人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ちびノブ「ノブブ、ノブブ!」

ハサン太夫「いけませんな。バサラ信長が行った地を偵察してみましたが、正に灰塵焦土と呼ぶ他無く。最早放棄する他に道は無いでしょう」

ノッブ【焦土か。資源も残さないとは徹底しとるのぅ。安土に繋がる土地はほぼ同じ有り様。なんとかせねば行軍もままならぬか・・・】

ノブノブ「奴等が攻め入らねぇのもそれだろうな。どのみち焦る必要はねぇのだろう。異界の法則なんだからな」

オルミーヌ「ど、どうしましょう?それでは安土に赴く事も・・・」

景虎「いいえ、手段はあります。リッカちゃんの加護が真なら、確実になんとかなります!」

リッカ「ふぁっ?私?」

景虎「社ですよ社!魔王には神!社を建て、祈るのです!さすればきっと、あなたの魂に惹かれた神が力を貸してくださいます!」

ノッブ【此処に来て敬うが神仏と来たか!わしだけならず他もとは浮気性じゃのぅ!だがよい!リッカ先輩!ダメ元でゴーじゃ!】

リッカ「や、社ぉ!?わ、わかった!やってみるけど・・・!」


建てろ!御祓のお社!

「これが・・・日本の敷地だと言うのか?」

 

社を設立するため脚を踏み入れた魔神領土跡地。桐之助が愕然とした声を漏らすのも無理からぬ光景が其処には広がっていた。眼前に命の営みや生命の輝きと言った様相は微塵も感じられない。其処にはただ、【地獄】と形容、呼称されるべき空間のみが寒々とリッカ達を迎え入れたのだ。

 

空は分厚い暗雲が空の輝きを遮り、日の暖かさを遮断する。空気はどんよりと淀み、濁りきって前方の少し先すらも見通すことが出来ない。黒き焔が燻る大地は霊脈、地脈共にズタズタに寸断、汚染され僅かな生命の芽吹きも許さぬ程に荒れ果てている。誰が見ても、この大地は死んでいた。いや、殺されたのだ。他ならぬ、魔王の手によって。

 

「これが、バサラ信長の力・・・」

 

侵攻し、滅ぼされた大地はこのように結末を迎え、最早僅かな草木の台頭も許さぬとした無慈悲の鏖殺。無人の荒野に亡者の嘆き。生きて語る者は不要とばかりに造り上げられた地獄が、その様相を如実に表していた。桐之助も、リッカ達も、その徹底的な覇道の有り様に戦慄を隠せない。

 

「これが、私達の戦うべき相手か。想像を遥かに越えた地獄と焦土をこの魔王は好むらしい」

 

「禍肚と同じくらい、ううんちょっと下かな・・・?でも、こんなになったらもう誰も住めないよね・・・」

 

ただ示されるバサラ信長の圧倒的な存在感に圧倒されると同時に、こんな存在が現世で特異点を作り上げた時。どんな地獄が出来上がるかを想う。その未来を思い描いたならば、此処で気後れするようなリッカでは無かった。拳を強く握り直し、皆に告げる。

 

「此処で絶対に倒そう!皆の未来を、焦土にも地獄にもさせる訳にはいかないよ!」

 

「あぁ、それでいいんだリッカ君。カルデアスタッフも、サーヴァントの皆も、カドック達マスター達も、部員諸君も、私も・・・マシュ紅さんも。皆、君を中核として奮起する。如何なる場合でも、君だけは希望を謳わなくてはならない。どんな絶望でも、どんな状況でも。『君がいるなら逆転できる』。それだけの強さと輝きが、君にはあるんだ」

 

だからこそ、絶望や苦難に負けてはならない。いいや、負けそうになったら誰かを頼ればいい。君を支えたい人は、たくさんいる。

 

「カルデアの皆は、君が折れないようにサポートセンターをしてくれている。だがそれは一側面の話。今の磐石なカルデアならば、『君が折れたとしても、立ち上がれるまで支えてあげられる』組織になっている筈だ」

 

「桐之助さん・・・」

 

「さっきとやや意見は異なるがね。折れたり、挫けたりしたくなる時もあるかもしれない。だがそれは絶望じゃない。どれだけ時間がかかっても、辛くても、立ち上がろうとすることが出来るなら負けてはいない。この絶望の荒野に、一歩でも脚を踏み入れようと決意が出来るのならば。それは紛れもなく、希望を担い、世界を救う存在そのものだよ。今の君の様にね、リッカ君。・・・長々と語ってしまったが、要するに・・・」

 

「挫けてもいい、私達が支える。だから前を向き、立ち上がろうとする意志を捨てないで!ですよね、桐之助さん!」

 

「あはは、言われてしまったな。やはりマシュ渕さんとリッカ君の絆の前には差し出がましい真似だったかな?」

 

桐之助は、自身の言葉でリッカを心から激励し、励ました。見失わないでほしい、折れない事は弱音を吐かない、誰にも頼らないと言うことでは無いと言うことを。君を全力で支え、見守る人がちゃんといる。そういった事を、彼は伝えたかったのだ。

 

「ううん、ありがとう・・・桐之助さん!なんだか凄く、価千金の言葉を貰っちゃった気がする!・・・もしかしたら」

 

「?」

 

「私がいなかった世界のマスターさんも、きっとそうやって世界を救うんじゃないかなって!私はそう思うよ!桐之助さん!」

 

「・・・そうだね。でも、傍には仲間がいてほしいな。どんな偉業を為そうとも、独りで果たした偉業はただの記録。身体を支える記憶には、きっとならないだろうから」

 

リッカは対話の龍、桐之助が伝えたい真意や意味は理解しているかもしれない。でも、それをあえてはっきりと突きつけない優しさに、桐之助は笑みをこぼす。

 

「見せてくれ。この荒野が、この地獄が。君達の手で──」

 

テンション上がってきた桐之助。シリアスタイム終了のまま、高らかに眼前の光景を腕を広げ指し示す。

 

──その、時だった。

 

「輝ける、希望に満ち溢れた光景にな──えっ?」

 

「ふぁっ!?」

 

「な──」

 

瞬間、本当に瞬間だった。桐之助の言葉に呼応するように、暗雲が引き裂かれ、吹き飛び、目映い日の光が大地に突き刺さるように照らされる。

 

淀んだ空気は、吹きすさぶ穏やかな風に蹴散らされ、晴れながらも振る恵みの雨が大地を癒す。瞬く間に蒼穹の空が顕現し、地獄が霧散していく。

 

「な、なんだい!?まさか私の誠意を込めた言葉が物理法則を歪めてしまったとか!?いやまて、理想魔術ってこういうものではないのだが!」

 

「落ち着いてください桐之助さん!これはもしや・・・!」

 

「見て!二人とも!あれを!」

 

リッカが指差す向こう、陽光に包まれ、厳かにして厳粛な光景──『降臨』と呼んで差し支えない空間に、雲を裂き現れしもの。

 

「おぉーーーい!お婆ちゃんが助太刀に来ましたよーー!日本の危機に、絶対に役に立つお婆ちゃんが来ましたよーー!」

 

「イ・・・イザナミお婆ちゃん───!?」

 

間違いない。いつもの騒がしい口調、女神そのものの威厳と風貌から放たれる大阪のおばちゃんムーブ。間違いない。高天ヶ原に滞在している楽園のサーヴァント、汎人類史のイザナミその人だ・・・!

 

「イザナミだって・・・!?カルデア、創生神話にまで進出していたのか・・・!マジに?」

 

「国土や風土が荒れ果てているじゃないですかー!やだー!でも高天ヶ原に届きましたよ!『どんな地獄でも諦めない!』という強い意志!その祈りと願いに応えてあげたい!なんて思ったらいつの間にかやって来ちゃってました!妾、リッカちゃん達の力になっちゃいます!」

 

「え、いやあの、それは嬉しいんだけどねイザナミお婆ちゃん!あの、これシミュレーションで、来ても大丈夫なのでしょうか・・・!」

 

「勿論大丈夫です!何せ妾、神威と格は最低限まで落として分霊として突入させて来たのです!まるで戦闘は出来ませんが、その分空間とかの御祓やお祓いはこのお婆ちゃんにお任せください!何卒何卒よろしくどうぞー!」

 

祈りを聞き届ける神はいる。確かにいるがやって来ちゃった最高神の一柱。後先考えず使命以外の全てを投げ捨てて降臨しちゃうのがお婆ちゃんクオリティ。

 

「こ、心強いよ!ね、皆!この矛の持ち主が来てくれたよ!これでバサラ信長の病とか、陣地とかも対応できそう!できそうじゃない!?」

 

「は、はい!驚きましたが、これは間違いなく最高の援軍かと!」

 

「成る程・・・文字通り、君達の旅路は神も見てくれていたんだね。本当に・・・」

 

本当に、それは素晴らしい事だと。桐之助は感嘆と共に息を吐く。

 

「あ、そちらは新しいリッカちゃんとマシュちゃんのお友達でしょうか!私、高天ヶ原で女神をやっております、イザナミノミコトと申しますー!イギリス出身のようですが、どうぞどうぞ日本をよろしくお願いいたしますねぇ~!」

 

「あ、はい、キリシュ・・・桐之助です。その、拝謁の栄に預かり光栄の・・・」

 

日本の最高神に手を握られ、笑顔で挨拶されるという未知の体験に、流石の桐之助も圧倒的されぬいてしまうのでしたとさ──

 

 




越後楽園城

イザナミ「あなや!あなや毘沙門天!毘沙門天じゃないですか!いやぁめんこい!腕とか武器とかもっとたくさんじゃありませんでしたっけ?まぁいいや!お婆ちゃん、イザナミと言います!仲良くしてねぇ~!」

景虎「(フリーズ)」

リッカ「そうなるよね~。イザナミお婆ちゃん最高神だもんね~」

あまこー「ワフン」

リッカ「あ、こちらあまこー。天照大御神!私のお気に入りの神様の一柱なんだぁ!」

景虎「(フリーズ)」

将門公『魔なる軍勢より、楽園領土を守護せん』

「こちら平将門公!ルーラーで来てくれた、すごく頼れる守護神様だよ!虎ちゃんの言う通り、社を建てたら来てくれたよー!」

景虎「そ、それは、何よりです。あは、あはは・・・え?マジ?本気なんです?」

オルガマリー『戦闘行為は禁止だけれど、神威ならなんとか・・・』

桐之助「オルガマリー・・・カルデアは一体どんな道を歩んだんだい?」

『色々よ。でも、神様もにっこりな・・・楽しい旅路よ』

ノッブ【うはははははははははは!!魔王に挑むにそれらしい顔触れじゃな!】

景虎「び、毘沙門天も・・・よろしくお願いしまーす・・・」

リッカ「虎ちゃん、あまこーのブラッシングやる?」

あまこー「ワフン(お腹見せ)」

「それでいいんですか大神様!?」

将門公『人と共に在るこそ、神の真髄なり』

イザナミ「私がお手本を!あまや、優しく優しく~」

あまこー「ワフ!(あなたの痛いから嫌です)」

「いたぁい!?」

ノブノブ「何これ高天ヶ原?」

オルミーヌ「ゼウスとかシヴァとかが目の前にいるようなものなんでしょうか・・・」

イザナミ(カルデア分霊)が仲間になった!

あまこー(カルデア分霊)が仲間になった!

将門公(カルデア分霊)が仲間になった!

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