蘭「出勤の御時間です」
~とある山、麓
ぐっちゃん「いやよ!あんなナマモノ蔓延る日本になんて来たくないわ!嫌じゃ!頭のおかしい島国などきとうない!!」
リッカ「そんな事言わずに!なにとぞ!なにとぞ!」
ぐっちゃん「あぁっもうこの後輩バカみたいに力強い!?なんで押し退けられないの!?」
桐之助「どうやら山に人食いの荒ぶる蛇神がいるらしいと情報をつかんでね。これから向かうわけだが・・・」
ぐっちゃん「ぜぇ、はぁ・・・ホントあんた、産まれる時代間違えてるわよ・・・」
リッカ「サナちゃんに連絡しよ。神奈子様はお元気ですか?──あ、写真来た。仲良し!」
「誰だい?あの変な服着ている美女は」
マシュ「あれは、その、えっと・・・ヒナコさんの姉です!そして、先輩が言うには──」
「なるほど、それは頼もしい。挨拶しよう、もし!そちらの御方!」
ぐっちゃん「あん?誰・・・キリシュタリア!?うそ!なんで!?」
桐之助「うぅん。何故素で話し掛けると私は驚かれるんだい・・・?」
「というわけでやって参りました件の山奥の洞窟。人を呪い殺す蛇神がおわすという怖い場所へとやって参った我々越後カルデア登用部。まことしやかに噂される蛇の神とは本当に実在するのでしょうか。取材班は決死の突入リポートを行っていきたいと思います。・・・どうだい?リッカ君。動画映えする語りにはなったかな?」
「問題無し問題無し!桐之助さん美形だからこれで女性回覧板リスナーのハートをザバーニーヤだよ!マシュ、後で編集作業ね!」
「はい!城下町へ配る実在!菩提探検隊と銘打ちアップロードしましょう!」
「・・・何これ?」
カプセルにぶちこまれ精神汚染もかくやとなった教育を終えたぐっちゃん。そのまま憂鬱冷めうる事なく連れてこられた先にはしゃぐ後輩とマスターと同僚そっくりさんの顔をした自称風来坊。三人のハイテンションに、ただただ首を捻るヒナコ・・・ぐっちゃん。彼女は割とアンニュイ。
「考えてはダメだ、感じるのさヒナコの姉上殿。この世界では言葉で説明出来ないことがいっぱいさ。この蛇神様も、この世界も。どうして空が青いのかすらもね」
(設定!なんでそんな設定にしたのよ後輩!?)
(いやー、流石に真祖と似たようで同じようで違うような何かって説明しづらくって。自爆!精霊と化したヒナコとかの方が良かった?)
(いやよそんなボンバーマンみたいなの!あーもう、確かに色々説明するの面倒臭いしそれでいいわ。キリシュタリアがこんな所で何してるのかとかも気にしない事にする。絶対納得出来そうに無いし)
(流石パイセン!ものぐさ&面倒くさがり!)
(おだまり!処世術よ!ところで何よ、こんな洞窟に何がいるっての?)
内緒話で話を進めるなか、ぐっちゃんはどう見ても人気の無い洞窟内を見渡す。話を全く聞いていなかったようだ。或いは人を脅かすものなど割とどうでもいいのかもしれない。
「リッカ君が言うには、君は自然と共に生きるシャーマン・・・イタコ的な存在なのだろう?どうか荒ぶる蛇神様をイイカンジに鎮めてはくれないだろうか。バサラ信長との決戦前に呪われては洒落になら無いからね」
「シャーマン!?私シャーマンだったの!?」
「はい!ヒナ・・・ぐっちゃんさんは自然の中で活動する大自然系美女と桐之助さんに紹介させていただきました!」
あんぐりと口を開けるヒナコ。役職が盛られて紹介されている・・・!マシュは土壇場でアドリブ効かせられるほど俗ではない、となれば・・・
(あんたよね!シャーマンキングみたいなノリでチョイスしたのね後輩!私別にオーバーソウルとか出来ないわよ!?憑依合体とかも無理よ!?)
(なんかこう、真祖っぽい力でナウシカやもののけ姫的な解決策や交渉を!)
(なんで私の時だけフワッとしてるの!?あんた残りのイベントそんなノリで挑む気!?)
そこはほら、ぐっちゃんだから・・・等と口にすれば更に話が拗れること必死なので、yesともnoととも言ってない顔で誤魔化すリッカ。・・・その時、バビロニアアニメで良く聞いたような声音が洞窟に響き渡る。
【帰るがよい。愚かな人間達よ】
「この声は!?」
「取材班が脚を進めたその時だった!洞窟に響き渡る恐ろしき声!やはり此処は、語るも恐ろしき呪いの蛇神のおわす神聖な洞窟だったのか!我々は洞窟の主と、対話を試みる・・・!」
マシュの後ろにて素早く離脱し、とりあえず草笛吹いておくキリシュタリア。場をもたせる一発芸にしたいねと呟く彼を余所に、目の前に巨大極まる大蛇が現れる。エネミータイプ・オロチ。或いはヒュドラに通ずる巨大な蛇だ。
「あなたですか!人を呪い殺し石に変えるヤベー蛇というのは!耐魔力低いサーヴァント石にしまくるスネークは!映画延期無念です!」
【・・・あの、良くわかるよくわからない事を捲し立てると謎の、という部分が破綻しますので特定はやめていただければ・・・。とにかく、呪いだの殺すだのは、SNS的な風評被害。レッテル張りの弊害なのです。この洞窟を御覧ください。死体も何もありませんから】
「よーし見てこファー!?」
【あなたはなんだか私も知らない何かを見つけそうなのでダメです】
リッカが捕縛され、マシュと桐之助がぐるりと見渡してみれば、其処には言葉通り何も無い洞窟が広がるばかり。本当に殺害は行っていないようだ。
【ね?人間は昔から悪いことが起こるとよくわからないもののせいにしがちなのです。よくわからないものを暴かずに、理解せずにはいられない。未知を赦せぬ生き物なのです】
「わかるわぁー。お陰様で私もう南極にしか永住先が無いのよホント。星の居場所が本格的に無いわけ。なんか親近感湧いてきたわ。ごめんなさいね邪魔をして」
【いえいえ。私はとにかくぐだぐだNG、此処でゆっくり本でも読んで暮らしたいのです。というわけで回れ右してさっさと帰るように】
なんだか意気投合しちゃった蛇神様とぐっちゃん。どうやら迫害された者同士シンパシーを感じてしまった様である。となれば交渉は難航する・・・と言った所だが。その親近感こそが割と狙いだったりするのである。
「今だよパイセン!交渉、交渉!」
「えぇ・・・?はいはい、解ったわよ。・・・あんたの事情は解ったわ。でも私達も世界を救う組織の一員、やる気が無いなんて理由で穴熊を決め込まれたら困るのよね」
ぐっちゃんパイセン、まさかの交渉役。土着だったり、星の生き物だったりする相手なら彼女が最適解なんじゃないかなーといったマスターチョイスなのである。彼女の地味にカルデアの一員である発言に、リッカとマシュは人知れず感涙にむせいだ。
【いやあの、ぶっちゃけ人類の歴史はなるようになればいいといいますか。人類いなくなっても星は存続するといいますか・・・】
「それはそうかも知れない。しかし人間は異世界や異次元から飛来してきた存在でも侵略者でもない。星が産み、星が育んだ自然の一部だ。ならばそれを滅ぼさんとする相手は星を滅ぼそうとする破壊者であると考えられないかな」
「人類もまた、天然自然から生まれたもの!自然の一部!若干やりたい放題してる感はあるけど!」
「どうでもいいって言い続けたら、世界にとってもどうでもいい存在に自分がなってしまうのよ。朽ち果てるのは勝手だし、羨ましいけれど。それにしたって今を生きたい連中は足掻いてるわけだし。ちょっとくらい気まぐれ起こしてみない?」
(ひ、ヒナコ先輩が・・・理知的な事を・・・!)
ぐっちゃんは別に、楽園の皆は嫌っていない。むしろ項羽との安住の地付きの再会をくれた恩義を忘れてはいないのだ。少なくとも、楽園の連中が滅びるまでは。今を生きる命に力を貸してあげると決めているのである。酒の席で蘭にしか言ってないけど。
【・・・・・・。はぁ・・・熱心な御願いを無下にするのもイメージが悪いですし・・・。ぐだぐだに巻き込まないという条件付きなら、多少は】
「ホント!?やったぁ!よろしくね!メドゥーサさん!」
「・・・え?メドゥーサさん?」
【はいはい、頑張りますよ。あ、すみません。この蛇神頭が取れるようになってるんで引っ張ってくださいますか】
「え!?これもしや着ぐるみだったんですか!?」
【絶対外でないという決意のままに拵えたのですが無駄でしたね・・・あ、頭は討伐の証としてどうぞ】
「ははは、これで無事解決というわけだね!荒ぶる蛇神を平定し、アンニュイなお姉さんをゲットだ!よしマシュ乃さん、リッカ君、そっち引っ張ってくれせーの!」
「・・・全く。我ながら変な事を言ったものね・・・」
無事に蛇神様を仲間に引き入れた桐之助一行。その切っ掛けとなった一人の精霊主は、かつてのような人への嫌悪と恐れが確かに薄らいでいることを実感するのであった──。
無事に
帰路
桐之助「見たまえマシュ玉さん。蛇がすっぽり私を食べてしまったよ!」
マシュ「き、桐之助さん!次は、次は私にも!」
蛇神メドゥーサ「かなり生臭いでしょうからしっかり洗ってくださいね。というわけで蛇神です。石化とか凄い得意なので、雑兵を見渡せる高いところに配置してください。皆石です」
リッカ「対魔力持ってないとアウトってチートじゃない・・・?」
蛇神「割と強いんですよ。まぁ割とですが」
ぐっちゃん「はぁ、山登りとか久々よ・・・後輩、後で金平糖ね」
リッカ「はーい。・・・ぐっちゃん、ありがとうね。力を貸してくれて!」
ぐっちゃん「・・・ふん。そう思うなら、あの場所をあんたが護りなさい。あそこは私の居場所でもあり、・・・あんたの居場所なんだから」
リッカ「うんっ!一生懸命頑張るよ!」
桐之助「どうかな、ライオンキングならぬスネークキングなんて題材は」
マシュ「らーくばんにゃー!はびびっちばばー!(どぅっどぅー、へっばーんにゃー)」
ぐっちゃん「あぁもう!まともなのは私だけなの!?」
リッカ「えっ?」
マシュ「えっ?」
桐之助「えっ?」
メドゥーサ「えっ?」
ぐっちゃん「えっ・・・?」
蛇神様が 仲間になった!
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