カドック「カリュドーンの毛皮を振るったんだ。こんな風に使えば破壊活動だって出来る。・・・さぁ行こう、リッカ。確か・・・」
桐之助「道案内は彼にしてもらおうじゃないか。かまわないだろう?」
キャスター「えぇもちろん。手荒な真似をしてすみませんでした。此処の最深部にて、あなた方の王がお待ちです」
リッカ「ギルが!?」
「えぇ。彼は私の同盟相手。──『マックスウェルの悪魔の破壊』という依頼を受けてくださった方なので」
同時刻 楽園越後
兵「伝令!各地より突如【黒き巨人】が現れ襲撃を開始!」
オルミーヌ「えぇ!?」
ノッブ【・・・始まったようじゃな。摩玖主だのなんだのが掲げる【救済】とやらが】
ノブノブ「けっ。ぞっとしねぇぜ──豊、無事でいろよ・・・」
「来たか。待ちわびたぞ我が財どもよ。あまりの待ちわびぶりに、フォウを愛でる手にも気合いが入ってしまったではないか。上にいる雑種どもに害されし興もその顔触れにて帳消しというものよ!ふははははは!!」
歩んだ先に招かれし、魔力を産み出し続ける動力炉が置かれている空間に、ご機嫌たる黄金の王は待っていた。どうやら先んじてスタンバっていた様であり、傍らには毛並みが雄々しくブラッシングされたフォウが神妙な顔で待機している。かなり念入りにブラッシングされた様だ。その甲斐もあって、いつもの愉快な御機嫌王である。
「旅先に痰壺や汚れた庭土地があれば顔の一つもしかめよう。一瞬苛立ったがエアが生臭坊主の実在に感心していた故、見逃してやった訳だ。──その面構え、どうやら浄土のなんたるか程度は感じ取って来たようだな」
「うん。なんか・・・生かされてるって感じの救いだったなぁって思った」
「無限の魔力など、人間が持てば済度も雑になろうよ。ちょうどよい、此処に来た勤勉ぶりに免じ、この特異点の骨子と成り立ちの一つも語ってやろう。しかと聞くがよい!」
ギルガメタブレットに、僧侶姿のミニエアが現れデータを展開する。其処には、聖杯の反応が示されていた。
「此度の特異点の収束の条件、無論天下の統一だ。だがそれとは別に、手頃な容器である『聖杯』も存在していた。まぁ解りきった事だがな」
──摩玖主大僧正殿は、天下統一を重要視せずに景品である聖杯をいち早く手中に納めたのです。戦わずに優勝トロフィーをいただく・・・信長さんではないからこそ取れた手法ですね。
信長であったならば戦うか、バサラ信長に滅ぼされるかのどちらでしか無いが、全く信長と関係のない存在である大僧正は、戦いよりも聖杯を、魔力を望んだ。それがこの強力な力を手に入れた原因だという。そして聖杯を手に入れた大僧正は、奇妙なサーヴァントを召喚した。
「はい、それこそが私。『遥か未来』の技術で作られしアトラス院の影響で現れてしまったサーヴァント、それが私『マックスウェルの悪魔』というわけです」
「マックスウェルの悪魔って、確か熱力学第二法則を否定する存在としての架空の悪魔だっけ?エネルギーは高いところから低いところに行く、みたいな理論の」
「・・・そうか、つまりアンタは無限の動力機関を担うサーヴァントな訳か。無尽蔵に、何もないところから救いが出るのもアンタの宝具って事だな」
「摩玖主・・・摩玖主、マクズ、マックズウェル・・・あぁ!アハ体験だ成る程~!」
真面目な考察、呑気なアハ体験を実現する三人の見識に、マックスウェルの悪魔は頷く。どういう訳か現れた悪魔は、無尽蔵の機関の所有者だったのだ。その力で、大僧正は聖杯戦争を生き抜いたのだろう。
「無限の魔力、それはまだ人間どもが到達しておらぬ可能性の深淵だ。現に人の理に否定され、机上の空論と断じられた。──だが、この特異点は毎度のそれに比べ実に電子的だ。実在せぬ架空の英霊を招く機械のエラー、或いはバグとして顕現するならば・・・」
──召喚は可能であります。現に大僧正殿もこうして無限の魔力を手にし、聖杯戦争を勝ち抜いた。その力の根源が、ここ。彼の宝具『マックスウェルの悪魔』を稼働する永久魔力機関、中心の地なのです。
二人の説明と共に、広大な空間を見渡すマスター達。中央に鎮座する輝く枠組みに、黄金に輝く結晶体。そして周りに無数に設置された、子供1人入れるだろう筒状の生体カプセル。それが何を意味するのか・・・魔術師であるカドック、風来坊であり当主である桐之助、並びに悪逆の観点にて無類の察しを持つリッカが口を紡ぐ。そういう事なのだ。集められた子供は──
「御心配なく。今は王から提供されし無数の宝石群にて稼働しております。お子様がたは無事に保護されていますよ。・・・実のところ、私は紛い物の永久機関でして。宝具の稼働に僅かばかりの純粋な魔力を必要とするのです。御察しの通り、子供から純粋な魔力を取り出さんとしていた所、王の介入により宝石を燃料とした魔力抽出に変わったという訳です。──えぇ、私としてもこの様な状態は大変不本意かつ屈辱的でして。そして──」
「──そして、儂を裏切りそやつらに自身を破壊させようというわけか」
一同が素早く身構える。その声の主は摩玖主大僧正。どうやら地上の騒ぎを振りきり、此処までやって来た様だ。
「安心しろ。其処の王が提供した高純度宝石により、子供を犠牲にするより遥かに純度の高い魔力取り出せている。月に数回交換する必要もなく、大勢の衆生が摩玖主大本尊の恩恵を賜っている。最早小さな犠牲すらも必要ない。真に総てが救われているのだ」
「笑わせる。何も為さず、何にも挑まず。ただ豚のように生きるだけの人間の生産を救いだと?自己の限界に挑まず、変わらぬ平穏を望んだ瞬間に人は堕ちるのだ。貴様の成さんとするは、浄土という名の無様な牧場よ。我等楽園と肩を並べることすら穢らわしい」
「ふん。日々を満ち足りて生きる事の何がいけない?儂の手には無限の魔力が握られている。この力で極楽浄土を設立し、苦しむ衆生を救わねばならぬ。そうだ、儂がやらねば誰も救われない。この世界が仮初めというなら、その総てを犠牲にし、魔力に変え、多くの衆生を救うのだ」
「・・・逆転してないか、それ」
冷淡に告げるカドックの言葉通り、その倫理は破綻している。多くを救い、救済する為に、世界を救うために世界を犠牲にする。無限の魔力を起動させるために、起動させるために必要な犠牲は際限なく上がっていく。その犠牲はやがて、世界の総てを必ず上回るだろう。そう、つまり──
「無限の力を起動させるために、総てを犠牲にする。それさえ叶えば、もっともっと多くの衆生を救えるのだ・・・!」
目的と手段の逆転。これが、一人の僧侶の夢見た極楽浄土の真実。このシミュレーションの総てを飲み干さんとする、救済という名の世界の破壊こそが此度の楽園の真の敵であったのだ。
「一角の門の大僧正に至った輩が、つまらぬ理屈に嵌まったものよ。未来を担う生命を使い倒しもたらされる救いになんの意味があろうか。その様な手段で満たされしは弓の我が精々よ」
「ふん。話の通じぬ輩にも解りやすく見せてやろう。今こそこの世界の殻を破り、我が力にて真なる楽土を拓こうぞ!!」
大僧正の言葉に呼応し、マックスウェルの悪魔が起動する。無限の魔力が産み出せし魔力が、人形の泥となり産み落とされ顕現する。
【【【オォオォオォオォオ──!!!】】】
「これ、まえの帝都のミッチー巨人!?無穹の狭間に落ちた筈なのに──!?」
「下がっていろ」
王の言葉と、エアの選別が同時に行われ無数に開かれた黄金の砲門から放たれし古今東西の宝具の絨毯爆撃にて、一瞬で跡形も無くなる黒き巨人。──だが。
【【【オォオォオォオォオ・・・!!!】】】
「嘘!?一瞬で復活した!?」
──無限の魔力より産み出されし存在です。倒せど倒せど湧き出るのでしょう。復活ではなく、新生と呼ばれる現象です!
一秒に数百は殺されど、即座に復活・・・新生する黒き巨人。無限の魔力が有る限り、討ち滅ぼすは叶わないのだと痛感させられる。
「リッカ!者共を連れて此処は退け!」
「ギル!?」
「何、一切合切を消し飛ばすは無粋であろう。『地上に満ちる極楽とやら、観覧してくるがいい』」
「──!!カドック、桐之助さん、皆!行くよ!まさか・・・!」
リッカ達を逃がし、地上へと退去させる御機嫌王。其処には、王と大僧正のみが残される。
「無駄な事を。・・・貴様らの楽園、儂の極楽浄土。雌雄を決する日が来たようだな」
「フッ、悪趣味な救済を真と願うその信心は誉めてやる。・・・見物よな。真に人を活かすのは、果たしてどちらの掲げる理念なのやら」
王は口にし、エアに目で合図を送る。それに伴い、フォウと共に地上へと駆け抜けて行く。
──地に満ちるは、まさに無限の極楽浄土──
外部
【【【【【オォオォオォオォオ・・・!!!】】】】】
【【【【【オォオォオォオォオ・・・!!】】】】】
【【【【【【オォオォオォオォオ・・・!!】】】】】】
森「なんだこりゃ!?外もこいつらだらけじゃねぇか!?」
マックスウェル「えぇ、彼らは私の宝具から漏れ出す魔力の歪み。言うなれば連鎖的に発生する、致命的な世界のエラー・・・」
景虎「これが、世界の終わり・・・」
大僧正「だから言ったであろう。最早逃げ道などないと。そして見るがいい!摩玖主大本尊がついに真の姿を見せるときが来たのだ!」
大僧正が手にした『聖杯』。それが高らかに輝きを放ち、其処より──黒き大穴を背負いし巨人が現れる。
【ウォオォオオォオォオォオォオ!!!】
「これこそ、大本尊の真の姿!あらゆる願いを実現せずして実現させる無限の心臓を宿せしもの!」
「・・・間に合いませんでした、いや・・・ようやく準備が整いましたか。王的に言えば。あれこそ、無尽蔵の魔力であらゆる現象を書き換え、世界を作り替える万能の悪魔、『マックスウェルの悪魔』の姿です」
リッカ「殺せないなら、死ぬまで殺すしかないか・・・!!」
カドック「そういう事だ。やるだけやってみればどうにかなるはずさ!」
桐之助「悪いが、この様にセンスの欠ける救いは御断りだとも!」
一行が悪魔に挑まんとした──その時だった。
景虎「──よいではありませんか、リッカちゃん。『人を滅ぼすというのなら、それはそれで』。そちらの方が、リッカちゃんにとって都合は善い筈です」
リッカ「!?虎ちゃん・・・!?」
「だって、『人間にあなたが命を掛けるほどの価値など、無いでしょう』?」
そう告げる景虎の目は──暗く、淀んでいた。
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