イザナミ『それはねぇ・・・理知的で思慮深くて、とても思いやりのあるいい子でした。今回の戦いにも、真っ先に目的を示してくれましたから。『異なる歴史より、嘆きの母が来る。母よ、私の力を持ち立ち上がるのだ』と、躊躇わず霊基を私に・・・』
(ロストベルトの原因大体見抜いてたの!?・・・醜いだけで、その魂は綺麗って・・・)
『誰がなんと言おうと、ヒルコは私達の息子です。誰が、なんと言おうと・・・』
(・・・あぁ、そっか。どこまで行っても、マスターとサーヴァントって似るんだ・・・)
『わぁぁあぁあん!もっと、もっとちゃんと産んであげたら、気を遣うことなんて無かったのにぃ!ごめんなさいヒルコぉ~!』
リッカ「な、泣かないで泣かないでばあちゃま~!」
あまこー「ワフン・・・(自分で地雷踏んでる・・・)」
伊邪奈美 ステータス
筋力 E
耐久 E
敏捷 E
魔力 EX
幸運 EX
宝具 EX
「よし、これでつくもっちの手入れは終わったな。よくぞ健闘した。汝らは吾の自慢の部下たちだ。まこと大儀であったぞ・・・うんうん」
場所を変え、宴の開催地の一つ高天ヶ原。神のおわすイザナミの固有結界にして特異点もまた、宴の気風に湧いている。神々がそれぞれに祝福を打ち上げるなか、茨木童子は一人もくもくとつくもっち一体一体を整備していた。禍肚を駆け抜け、指揮をし、共に戦い抜いた同胞たち。戦いを終えた今だからこそ、入念に労る。それはやはり、鬼らしからぬ茨木のマメさと気遣い。・・・そして、実は一人ではない。
『繊細・・・ばらきー、鬼っぽくない』
「汝、辛口で辛辣だな・・・慣れ親しんだ気安さと受け取っておくぞ?」
そう、傍らにはカグツチだ。茨木からしてみれば不思議な事だが、カグツチは茨木にくっつき離れない。戦いは終わり、母にいくらでも甘えられるというのに不思議な事だと首をかしげる。
「あやつらのように、契約を果たした訳でもないと言うに・・・酔狂よな」
そう、実はこの高天ヶ原は存続が決定している。閻魔亭と同じ、楽園の別荘特異点としての役割であり。固有結界に楽園名物、手頃な聖杯を放り込み人理に影響しない浮遊特異点として維持する。そうすることで、神霊の召喚に行使できる空間が生誕するというカラクリだ。カルデアの召喚システムと合わせればロストベルトの王が如何なる強大さを誇っても関係無く召喚が叶う。使えるものは何でも使うのが楽園流である。と言うわけで、今回活躍したマスター達もそれぞれ守護者達に礼を行っている。お礼参りというやつだ。
『やったわね、アルトリアちゃん!これからも一緒に戦えるみたい、その衣装もどんどん使っちゃって?お洒落に気を使わないとダメよ♪』
「ありがとうございます!性能もそうですが、この美しさは気に入っていたので・・・嬉しいです!」
「おぉお・・・!空を駆けるマスター!ガレス、感動を隠しきれません!おめでとうございます!本当に!」
鳳凰とアルトリアは意気投合。美しさと清廉さのベストマッチはよりよい交流を産み出した。マスター礼装も引き続き託される事になり、非常に御満悦である。ガレスも太陽の様ににっこり。
『ところで・・・ガレスちゃん。あなたのお手々、綺麗よね・・・』
「鳳凰、お目が高い・・・ガレスは白き手のガレスなんですよ・・・」
「うぇ、うぇ、うぇえぇ!?」
~
『よくやってくれたなぁ。こんなしわがれたジジィ亀を、お前様みたいな別嬪さんが使ってくれるなんて。ワシはもう嬉しみで死んでしまうわい。数億年後に』
「非常に長生きね、霊亀おじいさん。私も、東洋の神秘の秘奥に触れられた事・・・大変光栄だったわ」
「がぉん!」
鼻先で会話しあう霊亀とアイリ、セイバーライオン。相棒・・・というよりは介護師とおじいちゃんのようなテンションではあるが、きちんと互いを思いやっている和やかな空間が出来上がっている。そのサイズに比べ、心の距離はずっと近い。
「それで、その・・・霊亀はその、空を飛べるのかしら?こう、両足をしまって・・・回転して・・・」
『出来るよ?でもアレやると環境が変わるから禁止されとるの。すまんなぁ』
「出来るのね・・・!?」
「がぉん!?」
割と衝撃な事実が判明する。その運用から、一時は天空移動要塞として名を馳せた事もあるという事実があるのはまた別の話──
~
『自爆しない、短気を起こさない。マスターが戦うは最終手段。不死身を過信しない。よろしいな』
「はい・・・精進します・・・」
応龍、ぐっちゃんに説法。ぐっちゃんに関しては刺しておかないといけない釘が多すぎる。流石に竜を越える幻想種の龍に説き伏せられ反抗が叶う筈もなく、粛々と従うしおらしいぐっちゃんに微笑ましげな視線を蘭と項羽は送る。
「最近はマシになってきたとはいえ、ふとすると自爆に走りますからねマスターは。応龍様の眼にかかれば無茶には至らないでしょう」
「親身な対応、痛み入る。我が妻の痛ましき姿が少しでも減りうるならば、これほど喜ばしいことはない」
『そなたを心配する者達の気持ちを軽んじぬよう。何も言われなくなった時こそが終わりと知るように』
「はい・・・心に刻みます、応龍様・・・」
応龍のありがたいお言葉にて行われるガチめの説教に、しなだれて甘んじるぐっちゃん。それほどまでに四霊という存在の格は高い。そんな存在に本気で心配される自身が恥ずかしいやら情けないやらで、顔を赤くしたり青くしたりするぐっちゃんを二人は微笑ましげに眺め続けるのでしたとさ。
~
『あふふふ!そこ、そこもっと~!』
「解った、こうか?」
麒麟とカドック。人間より二回り大きい神獣麒麟は今野原に腹を見せ寝転がり、満足げに動いている。それもその筈、カドックがブラッシングを行っているのだ。さらさら滑らかで、でもごわごわしてふわふわしている。神の体の不可思議さと神聖さに戦きながら、カドックは懸命に麒麟と触れあう。
「今回の勝利は、君達四霊がいてくれたからだ。こうして素敵な礼装も使わせてくれて・・・」
『カドック、手つきがいやらしいのではないのかしら』
「そんな事無いだろう!・・・無性、だよな?麒麟」
『どっちでも大丈夫だよ!んーん、力になれて良かったよ~!私たち、人間の力になれるところが一番好きなところがあるから!』
「そうなのか・・・?」
『そうだよ~。息をするように誰かを助けられる様になって、初めて極みの道は拓かれる・・・って、黄龍様が言ってた!』
「~。・・・途方も無い領域だな。自己と自身を第一にする人間には、遠い遠い領域だ」
『あら、そうかしら?遠くても、果てしなくても。諦めず前を向いて歩けば辿り着けるものよ?』
「~。・・・君はいつだって僕の諦めや逃げを潰してくれるな」
『あら、御免あそばせ。負け犬のあなたはつまらないもの。今のあなたが──』
「今の僕が、君に相応しいって言うんだろ。皇女様」
『───』
「~。静かになったな。続きをしようか、麒麟」
『仲良しなんだね~!そういうの大好き!』
「仲良しかどうかは想像に任せるけれど・・・まぁ色んな意味で僕に不可欠な存在だよ。彼女はね」
(負け犬に餌をやる、物好きな皇女様だもんな。・・・お陰様で、やっと立ち上がれた)
感謝する。言葉にしなくとも──善人にのみ身体に触れる資格がある麒麟の身体に触れるカドックに、かつての劣等感など存在していない事を如実に顕していた。
~
「プレロー美味し。プレロー美味し」
『先輩担当の聖獣さん、来てくれませんでしたね。タケちゃんさんが強すぎたからでしょうかね?』
中央にて糖分摂取を行い、流れる雲を見やるはくのん。BBとの通信を開き、のんびりと過ごす。彼女は、いつでも何処でもいつも通り。
「余力と余裕があるならそれが一番。なんか聞いた話によると、四霊が全員倒されたら出てくるんだって」
『ホントのホントの最終兵器なんですかぁ!?マルドゥークさんといい、過剰戦力良くないと思いまーす!』
「でも、非力な人間が一生懸命ギリギリまで頑張って、踏ん張ってこそ未来は掴めるんだと思う。犬空間の私のように。犬空間の私のように」
(げっ!これデッドフラグです!?)
「なんかムシャクシャしてきた。帰ったらBBいじめよ。やらしい後輩やっつけるザビ」
『せんぱぁい!なんでBBちゃんにはそんな理不尽なんですかぁ!?』
「ぐだーずに変わって、お仕置きよ」
『私無関係じゃないですかぁー!?横暴です~!?』
・・・誰も知る由も無いが。『彼女がいるなら大丈夫だろう』と後進と仲間に黄龍は信を託していたのだ。黄龍──
──かの龍が降臨していたならば、召喚した瞬間に総てが終わっていた程。それほどまでに強力な存在は、敢えて召喚されずに行く末を見守った。自身の代わりとして・・・
「はぁ・・・すいーつじゃんぬ行こ」
『彼女を招く』という因果を、確定することによって。
カグツチ『・・・変なの。ばらきーにも大切な人がいるんだから、そっちに行けばいいのに』
「ん、確かに二人の鬼は桃源郷にて宴をしている。吾も本来ならそちらに向かうべきなのだが・・・やるべき事があるのでな」
『?やること?』
そう言って、茨木はカグツチに手をさしのべる。共に行こうと誘う合図だ。目を白黒させるカグツチに、茨木は告げる。
「貴様、先の様子から見るに何かを楽しむことをしなかったであろう。禍根を断ち、和解を果たしたのだ。そろそろ自身の楽しさを求めてもバチは当たらなかろう。吾と共に宴を楽しもうではないか」
『・・・いいの?』
「今更何を言うか。吾は貴様を求めた。ならば責任を果たすまで。それが首魁の責任というものだ。えぇい、早く立て!」
立ち上がらせ、高天ヶ原の建物へと駆け出していく。言葉にはしないが・・・彼女は、カグツチの為に高天ヶ原に残ったのだ。それが、自身の務めとして。
楽しさを知らぬ人生はつまらぬ。楽しく生きる手本を見せてやるために。それは、ともすれば・・・
『・・・。・・・ばらきー』
「ん?」
『・・・ありがとう』
「・・・ふん。礼は吾の薦める菓子を喰らってからにせよ!突撃ィ!」
『うん・・・とつげきー!』
・・・──友情と、呼ばれる感情であったのかもしれない。野原を走る鬼と神を、芦原の風が優しく撫で吹いた──
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