ノブノブ「あの変態ロン毛キンカン謀反起こさねーかなー。そうすりゃ一気にチャンス出来るのになぁ」
ノッブ【まさかそんな空気読めんミッチじゃないじゃろー。いや、空気読めんからわしが本能寺した訳じゃが!】
「【わはははははは!!】」
ミッチー「・・・・・・」
オルミーヌ(むしろだ、針のむしろだこれ・・・!おいたわしや光秀さん・・・皆早く帰ってきてー・・・!)
城下町
カドック「桐之助もマスターになれたんだな。いや、驚かないぞ。ぐだぐだは・・・全てが起こり得るんだからな」
ぐっちゃん「元サヤというかなんというか。脚だけは引っ張らないようにね」
カドック「あんたがそれを言うのか・・・」
ぐっちゃん「どういう意味よ!?」
桐之助「勿論だとも。新参マスターとして、風来坊なりに頑張ってみせるさ。お近づきの印に、改めてこれを」
カドック「・・・クロワッサン?なんでまた・・・」
桐之助「彼女、イニスがね。大好きだというんだ。この、すずめ亭のクロワッサンが・・・ね」
~カルデア
イアソン「・・・・・・・おいヘラクレス、アレ」
ヘラクレス「麗しき美女だ、いいな?イアソン、いいな?」
イアソン「いやアレ」
アスクレピオス「くっ、見たい!あの霊基の損傷を完全に診察し治したい・・・!だが堪えろ、チャンスは巡ってくる筈だ・・・!」
イアソン「ここに俺よりヤバイやつがいるじゃないか!?」
時は半刻程前、真昼の城下町にて。魔王との決戦の気風高まる越後の城下町に店を構えるすずめ亭から、元気な挨拶と共に少女が現れる。
「それでは、お疲れ様でした!一足お先に上がらせていただきます!」
紫色の着物を着用し、朗らかに走り出すは我等がなすび、マシュ・キリエライト。彼女はカルデア家の家老でありながらこういった店の手伝いも行っている。彼女もまたマスターに似て、人助けが好きになり始めていた。貰った賃金を手に、ほくほく顔で城へと戻る家老マシュ。
「これで先輩や皆さんに沢山美味しいものを食べてもらえます!きっと、お腹一杯ならば勝利は間違いない筈!そしてあわよくば、私も御同伴に預かり・・・笑顔が止まりません・・・!」
第一に考えるは誰かのための散財。そんな無垢めな天然栽培なすびが汗水垂らして稼いだお金の使い道に胸をときめかせていると・・・
【◼️◼️◼️◼️・・・】
道端から、子犬のようなか細い呻き声が聞こえてくる。今にも消え去ってしまいそうな頼りない声。マシュはすぐさま、声の主を見付け出す。そこには・・・
「あ、あなたは・・・!?」
【◼️◼️◼️◼️・・・】
「お、お父さん・・・!?お父さんではありませんか!?」
缶詰を一つ、質素な床敷きを用意し物乞いスマイルで体育座りを行う黒鎧。見間違える事などあり得ない、カルデアにおける騎士王に仕える最高の騎士、ランスロット(狂)その人がひもじげに項垂れていた。直ぐ様駆け寄り、抱き起こすマシュ。
「大丈夫ですか!?何故この様な場所で行き倒れを!?」
【◼️◼️◼️・・・】
「お腹が減って死にそう・・・!?それなら、どうかこれで!」
マシュは即座に、自身の賃金をランスロットに差し出す。どうかこれで魔力を保たせてほしいと願った故に迷わず自身の賃金を託した。黒騎士は、そんな彼女をじっと見ている。
「すぐにカルデアに連絡しますからね!どうか待っていてください!ドクター、ドクター!」
そうして、必死な様子の彼女を見詰めていた黒騎士は・・・静かに頷き、決心と共にそっとマシュより離れる。
『どうしたんだいマシュ!?随分慌てているようだけど!?』
「ドクター!お父さんがいつの間にかこのシミュレーションに!」
『ランスロット狂が!?そんな馬鹿な・・・ってあれ?その彼はどこにいるんだい?』
「えっ・・・あれっ!?・・・い、いなくなっています・・・確かに今・・・?」
『白昼夢かい?家老ともあろうものがいけないなぁ。あんまり無茶はよくないよ、僕が言うんだ間違いない!鏡を見て自分の隈の濃さにドン引きしちゃうぞ!』
ロマンのトークを聞き流し、消え去った黒騎士がいた方角を見つめるマシュ。先程渡した賃金の封筒は、マシュの手に握られたままで。黒騎士の姿だけがかき消えてしまったのだ──
~丑三つ時
「すやぁ・・・むにゃむにゃ・・・」
深夜二時、草木も寝静まる夜。マシュもいつものように就寝していると・・・枕元に、黒き影と共に紅き眼光光らせる鎧がそっと立つ。
【──昼刻に、助けていただいた恩義を返しに来た。麗しき少女よ、私の声が聞こえているでしょうか・・・】
「う、うぅん・・・お父さん・・・お父さんですか・・・?」
カルデアのランスロット狂かと語りかけるマシュであったが、黒鎧は首を振る。自分は、南蛮より来たりし商人であると告げた。
【遥か南蛮よりやって来たものの、まともに言葉をも喋れずうなり声を恐れられまともに会話も出来ず困っていた私を、よくぞ貴女は助けてくださいました。貴女のように心の清い方には、私はあなたが親愛を寄せる者に見えている事でしょう】
「むにゅ・・・そうれふ。おとうさんはばーさーかーれふ」
【あなたは私に施しをくださった。ならば私もあなたに義を以て報いたい。私に出来ることはありますか?あなたの為に、私は一肌脱ぐと致しましょう】
枕元に立つ黒騎士ならぬ黒商人を、寝ぼけながら捉えたマシュ。どんな願いを叶えるかなどと考えられる程冴えていない頭が、家老である思考回路に舵を切る。
「えぇと、ぶき!ぶきをくらさい・・・!ちびのぶさんや、兵のみなさまが死なないような、つよーいぶき!」
【あぁ・・・戦の備えですか。それはとてもとても大切ですね。解りました。明日にでも取り寄せましょう。あなた自身が使う武器は必要ですか?】
「必要ないれふ・・・私にはたてと・・・せんぱいがいてくださいまふから・・・むにゃむにゃ・・・ぐぅ・・・」
それだけを告げ、再び眠りへとついてしまうマシュ。この会話が真実かどうかすらも、彼女は理解出来ていないかも知れない。
【えぇ、あなたに武器は似合わない。あなたは、白亜の城を背負い立つ少女なのですから】
そうして、黒き鎧は静かに兜をとる。其処に在ったのは、血走らせた眼を走らせた狂戦士・・・のものではない。マシュと良く似た面影を残す青年だった。
【こんな不安定なシミュレーションで、存在のエラーを使わなければまともに会話すらできない。・・・だけど、君の高潔さは変わらないと再確認が出来ただけ良しとしようか】
「むにゃむにゃ・・・」
【我が父の存在を偽るのにも限度がある。この身は特別に希薄だ。夜明けを迎えることは出来ないだろう。・・・だが、それでも】
それでも、ずっと内側から見ている者を改めて客観的に拝見するのは・・・中々に新鮮な体験だった。
【こればかりは、ぐだぐだなシミュレーションに感謝しなくては。並びに、紳士な方の父にも。・・・私が出来るのは、これくらいだ】
静かにかき消える黒き影。その眼差しは、かの黒騎士の様に優しくマシュを見つめ・・・
【負けるな、マシュ・キリエライト。メインヒロインの座という聖域は、最早この地では通用しないぞ──】
冗談めかした笑みと共に、白み始めた夜空へと消えていった──。
・・・そして、翌日の朝。なんだか途中で起きた様なすっきりしない感覚と共に、マシュが首を捻りあくびを漏らす。
「ふぁあ・・・なんだか変な夢を見ていた様な、見ていないような・・・?」
まさか寝惚けていたのでしょうか・・・先輩成分が足りないとでも・・・?そんなマシュのぼんやりさを吹き飛ばすような報せが、リッカの口から告げられる。
「家老マシュ!凄いよ!港に停泊してた白亜色の船から、沢山の武器や物資が積まれてたんだって!」
「えっ!?楽園宛てにですか!?」
「うん、ご自由に御使いくださいって!なんだかシミュレーションにもバグか頻発してるみたいだし、もしかしたらランダムイベントなのかもってマリーが!すごいよ、ガトリングとかレールガンとか沢山ある!家老マシュ、見聞の時間だよ!」
「は、はい!改めた後、速やかに兵士の皆さんに配布致しましょう!善は急げです!」
ぐだぐだシミュレーションに訪れた、これまたぐだぐだな物資調達。これもまた、いつものぐだぐだなんだろうと真偽を問うものは誰もいない。予想通りぐだぐだの産物であるのか、それとも、最も身近な場所で支えてくれている『誰か』の仕業であるのかは・・・
「ノッブ達のテンション爆上がりだよ!近代兵器も入ってるから笑いが止まらないみたい!」
「新しいのが大好きな信長さんらしいです!これでちびノブの皆さんにも、無茶をさせずにすみますね!」
・・・きっと、誰にも解ることは無いのだろう。これはそんな、ぐだぐだ戦国の一ページ。
──そしていよいよ、・・・決戦の刻は近い。
越後城
ノッブ【うははははは!!どこの誰かは知らんが、豪気な置き土産をするものがいたものよ!天命、大いに我等に向いていると見た!】
ノブノブ「単筒、大筒、機関銃!これだけあれば火力に制圧は困らぬと言うものよ!いやー!こんな戦してみたかったんだよなー!!」
オルミーヌ「凄くテンション上がってますね、信長さん二人・・・」
与一「お気に入りの玩具を見つけた幼児が如く」
マシュ「不思議な事もあったものですね・・・心当たりがあるような、無いような・・・?」
カドック「で、伝令!伝令!・・・って言えばいいのかこれ。だけど大変な事だぞこれは!」
リッカ「どったのカドック?」
カドック「──謀反だ!バサラ光秀が、バサラ信長に謀反を働いた!」
リッカ「えっ!?」
ノブノブ「──あのキンカン、またやりやがったか!」
ノッブ【で、あるか。──家臣を集めい!今これより、我等は安土に打って出る!全軍!戦の備えを始めい!!】
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