人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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駿河 海の家『是非もなし』

カッツ「リッカちゃーん!ありがとうございました!特注アジダハカイヤホンのお陰で、リッカちゃんの力を借りれましたよー!」

リッカ「無茶するなぁ、カッツ・・・!でも、無事でよかった!」

カッツ「はい!心配しないでください、姉上ある所僕がありですから!あ、お礼にラムネ持ってきますねー!」

虎「・・・騒がしいものです。そして、兄弟の仲はよろしい様で何より」

リッカ「・・・虎ちゃんは、最後まで畏怖されたたんだっけ」

「そうですね。恐ろしい、恐ろしいと言われ続けました。あいつの目が恐ろしいと。あいつは人間ではないと」

リッカ「そっか・・・。その時、なんだか勝手に笑ったりしちゃわなかった?」

虎「?何故解ったんです?言われる度そんな気分でもないのに、笑いが止まらなかったものですが・・・」

リッカ「それね、哀しみって言うんだよ。虎さんは笑うしかできなかったからそういった表現しか出来なかっただけで、虎さんは家族にまで拒絶されたのがたまらなく悲しかったんだよ」

虎「──。悲しい。私が?」

リッカ「私はそう思うな。虎さんは人でなしと呼ばれていたかもしれないけど、あなたにはあるんだよ。理解されない哀しみと、肉親とすらわかり合えない辛さを悼む心が」

「・・・・・・心。私にそんなものが・・・」

リッカ「うん。私はそう思う!」

「・・・・・・馬鹿なことを、と。リッカちゃん以外に言われたなら切り捨てますが、リッカちゃんがいうなら・・・そうなんでしょう。えぇ、人を誰よりも見てきたリッカちゃんならば」

リッカ「ふふん。人と触れ合いは得意技なのです!」

虎「あはは!・・・リッカちゃんと話すたび、あなたの事は近しく感じていくのに、人への疑問は深まるばかりです」

リッカ「虎ちゃん・・・」

「何故でしょうね。こうして、目を見て話してもらえたならば。言葉を交わせば解り合えるのは容易いのに。人は何故・・・弱いくせに、強きを畏れるのでしょう」

ノッブ【カッツ!ラムネ持ってこーい!】

カッツ「こちらにどうぞ!僕の飲みかけです!」

「──私はただ、家族として接してもらいたかっただけなのですが。今のリッカちゃんのように。・・・ただ、それだけだったのですが」

リッカ「・・・ままならないよね」

虎「えぇ。人は、本当にままならない。──羨ましいなぁ。あの二人の仲良しぶり・・・」

リッカ「虎ちゃん・・・」

「・・・リッちゃん、姉と妹どちらが好きですか?」

リッカ「!?」


泰然!戦国無双信長!

「よくぞ参った。我こそ、戦国の乱世に降り立ちし、神仏に仇なす魔王・・・織田、信長。うぬらの顔触れを見るに、いよいよこの地の理が定まる刻が近い。即ち、魔界か・・・浄土か」

 

遂に駿河の地にて見えた戦国無双信長。日差しと海の輝きに劣らぬ気風、黒き南蛮鎧とマント、紫色のビームソードを構えた威風堂々たる装いは、まさに信長の威厳の具現にして体現とも言える風格を醸し出す。彼は、この地にて沈黙を保っていた理由を口にした。簡潔に、彼以外には解りにくく。

 

「彼は来る極楽浄土の破壊と対抗に備えて、軍備を日本中に用意し蓄えていたようだ。皆が戦国を纏め上げる中、私はどうしても彼の真意を掴みたくてね。そう思っていたら先程、連絡と約束のアポイントメントが取れた所さ。事後承諾の形になってしまい、すまないね。信長公にリッカ君」

 

【構わん構わん。たったさっきなんだからしゃーないじゃろ。しかし、おらんと思ったらそんな事やっとったのか。食えん風来坊じゃな!】

 

「で、なんでそんなスターウォーズに出てきそうな刀構えた俺が地蔵決め込んでたかって話で出てきたのが極楽浄土か。なんつーか、最近の俺の相手そんなんばっかだな・・・」

 

「話す前に、うぬらの道行きの話を申せ。この戦乱に、うぬらは如何なる理にて飛び込んだ?」

 

「あ、じゃあかいつまんで簡潔に!実はですね、この世界は──」

 

リッカが説明する、観測シミュレーションの暴走により産まれた群雄割拠の信長乱世。この閉鎖空間はシミュレーション・・・あり得た観測の世界であり、天下泰平というゴールに届けば無事にこの世界は在るべき姿に戻る。その為に、増えた信長を討ち果たしカルデアに帰還することこそが目下の課題であることを加えて伝える。戦国無双信長はその説明を静かに聞き入れ・・・

 

「で、あるか。──うぬら、魔玖主なる教の名を承知しているか」

 

魔玖主教。一揆衆を焼き払わんとした謎多き団体にして、全国各地に展開している宗教集団との情報を楽園は掴んでいる。

 

「あー、あれだろ。西に構えてる宗教団体。オッパイーヌが調査したにゃ、全国で慈善事業やってる変人集団ってヤツだろ」

 

「あれらの目的こそ、我、そして我等が討ち果たすべきもの。かの安寧の獄たる浄土を滅ぼす事こそ・・・──我が覇道にして招かれし意味」

 

断言する。かの教徒の目指すものこそ、自身が滅ぼすべき最大の目標に他ならぬと。その揺るぎない言葉は、グランドノッブやノブノブともまた違う『覇王』とも言うべき言葉の重みが介在している。

 

【あー、比叡山とか生臭系列の教えだったりするかのそれ。はー、血も涙も無いとまた言われてしまうかー。またわしロックしちゃうかー】

 

リッカ「魔玖主教の教え、そして目的・・・戦国無双信長さんは何かをお掴みになっていらっしゃるのですか?」

 

「──あれらの大願、即ち誰もが幸福に在りし極楽浄土の再現。この現世に、まことの救済をもたらさんとするがあれらの本懐」

 

「無理に決まってんだろ。神様がいるんだってんなら人間を救う義理なんぞ無いし、人間も救われる道理もねぇ。人の世を変革するは、いつだって人よ」

 

「仰有る通り。人はその胸に神を宿しているが故、昨今まで繁栄を謳歌してきた。・・・だが、あちらの団体はそうは思っていないようです。──だろう?魔玖主のキャスター殿」

 

桐之助が虚空に呼び掛けた瞬間、無でしか無かった空間に音もなく存在が現れる。抹茶色のスーツ姿に、サングラスをかけた現代風の男。人間ではない、サーヴァントの気配を持つ・・・

 

『あれ?お気付きでした?』

 

【───】

 

瞬間、リッカを庇いしグランドノッブの火縄銃、かき氷食べてたノブノブの短筒が同時に火を吹いた。膨大な魔力の塊が男を射抜くが、まるでそこに何も存在しないかの様にすり抜けていく。

 

『あぁ、無駄ですよ。この時代には私を証明・・・おっと、倒せるサーヴァントは存在しません。楽園の御機嫌王様とは話がついておりましたが、情報の錯綜が起きたようで平にすみません』

 

一目見たのみで、争いの類いは無意味であると理解した二人の信長が銃を納める。リッカは彼の放った単語に迅速に反応した。

 

「ギルが?あなた、ギルと話したの?」

 

『えぇ、とある部品の交換依頼を快く受けてくださいまして。全てを尊重するという素晴らしき名目通り、我等の言葉を一蹴に伏さず聞き届けてくださいました。ありがたいことです』

 

彼は魔玖主の教祖のサーヴァントであり、遣いであるという。その主からの伝言を届けにやって来たという。その力は非常に弱く、アンデルセンクラスの戦闘力しか感じられぬほどの脆弱さだ。

 

「魔玖主のキャスター・・・」

 

『はい、私は主の使いでカルデアの皆さんにお話をしに参りました。戦国無双信長さんとはまぁ、敵対関係ということになりますが・・・』

 

「是非も、無し。こやつらが神を殺し、魔王を討つものなれば・・・真実を掴まねば始まらぬ」

 

彼は戦乱の世にて、魔界と浄土・・・二つの到来にもけして靡かぬ魂と力を持った存在を見極めていた。駿河の地にて沈黙を保ち、楽園の奮闘を見つめていた。だからこそ、次に討ち果たすべき存在の指標の邪魔はしない。例えそれが、自身が討ち果たすべき存在であれど。

 

『ありがたい事です。それでは我が主・・・魔玖主教の頭目の言葉を御伝えします。──この乱れに乱れた戦国の世を終わらせ、衆生が安心して暮らせる平和な世を迎えたい。その為に、皆さんと協力して──』

 

【・・・・・・】

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

『──あの安土に鎮座する、神仏衆生の不倶戴天の怨敵。『第六天・バサラ信長』を打ち倒したい。・・・以上が、我が頭目の偽らざる願いです』

 

バサラ信長──無差別に日本の地を焦土と化す侵攻を繰り返す、魔王と呼ばれる側面を正しく現した安土における戦慄の信長。

 

実の所を言うと、旗揚げをし快進撃を続けてきた楽園カルデアであるが、領土を完膚無きまでに滅ぼした土地はほぼない。楽園が攻めてきたと知るや、抵抗も僅かにあっさりと降伏を選んだのだ。それは勿論、楽園カルデアの圧倒的な兵力に手厚い待遇あっての事でもあるが。何よりも、『バサラ信長から庇護してもらえる』との意見が大半であった。それほどまでにバサラ信長の侵攻は苛烈で、徹底的で、容赦なく自身の領土を広げている。灰塵焦土という領土を。

 

「バサラ、信長・・・あやつの目論見こそは現世への侵攻。生命を根絶やしにし覇者となり、此処ならざる正しき世に第六天を築き上げる。即ち、自らの寝床たる灰塵焦土たる魔界の再建」

 

【THE・暴君&魔王此処に極まれりじゃのー・・・一回死んで甦ったのと声帯が若本になってなんかバグったじゃろあのわし】

 

『魔玖主教の信徒ももう見つけ次第皆殺しにされてしまい、当初の何分の一になってしまったか見当もつきません。そして全ての生命とは、あなたたちも含まれる』

 

「どのみち、そいつを殺らねーとリッカちゃんの世界に魔王が顕現する訳か。恐らく俺らがわんさか出たのも魔王へのカウンターであるのかもな」

 

その成り立ち、使命、役割が見えてきた中、リッカにあーんされながらかき氷食べていたグランドノッブが大笑と共に膝を叩く。

 

【うむ、別にどんだけ魔王ムーブしようが勝手じゃが、リッカ先輩の世界に赴き未来を閉ざさんとするならば迷うまでもなくわしの敵よ!良かろう魔玖主のキャスター!今は一時と言えど!その提案に乗ってやろうぞ!】

 

「ノッブ・・・!」

 

【なぁに、心配せんでもえぇでな。わしは元からその腹積もりよ。リッカ先輩の未来を拓く為のグランドノッブ!わし、この霊基はその為に使うと決めとるのよね!じゃから安心して、わしの傍でいつもニッコリ笑っているとよいのじゃ!】

 

「うん!ありがとう、グランドノッブ!」

 

「──フ、で、あるか」

 

「はい。彼女のサーヴァントとの付き合い方こそ、彼女が世界を救うに相応しき資格そのものと考えております。信長公も、お見通しでしょう?」

 

愉快げに、親しげにマスターを慕う自身と、それを侮らず敬いと共に語るマスター。その姿こそ、魔と神を討ち果たす力。

 

──此処に、最後の要素は揃ったと。桐之助に微笑む戦国無双信長であった──




魔玖主のキャスター『それでは皆様で、バサラ信長打倒!オー!あ、楽園の皆様にアドバイスですが、バサラ信長は色々と桁が違います。現在の戦力でも、大苦戦は必死かと』

リッカ「バサラだもんね・・・あのバサラだもんね・・・」

『ですので、カルデアから増援を招くなり、各地から登用するなりでもうちょっと準備するのをお勧めしますよ。もう本当バサラ信長半端ないですから』

グランドノッブ【であるかー。じゃあ桐之助に登用は一任してみるかの!】

リッカ「そろそろマスターの皆も起きるかもだから、武将登用頼んでみようかな!」

『えぇ、それでは・・・』

ノブノブ「待ておい、まだ手前の目的を聞いてねぇぞ」

『はい?ですから私は』

「魔玖主の目的じゃねえ。サーヴァントでいうてめぇの目的だ」

『あー・・・。・・・楽園の皆様には馬鹿馬鹿しいかもしれませんが、知りたいというなら』

リッカ「目的・・・?」

『はい。私の目的はたった一つ。──『人類の幸福』ですよ』

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