人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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信勝「リッカちゃん。僕ね、本当は姉上の代わりに織田家を背負う筈だったんです」

リッカ「あ、確か家臣の皆が推してたんだっけ・・・ノッブはうつけだって」

「はい。馬鹿な話です。本当に・・・ただ、女だからって理由で滅ぼしかけたんです。家名を、織田家を」

リッカ「・・・」

「ね、リッカちゃん。あなただけは、姉上を侮らないでください。対等に、支えてあげてください。あの猿だって・・・対等では無かったんですから。それが出来るのは、リッカちゃんだけなんです」

「カッツ・・・」

「心配しないでください、あとちょっと力を貸してください。僕は不滅です。姉上がいる限り──じゃあ、行ってきます!」

リッカ「カッツ・・・重いなぁ・・・想い・・・」


駿河


桐之助「さて・・・リッカ君たちは存分に力を示したと思われますが、如何でしょう?戦国無双・・・信長殿」

信長『──で、あるか』


返り忠!姉上が男な訳がない!

尾張、本物信長の居城にて──

 

「はははは!皆のものようした、ようした!この勢いに乗り、日本を脅かす魔王信長すらも飲み込んでくれるわ。儂こそが真の信長であると言うこと、骨の髄まで思い知らせようぞ!」

 

破竹の勢いの越後信長軍に待ったをかけ(実際は薩摩のやべーやつと鬼武蔵の真正面突撃撤退により痛み分けにされたが)、その本物ぶりを知らしめた本物信長。そのあまりの本物ぶりは微塵も揺らぐ事なく、自作の髑髏の杯にて酒を煽っていた。これより本格的に侵攻を行い、関東全域を治める本物信長への決戦へと打って出るのだ。その破竹の快進撃を思えば、笑いが止まることなど有り得ぬというものだ。

 

「いやぁ、流石は信長様!そこらへんの木っ端大名なんて相手にもなりませんねぇ!」

 

そんな彼に、上機嫌に太鼓持ちとして持ち上げるはカルデア在住・・・であったノッブの弟、信勝。彼は先の本物信長のあまりの本物っぷりに目を覚まし、真の本物信長へと仕える事を決心したのだという。どう聞いても胡散臭い話だが・・・

 

「おう、まぁ信長を騙る輩もわんさとおるし貴様が惑うのも無理は無かろう。そして死んだと思っていたが・・・」

 

「いやー、実は流れの風来坊に匿われて生き延びていたんですよ。無事に完治し、なんだか可愛い信長様に仕えていたと言うわけです!」

 

「ふぅむ、そうか。まぁそういう事もあろうなぁ」

 

信長公の生来の身内への甘さと、【不思議な言葉の力強さ】が重なりあっさりと言葉を受け入れた。風来坊から紹介されたという事も、何の疑問も持たずに。その言葉の不審も違和感も、信長が大量発生している異常なこの世界では異常として認められることはない。『信勝の存在』など、その程度のものであることを、信勝自身が誰よりも理解していた。

 

──だからこそ。【姉上以外の信長は、自身を気にも留めはしない】。こんな怪しい登用を、あっさりと本物信長は容認したのだ。身内と言うだけで。

 

「今後は心を入れ換えて働くがよいぞ。さぁ飲め飲め!今宵は無礼講じゃ!」

 

「ははー!ささ、勝利の宴と参りましょう!僕もご相判に預かりますので!」

 

ぐい、と信勝は杯を飲み干す。自分から率先して飲み干す事により、酒に毒の類いが入っていない事を身を以て示す意味合いをも持っていた。白い肌を紅潮させ、勝利の美酒に酔う姿を晒す。

 

「あー美味しい!本物の信長様と飲む美酒は最高ですね!」

 

その殊勝な態度の信勝にすっかり気を良くし、用意された酒を一息に飲み干す。常勝無敗の越後に互角の成果をもたらした事が、本物信長の気を更に大きくしていた。・・・本来なら、こうも気軽に飲まぬ酒ですらをも一気に流し込んでしまう程に。

 

「───・・・・・・」

 

「うむ!旨い!しかしあの儂の偽物め、女の分際で儂を騙るとは不届きにも程がある。次の戦では必ず仕留め・・・仕留め・・・」

 

その意気軒昂の口上を、一息に言うことは叶わなかった。突如本物信長の手足が痺れ、倒れ伏し、最早まともに立つことすら出来なくなるほどに痺れが全身に回ったのだ。信勝の前に、倒れ伏す本物信長。

 

「・・・・・・女の分際?そうやって誰かをうつけと侮る事はあの人が一番嫌う事なんですよ。本物信長さん」

 

「の、信勝、貴様まさか・・・毒を・・・!?」

 

見下ろす信勝が、小瓶を投げ落とす。其処には致死率八割以上の特注の毒瓶たるラベルが貼られている。──カルデアのマークが記されている、薬品として。

 

「まさか、貴様、最初から・・・!?」

 

「・・・やだなぁ。姉上が♂️なわけないじゃないですか。姉上は数多の世界の可能性の果てに、性別を女の子寄りに超越したんですから」

 

何故だ、何故この身だけ。酒が毒であるならば、それは信勝にも作用する筈。それがなぜ──

 

「──しもうた!盃の方か・・・!」

 

用意された酒、盃。それらは信勝が用意したものだ。それらを微塵も疑う事なく、自身は飲み干した。恐らく、口をつける部分に細工が成されていたのだ。これは、最初から全て計算されていた埋伏の刃であったのだ・・・!

 

「姉上が男だったなら、僕があんな事をする必要も無かったんです。・・・女、女とうわべだけ見て、姉上を見下す馬鹿な家臣達を焚き付けて一掃するなんて真似をしなくてもよかった。・・・僕は姉上のもとで、或いは隣でずっと一緒に暮らすことが出来たんだから」

 

そう、一目で誰もが理解していた、姉上こそが風雲児、天下を掴む器。織田家が誰を頭目にするべきなのか。それなのに家臣どもは、女だからと、男ではないからと姉上を卑下し無能の自分を囃し立てる。

 

自分じゃ無理だ、姉上じゃなきゃ駄目だ。姉上がいい、姉上が戦国を駆け抜け、一つにする。織田家は姉上の足掛かりでしかない。一つの家紋に収まりはしない。現に今、『姉上は世界を救う組織にいる』。世界を駆け、羽ばたく姉上こそが唯一無二。日本なんていう小さい国に拘る姉上など、もう何処にもいないのだ。だから──

 

──偽物は、さっさと滅んでしまえ。姉上以外の姉上なんて、存在すら認めない。

 

「ぬ、抜かったわ・・・。わしの甘さを・・・よう、ついたものよ・・・」

 

倒れ付し、痙攣を繰り返した後にピクリとも動かなくなる本物信長。その醜態と屍を、冷たい瞳で無感情に見下ろす信勝。

 

「やれやれ、他愛ない・・・この程度で姉上の偽物とか正気ですか?だいたい姉上が僕ごときに寝首をかかれる筈が無いじゃないですか。姉上がその程度だったなら──」

 

そう、姉上がその程度だったなら。自分がそのまま党首となり、姉である姉上と仲良く暮らし、仲良く何処かで滅んでいたのだろうから。其処には、僕と姉上の平穏な生活が待っていたのだから。──天下人で、無かったのなら。僕達はきっと──

 

「──ミッチさん。そっちは終わりましたか?」

 

念話を繋げ、ミッチこと光秀に連絡する。彼は混乱に乗じ、兵士達を──

 

『問題ない。粛清は今終わった処だ。──鬼柴田の名は伊達では無かったという事だな』

 

【皆殺し】にし、粛清していたのだ。元々必要なのは領土と城、国のみ。信長が誰であるかすら理解できぬ愚昧に生きる価値はないと、光秀は降伏すら許さず徹底して血祭りに上げたのだ。──とある一人のサーヴァントを招き。

 

『──相も変わらず光秀殿は容赦がない。だが、お館様の偽を祭り上げるならば遠慮は不要か』

 

『茶々様もお喜びになるだろう。さぁ、信勝。帰還しようぞ』

 

「勿論です。──姉上はただ一人。リッカちゃんとコンビを組んだ姉上こそが最強なんです。僕の姉上の邪魔はさせない・・・あはは、アハハハハハハ!」

 

『我が信長公はただ一人。今度こそ、誠心誠意あの御方に尽くすのだ。心より笑い、心より覇を謳うあの御方を。最後まで──』

 

・・・──本物信長の急死は、全国各地に轟くこととなる。毒を盛られ、倒れた一大勢力の死は衝撃を以て受け入れられた。

 

・・・カルデアの信勝に光秀。『織田信長解釈違い暗殺謀叛』としての一連の流れは、あまりにもやべー部下を纏め上げているカルデア家の絆と待遇の良さを如実にアピールする事となり、越後に大量の志願者と登用希望者をもたらす結果になったと言う──




絢爛城

信勝「姉上ー!本物名乗る本物をブッ殺して参りましたよー!」

ノッブ【うはははははは!!それって本物なんじゃない?まぁわしが本物だからってことじゃない!死なない、最後まで勝つのが本物の信長なんじゃな!】

光秀「そして同じく、真贋見極められぬ蒙昧どもを粛清して参りましたぞ」

「やるじゃねーのキンカン。まぁ裏切った事はゆるさねーけど、無駄にやるときはやるのな」

「貴様の称賛などいらん。糞の海にでも沈んでおけ」

ノブノブ「オォン!?」

オルミーヌ「まーまー!まーまーまーまー!!ところで、あの方は・・・?」

茶々「わぁーい!権六殿ー!来てたのねー!」

柴田勝家「おぉお、お茶々!お茶々や!こうしてまた出会えようとは!光秀殿、心より感謝いたす!お茶々、贅沢は治ったか?」

茶々「ぎくり。か、改善中です!」

光秀「私が呼んだのだ。私の腕と楽園カルデアの設備、人員、技術さえあれば、彼を此方に招くなど造作もない」

柴田「柴田権六、勝家とお呼びくだされ。麗しき信長様に愛らしきマスター殿よ!この鬼柴田、一番槍となりましょうぞ!」

リッカ「よろしくお願いいたします!柴田さん!となると・・・残るは・・・」

桐之助「渚の、戦国無双信長。──コンタクトは既に取ってある。あちらも、私達に会いたいと言っているよ」

リッカ「桐之助さん!?」

【──で、あるか】

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