人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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キリシュタリア「ふむ。このオロチ・・・気に入った。起源殺しにかかずらった私の身体も癒してくれるとは、いやはや」

デイビット「皺や枯れ木の様な身体も随分と良くなった。水は癒しの力・・・よく働いたようだな」

キリシュタリア「彼等には感謝しか浮かばないな。これなら私も、心機一転頑張れるというものだよ」

デイビット「あぁ、俺も資格を手にする日が楽しみだ。寝癖が無くなる日が待ち遠しい」

「カルデアを信じよう。・・・それにしても、手ぶらというのも礼を失するな。・・・よし、デイビット。妙案が浮かんだよ」

「?」

「私達、Aチームの力を──カルデアの諸君に思い知らせてやろうじゃないか──」



ニャル【ベリル・ガットねぇ・・・確か信条は、長いものに巻かれろだとか】

【~よーし、ギッチギチに巻いてやろっと♪】


農家適正 A

「ふぅ・・・。これで、報告書とリザルト記録の作成は完了ね」

 

上機嫌に鼻唄を歌い、カルデアの優雅で風雅なインテリア満ちる所長室にて所長業務に勤しむ淑女の姿がある。お気に入りのマグカップに、気持ち多めの砂糖とミルクを放り込み頭を活性化させ業務を終わらせし我等が所長。カルデアの最高司令官にして自他共に認めるリーダーなる存在。誰あろうアニムスフィアのロード。オルガマリー・アニムスフィア。アイリーンのオペラを最高級音楽譜で流しつつ、カルデアの取り組んだ禍肚の作戦完了報告書・・・王に仔細報告するための資料の作成を終えた所だ。一息つき、ギルがチョイスした玉座チェアにもたれかかる。魔力が補充され、一瞬で疲労が消え去ることを実感し天井を眺めるオルガマリー。その顔は晴れやかだった。

 

(カルデアはとうとう、二つ目の異なる歴史に対処することに成功した。これは汎人類史が成し得た・・・いえ、カルデアのみがもたらした成果といっていい。ふふっ、鼻が高いわね)

 

アニムスフィアが産み出し、研鑽の下形にした技術が活用され、世界に破壊と滅亡以外の結果をもたらした。スタッフ、英雄、一丸となって・・・とうとう人類は、行き止まりと停滞の歴史を尊重し昇華するまでに至った。滅ぼすのではなく、未来をもたらす戦い。その意味と意義のもたらされるところは、文面以上に計り知れない。

 

(気持ちの問題ではあるけれど・・・カルデアの皆に、余分な重圧や責務をもたらす事にならなくて良かったわ。アニムスフィアの研鑽は、皆の尊厳と大義を護れたのね)

 

滅ぼし、蹴落とし、抹殺する戦いではない。足掻き、寄り添い、新たな道を拓く。空想を取り除くのではなく、新たな『もしも』として昇華するまでに至った。この差はメンタルと闘志に計り知れない高揚と意識をもたらす筈だ。

 

世界を護り、他者の歴史を手に入れ、汎人類史が見たことのない独自の成果を目の当たりにする。胸の弾むような出逢いを、閉ざされた未来に活路を。──心が躍る、世界を巡る旅。それらを、皆で挑むことが出来る。その事実が嬉しく、誇らしかった。

 

(邪神の歴史、妖怪の歴史。きっと他に神々の歴史や、未知の歴史もある筈。もしかしたら、汎人類史よりも繁栄を極めた歴史もきっとある。目の当たりにする日が楽しみね)

 

その歴史を見た時、リッカやマシュはどんな反応をもたらすのだろうか。王や姫はどんな愉悦や裁定を見出だすのだろうか。歴史をどうやって王は手にするのか。カドック達はどんな活躍を魅せてくれるのか。

 

「まるで宝箱のようね。有り得ざる歴史というのは」

 

異なる歴史とどう向き合って行くのか。何を手にするのか。滅ぼすのではなく、歴史すらも手にする人の貪欲さと好奇心に自嘲しながら、報告書に目を通す。カルデアのマスター達の進歩、副所長のカルデアの高官としての成長、桃源郷、高天ヶ原、日本の神々という莫大な成果。それらの素晴らしい戦果を誇らしげに眺めている・・・最中。

 

『プライベート中済まない!ラインだよマリー!』

 

「?あら・・・キリシュタリアかしら」

 

特製ラインコールに反応し、指を動かし眼前に端末映像を展開する。ライングループとは即ち外部の人間からの連絡。そしてライングループに入っているのは・・・かつてのAチームのメンバー。即ちキリシュタリアがリーダーのライングループである。

 

(キリシュタリアに報告しなくちゃね。カドックはいずれあなたにも届く筈よ、って)

 

ぐっちゃん、カドック。共に大幅な成長と強化が目覚ましい。今回の一件でついに神霊クラスの力を手にするに至った。今彼や彼女と戦えば、ちょっぴり・・・かなり・・・非常に手を焼くに違いない。もしかすると、理想魔術を提唱するあなたにもいずれは・・・そう珈琲をすすり、ラインの画像を見た瞬間。

 

『ヴォーダイム農家による林檎製作』

 

「ブーーーーーッ!!!!」

 

盛大に珈琲を噴き出す羽目になったオルガマリー。無理もない、其処には常軌を逸する画像が添付されていたのだ。正直ヤクによるトリップすらも疑った。視覚情報の異常すらも疑った。当主!?何やってるの当主!?と突っ込むくらいにはキテレツだったのだ。それが何故かと言うと・・・

 

(そんな大学生サークルみたいな事をするタイプだったのあなた・・・あなた達・・・!?)

 

麦わら帽子、鍬を持ちながら満面の不敵な笑みで写真に映るキリシュタリア。その手には輝かしく瑞々しい黄金の林檎が在り、『御歳暮 カルデアの皆様』と書かれている。後ろには無表情でピースサインを作るデイビッド。投げキッスを贈るぺぺロンチーノ、『マシュ☆コン名誉マネージャー』と書かれたたすきと鉢巻きを巻く紫と水色のペンライト両手に持つオフェリア。『敬具 農耕野郎Aチーム 欠席 ベリル』とサブタイトルが記されていたのだ。唖然としているオルガマリーは気付く。メッセージも添付されている事に・・・。状況を把握しかねながら、おずおずと再生すると・・・

 

『やぁ!頑張っているかなオルガマリー。君の事だ、皆より二倍や三倍は頑張っているんだろうね。だが私は心配していないよ。心配するとすれば・・・君のメンタルの認識くらいだろうか』

 

「私の・・・?」

 

『私達はこの様に、世界の救済を成し遂げたカルデアに再び招かれるのを心持ちにしているよ。君が助け、救ってくれた生命を再び使命に殉じさせる事が出来ることに。だからいつまでも、追い出したとか追放したとか気にしない様に。笑顔が曇るとね、私達も哀しくなる。其処で、こうして私達は今も元気であると君に伝えたかった。あ、これはお土産だよ』

 

「・・・・・・キリシュタリア・・・」

 

・・・思い出す。そういえばキリシュタリア・ヴォーダイムは冷徹、尊大ではあったが。傲慢、冷血な人間ではなかった事に。

 

『終わった事を掘り返すのは無しにしよう。再びカルデアの力となれる、藤丸リッカ君を初めとした新顔と交流できる喜び・・・そう、友好と信愛を込めた気持ちを込めたのがこのリンゴと、集まった我々の偽りない気持ちだとも』

 

手作業は諸事情で出来ないから、随分と手伝ってもらったけれどね。そう言うキリシュタリアの顔は、輝くように晴れやかな笑みを浮かべていた。

 

『珈琲もいいが、アップルティーも美味しい筈だ。この黄金の林檎を見てくれれば解るように、ね。所長秘書として・・・君とティータイムできる日が待ち遠しいよ、オルガマリー。・・・この願いが叶うということは、世界の危機が継続中という事で。・・・あまり褒められた言葉ではないのだが』

 

内緒だよ?と人差し指を口に当てる仕草と共に、キリシュタリアは偽らざる本心を告げる。

 

『今度こそ、皆で一緒に世界を救おう。その日を、心から楽しみにしているよ。我等が所長、オルガマリー・アニムスフィア』

 

ではまた。・・・そう笑顔で手を振るキリシュタリアが、映像の締めくくりだった。追伸、林檎は是非カルデアの皆様で食べてほしいとの文面と共に。

 

『それでは収穫しようか、皆。きっと素敵な手土産になる筈だ』

 

・・・ビデオを切り忘れたのか、音声を拾い続け流れる彼の声に、オルガマリーは神妙な気持ちを懐く。・・・彼は、やはり常人とは持っている気風が違うのだろう。

 

(──えぇ。楽しみにしているわ、キリシュタリア。何より・・・)

 

あなた、そんなキャラだったの?となるカルデア職員達の、カドックやマスター達の反応が。彼があれだけやる気なのだ。自身も、過去の判断ミスをいつまでも気にしている訳にはいかない。

 

(──偽りないあなたと、世界を救う日をね。その時は・・・)

 

──その時は、胸を張って紹介するわ。私の大切な親友と、心から敬愛する王の中の王を。

 

誇らしげにオルガマリーは立ち上がり・・・。衝撃でぶちまけてしまった珈琲の後処理を行い始める。

 

『一本取られてしまったわね、オルガマリー?』

 

「顔面ストレートでKOよ、気分はね」

 

「ハロー我が愛するオルガマ何事かねコレは!?」

 

乱入してきたモリアーティも一緒に、未来に想いを馳せながら仲良く掃除を致しましたとさ。




数分後

『話の途中で済まない!ラインだ!』

「あら・・・?」

『重ね重ねすまない。実はベリルとは連絡がつかなくてね。申し訳ないが、そちらからも連絡をお願い出来ないだろうか』

オルガマリー「・・・ベリル、ね」

モリアーティ「あぁ、例の彼か。・・・まー確かに、よく考えてみたら危険分子を野放しにしておくのもナー」

オルガマリー「そうですね。・・・いっそ何処かの暗殺部隊にすかうとされるよりはこちらで・・・」

モリアーティ「あぁ、それなら事は簡単になるとも!私達には頼もしーい協力者がいるだろう?」

オルガマリー「えぇ。【スカウト】してもらいましょう。【手段は問わず】、ね」



ニャル【はーい、頑張りまーす♪さーて、人殺しが得意な人狼君は何処かな~。おーい、愛娘~】

ナイア「はい、なんでしょうか?」

【お前に、お仕事の依頼をしよう。・・・『狼狩り』をね】

「狼狩り・・・?」

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