人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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甲斐

甲斐の兵「ご報告!越後の信長、甲斐に進行中!その数三万三千!」

吉法師「ついに来たか、越後の俺!たしかカルデア家とか言ったか!この短い間によくもそれほどの兵を揃えたものよ!で、俺が動かせる兵はどれほどだ?」

「それが、バサラ信長の戦いにて兵が疲弊しており、二千がやっとかと・・・」

「敵軍の十分の一以下か・・・ますます勝ち目がないな、これは!となれば──やれやれ、桶狭間の再来か。まさかアレを二度もやる羽目になるとは!俺もよくよく運の無い!では支度じゃ!俺の鉄砲を持てぃ!」

「はっ!」

「あぁ、それとだ。越後で見られたとされる黒龍の鎧を纏った輩がいたら手を出すな。すぐに逃げろ」

「は・・・黒龍ですか・・・?」

「あぁ。・・・サーヴァントとは違い、そいつはなんだかヤバいと俺の勘が告げているのだ」


~春日山城

ノブノブ「まー相手は奇襲しかねーわな。勝負の体すら成さんもんこんなの」

ノッブ【然り。だが、このまま戦っても殲滅戦になるだけじゃ。甲斐も荒れるし血なまぐさいし、なんとか領土はそのまま取りたい!直せはするしね!】

ノブノブ「崖の上から本陣奇襲・・・桶狭間の時の俺と状況がそっくりか。サーヴァントとやらだから本人が来るとして・・・」

与一「森の中で射ってまーす」

リッカ「あ、じゃあ私が本陣にいれば絶対来るんじゃない?ほら、マスター狙いで!」

桐之助「かなり、危険ではないだろうか?」

リッカ「大丈夫大丈夫!護衛に沖田さんにも来てもらうから!」

沖田「お任せください!頑張りますとも!」

ノブノブ「──リッカ嬢。おまえさん、あの鎧俺ら以外の前で取ってないよな?」

リッカ「え?確か・・・取ってなかったよ!少なくとも敵地では解除してない!」

「で、あるか。──いいこと思い付いちゃった♪」

リッカ「???」

豊「ろくでもなか。絶対ろくでもなか策じゃ」

オルミーヌ「割と外道ですからね・・・」

「あほ!失礼な事を言うな!さぁリッカ嬢、おめかしの時間じゃい!」

「おめかし・・・???」

「出来映えは、出来てからのお楽しみ♪さぁ甲斐の悪ガキの折檻と行こうかぁ!」

ノッブ【うはは、五十おっさんの♪とか控えめにキモいのぅ!】

「うるせー!!」



決戦!うつけの生き様桶狭間(甲斐)!

「ふむ・・・あそこで雨宿りしているのがカルデアの真の大将首、マスターか。天候に恵まれ、地理にも恵まれた。後は運を天に任せ奇襲をかけるのみだが・・・」

 

圧倒的兵力差を前に、正面衝突は避け地理を活かした本陣奇襲──即ち、桶狭間の再来戦術を選択した吉法師。崖上で上部を取り、息を殺して機を伺うなか、彼は右手に紋様輝かすマスターたる存在を捉える。陣には僅かな手勢と側近しかおらぬ手薄ぶりを見、部下がその迂闊さを嘲笑う。

 

「見てくださいよ殿、バカみたいにお歯黒と白化粧なんかして勝ち誇りの浮かれ気分。これは貰いましたね、再び番狂わせと参りましょう!」

 

「──妙だな・・・おい、警戒はしておけ。特にあの噂に聞く【越後の黒龍】にはな」

 

「は?しかしあんなにうつけ丸出しの輩の何処に警戒を・・・」

 

「本物のうつけと言うのはな、『自分がうつけと気付いていない者』を言うのだ。愚かさに気付かないこと程自分の首を絞めるものは無い。厄介なのはうつけの様に振る舞う事が出来る傑物だが・・・これは、もしかするかもな・・・」

 

奇襲をかけるつもりが、誘い込まれたのはこちらやも知れぬ。明ら様な愚行と醜態、そしてこれ見よがしにぶら下げられたカルデア家名代にして総大将の首。怪しまない事こそ真のうつけではあるが・・・『もしこれが、奇襲させるための撒き餌だとしたら』。

 

「しかし、このまま攻めあぐねれば越後の兵三万が甲斐に雪崩れ込み敗北は必死!此処は一か八かの奇襲しか残されていません、殿!」

 

部下の言う通り、このままでは確実に此方が負け滅亡の憂き目となる。こうしている間にもケツに火が付いているのだ。すごすご帰る選択肢は最早選べぬ。この場でカルデアの大将を討ち取らねば敗けが決まるのだ、赴く他に道はない・・・!

 

「──【越後の黒龍】が来る前に片を付ける!全軍!俺に続けぇえぇえい!!!」

 

「「「「「うぉおぉおぉおぉお!!!」」」」」

 

虎穴に入らずんば虎児を得ず。意を決した織田吉法師が沈黙を破りカルデア家本陣へと一斉に攻め入る──!

 

 

 

~カルデア家・本陣~

 

「ほっ!?な、何事!?何事かや!?」

 

「奇襲にございまする、奇襲にございまする!敵軍が潜み、真っ直ぐ本陣にやって参りまする!」

 

「ふぁっ!?な、なんとかしてたも!?」

 

カルデア家本陣。其処には豪奢な着物と蹴鞠、お歯黒を施した総大将の名代にしてカルデアのマスター、藤丸龍華が優雅に陣を構えていた。うーん、また陣地増えてたも~。なんて視察めいた散歩にて数名の側近と僅かな兵にて優雅に振る舞い進軍していた所雨が降り、雨宿りしていた所に寝耳に水の奇襲の報。慌てふためき迎え打とうとするも、猛烈極まる吉法師側の勢いに防衛兵士は蹴散らされていく。

 

「狙うは敵大将の首一つ!!進めぇえぇえぇえ!!!」

!!」

 

「あわわわわわ、なんとか!なんとかしてたも~!!」

 

あわてふためく何の力も無い愚かな姫モドキ。蹴散らされ逃げ出していく兵士たち。先頭を行く織田吉法師の勢いは凄まじく、瞬く間に本陣へと貫き来る。

 

「甲斐のうつけ!織田吉法師!!うつけと侮ったが貴様らの敗北!その首貰い受ける!」

 

「あわ、あわわ、あわわわ聞いてないッスあ間違えたこれキャラ違いだしし、痴れ者じゃ!出逢え、出逢え~!」

 

慌てふためきスッ転ぶ無様な姫モドキの周囲を、注意深く観察する吉法師。兵士と側近は残らず逃げ出し、本陣にいるのは彼女一人。絶好の討ち取りの機会──だが。

 

(越後の黒龍はいないか・・・しかしあっけない、俺を従えるマスターがこんなうつけとはな)

 

「ひぇえぇ命だけは!命だけは助けてたも~!!」

 

戦国と言うか平安貴族擬きの不細工なメイクをグシャグシャにし転げ回る姫擬き。まさかこんなヤツに俺は従っているのか?やはり令呪の縛りには抗えぬのか?──だが、サーヴァントすら傍におかぬ程マスターが無能であるならば好都合。

 

「情けはかけん、越後の黒龍が来る前に片を付ける!覚悟、カルデアの大将!!」

 

サーヴァントなどは所詮影法師、マスターを討てばかき消える夢幻。今更恐るるものではないが・・・あの【越後の黒龍】はまさに不気味にして得体の知れぬ輩。敵に回してはならぬ災厄の化身と勘が訴えている。あの存在を野放しにしてはならぬと。だが、現れる気配は未だに無い。この千載一遇を逃してはならぬと吉法師は銃を構え──

 

「ま、待ってたも!死ぬ前に最後に一つ聴かせてたもれ!」

 

「・・・?なんだ、末期の懺悔か?」

 

──何故、一息に頭を撃ち貫く事をしなかったのか。何故、こんな苦し紛れの命乞いに耳など傾けたのか。

 

「そ、そなたが言う越後の黒龍とは、もしや・・・」

 

──一瞬、疑問に思った時には。

 

 

【───こんな見た目、してなかった?】

 

「───ッ!!お前が・・・!?」

 

全てが、遅かった。──瞬間、全てを悟る。

 

「がはっ──!!?」

 

瞬間、雨合羽と羽織を着た剣士が躍り出、吉法師の胸を貫く。逃げた兵士の中に紛れ、意識の外より隙を刈り取ったのだ。吉法師は確信する。

 

「うつけ、と侮りはしませんよ。リッカちゃんが本気で語れば、我等に抗う術は無いのですから」

 

「ッッ、伏兵・・・!そうか、あの娘・・・言霊遣いか・・・!」

 

──虎穴どころではない。此処は既に【龍の巣穴】だったのだ。あの龍の本懐とは即ち言葉による場の支配。アレが全霊でうつけを演じたとあらば、見破れるものなどいはすまい。並びに自身も、あまりに行動が迂闊にして性急にすぎた。それらがもし、カルデア軍の狙いであったなら・・・!

 

【皆!大将首は抑えたよ!挟み撃ちにしてボコっちゃえ!!】

 

先ほどのうつけぶりは何処へやら、気迫にみなぎる咆哮がごとき号令がかかり、それに応じ逃げた筈の軍から伏せられていた兵が奇襲をかけていた吉法師軍の背後から、真正面から挟み撃ちの形にて突撃を行ってくる。

 

「あはははははは!!承知しました!景虎隊、進めー!!にゃーっ!!!」

 

「首おいてけ!!首おいてけぇ!!」

 

「うひゃははははははは!!なます切りにしてやるぜぇ!!」

 

「全隊抜刀・・・!!皆殺しだぁあぁあぁあぁあぁ!!!」

 

真正面からは軍神率いる、百戦錬磨のサーヴァント連盟──

 

【うはははははははは!!流石はリッカ先輩じゃ!それじゃあわしもやるとするか。地理にちなんで──【衆合蹂躙(しゅうごうじゅうりん)戦極騎馬隊(せんごくきばたい)!!】】

 

前門の新撰組と軍神、後門からは武田信玄の宝具、戦国最強とされた騎馬軍を再現した魔王式騎馬隊。其処に獄門・三千世界を重ねれば魔王一人にして一騎当千なる軍の完成である。一番槍はのびのび暴れまわる首が大好きわんぱくボーイ達。戦場は最早、勝敗が見えていた。伏兵──沖田に叩き伏せられ、吉法師が敗北を悟る。

 

「ここまでか・・・。やはり桶狭間と同じ手が通じる程、俺は俺に甘くはないか・・・」

 

【ふっ。目には目、歯には歯。うつけぶりでは今回は私の勝ちだね。降伏する?】

 

「あぁ、降参だ。越後の黒龍がいないと懸けた策だったが、まさか大将首が龍だったとはな!見誤った俺の負けよ。皆の者も戦いを止めよ!」

 

あっさりと敗けを認め、武装を解除する吉法師軍。それに呼応し、カルデア軍もピタリと攻撃を止める。戦場にも、ルールはきちんとあるのだ。

 

「随分と物分かりのいい。良いのですか?」

 

「何、読み違えた俺の負け、うつけを演じきったコイツの勝ちよ。統制もよく取れている。奇襲や不意討ちのつもりが龍の口に飛び込んだ!こんなうつけの無茶を皆には強いれんわ!」

 

【ノッブなのに諦めがいい・・・というかスッゴい風雲児って感じ!こちらも終わったぞ、リッカ先輩!】

 

「お前が越後の俺か。──面白いマスターを持ったな!」

 

【そうじゃろそうじゃろ?お陰様でわしも自身をリミットブレイクよ!んー、マスター褒められると気分がいいのぅ!よし決めた!命は取らんでわしらに仕えぃ!リッカ先輩をうつけ扱いしてたら殺してたからラッキーじゃのう!うははははははははは!!】

 

「・・・そんで、お前は苦労してないか?」

 

【んーん、楽しいよ!よーし!じゃあ鬨あげよー!えい!えい!おーっ!!!】

 

「「「「「【えい!えい!おーっ!!!!】」」」」」

 

自身すら利用した軍略と戦術、そして気持ちのいい軍に敗れた吉法師。だが、その顔に無念はなく。痛快なものを見たと愉快げに笑うのだった──。




豪華絢爛城

吉法師「ほぉー!たまげた城だぁ!越後の春日山城といい、初めは弱小なナリがよくぞここまで持ち直したものよ!」

カッツ「姉上・・・兄上?いや姉上にディスられました!?でも嬉しいです!」

ノッブ【貴様は甲斐で地理も近いし、帝都の守護を任せるぞ。兵の無限湧きとかめんどいしの!】

吉法師「あい解った、任せておけ!バサラ信長の兵は俺が討つ!」

ミッチ「また新たな信長公をゲットしましたな。・・・マスター殿と豪将軍はどちらに?」

ノッブ【あ、そうじゃったそうじゃった!後は任せるぞミッチ!】

「信長公が・・・私にお任せ・・・!?ヌォォン!!!」

豪華絢爛城・天守閣

『助けてたも~!!』

ギル「ふはははははははは!!!見事に演じきったものよマスター!見事だ!!」

リッカ「たまにはこういうのも面白いよね~!うわ、私歯が真っ黒!」

ノブノブ「秘策!うつけにはうつけ作戦大成功~!こういうのはな、真面目で可愛いヤツがやるから効果があるのよ」

与一「理屈は解ります、解りますが・・・」

森「おうてめえ・・・内の殿様になにさせてくれてんだ・・・」

沖田さん「私は許します。しかし、この法度が許しますかね!」

ノブノブ「え、これわしボッコな流れ?」


豊久「じゃっでゆたんじゃ。わいは人ん心が読めんってな」

ノブノブはこの後めちゃくちゃ石抱した。

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