人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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沖田「シッ!!!」

「ぐふぉ・・・」

リッカ【ぜぇいっ!!!】

「がはっ!!」

桐之助「女子が強く、そして美しい・・・これが世界を救った組織の者達か・・・」

マシュ「桐之助さん、見てください!彼女こそ、人類の明日を拓くカルデア自慢のグランドマスター!藤丸龍華先輩です!」

桐之助「──素敵な後輩が出来たものだ。彼女は本当に眩しく輝いている。マシュ、君やオルガマリー・・・たくさんの人達に支えられたんだろうね」

沖田「沖田さん大勝利~!」

【いぇーい!】

「本当に──素敵な後輩が出来たものだ・・・」


三種の狂気~一意専心・乾坤一擲・狂乱狂奔~

軍を一つ動かす際、損害が三割を越えてしまえば壊滅とのボーダーが存在する。損害を受けた者、それを介抱する者、運送する者。それらを差し引いて、額面以上の人員が割かれとても戦いではないからだ。

 

そして、そのラインを一騎当千のサーヴァント・・・それも特別血に迷い武勇に優れた者が攻めればどうなるのか?その答えが今まさに、石川県・・・加賀国の地にて雨と共に実証されようとしていた。下手をすれば五割、七割、殲滅戦にまで移行するやもしれぬとの鬼気迫る気風にて、血染めの嵐が吹き荒れていた。今もまた──

 

「ひゃははははははは!見てろよリッ殿様ぁ!おぉら・・・ひとぉおつ!!」

 

槍を振るい、振り回し、次々と首級を刺し貫いていく鬼のような活躍を誇る猛々しき武将。腕も脚も生きるも死ぬも全く関係無い。手当たり次第に、触れたものを無差別に、ある意味平等に奪い取ってみせる鬼武蔵。──森長可。彼はひたすらに、忠義と殺戮を貫いた。

 

「がはっ、ぐっ──ぉお・・・!!」

 

「おぉっと腕がもげちまったなぁ?腕は三点で微妙だからよぉ、首も寄越せやぁ!!」

 

動きを兵が止めれば最後、追撃・・・息の根を止める一撃が飛んでくる。武勲を稼ぐ為、点数を稼ぐ為、ついでに救われる誰かの為に的確な止めが振るわれる。

 

「嗤え、『人間無骨』!!うひゃはははははははははははは!!見ろよこれ、首が団子みてぇだぜ!風情があると思わねぇか!えぇおい!?」

 

彼は余さず血にまみれていた。それらは負傷ではない、全て返り血によるものだ。苛烈にも彼は敵戦力の一割を抹殺し、余すことなくその身に血を受け、袴を血に染め真紅に染まりきっている。穂先をまるで骨が無いようにすり抜ける槍、人間無骨にて首を切り、身体を抉り、命を奪っていった。最早彼に並ぶ武勲は有り得ぬと想定される程の凄惨極まる光景であったが・・・

 

「おっ、あいつらも気合い入ってるじゃねーか!それじゃあ俺も、リッ殿様の為にがんばんねーとな!うるぁあ首寄越せやクソどもぉおぉお!!」

 

各地で起こる怒号と合戦の音に感化され、鬼武蔵は猛り狂う。そう、この暴虐に荒れ狂う鬼は、一人ではない。別の地点では、正しく『鬼』と呼ばれし人の執念が信念という旗を立てる姿がある。

 

「退くな、斬れ!進め!斬れェ!!新撰組、前進っ!!此処がァ──新撰組だァ!!!

 

敵陣の只中に突っ込み、暴れ狂う羽織の鬼が一人。袖つかみ、頭突き、仕込み銃、目潰し、武器奪い、最早敵を倒し進むことにしか向けられない魂の全てが、機械の鎧を切り捨て進み、ただ進む。新撰組全隊士をして、『土方より強いものはあれど、勝てる気がまるでしない』とまで言わしめた実践的剣術、並びに銃火器を振り回す彼の、彼だけの信念の業が怒号と共に振るわれ続ける。

 

「「「「包囲、殲滅。排除せよ」」」」

 

「ぬぅっ──ぉおぉおぉおぉおぁあぁっ!!」

 

多少の傷、或いは重症、ともすれば致命傷。それらを受けようと彼は止まらない。魔力が尽きぬ限り、彼が彼である限り、彼が前進を止める事は無い。ただ一人、ただ一つ立てた誠の旗は誰にも折れないからだ。不滅の誠は、今此処に在るからだ。

 

「俺がァ・・・!!新撰組だぁあぁあぁあぁぁ!!!

 

新撰組の死因、士道不覚悟による切腹が随一。誰よりも厳しく、誰よりも苛烈に、誰よりも誠実に己を貫いた狂戦士の戦いは終わらない。全てが終わり、戦いが終わるまで止まらない。その狂気の前進、まさにバーサーカーと呼ばれるに相応しきもの。森君の汚染され、凶に傾倒した狂気とは違う、ある意味で実直極まる狂気。ただ、その心はあの頃と・・・旗を上げた頃と何一つ変わらないだけ。何も変わらないだけ。そんな不滅の魂に──

 

「首置いてけ、首を置いていけ!!鎧なぞ固めよって、首ばもいじゃるから其処に並べ!!」

 

疾走、或いは特攻、自殺行為とも呼ばれるべき特攻。ズラリと隊列を組む兵士にたった一人、身の丈はある野太刀を構えて突っ込む武者が一つ。血迷うたか、はたまた狂ったか、太刀を背負うように駆け抜けるその体勢は防御も回避も考えていない。──現に今、兵士たちの火炎放射が彼の身を焼いた。

 

「こげん小火でおいを止めようなどと笑わすっな、薩摩ん武士を侮っな。おいが止まっはわいらを皆殺しにした時だけじゃ!!──ひっ飛べェ!!」

 

火炎に焼かれながら、野太刀を振るう。ただそれだけで、隊列を組んだ十人が一瞬で胴体を叩き斬られた。鮮血に染まる周囲、吹き飛び舞う首。──次に至る全てを捨て、ただ目の前の全てを切り捨てる事に特化した『タイ捨流剣術』。並びに、薩摩魂。──余りに捨て鉢かつ狂気の沙汰の為に、リッカが学ぶことを禁じられた剣術。並びに薩州剣術。

 

全てを懸けろ、後の事など何も考えるな。一意専心、一刀必殺。──もし外れたならば?

 

「サーヴァント、信長どもの天下取り!詳しかことは良う解らん。もんの道理はなんも知らん!解っことはわいらを殺すちゅうおいん決心だけや、おいん理屈だけや。──ただ、おいは突っ走っだけじゃ!!」

 

その時は、潔くすっぱりと死ね。黄泉路を駆ける一番槍だ。この上無い誉れだ。・・・リッカが、人類最後のマスターであった頃に身に付けてしまっては余りにもまずく、危うい信念。人理を救う旅路にすら余りに危険とされた彼の信念、彼の生き様。

 

──薩摩武士。血迷うていない者は一人もいない日本の戦闘集団。その血潮滾らすは島津豊久。──この地にて彼は変わらず、ただ自分の理屈にて突っ走る。生存、道理を無視した狂奔、疾走の狂気。義侠と共に、嵐のように吹き荒れる楽園に流れ着いた漂流者。血にまみれ、それでも尚ひたすらに暴れ狂う鬼神がごとき最南端の戦闘民族。

 

「戦力、負傷六割を突破。作戦継続不可能、戦闘行為不可能。撤退開始」

 

三者の鬼の起こす嵐に巻き込まれ、鮮血の死屍累々に陥った兵達が撤退していく。一揆鎮圧と言う名目には、余りにも割に合わない被害を受けすごすごと引いていく者達・・・だが、その背中を見逃す筈もない。

 

「逃げんじゃねぇ殺すぞオラァ!!逃げると殺せねぇじゃねぇかよコラァアァア!!」

 

「新撰組ィ──全隊抜刀!!皆殺しだぁあぁあぁあぁぁ!!」

 

「ふざけるな、ふざけるなよ生臭坊主どもぉ!!置いてけ!首置いてけぇ!!」

 

逃げようとする兵士どもを真っ直ぐに追いかけんとする。勝敗が決したにも関わらず更に血に逸らんとする三人が、追い討ちをかけようとした刹那──

 

【ストーーーップ!!戦は終わり!終わりでーす!!】

 

令呪の輝きを放ち、咆哮もかくやの声で制止をかけるリッカ。勿論、一人一人に戦の終わりを令呪を乗せた呼び掛けという形で伝えたのだ。血に逸る三人の動きが、ピタリと止まる。

 

「ん?なんだ終わりかよ。ひゃははは!リッ殿様が言うなら仕方ねーな!点数稼げたし良しとすっかぁ!」

 

「・・・終わりか。なら帰るぞ。長居なんぞするもんじゃねぇ」

 

「良う通っ声や、聞いちょって清々しか。よし、帰って寝っか!タメんやつがわんめえ酒とつまみ持っちょっでな!」

 

「ほう・・・沢庵もあるのか?」

 

「んじゃ茶にしようぜ茶に!俺大殿からうめえ茶葉くすねてきてんだわ!うははははは!!」

 

【と、止まってくれた・・・良かったぁ・・・念のため令呪も乗せて正解だったよ・・・】

 

「いや、令呪は関係無いだろう」

 

【ふぁ?】

 

「例え令呪を使わなくても、彼等は止まった筈だ。──信頼を置く君の言葉に、必ず応えてね。成る程、これが・・・」

 

世界を救った、グランドマスターの言霊か。彼はその先を口にしなかった。憚った訳ではない。ただ・・・

 

「マシュ藻さん、ハンカチをお持ちでないかな?」

 

「何故泣いているんです!?」

 

自身達の後任が、大いなる成長を遂げていた。その事実に、ちょっと感極まっちゃっただけである。

 

──此処に、一揆は鎮圧され。加賀国を楽園カルデア家は手中に納める事となる。ちびノブの表情には、戦慄と笑顔が浮かんでいた──

 




領主・ビッグノッブ「ノブブブ!ノブァー!」

リッカ「ノブブブ、ノッブ、ノブブ!・・・うん、話が纏まったよ!一揆集、並びに加賀国はカルデアに協力するって!」

景虎「え、リッカさんに桐之助さんも解るのですか?」

リッカ「ニュアンスと表情も間違いないよ、お米が効いたみたいだね!これで、ノッブにいい報告ができるよ!」

桐之助「報告書の制作は任せてくれ。どうだい?」

「ノブノブとばかり・・・書かれています・・・」

・・・こうして、バーサーカー三人が活躍した事により一揆は鎮圧された。・・・そして、彼等はというと。

茶室

「ほれ、リッ殿よ、一杯」

「わ、ありがとう・・・!作法は・・・」

「いいんだよ、作法なんて。茶なんて殺し合いみてーなもんだ。好きに飲んで好きに殺すまでよ!」

「そ、そうなんだ・・・あ!美味しい!」

「うははははは!だろぉ?飲め飲め!」

土方「沢庵茶漬けだ。美味いぞ」

桐之助「はむっ、はふはふっ、はふっ!!美味しい、これが、日本のWA・BI・SA・BI!マシュロミさん・・・!美味しいぞ!」

マシュ「はいっ!シャケも・・・シャケもいいですよ!」

沖田「また、大活躍してしまいました・・・!ノッブ・・・!見ていましたか・・・!」

首塚

豊久「・・・・・・・・・(供養)」

景虎「おや、きちんと弔うのですね?」

「首ば洗い、清めて人として供養する。すれば人として弔われる。人の魂は鎮めるものぞ。軍神ならば解っじゃろ」

「ええ、多少は。・・・しかし、私はどうですかね・・・」

「あん?」

「未だ、人間というものが良くわからないもので」

決して、血に狂うばかりではない。それぞれの表情を、垣間見せる日本の戦士達であった。

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