の魔力が咲き誇る。
「凄いわ、魔力を変換するんじゃなくて自身が魔力を産み出すものとなる・・・!これが、太古から生きる亀の力を借りるという事なのね・・・!」
悠久の時を生き、尚も成長する霊亀の力、それは即ち治癒と生命の活性。自らが霊脈、地脈となり無限に等しい活力と魔力を辺りに振り撒き続けるもの。この環境の変化はそれが原因だった。猛烈な速度で活性化は続き、瞬時に色とりどりの実をつけた樹木に、足許には花が咲き乱れ草木が芽吹く。そして、トウテツを貫いた樹木は高く高く天に伸び、猛烈に巨大化しトウテツを突き刺した部分から引き裂かんとするほどに伸びていく。その成長度合いは凄まじく、最早手の届かぬ高さへ、遥か上空、雲に届きうる高さまでに伸び生長した。トウテツもそれに倣い、遥か上空にて身体を裂かれ絶命する運びとなる。
──そんな終幕の最中、トウテツは見たこともない景色を垣間見た。自身を貫く樹木だけではない、瞬く間に遠くなっていく、先程まで自分がいた場所だ。
【カ、クカッ──】
見たこともない色とりどりな実に、木に、いい匂いが立ち込める生命に溢れた、瑞々しい樹木や草木達。新鮮さに満ち溢れた、聞いたことも口にした事もない食物達。その存在を認めたトウテツは、初めて──腹の底から音を鳴らし、思った。
【アァア──】
【食いたい】──あの色をした木を、草を、花を見るのは初めてだ。食べたらどんな味がするのだろう、どんな歯応えがあるのだろう。どんな感触がするのだろう。どんな後味を味わえるだろう。貫かれ、身動き一つ取れない中でトウテツはただただ、口を噛み合わせ歯を噛みならし続けた。
もどかしい、もどかしい。初めて心から【食べてみたい】【味わってみたい】と思うことが出来たのに。何一つ味わう事が出来ないなんて。哀しい、哀しい事だ。それは死ぬ事より哀しい事だ。
【アハ、アハハハハァ───】
どんな食べ方をしてみよう。どんな風に噛めば美味しいだろう。どんな風に味わえば美味しくなるだろう。食べたいなぁ、食べたいなぁ・・・。
だが、それは叶わない。もう動かせるのは口だけだ。自分に突き刺さった大樹は、刹那に自身を引き裂くだろう。だからこそ、トウテツは何も喰らうことが出来ない。何も味わう事が出来ない。
【ウヘハハハハハハハ!ウハヒッ!ウキャキャキャキャァ───!!】
あぁ、待ちに待った御馳走だ!今度こそ、満腹になれるはずだ!最高の一口が、目の前にある!狂喜と歓喜の中、トウテツは自身の歯が砕けん勢いで歯を噛み鳴らし──
【───ァ】
聖なる大樹に、真っ二つに裂かれ消滅する。かつての世界で人を生け贄として喰らい、その暴虐と手に負えなさから女神に封印され、放されたこの地で思うままに貪食を貪ってきたものの末路。
・・・自身が本当に食べてみたいと思った御馳走を何一つ、たった一口も味わう事が叶わない。それが、かの四凶の一角に与えられた末路にして、最大の罰だった。そして皮肉にも──
「がぉおぉおーーーんっ!!!!」
トウテツが喰らった、その南の地には。霊亀の力により溢れた木々達、草木達、並びに高く聳える霊大樹が雄々しく。──生命の息吹を鮮烈に満ち溢れ示していた──。
アイリスフィール「こちら南方!無事にトウテツを倒したわ!後は頼むわよ、ぐっちゃん!」
ぐっちゃん『見れば解るわ。派手にやったみたいね・・・リッカ?私達の活躍見てなさいよ、って』
リッカ『へぇ~。麒麟ちゃんは甲羅の島を走り回るのが好きなんですね~』
『そうそう。ワシ、巷でほら、体にいいマイナスイオンが出てるからの。こらーげん?とかいうのもあるから、鳳凰もよく止まっとる。応龍もああ見えて図体のでかさが怖がられないか気にしていてなぁ~』
ぐっちゃん(世間話!?)
リッカ『あ!勝ったみたいですよおじいちゃん!』
『ほんと?怪我とかしとらん?大丈夫?』
アイリスフィール「えぇ、本当にありがとうございました。極東の守護者、心から敬服致します」
『ええよ、ええよ。もうわしも長くない。受け継ぐ相手が現れたのは善き事じゃ・・・わしももう悔いはない・・・』
アイリスフィール「えっ!?そんな・・・!」
『そうじゃなあ・・・もって後、星の死と直列を見れるかぐらいじゃなぁ・・・お迎えが近いわい・・・』
リッカ『生き過ぎぃ!?』
アイリスフィール「あ、あはは・・・天然なおじいちゃんなのね・・・」
セイバーライオン「がおっ!(木の実を食べている)」
ぐっちゃん『ま、まぁ見てなさい!私達の力!東、攻略を開始するわ──!』
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