人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マシュの宝具開帳です。懐かしいな、ロード・カルデアス


展開

「アンサズ!そぉら焼き尽くすぜ!」

 

呪文を唱え、ルーン文字を書き起こし、放たれる灼熱の火炎

 

確かな力を持つ、熱波の嵐

 

 

一撃一撃がマシュの盾を凄まじく打ち据え、熱量がマシュの肌をジリジリと焼いてゆく

 

 

「くうっ、ぅう……ぐっ……!」

 

 

「……」

 

 

「……大丈夫かしら、マシュ」

 

 

心配を声音に上げ、オルガマリーが呟く。先程の狼狽えようとはうってかわって、しっかりと目の前の出来事を見据えた故の感想だ

 

 

「あのサーヴァント……本気よ。本気でマシュとリッカのことを……!」

 

「で、あろうな。生命のやり取りで、あの犬は戯れ事を口にすまいよ」

 

「だったら、止めた方が……!」

 

「ここで果てるなら、それも良かろう。これより先の苦難を見ずに死ぬのならそれはそれで幸福だろうさ」

 

人理焼却。⬛⬛⬛⬛に巣食った、⬛⬛⬛⬛⬛の暗躍、特異点を巡る七つの旅

 

転生の折、謎の声が言っていた単語だ。転生した自分には意味の解らない言葉だが。一筋縄にはいかない岐路を世界は、彼女たちは辿る

 

――道半ばで無念に折れるのと、何も知らず世界から退場するのはどちらが幸せなのだろう

 

道を選ぶことすらしなかった自分には、そんな選択肢すらなかったから。そんな事は解らない

 

折れるのは簡単だ。屈するのも簡単だ

 

目を閉じるのは、終わりを受け入れるのは簡単だ

 

「――だが」

 

だが、その先を知っている自分は答えを知っている

 

 

無念は、後から湧いてくる。死んで楽になるなど嘘っぱちだ

 

死んだ後に安らぎはない

 

漠然とした死に安息はない

 

無味乾燥の魂には、何も残らない

 

 

それを見てきたのだ。そして自分はここにいる

 

……彼女たちにはそうなってほしくない

 

「奴等の魂は未だ輝きを喪ってはおらぬ。懸命に、がむしゃらに。ただひたすらに生にしがみついている」

 

「……!」

 

そうだ、マシュ、マスター。君達には未来がある、

 

輝かんばかりの明日があり、選び取れる未来がある。それを彼女たちはまだ知らない

 

 

知らない。横たわる絶望をまだ知らない

 

 

知らないから、勇気をもって歩いていける

 

解らないから、一生懸命に生きている

 

今もこうして、自分と向き合い、生命を懸けて戦っている

 

 

――見応えが、ある。かつてなかった輝きが彼女たちに確かにある

 

 

「そういった『見応えに満ちた』者たちは、時に天命すら覆す」

 

「英雄王……」

 

「そら、見ているだけか?小娘」

 

「?」

 

そうだ、君もまた当事者なんだ

 

「あれらは貴様の友であろうが。窮地におかれた友に、激励の一つもかけてやれ」

 

「私、私は……だって……」

 

「……まったく。貴様も自分に自信が持てぬ質か、手間のかかる」

 

仕方ないだろうとは思う。むしろ泣き出して、迷ってヒステリーを起こすのは当たり前だ

 

こんな小さな肩に、あらゆるモノを背負っていたとあらば。むしろ潰されず立っていることこそが偉業だろう

 

「――我が認める。オルガマリー・アニムスフィア」

 

「えっ――」

 

「貴様の働き、充分に大儀である。これから先、その在り方を損なわぬように励め」

 

「――――っ、――――!!」

 

 

なんともなし、他愛のない、ただの労い、何気無い言の葉

 

しかし、苦悩に板挟みにされ、哀しみに押し潰され、絶望に屈服していたオルガマリーの心の絶望を溶かすには充分すぎる言葉だった

 

 

「――えぇ、解ったわ!解ったわよ!声をかけるくらい――!」

 

「はじめてできた『友達』にくらい!いくらでもかけてやるわよ!!」

 

 

 

 

 

「どうやら見込み違いだったみたいだな、嬢ちゃん」

 

 

「くっ、うぅう……!」

 

 

「マスター、サーヴァントと心中するかい?離れりゃ一命は取り止めるかもな」

 

 

「先輩――逃げ……」

「大丈夫」

 

すっ。とマシュの手を握り、傍に立つ

 

「死ぬときは一緒。サーヴァントに戦わせてるんだもん。これくらいやらなきゃ。マスターだって」

 

「先輩……」

 

「私は戦えないけど」

 

「傍には、立っていられるから!」

 

「――!」

 

 

「そうかい。意気やよし、後腐れなく焼いてやるぜ――!」

 

爆発的に魔力が高まる。来る――キャスターの奥の手。宝具が来る!

 

「――私は、私は」

 

 

 

「何やってるのよ!!マシュ!!リッカ!!」

 

 

我に帰る。すると、オルガマリーがあらん限りの声を上げ、叫んでいるのが目に入る

 

 

「所長……!?」

 

 

「こんなところで、こんなところで死ぬなんて許さないわ!何のためにここまで来たの!何のためにあなたたちは戦うことを選んだのよ!」

 

 

「こんなところで、こんな馬鹿みたいな場所で死ぬためじゃないでしょう!?」

 

「――!」

 

「私、初めて同じくらいの年の子と、話し込んだのよ!初めて楽しい話ができたの!」

 

「初めて――友達が出来たのよ!!マシュ!」

 

「!」

 

オルガマリーの発破は続く。思いの丈を叩きつける

 

 

「リッカも!せっかく拾った命を捨てるような真似は許さないわ!貴方はマスターよ!?私がなりたくてもなれない才能、力をもった凄いやつなのよ!」

 

 

「いっぱい話したいこと、まだあるの!やらなくちゃいけないこと、いっぱいあるの!!だから、だから!」

 

 

「こんなところで、立ち止まってる場合じゃないでしょ――――――!!!」

 

 

「――!」

 

マシュの瞳に決意が宿る

 

「マシュ!」

 

リッカの声に覇気が灯る

 

 

「やろう!友達にあそこまで言わせたんだもん!やってみせなきゃ女が廃る!!」

 

「はい!必ず、皆を護ってみせます!!」

 

盾を構え直す

 

 

ここからでもわかるくらいに熱を感じる。護る決意を固めた雪花は

 

 

今、人理を守護せし盾が如く――!

 

 

「倒壊せしは『灼き尽くす炎の檻』!オラ、善悪問わず塵に返りな――!!」

 

藁で編まれ、贄を求める巨人の豪腕が今、振るわれる

 

 

盾に拳を叩き付けた刹那凄まじい衝撃と暴風が辺りを制圧し荒れ狂う

 

「く、ぅううぅううぅう――――!!!」

「マシュ!!貴方は一人じゃない!私がいる!!」

 

「うぅううぅううぅう!!」

 

勢いが増す、いよいよ押し潰さんと巨人が力を全開にする

 

踏みしめる大地が軋む

 

 

受け止める盾が輝く

 

 

そして――

 

 

人理の礎となりし城塞が、此処に姿を顕す!

 

 

「マシュ――――――っ!!!!!」

 

 

「うぅううぅう――ぁああぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――使ってしまった財宝は、惜しくはないのかい?

 

 

 

声が、響く

 

 

――何、使うべき相手であれば……くれてやるのも悪くはない――――

 

 

 

これは、誰の記憶なのだろうか――――




ようやくマシュの本領発揮


ギルガメッシュに友を語らせるなんて、こんな皮肉はありませんよねぇ・・・

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