人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ロマン『原因は掴めたけれど、どうしよう?信長という存在が一人消えない限り、エラーは消えないかもなんだけど・・・』
ミニガシャナ『大丈夫ですよ、ロマンさん。リッカちゃん達の頑張りで無くなってはしまいましたが、勝者が手にするべき御褒美を使えばなんとかなる問題です!』
「と、申されますと・・・?」
ギルガメッシュ「当然、勝者には特権が必要であろうよ。物事の道理は我が決める!ヴィマーナを動かせ、フォウ!有終の美を飾りに行こうでは無いか!」
フォウ(よーし、任せろー!)
ロマン『──ああ、そういう事か!それなら確かになんとかなるかもだぞぅ!』
『・・・本能寺の変でノッブが、織田信長が生き残ってしまったからバグが発生して、それを正すには・・・』
「然り。我、織田信長の死こそが最後の結末の一区切り。この信長の消滅こそ、終焉の供物」
無双信長が静かに告げる。結末への布石にして儀式はそれであり、初めから自身はそうするつもりであったと。そもそもこの特異点の成り立ちこそは『もしも織田信長が生き残ったならば』という前提から始まったものであり、そのもしもがあればこそ、大量の信長の存在が容認されていたと。異常の収束には、いずれかの信長の死が無くてはならないという特異点の成り立ち。それが今、楽園に突き付けられる。
「まぁそういう訳だ。御苦労さんだったなお前ら。ここで俺がスパッと死んどくから、さっさと在るべき場所に帰りやがれ」
それは漂流者信長も同じ覚悟であった。合理的な判断──織田信長である自身はノッブが残る。ならば此処にある写し身の一つ擲とうとも問題は無いという当主としての判断。
「なに言うとるんじゃ信!お前、まさか死による気か!」
「吉法師に後の事は任してある。一人や二人で丸く収まるのなら上等よ」
「馬鹿たれじゃお前は!誰かを殺す為に俺らは戦うてた訳じゃなか!大将が勝って死なねばならんとは道理が通らん!」
胸ぐらを掴みかかる豊久に対し、ノブノブは微塵も揺らがずに告げる。一人の織田信長として、彼は完全に理解していた。己の役割を。
「歴史の必然じゃ、豊。本能寺で死ぬべきで死なねば歴史が狂うのならばよ、このままにしておうたら理が狂う。此処で死ぬは正しき事よ」
「正しいも間違いも俺は知らん!此処にあるもんが俺の全てじゃ、俺はお前らを殺す為に戦うてたではなかか、それでは道理が合わんではなかか!死ぬな信、生きねば俺が殺す!」
「無茶苦茶言うな、馬鹿たれ」
【・・・・・・】
「な、何黙ってるんですかノッブ。・・・まさかとは思いますが、ならわしが死のうとか言いませんよね?」
ノッブの沈黙に、沖田が問い掛ける。いつになく神妙な、ある種悟りのような顔立ちの沈黙に・・・沖田は最悪の直感を働かせる。
【まぁ、誰か死なねばならんというなら・・・わしでも構わん訳じゃろ?可能性の話としてな。織田信長が死すべきと言うのなら、な】
ノッブのその言葉に、沖田は真っ向から対立する。いつもの彼女らしからぬ、真剣かつ必死な剣幕であった。
「ダメですよそんなの!楽園の理念を忘れましたか!完全無欠のはっぴぃえんど!私達はどんな困難や理不尽でも決してそれを諦めずに戦って来たんですよ!それをなんですか、後から死ななきゃ、犠牲が出なきゃ終わらないとか!ズルいですよ、無法にも程がありますよ!」
【言うてもな沖田。このままじゃ流行りのアレ、ノブン帯が発生してしまうじゃろ?それは良くないじゃろ。リッカ先輩が命を懸けて掴んだ未来、わしの命で無かった事には出来んでな】
「でも・・・!なんですか急に!死んでも構わないみたいな事を揃って言い出して!いつもの馬鹿ノッブみたいに、嫌じゃぁー!死にとうないー!ぐらい言ってくださいよ!大物ぶらないでください!私もリッカちゃんも、あなたを殺す為に戦ってたんじゃないですから!なんなんですか本当!・・・なんなんですか、本当に!」
『沖田さん・・・』
「リッカちゃんも、何とか言ってください・・・!こんなのズルいですよ。こんな後出し、あんまりじゃないですか・・・!」
沖田さんの言葉に、リッカは頷く。どんな理不尽であっても、条件が難題であろうと、自分だけはそれを認めてはならないと。自分は決めている。
『そうだね。私達は勝った。特異点を攻略した。それなのに、仲間を生け贄にするのは間違ってる。普通ならそうするしかなくっても、私達だけはそれを受け入れちゃいけない』
「ったりめーだ!大殿が死ななきゃいけねー未来ってのを求めて戦ってたんじゃねぇぞ!俺達が戦って勝った未来ってのが正しいんじゃねぇのか!大殿よぉ!」
【無茶苦茶言いよるな、お主ら・・・フッ、だが・・・らしい結論よ。此処まで来てはい死にますじゃ、なんぞ何よりわしららしくは無いのは同感じゃがの】
その言葉に、魔王であり神であるノッブも笑みを溢さずを得なかった。確かに、犠牲を良しとしては今までの者らの裏切りとなろう。最後まで完全無欠の結末を諦めぬ者達の言葉に、ノッブは再びいつもの調子を取り戻す。
【うん、やはりそんな結末は後味が悪い!わしらが戦った先は、とびきりの笑顔が無くては!という訳でわしらよ、死ぬな!此処で死んではわしらの宴が辛気臭くなるでな、とりあえずわしらが帰るまでは死ぬでない!】
「クク。で、あるか。しかしそれではこの歪みを何とする?観測世界の歪みを、我等の犠牲無くしてなんとするか」
ノッブの言葉、リッカ達の絆を前に笑みを溢しながら、それでも変わらぬ現実を無双信長は告げる。この歪みを、この有り得ざる歴史を如何様にして是正するのか。
「ふはははははは!犠牲無くして凱歌を唱えぬ脆弱な存在と我等を同列に語るでないわ!完全なる勝者が消え去らねばならぬなど、筋が通らぬ!!」
──それは、リッカ達が犠牲を良しとしない選択をした瞬間に決まっていたのだ。勝者として掴んだ栄光の美酒を無粋で汚さぬと現れしは黄金の王。楽園の御機嫌王、ギルガメッシュその人である。
「待ってましたギルガメッシュ王様!ありますよね、ノッブの馬鹿な提案を覆せる何か、ありますよね!」
「無論だ。貴様らはこの聖杯戦争にて勝利した。あの坊主めが掠め取ったが故に消えてしまった賞品があろう。補填だ、受け取れ!」
いつものように気軽に投げて寄越す王。それは、先ほど消滅し無限の魔力と奇跡の核となっていた万能の願望機・・・
【聖杯!そういえば忘れとった!そうか、此があればなんとかなるのではないかの!】
王は頷く。そもそも犠牲にならねばならぬのは特異点に発生した信長であり、外のノッブには関係の無い話だ。過去のもしもが原因ならば、聖杯にて有り得た歴史を是正し、シミュレーションに終了命令を出す。
「カルデアの尊火を使った貴様が、聖杯にこの特異点の是正と帰還を願えばそれで良い。願いは遡って受理され、それと共にこの箱庭のエラーは修正されよう。元々貴様は楽園の信長、この世界の在るべき姿を願えば、それは何より優先される勅令となろうさ。──貴様らの奮闘は、確かに意味があったのだ。それを敗北ありきになどさせぬわ」
「無茶苦茶だな、相変わらず・・・もう慣れたけどさ」
「聖杯の補填とは・・・!え、もしかして聖杯ってたくさんあったりするのかいカルデア?聖杯をコップみたいに使ってるのかな?」
『大体そんな感じだよ!それじゃあ、これにノッブが願えば・・・!』
「うむ。勝者の特権を振るうがよい!我等楽園の勝利を告げよ!それを以て、我等のぐだぐだを確定するのだ!ふはははははは!勝者への景品授与、それこそが我等の役割よ!!」
愉快げに、いつものように笑う王。多少の手助けはあれど、勝利を掴んだ者たちへの報奨は決して怠らない。先に奪われていたならば、全く同じものを酬いとして賜す。それこそが、特異点に参加していた王の裁定だ。
【最後はこうでなくてはの!よーし!完全無欠の結末おーくれっ!!】
聖杯を高々と掲げ、ノッブは勝者としての願いを告げる。誰も欠けず、帰還する願いを聖杯は受理し──
本能寺
ノッブ【此処に聖杯置けばええんか?これで元に戻るのかの?】
ロマン『歴史を元に戻す、という願いを聖杯を通してロゴスリアクトに打ち込むよ。強制的にゴール扱いになって、無事に帰ってくる事が出来る筈さ。聖杯が一つだけの今ならなんとかなる!』
カドック「魔術王、そしてギルガメッシュならではの力業だな・・・聖杯で歪んだなら聖杯で、ってわけか」
ノブノブ「なんだよ、かっこよく逝けるとか思ってたのになー!かっこつけてたのになー!」
無双信長「クク、天晴れと言っておこう。──貴様らは今、定められし運命すらも越えた」
桐之助「──。すまない、ハンカチ持ってないかな?感動してしまってね・・・」
イニス「ふふ、完璧そうに見えて人間味に溢れているのですね」
「良く言われるよ。私はね、どうやら周りに理解される努力を怠っていたらしい」
森「うははははは!良くわかんねーがめでたしめでたしってやつだな!じゃあ帰ろうぜ!」
【うむ!──む?わし!いいこと考えちゃった!!】
リッカ『いいこと?・・・なんだろ・・・』
景虎「なんだか無性に、嫌な予感がするのですが・・・」
【本能寺でお疲れ様パーティーと行こうかの!!】
「『やっぱりー!?』」
──特異点是正の、戦勝パーティーですね!
「ふははははははははは!!やはり、結末はこうでなくてはな!!」
無双信長「光秀か?──宴は、本能寺に在らん」
ノブノブ(鬼だ、鬼がいやがる。キンカンざまぁww)