人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ロマン『単独顕現便利だなぁ!リッカ君、速やかに君には後を追ってもらうよ!大丈夫かい!?』
オルガマリー『恐らく、あなたの選択が世界の命運を定めるわ。王と姫様の言葉をよく聞いて、選択をするのよ』
「──解った!」
『リッカ様。こちらを』
『ヒルコの装束』
「これは・・・」
『イザナミと語り合う際に、御使いください。彼女がイザナミであるならば、必ずや信じてくださいましょうや・・・』
「──解った!必ず活かすよ!」
【・・・我等は、どのような結末も受け入れよう】
「どうか、我等の歴史を頼む」
「──解った!!」
ロマン『レイシフト、開始!』
オルガマリー『世界を、頼んだわよ。リッカ、ギル。姫様──』
単独顕現にて、原初の日本、混沌の豊芦原に降り立ったマスターたるリッカ、そしてそのメインサーヴァントたる御機嫌王、ギルガメッシュ。カルデアは遂に此処に至った。剪定された未来、異なる歴史の根源に至り、原因を抜粋し、それを解決し剪定の未来を覆す。世界を手中に収め、初めて叶うこの作業を以て攻略に幕を下ろすのだ。そしてそれは王達と、何より今を生きるマスターに託される。
「ではマスター、お前はこの歴史をどう解決する?世界の覇を掴んだものの特権だ、お前の理想を告げてみよ。その意を汲んでやろうではないか」
「えっ!?ギルが世界を定めるんじゃないの!?」
《方針と言うものがあろう。この勝利は財の勝利でもある。勝者の意見は聞き届けねばなるまい。エア、フォウ。お前達の意見も聞かせよ。お前達が望む未来の紋様は如何な色合いだ?》
それは、正真正銘なる世界を左右する決断。この判断にて、編纂されるか更なる混迷を極めるか、再び剪定に行き着くのかが決まるのだ。その言葉を聞き、それぞれの反応を示す。
「──私は決まってるよ。間が悪かったとしか言えないすれ違いを、なんとかしたい!」
──ワタシに、世界を左右する権利はありません。あるがまま、其処に生きる者達が存続する事のみを願います。
(そうだなぁ・・・じゃあボクは、終わった後に笑顔で語れる思い出になるような世界がいい!)
「──申告、確かに受け取った。ならば時間が惜しい!行くぞマスター!すれ違いし夫婦を取り持つ、キューピッド王になってやろうではないか!」
「おーっ!王だけに!!」
「ふはははははははははは!!我がマスターに相応しいギャグセンスよ!そうでなくてはな!!」
──一つでもダジャレを言えるあなた!今日からあなたがギルのマスターです!
(ハードル低すぎないかな!?)
財と姫、獣の言葉を受け取り王は行動に移す。これこそ、王が行う世界の編纂にして愉悦の始まり──
~ 黄泉 ~
【火の神を産み、死しはしたが悔いは無い。それは母である内に覚悟していた事。・・・そして、せめて一言別れを告げなくては・・・】
黄泉の一角にて、そう一人呟く女神がある。黄泉の食事を前に覚悟を決めた面持ちの絶世の美女。暗黒の空間に座する女神──紛れもなく、イザナミである。彼女は、決意していた。
【この黄泉こそ、いずれ飽和するであろう命の受け止める先。誰かが主として治めねばならぬ。・・・夫と添い遂げれぬは無念だが、それも母として受け入れよう・・・迷わぬうちに、いざ・・・!】
イザナミは理解していた。繁栄の果てには死があり、命の先には死があるものと。カグツチに焼かれた事で、女神の次なる役割を見据えていた。そう、黄泉の管理と統治。新たに来た神や子が怯える事の無いよう、自身が女神として治めんと考え【ヨモツヘグイ】の儀式を行わんとする瞬間──
【・・・母よ。それをする前に、まずは別れと相談を済ませるのだ】
【!?その声、その天笠、装い・・・まさか、ヒルコ!?ヒルコであるのか!?】
目の前に現れし、天笠と藁の羽織の装い。それは、自ら初めに生み、旅立ってしまった筈のヒルコそのもの。その声には、確かな確信と再会の喜びを感じさせる。イザナミは感激し、ヒルコの手を握る。
【母よ。けして別れを蔑ろにしてはならぬ。ヨモツヘグイは、あなたを腐らせる。イザナギは驚いてしまうだろう。ヨモツヘグイの前に、イザナギを待つのだ】
【う・・・。そ、そうか・・・やっぱりそうか・・・。もう会うことはない!なんてかっこをつけたら後悔するかな、やっぱり・・・】
(これがあのイザナミ様なの!?よっぽどショックだったんだ・・・)
そう、勿論彼女はヒルコではない。いや、その装いは伊邪那美から受け取ったヒルコの装いそのものである。リッカが纏い、言霊を込めて語っているのだ。ヒルコの神の力を宿して。
【わ、解った。覚悟は揺らがぬが、大人しくイザナギを待つとする。その間・・・】
【その間、黄泉の食物を美味しくし、あなたに化粧を施そう。美麗な姿のままで会えば、万事上手くいくとも】
イザナミは頷く。元々、彼女は理知的な女神なのだ。既に黄泉に身を置く決意を定め、殺された事を微塵も後悔していない。目の前にいる突然湧いたヒルコっぽい何かも、疑わずに受け入れる度量を見せる。若干ノリで行動しすぎではあるが、基本的に善良で、底抜けに優しい女神であった。・・・それほど迄に、拒絶された事の絶望が深かったという話。
【では始めよう。あなたをメイクアップする時間である】
【め、めいくあっぷ?ヒルコ、そなた本州にて何を見たのだ・・・?】
出来るだけ、名を持ち出し干渉はしない。どうしようもなく間が悪かったものを、正すだけ。リッカはそれに徹し、イザナミの判断を尊重する。──後は、イザナギの到来を待つのみ・・・。
~ 高天ヶ原 ~
『・・・そうか・・・。イザナミは、黄泉の女神となる決意を・・・』
対する高天ヶ原、イザナギの場面。悲嘆にくれ、嘆き哀しみながら発作的にカグツチを殺めんとしていたイザナギに間一髪フォウが割り込み、王が手甲の一撃を頬に叩き込み、事情を姫が誠心誠意説明し、納得させ今に至る。イザナギはイザナミの決断、そして素性を明かした王の言葉を静かに受け入れた。誰も悪くはない。産まれた生に罪は無い。それは間が悪かっただけ。ならば貴様には為すべき事があると静かに説き伏せた。そして・・・
『・・・解った。では、イザナミの決断を尊重する。最後に、一目会いに向かおう』
「取り戻す、ではないのか?今ならば充分に間に合おうさ」
『いいや。・・・生き返るのは嬉しい。出来るならずっと一緒にいたい。・・・でも、それでは私の横暴に妻と子を付き合わせる事になる。新たな剪定を招く事態となる。創造の神として・・・そなたらの未来を、これから生まれ出ずる生命を脅かす訳にはいかない』
彼もまた、合理的に思慮深く物事を見据えることが出来る神であった。危うく子を殺しかけた事を深く悔やみ、カグツチを抱き立ち上がる。
『黄泉を治めるであろう彼女に、毎年会いにいくとも。哀しい想いをさせないように。・・・そして、今。別れを告げに行こうと思う。・・・どうか、見守ってはもらえないだろうか』
「良かろう。もとよりそのつもりで来たのだ。貴様らの歴史、それがどのような変革と結末をもたらすか・・・特等席で見せてもらおうではないか」
──そうして、王の導きの下、イザナギとイザナミは黄泉にて出会う。其処からの会話と別れは、滞りなくおこなわれた。
【・・・そうでしたか。あのヒルコは、妾達の身を案じて来てくださった子の・・・】
『我等の選択が、未来の子達の大きな分岐となる。・・・──我が愛しき妻よ、イザナミよ。どうか産まれし生命の安らぎを担ってはもらえぬか』
【勿論、そのつもりでございます。どうかあなたは、沢山の産屋をお建てください。千五百の命の千を、妾が御受け取り致しましょう】
『私も、そなたがけして無意味にならぬよう生命を産み続ける。けして忘れぬ、毎年会いに来る。カグツチと共に。・・・だから、どうか哀しむな。我が妻よ』
【その言葉が有る限り・・・妾はけしてあなたを憎みませぬ。ありがとう、また会いに来てくれて。私を忘れないと言ってくださり・・・カグツチを愛してくださり、ありがとうございます・・・】
涙ながらに抱擁を交わし、別離の義を完遂する二柱。暖かく燃えるカグツチが、二人を穏やかに照らし続ける。
【カグツチは生き残ったけれど、黄泉の女神としてイザナミ様はいるし、これからもイザナギ様は命を産む・・・。なんだか、些細なすれ違いを直すだけで全部上手くいったね!】
「蝶の羽ばたき、という言葉があろう。未来というもの、過去と言うものは些細な差違で千変万化と形を変える。此度の原因は、ただ間が悪かっただけの事。改竄、改編の難易度は単純に過ぎたな」
──滅ぼす事も、憎む事も無くなり、イザナギ様とイザナミ様はそれぞれの治世へ。しかしその心は繋がったまま・・・。どうか、あの方々の未来が遥かに続くことを願いたいですね!
【きっと、きっと大丈夫だよ。別れを笑顔と涙で迎えられたなら・・・。この世界は、きっと大丈夫!】
(何もかもが初めてだから、どうなるかは解らないけど・・・きっと上手くいくさ)
《獣の勘か?フォウ》
(確信さ。エアやリッカちゃん、皆、そしてオマエが手掛けた未来が滅びる筈が無いってね!)
《ふはは、漸くなついたか!よい、では長居は無用だ!変化は即座に現れよう。かの女神の変化を見届けるとしようではないか!》
そして、黄金の王達は素早く帰還を果たす。心が通じ合い、和やかに語り合う夫婦の神と燃える火神を視界に見据えながら──
【親子は、仲良しが一番!──お幸せに、日本の最初の親子様!】
一同は、汎人類史へと帰還する。其処へ待つ、結末へと向けて
『戻りましたか。・・・八百万の神々を代表して礼を言います。あなた方は、本当によくやってくださいました』
リッカ「イザナミ様!イザナミ様とアマノおばあちゃんは・・・!」
【・・・ありがとう、優しき子よ。散々と迷惑をかけたにも関わらず・・・本当に、ありがとう】
其処に、憎悪に染まったイザナミはもういない。カグツチと茨木の火に焼き尽くされ、同時にロストベルトそのものが消え去った事で、彼女達は帯の存在から点の存在になった。つまり・・・汎人類史の特異点に発生した存在として、観測が果たされたのである。彼女達は、速やかに消え去らんとしている。可能性の一つとして・・・迎えられたのだ。
温羅「アタシは消えないんだな・・・?アレか?リッちゃんと契約してるからか?」
天逆毎「そうだな。今の我等は糸の切れた凧。要石や糸がなくば漂う他ない。しかしお前は違うな。龍華というマスターとの絆と契約が、お前を存在させているんだ。──つまり」
ギルガメッシュ「聡明だな。然り──敗者の命運は勝者次第。最後の決議はマスターに委ねられるのだ」
ロマン『そうか、不安定な存在としてあるかつてのロストベルトの存在は、マスター・・・契約者がいなければ存在を保てない!リッカ君が契約しなくちゃ消えてしまうのか・・・!』
それは最後の確認だ。かつてのロストベルトの遺産は、残滓は、汎人類史に残すに足るものなのか。それは、マスターたる存在に託される。
茨木「・・・・・・」
カグツチ『・・・・・・』
タケル「・・・・・・」
一同が、固唾を飲みリッカの答えを見守る。彼女が否と言えば、二人は消え去るしか無い。世界の編纂に取り残される。汎人類史への搬入を拒絶されるのだ。
リッカ「───二人とも」
だが、彼女をよく知る者はそんな心配など浮かべなかった。彼女は、誰もが望む選択を言葉にし、令呪を輝かせ・・・
「──汎人類史へ、ようこそ!!」
【・・・おぉ・・・】
「・・・寛大な処置、心より感謝する。これからの償いの旅路、全霊で行うと誓おう─」
『・・・良かった・・・本当に・・・』
タケル『漸く、悔恨が晴れたな。──母よ』
『ありがとう、タケちゃん!それでは──此処に!』
ギル「此処に!我等汎人類史の完勝を宣言する!!心せよ──祝勝の宴の開幕だ!!」
『全部言われたぁ!?』
茨木「やったぞ!やったぞ!カグツチ!貴様がやってのけたのだ!貴様の勝ちだ!」
カグツチ『うん!うん!ありがとう・・・ばらきー!』
温羅「まー、なんだ。アレだな。・・・これからもよろしくな。母ちゃんにばあちゃんよ」
「こちらこそだ。色々教えてもらおう、覚悟しておけ」
【聞かせておくれ。そなたの旅を。そなたは妾の孫なのだから──】
長い戦いは今終わり、歴史に新たな客を招き──楽園は今宵も磐石を謳う──