人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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天守閣

光秀「あぁ、信長公!私は今嬉しくてたまらない!こうしてあなたに仕え、あなたを裏切り、あなたと殺しあっている!至福とはまさに、今この瞬間!」

バサラ信長【光秀ェ・・・】

「終わってほしくない!止めたくない!貴方こそ、私の信長公!誰にも渡さない・・・あなたこそ、私の光!」

ノッブ【うわぁ、なんか薔薇が見えるんじゃが・・・】

信長【・・・来たか・・・】

光秀「・・・無粋な人達もいたものですね。邪魔をしないでいだきたい。私は必ず、信長公を殺すのです!」

景虎「おっと!ではあなたの相手は私と言うことで!」

光秀「軍神ごときが・・・!!」

マシュ「先輩!景虎さんが光秀さんを抑えている内に!」

リッカ【うん!バサラ信長・・・此処で倒す!!】

織田信長【衆生愚民が束となりて、我に挑むか。──是非も無し!!我はァ!!織田信長ぞォ!!!

リッカ【くぅっ・・・!!】


引導!焦土の魔王!

【来るぞ、リッカ先輩!わしのそばより離れるでないのじゃ!】

 

【灰塵焦土──我が寝床に相応しき世を造り上げん・・・!!】

 

最早単純な会話も意味を為さないほどに叩き付けられる殺気。光秀の謀反、天下の反逆。それら全て無意味とし、長刀とショットガンを担いし魔王が命あるものを滅ぼさんと動き出す。バサラ信長が銃口より弾丸を放ち、ノッブがすかさず魔王剣にて切り払う。戦いの火蓋は、速やかに切って落とされる。

 

【ッ、くっ!ガンガン撃ち放ちおってからに・・・ッ!】

 

遠雷遥。魔王の覇気と呪詛を装填し撃ち放つショットガンの連撃が、ノッブに反撃の機会を与えぬほどに滅多撃ち、制圧射撃を取り行う。切り払い、弾道を反らされ飛んでいった弾丸が、天守閣を貫き遥か彼方・・・雲を吹き散らす程の遠くへと飛んでいく。

 

【滅し、我の糧として新生せよォ・・・!!】

 

疾走スル狂喜。剣とショットガンを振り回し、中距離によりし制圧から一気に距離を詰める。咄嗟にノッブが魔王剣にて受け止めるが、その剛力にて上部へカチ上げられてしまう。

 

【ぬおっ!?】

 

【滅び、我の世を称えぇい・・・!!】

 

そのまま上部へ向けて、安土全土・・・地獄全土の魂を巻き上げ燃料弾丸とした魔王の一撃が放たれる。先の弾丸とは比べ物にならぬビーム射撃。ノッブが受け止め、後方に流れた光線が天守閣上層を消し飛ばす。慟哭する魂──

 

【ノッブ!!ッ──!】

 

【全て徒労よ・・・消え行くモノよ・・・!!】

 

駆け寄らんとしたリッカに向け、剣を地面に深々と突き刺す。穿タレル深紅──刃が無数に分裂し、辺り一帯の総てを貫かんと迫り来る。咄嗟に翼を展開し、空中に逃れるより他に無かったリッカに、狙いを定め撃ち放つ。拝謁ノ赦シ──

 

「させません!!」

 

撃ち放つ瞬間、マシュが割って入りマスターへの撃墜を阻む。全防御を展開し、バサラ信長の弾丸を全身全霊にて受け止め打ち返す。盾ごしにも痛感する圧倒的な物量と質量に、マシュは砕けんばかりに歯を食い縛った。

 

「はぁあぁあ──!!!やぁっ!!!」

 

その一撃を反射され、逆に直撃するバサラ信長。その圧倒的な火力は、信長すらも例外なく消し飛ばす程に凄まじい。バサラ信長を一瞬で蒸発させ、遥か遠方へとビームの奔流が駆け抜けていく。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・!!」

 

全身に痺れが走り、盾が重い。それほどまでにバサラ信長の火力と威風は圧倒的に過ぎた。僅かな攻防の中で、マシュは戦慄を隠せない。

 

(受け止めただけで、こんなに・・・これが魔王信長さんの力・・・!)

 

【──うぅむ・・・この肉は未だ、衰えずゥ・・・】

 

【──!!】

 

上半身が消し飛んだ筈の信長の声が響き渡り、速やかにバサラ信長の肉体が復元された事実にリッカは衝撃を隠せなかった。カドック達が奪った陣が全て健在であったなら・・・天井知らずに強化が行われていた事は想像に難くない。

 

「リッカちゃん!マシュ!今行きま──くっ!」

 

「いいえいけません、いけませんよ。あの方の邪魔をするのは誰であろうと赦されません!あなたの相手は私です!」

 

援軍に割って入らんとする景虎に、バサラ光秀が追い縋る。骸骨の浮遊による防御、鎌の攻撃により勝てずとも撒けぬ戦い。狡猾な戦いに、軍神が絡め取られていた。これでは助けに向かえない・・・!

 

【光秀・・・我を討たんが為に我を衛るか・・・愚かなヤツよ・・・】

 

【そんな言い方は無いのではないか?バサラなわしよ。えげつない過激派ではあるが、わしの事を考えてはおるのじゃぞミッチーは】

 

リッカとマシュを庇いつつ、ノッブがバサラ信長に問う。僅かにも慈悲を見せず、僅かにも繁栄を赦さず。そんな徹底轍尾に魔王たる在り方を、ノッブは問い掛けた。

 

【総てを滅ぼし、総てを滅し。その果てに残るものはなんじゃ?命が織り成す革新を総て灰塵と化し、その果てに天下には何が残るというのか。魔王とはいえ、部下や仲間がおらんと話にもならんじゃろう】

 

ノッブは問うた。他ならぬ自身が世界を、日本を滅ぼさんとしている事こそがノッブ自身最も解せぬ愚行に他ならぬと弾劾する。

 

【貴様の築かんとしている第六天・・・其処には何も残らんじゃろ。わしだというならば、その無意味さに気づかぬ愚昧でもあるまい。わしら英霊の在り方から、貴様は本格的に道を外さんとしているのじゃぞ?】

 

ノッブの言葉に、バサラ信長はただ一言を発して返礼とす。

 

【──我が拓くは地獄の蓋よ。我が通りし後には焦土が産まれ、百鬼卷族こそが我が背中に続く。・・・我が望む天下に、生命などは悉く不要なり・・・!】

 

望むは焦土、願いしは生命の殲滅にして天下の第六天化。どう足掻こうと共に大望を懐けぬ、自身の成の果ての理想を、ノッブは理解した

 

【──で、あるか。それが貴様の天下布武か】

 

その言葉を理解し、ノッブは静かに息を吐く。何も護らず、何も産み出さず。総てを滅ぼさんとするのであれば──

 

【是非も無し。──であれば、貴様の居場所はこの世の何処にも在らぬよ。・・・織田信長】

 

未来を拓き、現代を、未来を守護することこそ英霊の本懐。それらを果たすことなく総てを滅ぼさんと言うのなら。──そもそも、この世にいてはならぬ存在に他ならない。魔王と呼ばれし自身の成の果てを目の当たりにし、ノッブははっきりとバサラ信長を否定した。

 

【地獄にさっさと帰らぬか。今を生きる命の価値も解らぬと言うのなら、貴様は最早質の悪い怨霊よ・・・!】

 

【灰塵焦土、第六天は此処より始まる・・・!我が息吹に焼かれよォオ!!衆生万象の総てェ!!!!】

 

バサラ信長のマントが翻り、辺り一帯の総てを蹴散らさんと荒れ狂う。加速度的に破壊が進む安土城。再び防がなければ生命は無い。マシュが躍り出んとするが、ノッブはそれを制止する。

 

【良い。一撃で終わらせよう。リッカ先輩、令呪一画をわしにくれんか】

 

【──解った!】

 

令呪を魔力リソースに変換し、ノッブに勝利を託す。縦横無尽に振り回されるマントに微塵も揺らがず、ノッブは火縄銃を構える。

 

【滅せよ!!この世の総てを我が手により灰塵と帰さん!!】

 

【──滅びるのは貴様だけよ、織田信長。在るべき場所に・・・地獄に還るがよいわ】

 

そして、その一撃を撃ち放つノッブ。辺りを悉く巻き込み殲滅していくバサラ信長と対照的に、何処までも静かで厳かな神の一撃。

 

【───ヌ、ォ・・・】

 

その一撃は、過たずバサラ信長の眉間を貫いていた。宝具たる三千世界の魔力をただ一撃にて増幅し、ブーストして撃ち放ったのだ。それは、マスターとの協力が産み出した致命の一撃。魔王たるバサラ信長を、確かに貫いた。あらゆる防御を貫通したのだ。

 

「信長公──!?」

 

【変わり果てたわしは、わしが引導を渡す。然し、それはわし一人では叶わぬ事よ。──わしらはな、今を懸命に生きる者がいて初めて英雄たりえるもの】

 

【ノッブ・・・】

 

【それを見失い、暴虐の魔王と化した我にこの世に居場所は何処にもない。・・・日ノ本より出でし魔王よ、ただ一人の第六天にて滅び逝け】

 

倒れ伏すバサラ信長、銃を下ろすノッブ。──何も産み出さず、何も残さぬ人のカタチをした魔王たる怨霊を、自身の手で討ち果たした。

 

【最早迷うこともあるまい。貴様の居場所は、遥か地獄の底のみよ】

 

自身の変わり果てた姿、総てを仇なす業を目の当たりとし、僅かな愁いと己が業の因果を自嘲しながら、ノッブは自らより出でし魔王を討ち滅ぼした──

 

 

 




光秀「信長公!信長公!?あぁ、なんという・・・!」


景虎「・・・本気出せば瞬殺じゃないですか。どうせやれるならもっと早くやってくださいよ」

ノッブ【すまぬな。こうして我の畏怖と戦慄の一面を目の当たりにして、少しばかりアンニュイとなったわ】

リッカ【ノッブ・・・】

【魔王と言えど、慈悲も心もなければ意味は無し。だから敗れるんじゃよ、ミッチー】

「信長公・・・!あなたは、こんな・・・」

信長の屍にすがり付く光秀を見やる一行。最早此処からの逆転の目は万にひとつも・・・

光秀「──いいや、まだだ・・・まだ信長公は終わってなどいない!」

・・・否。魔王の本懐とは、徹頭徹尾の灰塵焦土。

ノッブ【!?光秀貴様、何をするつもりじゃ!?】

「知れた事です。私の総てを捧げる!私の唯一無二の信長公に・・・お前ではない、私の信長公に!」

景虎「ッ!動くな!!」

素早く景虎が光秀を突き刺すが、光秀は恍惚の笑みと共に──霊核を引きずり出す。

「信長公・・・あなたは私の唯一無二の存在です。あなたの為に私が捧げられるものは、総て──」

──言い終わらぬ内に、バサラ信長の身体より無数の闇が暴れ出る。それは光秀の核を触媒として生まれし──

ノッブ【えぇい、また解釈違い赦さぬミッチーが事をややこしくしよって!】

リッカ【この反応、もしかして・・・!】

闇が世界を塗り潰す。それは魔王の擁する第六天の具現。──これこそは、織田信長が抱かれし無数の戦慄と嘆きの顕現。

【ブルゥウゥウアァアァアァアァアァウ!!!!】

第六天、六魔ノ王。安土よりも遥かに巨大な魔王の威風が此処に顕現する・・・!!

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