人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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エンディングになります!


帰還

レイシフトから目覚め、目を開けてみれば、そこは見慣れたカルデアの管制室であった

 

 

 

 

「――二度、いや、フユキも入れれば三度めか。もう慣れ親しんだものよ」

 

 

気が付けば、右手には聖杯が握られている

 

真紅と黄金に彩られた、大樹の意匠を持つ聖杯

 

 

――ローマの情熱を形にしたがごとき、意匠の聖杯だ

 

 

「また貯蓄は成ったか。よしよし、特異点を総て飲み干した聖杯、使いどころが楽しみよ」

 

 

「オルガただいま――!!!」

 

叫び、マスターがオルガマリーに抱きつく

 

 

「凄かった!本当に凄かったよオルガ!固有結界!なんかもう、凄かった!!」

 

「そ、そう?なんだか・・・恥ずかしいわね」

 

「私もそうおもいます。本当に、本当に・・・お疲れさまでした」

 

 

「当然よ。何せ私の弟子よ?私の!」

「おっと!オルガマリーの初めの師匠は私だぜ?その起源はゆずれないなぁ!」

 

「私だって誇ってもいいでしょう!?高速神言とか魔術の維持のコツとか、教えたもの!」

 

「死を肩代わりしてくれる御守りやあらゆるものの製造を教えたのは私だとも!聖杯をシバとトリスメギストス、ひいてはカルデアに接続を叶わせたのは私だとも!」

 

「何よ!私とどっこいじゃない!」

「どちらが偉大かは、語るまでもないんじゃないかな?」

 

見ればメディアとダ・ヴィンチちゃんの二人が、自慢をしながらぶつかり合っている

 

 

「・・・師匠二人は、気にしないで。ずっとあの調子だから」

 

「固有結界ができた途端、メディアもダ・ヴィンチちゃんも所長の自慢ばかりでさ。まぁ――自慢したいのはボクもなんだけどね」

 

「・・・そうか」

 

 

――もはや、言葉にするまでもない。英雄王の真価を引き出せたのは、彼女の力あってこそだ

 

 

「英雄王、お疲れさまでした。――その、私なりに、精一杯やってみましたが・・・」

 

「・・・最早言葉はいるまい」

 

 

黄金の波紋から、金色の名札を渡す

 

 

「オルガマリー・アニムスフィア。このカルデアの名代を名乗ること、真に許す」

 

「!」

 

「貴様の功績、人間どもの模範となろう。――誠に、大儀であった。――流石は、我の財となっただけの事はある」

 

――あぁ、本当にありがとう。オルガマリー

 

 

君のお陰で、また。未来に道が繋がったのだ

 

 

「――ギル・・・!」

 

 

「やったね!ギルに認められたよ!いいなぁ・・・私もギルに、我の自慢のマスターだって言われたいなぁ」

 

「励め。我に称賛を口にさせて見せよ」

 

「もちろん!私はやるぞー!!」

 

 

「僕としてはもう十分くらい頑張ってるんだけどなぁ」

 

 

「たわけ。健闘を評価するは所感ではない。もたらした結果よ。ソレが足りていたならば、結果は人理修復という形で正しく顕れよう」

 

 

――そうだ。マスターが一人前になった時こそ

 

 

あのオルガマリーの景色を、皆で眺める時なのだろう

 

 

「――では、ギル・・・ローマを巡る作戦終了の号令を」

 

 

ー王の号令の時間だ。自分は沈黙しよう

 

「うむ・・・カルデアに参ずる者共よ!貴様らの敢闘により、また一つ我等は正しき未来を取り戻した!」

 

器のカリスマに任せ、自分は半覚醒に意識を陥らせる

 

 

「最早貴様らの手腕、疑うべくもなく!人理に向き合う我等の足跡は、正しく遥か未来に続いているものであると自覚せよ!帝国たるローマを救った貴様らの価値は、また一つ上等なモノに査定された!」

 

 

――そうだ。この歩みは、確実に

 

遥かな未来へと、進んでいると自信をもって言える

 

 

「その努力と必死さに免じ、我の至宝を目の当たりにした栄誉を赦す!誇るがいい!貴様らは正しく、人類最古の宝物を見るに相応しき活躍を示したのだ!!」

 

「「「「「光栄至極の至り!!ギルガメッシュ王、万歳!!」」」」」

 

 

「だが忘れるな!我等の目的は遥か人理を救うこと!!一つや二つを是正しようが、一つしくじり失態を晒し、そのまま我等が倒れれば、その総てが人理諸とも水泡に帰すと知れ!!」

 

 

――そうだ。成功に沸けども揺るぎなく、困難なれど悲観なく

 

 

「油断や慢心など貴様らには2000年早い!!自信をつけながらも、日々の研鑽を怠るな!!人理たる織物を貴様らの手に取り戻すまで、我等の歩みは続くと知れ――!!」

 

 

 

「「「「「ギルガメッシュ王の御言葉、我等が胸に刻みます!!」」」」」

 

 

大歓声に沸くカルデア

 

 

「これこれ、これがなくちゃね!」

 

「・・・私なんか、まだまだよ。あんなに力強く、誰かを鼓舞はできないわ」

 

「大丈夫大丈夫!今できなくても、いつかできるようになればいいんだよ!」

 

「リッカ・・・」

 

「半人前は、いつか必ず一人前になるんだから!」

 

「はい。私達に出来るなら、所長にも必ず!」

 

「・・・ありがとう。二人とも」

 

「比較が英雄王はちょっと高すぎる気がするけどなぁ・・・もう少し小さくていいんじゃないかな?」

 

「・・・目の前に頂点があるんだもの。どうせなら、目指してみましょう。私達、皆で」

 

「うん!皆で!」

 

「はい!」

 

「・・・そうだね。僕も、全部が終わったらこのリゾート生活をエンジョイするぞぅ!!」

 

「ロマニは十分楽しんでるじゃない。バイタルメンタルも健康そのものよ」

 

「不健康になる要因がないからね!夜九時に寝て7時に起きるホワイト事業だ!美味しい御飯!甘い甘味!ふかふかベッド!カルデア万歳!」

 

「まったく・・・まぁ、リゾートだものね、ここ」

 

 

「ギルが作った、ね」

 

 

――また一つ。世界の在り方が、正しきものへと近付いた

 

 

「あ!そう言えばジャンヌオルタ!ジャンヌオルタはどこ!?」

 

「あ、彼女?彼女なら――」

 

「はいはい、いるわよ。ジャンヌオルタはここにいるわよ」

 

 

がらがらと、見上げるほどの巨大なケーキを管制室に持ってくるジャンヌオルタ

 

「すごっ!!」

 

 

「特異点攻略いわ・・・こほん。余り物を作りすぎました。せいぜい苦しんで処理してください」

 

「これオルタが!?3メートルくらいあるけど!?」

 

「嬉しく・・・こほん、なんとなく作りすぎました。残さず食べなさいよね」

 

「す、凄いです!」

 

「フォウ!(凝り性だ!凝り性だこの妹!)」

 

「ショート、チョコレート、ストロベリー。位置によって味が違います。好きな場所から食べるのね。味わっ・・・精々虫歯にならないように」

 

「ありがとうオルタ――!!」

 

「抱きつくなっての・・・その」

 

「?」

 

「・・・わ、わた」

 

「わた?」

 

「私を、呼んで、くれ、て・・・あ、あり、ありが・・・」

 

 

「総員沈黙せよ!!ジャンヌオルタの言葉である!!」

 

「金ぴか――――!!!!」

 

「気にするな、言葉を紡げ。ありが?なんだ?ありがとは?ん?」

 

 

「るっさぁい!!帰る!!寝る!!」

 

「フハハ、貴様の部屋はマスターと相部屋だ。続きは部屋でやるのだな」

 

「黙れ金ぴか!あんたなんか本当にだいっきらい!!死ね!焼けて死ね!あんたなんか手にするもの全部金ぴかになればいいのよ――!!」

 

顔を真っ赤にして走り去るジャンヌオルタ。――真面目で律儀なのは微塵も変わっていないらしい

 

あれは・・・マスター達への感謝なのだろう。しっかりと、金箔を塗ってあるケーキも確認できる

 

 

「・・・姉もあれだけ解りやすければ苦悩はしなかったろうに。そしてそれはミダスであろう。地味に我もお断りだ」

 

――そう言えば、ジャンヌはどうしたのだろうか?

 

「英雄王」

 

「よう、おつかれさん」

 

 

見れば、赤いアーチャーエミヤと、青いランサー、クー・フーリンが立っていた

 

「む、なんだ貴様ら。まさか我を出迎えにきたと?」

 

 

「いや、まぁそうなんだけどよ」

 

「――すまない。英雄王。聖女の笑顔に、私は抗えなかった」

 

「・・・?なんだその沈痛な顔は」

 

 

――嫌な、予感がする・・・

 

「まぁ、来てくれや。――同情するぜ」

 

「ん・・・?」

 

 

「バターとクリームを用意しておいた。――重ね重ね、すまなかった、英雄王」

 

 

「――待て、貴様ら。聖女といったな・・・よもや、まさか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました英雄王!『ジャンヌ特製、スタミナ料理フルコース』です!」

 

 

次々と並べられる料理の数々。そのどれもが血のように、リンゴのように、真紅に彩られている

 

「順番に、プルガトリオカレー!パライソラーメン!衆合キムチ鍋!黒縄ソバ!インフェルノステーキ!リンボグラタン!そして、エンピレオクッパ!そして麻婆!」

 

 

「――――――――――――」

 

・・・器が完全に絶句している

 

無理もない。・・・何故

 

 

「エミヤさんが料理をしてくれたのですが、英雄王の料理だけは私が作りたくて、張り切りすぎちゃいました!」

 

 

何故・・・ベストを尽くしたのか――

 

(何故・・・何故止めなかった贋作者――!!!!!!)

 

(止められるはずがなかろう!善意で徹夜で作っていたいたいけな少女の頑張りを無に帰すなど、正義の味方にできるものか!)

 

(貴様はただの掃除屋であろうが!!!いや待て、いくらなんでもこれは無かろう!!主食しか無いではないか!!そして何故どれも真紅なのだ!?栄養バランスはどうした!?)

 

(や、スタミナつけてほしかったんだとさ)

 

(冥府にスタミナなど持ち越せるかたわけが――――!!!!時に犬!何故ここにいる!身代わりにか!?そうだな!?)

 

(いや、胃を整えるルーン渡しとこうかって)

 

 

(気休めか貴様――!!ふざけるな!我がこのような汚物など――!!)

 

 

「英雄王」

 

「!?」

 

 

「――私・・・貴方の戦う姿が・・・とっても好きみたいです」

 

――・・・

 

「だから・・・これを食べて・・・次の特異点も、頑張ってください!」

 

――あぁ

 

「私も、精一杯貴方を応援します!これは――私の気持ちです!受け取ってください!」

 

――

 

・・・食 べ な き ゃ

 

 

「思いだけで料理がうまくなるなど――!!待て、よせ!何をする我!スプーンを取るな!止めろ!此度は!此度は本当によせ!ただではすまん!本当に死出の旅路に行ってしまうぞ!!エレシュキガルめにドン引きされるは眼に見えている!!踏みとどまれ我!!いい加減に学ばぬか我――――!!」

 

これはジャンヌの愛!愛からにげるは英雄に非ず!

 

「おのれ、おのれおのれ――!!何故だ!何故此度の我は下らぬところで我の想像を遥かに上回って来るのだ――!!」

 

愛とは抱擁するもの!彼方にこそ栄えあり!

 

行こう!次の特異点が待っている!

 

 

「おのれぇえぇえぇえぇえ――――!!!これがゴージャスのデメリットだとでも言うのかぁあぁあぁあ――!!!!!」

 

 

「さらばだ、英雄王・・・」

「達者でな。イカしてたぜ」

 

 

「――召し上がれ!」

 

 

「おのれぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ――――――――――!!!!!!!」

 

――いただきます!!

 

 

 

「ガ――――ァッ――――――!!!???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛は深きものである

 

 

 

 

世界を滅ぼすが愛ならば

 

 

世界を救うのも、また愛なのである

 

 




ローマ、完結です!如何でしたでしょうか?楽しんでいただけたでしょうか?

皆様の感想、楽しく拝見させていただいております!誤字報告、修正、いつも本当にありがとうございます!


次は幕間、そしてオケアノスの予定です!読み返すため、ペースが落ちるかもしれません。寒くて手もかじかむしね!


それでも、一日一つは投稿していきたいと考えています!楽しんでくださる皆様、本当にありがとうございます!


これからも、頑張っていきます!100話にも渡る長い間、お付き合いしていただき、本当に本当にありがとうございました!

どうか皆様も、体調におきをつけて!ウルクの民が、永遠に健康でありますように――!

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