人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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報告書作成

【と、言うプランでベリル君を招こうと思います。使用するものや期間は此処に】

ギル「成る程、追い立て後の保護か。構わぬ。一度は雑種と切り捨てた輩だ。再び拾うも活かすも貴様らの自由よ。特に赦す」

【ありがとうございます、王様。必ずや成功させましょう】

ニャルくん『フォウ君っておっぱいが好きニャル?』

(うん、魂が清らかでスタイルがいい姫様がボクのタイプなんだ)

『ボクも好きニャル!幼女はそんなにニャル・・・』

──これが、男の子の会話・・・なんでしょうか?

作戦立案

モリアーティ「追い立てはやはり、こちらで主導を取り世界中へ赴かせるのが一番だろう。南極を除く各国へ行ってもらおう」

ニャル【成る程。逃げ場はもうカルデアにしか無いと思わせると】

モリアーティ「裏側に逃げようとも無駄な事だ。カルデア、そちらもカバーしてるもんネ!」

~制作

シオン「やっぱり全体的重量がですね?あとこれを実現させるには・・・」

【ふむふむ・・・あ、すまない。後は頼む】

「あ、メンテナンスですか?」

【カウンセリングともいう。任せたぞ】

邪神の一日は長い──






完全無欠の輝きが産み出す影として

「ターゲットは無事に逃走中、未だ軽度の精神汚染。未だ一時的狂気の発症もありません。航空にて高跳びの準備を整えています。まだまだ始まったばかり・・・小手調べでしょうか」

 

【それでいい。いい生殺し具合だ。いきなりトドメを刺しては狩りの醍醐味が台無しだ。真綿で首を絞め、触手で締め上げる程度にしてやらなくてはな。・・・最初は】

 

第二カルデア、仮称【ノウム・ケイオス・カルデア】。ロンドン最高級ホテル、シャングリラホテルに模様替えし、襲撃ノルマを終えたナイアのメンタルとフィジカルのチェックを行っている。狩りの終わりの際の定期検診だ。異世界、異環境に赴き伝染病や体調の適応失敗などが見られないよう、ニャルが娘をチェックしトラペゾヘドロンをチェックする。彼女の魂と心臓に結び付いたソレは、邪神の加護と不老不死を彼女に授けてはいるがそれはそれ。娘とのコミュニケーションが主題なので効果の程はどうでもいいのである。向こう数千年、一度も娘に拒否されていないのが父としての自慢であった。

 

「もし彼が何かしらの軍事組織、または特殊部隊に協力を要請した場合はどう対処しましょうか」

 

【あぁ、その場合は私が処理しよう。丁度人間の脳髄を使ったストレステストをしたいと思っていたからな。脊髄毎引っこ抜いて確保する。・・・あ、そうだ。脳に私の触手を仕込んでさ、いつか裏切った時にでも鋭利にさせて脳膜下出血で殺すってどう?】

 

「ヤマアラシ怪人がやっていましたねそれ。どうせならチップで別人格を仕込むと言うのは?」

 

【流石は愛娘!発想が21年未来に生きてるぅ!よしよし、ベリル君にやってあげたい事に追加しよっと♪】

 

ケイオス・カルデアにて交わされる、微笑ましい親子の会話。捕まった後がどうなるかは深く考えないのが身のためな会話が弾み、丁寧で入念な娘へのメディカルチェックが行われる。設備のリソース半分を費やして作られたそれは、楽園カルデアの死角にしてエデンの東。知らないという防護策を施された彼等の第二の家でもあった。鼻歌混じりに、漆黒のドクター服に着替えドックに入るナイアと会話を交わす。脳に見せる夢はどうとか、身体の損傷は何処まで平気であり、個体の境を置くのか・・・等。そんな会話の中、ふとナイアが疑問を投げ掛ける。

 

「お父さんは、楽園に招かれてからも外道な所は変わりませんね。父や家族としては心から想いを寄せますが、未だに世界の為には死んだ方がよろしい存在です」

 

楽園にて彼は本当に楽しく、微笑ましく愉快となった。カルデアのスタッフと談笑し、アビーとユゥユゥに追い掛けられ、一緒にプラネタリウムを見たりショッピングモールで買い物をしたり・・・。だが、その本来の邪悪性の発露においては一寸も揺らぎも手心も介在しない。楽園に対して誠心誠意であるだけで、改心などは微塵もしていないのだ。それを聞き、手厳しいなと愉快げに笑う。

 

【まぁ単純な話だ。清廉潔白な輩は背中から刺しやすいし刺され易いんだよ。性善説を信じ、世界平和を謳う輩だって部屋の戸締まりをしなくちゃ空き巣に入られる。何処ぞで全てを抱きしめた女神は邪神に座布団にされた。善、愛、勇気、希望・・・それらを掲げる側が問題じゃない。世の中にはな、どうしても『美徳を解さないもの』はいるものなんだよ。残念な事にな。そして・・・】

 

そしてそんな輩は間違いなく、差し伸べて来た手を取りはしない。振り払うなら可愛いもの、外道に至れば懐に潜り込み刃を突き刺す事を平然と行う輩もいる。狂気に触れ、そして完全に正気を失った人間やそれに近しい人間がやる往々にして度しがたいもの。そう、人の善性につけ込むというものだ。

 

【ここらはモリアーティおじさんが詳しいだろうがな。悪性に対して対抗するならば善を捨てろ、なんて事をしていては善は淘汰される。善ばかりもいいとは言わんがな、目には目をと言うのはあまり良くない。朱に交われば紅くなると言うし、種に交われば種に非ず、と言う。・・・考えたくはないがな、楽園がもし突き崩されるとする万が一の要因があるならば。今追い回しているベリルくんみたいな『善性と崇高さを踏みにじれる』タイプの人間を招く事だ。アレは自身の矜持のためなら、例え神に至る道筋だろうと潰すだろう】

 

そうしないために、楽園の在り方を自分なりに護る為に邪神の自分は此処にいるのだと言う。悪意には悪意を。幼稚な邪気には真の深淵を。善性解せぬものならば手向けに永劫の狂気を。

 

【受肉し、消費文明にイラついた王様なら間引きや駆除もやるんだろうが、御覧の通り姫様と二人三脚の今は見る陰もない。皆が歩む輝かしい旅路に、阻む憂鬱も葛藤も悪意も不要だ。──それらは私や、あの犯罪界のナポレオン。そして一番弟子たる所長が引き受けるだろう】

 

「お父さん・・・」

 

【そう難しい話でも無いだろう?私はともかく、お前がやっと見つけた安息の地だ。何処の世界にもない、邪神の娘ではなくお前と皆が見てくれる大切な場所だ。身を粉にしない理由が何処にある?・・・まぁいつか、お前にも反抗期が来て。この気持ちも鬱陶しいんだよクソ親父、と言われるかもしれないが・・・】

 

ニャルは娘の頭を撫で、笑みを浮かべる。その笑みは万物を嘲笑する嗤いではない。楽園に来てから漸く浮かべるようになった、誰にでも見せるようになった・・・

 

【それまで、お父さんに世話をさせてくれ。私が世界で拾い上げた、唯一無二の宝物よ】

 

「~。・・・はい。どうかずっと、末永く。よろしくお願いします。お父さん」

 

【ばーか。末永くっていうのは人生の伴侶に言うものだぞ。あぁそう、これは仕事の報酬な】

 

すっ、とナイアの胸の谷間にカードを押し込む。それはニャル自身のブラック・クレジットカード。楽園と外界、両方使える仕様のもの。使用上限は・・・最低でも国家予算と書かれている。

 

【ヤツの追いたては文字通り世界に及ぶ。気長に追い回す狩りだ、世界を廻る際に気になる場所もあるだろう。好きな時に使いなさい。無くすなよ?】

 

「宜しいのですか?こんな大金を」

 

【構わん構わん。無くなろうと富豪をカルトにすればいくらでもむしり取れる。経済はきちんと回さなくちゃな。それじゃあ──】

 

「それでは──」

 

それじゃあまた、と背を向けたニャルの袖を娘は引く。

 

「それでは、カルデアの食べ歩きを一緒にしませんか?家族として、それくらいは私達もするべきだと思います。・・・端的に言って、御馳走してください。お父さん」

 

【──いいとも、我が娘よ。それじゃあ、まずは鉄板のスイーツじゃんぬに行くとしようか!】

 

手を引き、起き上がらせ共にケイオスカルデアから出る二人。・・・混沌の奥より来たり、その存在は紛れもなく楽園の深淵にして闇である者達。

 

「友達も誘ってよろしいですか?オススメのスイーツメニューを制覇したいのです!」

 

【呼びたまえ呼びたまえ。ノーデンスのジジィもいないんだ。あの旧神夫婦が介在しなきゃ何でもいい。あ、タコパフェなんて売れそうじゃない?】

 

「海産物とスイーツはミスマッチでは・・・?」

 

【そうかぁ?試してみたら美味いかも知れないだろ?・・・ま、試させる相手は今追い掛けてる彼にするか】

 

だが、楽しげに歓談する二人の間に邪気はない。光が産み出す当然の影として、光をもたらす者達と輝きを今日も護り続ける。

 

──完全無欠の結末を、一人娘を、人間を。心より愛する破綻しきった邪神は、今日も楽しげに日々を過ごすのでしたとさ。

 

 

 




スイーツじゃんぬ

ラヴィニア「よ、良かったのかしら。家族二人の時間に私達が・・・」

アビゲイル「いいのよ、ニャルさんはともかくナイアさんとは仲良くなりたいもの!意地悪で怖くて恐ろしいニャルさんはともかく!」

ニャル【素直でよろしい。可愛げのないガキでも娘と仲良くしてくれるなら大歓迎だ】

ユゥユゥ「最近ライチメニューも置いてくれるって言ってたの!絶対美味しい!」

ナイア「楽しみです!XXへのお土産は・・・」

ニャル(いやしかし、此処にいる面子の見知った感はどうだ。まさかこうして食事する日が来るとはな)

アビゲイル「ねぇ、ナイアさん。今ナイアさんは大変な御仕事なのでしょう?」

ナイア「大変・・・まぁ、長いスパンの仕事ではありますね。ですが慣れっこ、どうか心配なさらず・・・」

アビゲイル「もし私やラヴィ、ユゥユゥが力になれる事があるなら仰有って!力になるわ!」

ニャル【・・・ほう?】

ラヴィニア「えぇ、恩人だもの。なんでも力になるわ」

ユゥユゥ「はい!私達、同郷?っぽいじゃないですか!」



ニャル【ヨーグルトソース!クトゥグア!ベリルにジェット正気喪失アタックをかけるぞ!】

【【おうっ!!】】



ニャル【(笑いを必死に堪えている)】

ナイア「お父さん?」

【い、いや。なんでもない。素晴らしいな少女達!その志に気に入った!そうとも、我等が力を合わせれば何だって出来る!みんなで力を!合わせよう!!】

「「「おーっ!!」」」

【くくっ・・・素敵な友人に恵まれたな、ナイア・・・お父さん嬉しい!】

ナイア「は、はい・・・?」



──ベリル・ガットが楽園に招かれるまで、あと◼️◼️◼️◼️日──

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