「――ふむ。やはりセイバーは出なかったか。だが実入りはそれなりにあったな。雑種どもが群がるのも頷ける」
此度の召喚の義を締め括る、最後の召喚。黄金の波紋から、虹色の呼符を取り出す
「些か予定が違ったが、まぁ良かろう。己が身を呈してオルガマリーの負担を減らすとは涙ぐましいものよ」
――自分は寝惚けていたので、顛末はよくわからないのだが、どうやらいつの間にか召喚を終えていたらしい。マスターとジャンヌがやらかしたのは明白なようだが
「ごめんなさい・・・」
「よい。罰は下し、お前はそれをこなした。掘り返しはせん、不問だ。顔をあげよマスター」
「・・・う、うん!」
マスターに明るさが戻る。・・・人を騙すような人間じゃないのは解っている。きっとやむにやまれぬ事情があったのだろう。王が許すなら、自分が追求する問題ではないな
「それよりマスター。アレは覚えてきたか?そう、アレだ」
「うん!解ってる。孔明先生と、オルガマリーに教わったからね!」
――いよいよ最後の召喚。今回は王自らが指揮を執るようだ
「よし!では始めるとするか!我の、我による我の為の召喚!」
王が、号令を下す!
「『単発・
「はいはーい。そのオーダーに応えましょう!」
ダ・ヴィンチちゃんが、黄金のプラネタリウム装置を起動する
虚像が投射され、辺りの景色が変容する。
――薄暗い、狭い倉庫の有り様を表す景色。ここは・・・
「日本の土蔵かい?ここは」
「うむ。ネズミが好むこの景色はな、セイバーを召喚するに相応しい場所でもあるのだ」
「そうなの!?」
「――アーサー王が何故日本の土蔵にいるのかしら・・・?」
「日本の聖杯戦争で戦って、召喚されたのかもしれないね。・・・本当なら、もっと豪華な場所でやるはずだと思うんだけどなぁ・・・?」
「例外はままある。何事もな。紡ぐ神は息をするようにソレを増やす。――虚像ではあるが、舞台のお膳立てはこれで良かろう。マスター!」
器がマスターに声を飛ばす
「うん!任せて!」
鼻息荒く、マスターが召喚サークルに近付いていく
「暗記した!よーし、やるぞー!」
「ロマン、タイミングを合わせろよ」
「解ったよ。・・・まぁ乗り掛かった船だしね!どこまでも付き合うさ!」
「冷静にね、リッカ」
「頑張ってください、先輩!」
「うん!やるぞ!見てて、マリー!」
「――えぇ。しっかりね」
深呼吸し、令呪を宿らせている右手をサークルに突きつける
「告げる――。素に銀と鉄、 降り立つ風には壁を! 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ!」
リッカの詠唱する、召喚の際に本来唄われる呪文が土蔵に響き渡る
「マシュ!BGMを流せ!運命の夜的なアレだ!」
「はい!オーディオ、起動します!」
黄金のオーディオから、荘厳かつ透き通った歌声が土蔵に響き渡っていく
――土蔵だというのに、まるで城のような厳かさだ・・・BGM凄い
「
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する!」
「ロマン!よいな、タイミングだぞ!」
「解っているさ!」
「――――告げる!汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に!聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ――!」
高まっていく魔力、固唾を飲む一同
「そこよ、リッカ!」
「ほう?」
「うん!誓いを此処に!我は常世総ての善と成る者!我は常世総ての悪を敷く者!――汝、焼却されし未来に立ち向かいし者!遥かなる人理を求め、その力を振るう者!我はその力を借りる者!汝が歴史に刻みし偉業を求む者――!!」
その一節を聞いたとき、僅かに器に反応が起きる
「聞き慣れぬ詠唱だ。これはオルガマリー、お前のアレンジか?」
「はい。私の聖杯にその一節を登録しました。これで、反英雄、悪属性の英雄を除き、善属性のサーヴァントを招けるはずです」
どうやらオルガマリーも、この召喚に対して一計を講じていたようだ
「セイバーは紛れもなく善属性。成る程、考えたな!手柄だぞ!」
――つくづく甲斐甲斐しいなぁ、オルガマリー
いよいよ回り出すサークル。詠唱に呼応して、光が虹色に輝き土蔵を満たす――!
「いよいよ召喚も閉幕だ!さぁ来るがよい、セイバー――!!」
――では、僭越ながら独白を担当しよう
「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
輝くサークルが収まり、英雄が現れる――
――その顔を覚えている。その身に過ぎた理想を背負い、天に在りて地に在りて輝いていた娘の顔を覚えている。光輝く
「霊基パターン、セイバー!!」
「よし!出でよ――!今こそ、我等が旅に参ずるのだ――!」
――それが、あまりにも眩しかったから
「――我が運命に、応えよ――!!」
――まるで、星のように。気高く、凛々しく佇んでいた、少女の姿を。今でも王は覚えている
サークルが収まり、現れたのは――
――その日、王は。運命に――――
「セイバー、アルテラ。フンヌの戦士にて、大王である」
「――セイバー・・・――では、ある、が――・・・」
崩れ落ちる英雄王
「来たぞ、英雄王。お前の言葉を信じてな」
「――・・・そう、か。身から出た、錆であったか・・・――・・・」
安らかに、目を閉じる英雄王
――未だに、王は運命に――出逢えませんでした
「ガチャは、悪い文明。しかし出逢いは、よい文明」
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