人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ニャル【さて、ベリル君はどうなっているかな?死んでいないといいんだが】



ゴミ捨て場

ベリル「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



【最早まともに人と接する事も諦めたか。ナイア、どんな追い込みをした?】

ナイア『一日に七回、不定期な接触を。私が触れた際に精神攻撃を五秒間に数百行う行動を繰り返しました。他者に私がすり変わり、疑心暗鬼も誘発させ狂人の動きを行う程度には正気を削る作業を』

ニャル【御苦労。召喚も始まるし、部員諸君からのアイディアを採用したい。プランを練りたいから戻っておいで】

『了解です。レイシフト跡の匂いを付着させ、ティンダロスの猟犬に追い立てさせておきます』

【任せる。さぁて、召喚が始まる前にやること練るぞぉ♪】



王の私室

フォウ『集会に行ってきます。冷蔵庫にある七色プリンはエアにあげるよ。美味しく食べてね!』

──集会・・・たまに行ってたやつかな?珍しい、最近無かったのに?

《恐らく世界で動きがあったのだろうよ。我の見立てでは、こちらではない何処かの世界でな。さて、どうやら一難去ってまた一難というようだぞ、エア?》

──み、皆さんに一日で疲れが取れる睡眠グッズを支給しなくちゃ!フォウ、気を付けてね・・・!


真・第六天魔王の胎動

「ねー先輩ー。ビーストⅦの話なんだけどー」

 

(アレは忘れよう。公式の悪ふざけだよ多分。あんな何処かで見覚えのある顔がビーストⅦな筈が無い。公式が慣れないテレワークで疲れているんだ。だからあんな国家元首はきっとギャグイベのフラグ管理ミスなんだろう)

 

此処は懐かしのビースト空間。おいでよ滅亡の獣。最近、ビーストに関しての情報が多く開帳されたのでフォウは久しぶりに顔を出した。ビーストⅠは永久欠席、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、そして見習いのマナカ。それぞれが獣としては討ち果たされた者達の集い。だからこそ、のんびり一緒にFGOをやったり初詣をしたり、仲は良好であるのだ。マナカはフォウを先輩と慕い一緒にいることを望む見習い担当だ。人類滅亡をするにはどうすればいーの?と聞かれて引っ掻かれるくらいの仲である。今回もマナカは笑顔で、フォウは彼女の魂の悪臭に堪えながら共にFGOプレイを行っている。

 

(まだこの小説を読んでいる皆がストーリーをクリアしているとは限らない。あまり大っぴらに口にするんじゃあ無いぞ。最初の驚きは大事なんだ)

 

「はぁい。でもショック~。私達の頭領、ラスボスっぽい立ち位置のⅦがあんな・・・ねー」

 

(小さかったよな。あらゆる意味で。本当に皆が納得できるようなラスボスになれるんだろうか。・・・オルガマリーやキリシュタリアのメンタルへの深刻なダメージが予想される・・・あっお前!宝具は最初に選択しろ!宝具カードは効果アップ対象外なんだから!)

 

「そうなんだ!?へー、私ずっと宝具最後に選んでた~」

 

ビーストⅦの情報を提示されたは良いものの、それがあまりにもあんまりな・・・一歩間違えればギャグチックな・・・事実だったので。会話の切り出し方に困りつつあるフォウとマナカ。今まで一生懸命情報収集を行って来た自分達の根幹が揺らぐレベルの衝撃を受け・・・

 

「どうする?定例会する?今のところ私達だけだよね?知ってるの」

 

(Twitter周回していたのがまずかったなぁ・・・動画が飛び込んで来たよ。ビースト集会の場所にしか記憶を残さないレベルで衝撃的だったからなぁ・・・正直これ、黙っていた方がいいと思うんだよね)

 

常に追いかけて来た終末の獣の正体にして情報。それをビースト達はどういった向き合い方をすればいいのか。それすらも決めかねるほどの衝撃の事実。果たしてこれをティアマト、キアラに伝えていいものなのだろうか・・・ギャグ一歩手前だし・・・なんてビミョーな空気で顔を見合わせていた所に・・・

 

【あらぁ?負け犬の集いに顔を出してみれば。傷の舐め合いに精を出しているみたいですねぇ。お邪魔でした?日を改めましょうか?】

 

そんな悪意に満ちた侮蔑と嘲りの言葉が響く。それらはフォウとマナカに向けられたある意味自信に満ちた宣戦布告ともとれる挑発であった。

 

「誰!?私は兎も角フォウ先輩は強いんだよ!」

 

(他人に振るな他人に!・・・いや、この声をボクは知っている。お前の姿をボクは知っているぞ・・・!姿を見せろ!)

 

警戒するフォウ、脇を掴みフォウを差し出すマナカの前に、声の主が現れる。

 

【ふふ、元気がよろしいんですねぇ。私、先輩方に挨拶に来た甲斐がありました。だって気合いが入りますものね】

 

現れた存在──それは焔の様に揺らめく四肢、豊満な肉体・・・そして、頭部に雄々しく淫靡に生える巨大な二本の魔羅。嘲り、蔑む様な笑みを二人にぶつけるその表情に・・・フォウのカマ掛けは的中してしまった。

 

(か、カーマ!?まさか本当に君だとは!馬鹿な、リッグド筆頭推しの君が何故!?)

 

そう、リッカとグドーシの交流と尊さに討伐された楽園のプレシャス仲間であるカーマ。その顔は、楽園にて幸せな日々を過ごしている筈の彼女と同じ・・・

 

【御存じでしたか?ですが私はカーマであり、カーマではありません。此処にいるという事は・・・解るでしょう?】

 

「・・・・・・どゆこと?」

 

(ビーストって事だよ、ビースト!・・・いや、考えてみればそうだった。リッカちゃんが、グドーシがいたからカーマはカーマとして楽園に力を貸してくれた。だが他の時空の、リッカちゃんとグドーシがいなかった時空にカーマが現れたとするなら・・・)

 

【正解です♪流石はクラス・ビーストの中で最大被討伐数を誇る、クソ雑魚ビーストさんですね♪】

 

フォウの言葉に肯定を示したカーマ・・・否、カーマならざる獣。倦怠さを存分に含んだ笑みは、その可憐さに似合わぬ嘲りの表情にて全てを俯瞰する。

 

【そう、私はクラス・ビースト。No.は・・・Ⅲ】

 

「Ⅲ!?キア」

 

(待て!・・・まさかお前は、ビーストⅢの片割れなのか?ラプチャーを孔とするなら、片割れはその周りの空間全て・・・そう聞いている。まさかお前が・・・!)

 

【ふふっ、うふふふ・・・そう。私はビーストⅢの片割れにして背中合わせの存在。楽園カルデアに無様に、愚かに、滑稽に敗れたラプチャーの対となる存在。全ての愛を自らに集める孔であるラプチャーである彼女の、不本意ながらも双璧を成す獣。煩わしい、全ての他者の愛を枯らす氾濫の人類悪】

 

そして、彼女は名を名乗った。自身の真名、世界を、人類を滅ぼす災厄の名。

 

【クラス・ビースト。ビーストⅢ・・・ラプス。今日は御挨拶と、宣戦布告を兼ねて顔出しにやって来たので】

 

「宣戦布告!?誰に!?」

 

【勿論、常勝無敗の楽園カルデアにです。獣が挑み、人類の滅亡を成さんとしながら誰もが勝つことの出来なかったカルデア・・・この私こそが、その神話を終わらせますので】

 

楽園カルデアを滅ぼす。彼女は、ラプスを名乗る獣はそう言った。楽園の絢爛たる叙事詩に、氾濫の汚点を撒き散らすのだと。

 

「そんな事どうやって・・・!?」

 

マナカのあまりにストレートなリアクションに気を良くしたのか、ビーストⅢは上機嫌に自身の手の内を明かす。

 

【今から私が、楽園の人員一人を誘惑し私の作った空間へと招きます。そしてその縁を辿り楽園のサーヴァント達を逆召喚し・・・私の製作する空間の材料になっていただきます。そして楽園の全てを材料にし作り上げた空間を私の孵化現場とし・・・楽園と世界を滅ぼすのです(フフン)】

 

「・・・・・・・・・」

 

(・・・・・・)

 

【どうですか?あまりに完璧な作戦に声も出ませんか?そうでしょう。偉業は誰にも理解出来ないものです。私が楽園の輝かしき旅路に、終止符を打つ存在となるのです】

 

沈黙するフォウ、そしてマナカ。自信満々に宣言するビーストⅢに、二の句が告げられなくなっている二人。降伏宣言だと認識したのか、ますます上機嫌に語るビーストⅢ。

 

【最早止める術はありません。今、私の愛が楽園に氾濫し総てを満たす。そして総てに私の愛が満ちるのです。煩わしい他者の愛など存在しない、私の愛を邪魔するものが無い真実の楽園に。どうです?素晴らしいでしょう?】

 

「あ、う・・・うん。怖いな~・・・恐ろしいなぁ~・・・ね、センパイ」

 

(うぅん、恐ろしいなぁ・・・(君がこれから辿るであろう)末路がなぁ・・・)

 

【ふふっ、素直でよろしい。正直目覚めたばかりなので楽園を名乗るカルデアがあることくらいしか、その楽園の協力で『こちら』の片割れがやられたくらいしか知らないんですけど。楽園のリソースを全て私が奪い、私の世界のカルデアを滅ぼしに行く。完璧なプランに戦いてください。・・・それでは、あの自己愛の化身とは一味も二味も違う私の世界の滅ぼし方・・・じっくり見ていてくださいね?】

 

負け犬の皆さん♪言うだけを口にし、上機嫌なままで立ち去る角を生やした獣を名乗りしカーマのそっくりさん。意気揚々と消えていった後ろ姿を、フォウとマナカはなんとも言えない表情にて互いを見合わす。

 

「センパイ、あれ・・・どう思う?出来ると思う?」

 

そのマナカの疑問を、フォウは楽園を見てきた星の獣としての感慨をただ一言告げた。

 

(脅威対象外だろう。絶対初手でつまづくぞ。あの顔はラスボスという立場に致命的に向いていないんだ)

 

「あの顔・・・?」

 

悟りきった言葉でのびをする先輩の余裕ぶりに首を傾げるマナカ。ラスボスに向いている顔と、向いていない顔があるというのだろうか?

 

「私はどう?ラスボスに向いている顔?」

 

(ファブリーズをぶっかけたい顔かな)

 

「ひどーい!可愛らしくて愛くるしいかおしてるでしょー!ほらちゃんと見てー!」

 

(近付けるな持ち上げるな触るな自分で言うなァ!何から何までそういう所なんだよお前ェ!!)

 

いつものじゃれあいに戻る二人。ビーストⅢの片割れを名乗る者の企みは、果たして成就されるのか──




ビーストⅢ【ふふっ、それでは始めると致しましょうか。楽園カルデアに在住する何者か・・・まぁ誰でもいいんですが。適当に身繕って招き入れましょう。そうすることで、縁を以て楽園の全てを材料に・・・】

楽園カルデア 組織人数 一万人以上

【・・・・・・お、多いですね・・・流石は世界を救う組織です。ですがそれは私が誘える人員が多いと言うこと。早速身繕い、勧誘しましょうか】



【私があなたを甘やかしてあげます。なんでも言うことを聞いてあげます。頑張るのに疲れたでしょう?私があなたを愛してあげますから──】

(さぁ、これに抗える人間などいはしないでしょう。楽園カルデア、覚悟することです。あの片割れ、あの片割れとは違うんですから!)

『他者との比較に逸り、事を仕損じるとは勿体無くはござらぬか?深呼吸でもして、自身を見つめ直すでござるよ』

【えっ?あ、はい。どうも・・・?】

『よろしい。我等は挑戦、試練の類いからは逃げませぬ。まずは自身の世界で活動してからでも遅くはないのでござらぬか?』

【・・・それもそうですね。逆にしましょう。まずは手慣らしに、こちらの時空を足ががりにしましょうか──・・・ん?】

(・・・私、誰と話していたんですか・・・?)


楽園カルデア

グドーシ「・・・やれやれ。リッカ殿に、安息は中々訪れぬものですなぁ・・・」

カーマ「何か、身の程知らずの獣でも語りかけて来ましたかー?」

グドーシ「恐らくよーく知っている方なれば。・・・どうやら無視も叶わぬよう。ならば、拙者もリッカ殿の助けになるといたしましょう」

カーマ「・・・誰だったんですか?グドーシさんが腰を上げるなんて相当・・・」

グドーシ「何、生真面目かつ勝手知ったる魔王にござるよ。カーマ殿」

カーマ「・・・えっ。それってまさか・・・」

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