防衛
「ふはははは!心と身体を癒すはやはり入浴!我が水の楽園は冴え渡っておるわ!今日も今日とて我は気分がいい!御機嫌王の名に相応しいな!ふはははははは!」
自らの専用入浴風呂に浸かり、広大な施設に響き渡る笑い声をあげる器、ギルガメッシュ
――自分もお風呂は好きだ。解放感と温かさが心地好く、魂が安らぐ感じがする
ちなみに、湯と水はエリクサー、ソーマ、超神水、桃源郷の桃水など、古今東西のあらゆるありがたい水を改良、使用しているらしい。飛び込めば負傷、呪いであろうと一撃で解放できるようだ。とんだ秘湯である。出所は神々の使用した水瓶。無限に尽きぬ源泉、汲めども尽きぬ神水であるのだ
「我が楽園、カルデアは今宵も磐石である!!ふはははははははははは!!」
――だが、器も自分も、一つ懸念している事が頭浮かんでいた
「ふむ。楽園は磐石。磐石であるが故に――」
ワインを飲みながら、王が真紅の瞳をギラリと輝かせる
「――ひとまず楽園を護る備えを整えるとするか。天草めのように、宝には夜盗と餓えた野犬が付き物であるからな」
――そう、天草の襲撃以降、懸念しているのはそれだった
人理を修復した折の、カルデアの行方。これはいつか取りかからねばならない者だ
天草のように・・・いや、彼ほど純粋ではない輩が、このカルデアを、理不尽かつ手前勝手な私利私欲で手中に納めようとする輩が現れるかもしれない
カルデアに魔の手が伸びるのは、つまりマスターやマシュ、ロマン、オルガマリー、フォウ・・・自分の大切な人達に魔の手が伸びるということだ
今は自分――ギルガメッシュや他の英雄がいるものの、人理を修復した後に、皆が残っている保証はない
――器はともかく、人理を修復した後の自分も。このカルデアにいられるかは解らない以上。いれる内に、あらゆる備えはしておく必要がある
――自分はともかく。彼等には未来がある。その未来を護るのも、今此処にいる願いの一つだ
そのためなら、いくらでも財を手に取ろう。自分への報酬は、皆の幸福な生活でいいのだから
――うん。自分は、自分の見たいものの為に、器の威光を振るわせてもらおう
王よ。味気のない魂の、――細やかなお願いを・・・お聞き届けください
「――フッ、良かろう。我の仕事は人理を修復するまでのみ、後は奴等の仕事と考えていたが・・・気が変わった!」
ザバァ、と英雄王が立ち上がる
「我が財を守護する手段、整えてやろう!魔術協会、埋葬機関!代行者など歯牙にもかけぬ磐石にして不動!我が第二の城塞機関をクラフトしてやろうではないか!我に、不可能は無いのだからな!ク――ふはははははははははは!!」
楽園に、王の高笑いが響き渡った・・・
~
「・・・魔術師の迎撃手段、だって?」
赤いフードのアサシン、エミヤに声をかける
「貴様は魔術師殺しとして名を馳せたそうではないか。そのノウハウを我に寄進せよ。少し手の込んだ仕掛けを作るのでな」
「・・・僕なんかの意見を、聞き届けるというのかい?君が?」
――おかしいことではない。自らより優れた者に教えを乞う。極めて利にかなった方針だ
「我が雑魚や盗人の払いに詳しい筈はなかろう。そんなものは闇に潜むアサシンの仕事だ。だが我は必要なものは正しく評価する。此度は貴様の知恵が要になった。ソレだけの話よ」
「・・・――君がそこまでする理由はなんだい?」
「王道だ。我が財を獲得し、守護する。不遜にも手を伸ばさんとする雑種には、それなりの報いを与えるだけの事」
――そう。この王があれこれ行うのは、結局己の愉しみの為だ
自分にとって大切な宝達を護る――。誰に言われたわけでもない。ただそれだけの話なのだ
――そこに、自分の細やかな所感が紛れているのは内緒だ
「・・・そうか」
聞き届けたエミヤが、フードを外す
「――魔術師はプライドが高い。自らが研鑽し、積み重ねた魔道こそが至上として疑わない、そんな人種だ。――そこに付け入る隙がある」
「ほう。思い上がりが人格に染み着いているわけか。よいぞ。その手の輩には心当たりがある。優雅などにな」
「それと、奴等は魔術を重んじ、現代兵器を軽んじるきらいがある。僕はその価値観を突いて、魔術師を仕留めてきた・・・あんたの財を使うなら、そういったモノを選んでみたらいいんじゃないか?」
――プライドが高いんだな、魔術師。生きにくそうだ。解らないことは、こうやって教えてもらえばいいのに
「成る程な。現代機器・・・フッ、礼を言うぞ。やはり蛇の道は蛇であるな」
――礼を言う。対人関係のマナーだ
「どういたしまして。・・・なら、これを渡しておくよ」
渡されたのは、一発の弾丸
「僕の起源が表れた弾だ。――魔術師殺しに相応しいだろう。使ってくれ」
「ほう?良いのだな?」
「返礼さ。――ここは落ち着くからね」
それだけいって、エミヤは消え去った。霊体になったのだろう
「フッ、王の供物にしては無骨よな。まぁ、暗殺者めに品性は期待しておらぬがな」
――ありがとう、エミヤさん
「では、次は魔術に一家言あるものから聞くとするか」
歩きだす。向かった先は、魔術神殿である
~
「敵対者を追い払う空間を作りたい?そうねぇ・・・」
師事を仰ぐのはメディア、神代の魔術師だ
「まずは結界じゃないかしら。突破するのに時間かかるから、備えができるわ。十全に動かせる魔力炉もいるわね。猟犬がわりの魑魅魍魎、竜牙兵とかも欲しいかしら。異界や魔界に一室を改築してしまうのも悪くないのではなくて?」
「うむ、もう貴様がやれ」
「投げやり!?」
「我より貴様が魔術に長けていよう?」
「や、まぁ・・・そうだけど・・・」
「ヘカテやキルケーに教えを乞うた貴様に勝てる魔術師はおらぬ。そうだな?」
「え、えぇ。・・・当たり前じゃない?」
器の持ち上げに、耳をピコピコさせるメディア。やっぱり悪い人じゃないな
「よし、ならばやれ。貴様の愛弟子二人を護るためだ。最低でも結界は48層、魔力炉は6基だ。猟犬がわりには我がウルクの神獣、ラマッスを使え。異界、魔界に繋がる呪詛の宝具は我が提供してやる」
「無茶ぶりではなくて!?」
「出来たらモデリングと衣装に必要な材を総て提供してやろうではないか。着せ替え、フィギュアの充実は思いのままだ」
「任せてくれてよくてよ?」
二つ返事で引き受けるメディア。・・・なんで魔女なんだろう?
「フッ、ちょろい女よ。よし!では任せたぞ、メディア!ダ・ヴィンチに言っておけ!警報探知機は任せるとな!」
「解ったわ!・・・ところで、セイバーは」
「――いうな、つらい」
――ちょっぴり心に傷を負い、神殿から退出する王様であった
――その後も、構築のための取材は続いた
「何を仕掛けてたかぁ?そうだな・・・まぁ毒やら、落とし穴、焼き討ちとかは鉄板なんじゃないですかねぇ?進軍中に奇襲とか、井戸を枯らすとか、兵糧に仕込むとか?まぁ自分、ネズミですんで?小賢しいのは十八番ですし?」
「ほう、やはりネズミ返しはネズミに聞くに限るな」
ロビンからは、罠の種類の多彩さを聞き
「罠は仕掛けて終わりではない。仕掛けた後に追い討ちする罠、抜けた際にかける罠。かからなかった際にかける罠、退路を断つ罠、追い討ちに対する罠――単体ではなく、連鎖。一つの記号として意識するのが肝要だろう」
「フッ、博識ではないか。皺の分だけ学んだと見える」
「そう言ったゲームもあるぞ!まぁ余は好まんが、ほれ英雄王、貴様もどうだ?」
「後でな。我は忙しい」
孔明より、罠の張り方のコツを学んだ
「よし、では取り掛かるとするか――我はこの手の趣向は不馴れであるからな。憐れな獲物に情けはかけぬぞ?」
――そうして手をかけ、産み出されたカルデアの防衛機構、『敵対者を指一つ動かさず殲滅する』をモットーに、英雄王愉悦の大改装が始まった
まず侵入者には、エミヤの起源が埋め込まれた弾を改良し、再現し、量産した魔術回路と魔術刻印に壊滅的なダメージを与える弾丸が装填された重火器の洗礼が浴びせられる。マシンガン、グレネードランチャー、リボルバー、設置砲台、迫撃砲などの近代兵器をふんだんに使用。二次被害は結界、異界化でクリア。全域に此を設置した。まずここで魔術師は大抵追い返せるだろう
これを抜けてきた、身体的に優れた怖い人には多彩なトラップだ。ムシュフシュの毒をふんだんに満たした部屋、熔岩溢れる部屋、足を踏み入れた瞬間魂を肉体から引き剥がし冥界に送り凍死させる部屋、魑魅魍魎、竜牙兵を敷き詰めた部屋、肉体的に追い詰める仕様だ。全域には神獣、ラマッスが徘徊している。一体一体がサーヴァントクラスの神獣、倒すのも一苦労だろう。頑張って抵抗しなければお腹のなかだ。それらを詰め込む異界構築、駆動させる魔力炉心はメディアさんが用意してくれました
――いや、待てよ?ひょっとしたら向こうもサーヴァントでくるかもしれない
そんな自分の疑問も器は対処済みだった。財の0.5割をカルデアに設置し、神秘に満ちた武具をふんだんに仕込み、サーヴァントだろうと神だろうと八つ裂きにできる防衛体制を整える
警報、担当の道具作りはダ・ヴィンチちゃんが担当。水晶玉や、未来予知の書物、生体関知ソナー、敵味方選別機械などをあっという間にロールアウトする
「マルチロックも完備!一人一人選別して倒せるよん」
「よい働きだダ・ヴィンチ!」
仕上げとして、それらをシミュレーションにて試運転する。死にかけている数十人のマスターの能力を基準とし、侵入者として想定し、実験してみた
「よし、サーヴァントも所持している事とする。さて、如何様な結果だ?」
――結果は開幕で9割が即死。トップサーヴァントを持たせたマスターが一分ほど粘ったものの、ラマッスに諸とも噛み砕かれた
「なんだ他愛の無い。作った甲斐がないではないか。もっと足掻いて見せるがいい」
何度か調整して吟味したは良いが、必ずマスターが先に死ぬ。サーヴァントがそれに追従し弱体化したところを、ラマッスに食いちぎられるの繰り返しだ。業を煮やした器がマスターの身体能力を代行者レベルに引き上げ、ようやく迷宮に足を踏み入れることが叶った
――それでも、カルデアの最深部に足を踏み入れることが出来た者は一人もいなかった。火器に倒れ、魔術に倒れ、神秘に倒れる。完全防衛の名をほしいままにする、難攻不落の迷宮の完成である
「ふはは!存外に愉しいなこれは!どれ、次は何を基準に罠を張ってやるか!キャスターめを好むロマンも解るというものよ!ふはははははは!!」
仕上げに、カルデア職員の遺伝子を採取し登録。『本来のカルデア』と『迷宮カルデア』に続く扉を完全に仕分け、分別する。カルデア側の許可なく侵入した者、敵対の意思を示したものは即座に迷宮行きだ。
「そら、指揮権は貴様のものだ。聖杯を出せ」
「は、はい」
オルガマリーの聖杯に発動権を譲渡する。これで、オルガマリーの意思一つで、カルデア迷宮は牙を向くのだ
「悪用するなよ?我と、メディアと、ダ・ヴィンチが共同開発した迷宮だ。まぁ試したいならばあの死にかけている雑種どもを使うのだな。ふはははははは!!」
「ぜ、絶対しませんから!あは、あはは、あはははは・・・」
完全にドン引きしたオルガマリーがひきつった笑いをあげ、王が上機嫌に笑う
「貴様らの戦いは、人理の先に続く!これは、貴様の安全を保障する防衛迷宮戦線!畳み掛ける終末のごとき牙!名付けて『
火器に、魔術、そして神秘
すべてを兼ね備えた絶対迷宮『
――これで、少しは皆も安心できるだろうか?
「ふむ、カルデアのサーヴァントどもに挑戦させてみるか?」
――序章に逆戻りしてしまうので、お止めください・・・
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