人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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リッカ「うぉおぉおぉおぉう・・・!!ぐぅうぅううぉおぉおぉお・・・!!」

立香「リッカちゃん!?大丈夫リッカちゃん!?」

リッカ「私の左手呻いて吼えるぅ・・・!お前を喰らうと慟いて哭くぅ・・・!ごめんなさい涙いいですか私ぃ・・・!!(ゴロゴロゴロゴロ)」

カーマ「すみませんマーラ!帰ってもらっていいですか!」

マーラ【・・・あの、大丈夫ですか?洒落にならなそうな痛がりっぷりなんですが・・・】

リッカ「だ、大丈夫・・・ちょっと筋肉繊維にカッター刃挟み込んでジャリジャリしてるような痛さなだけだから・・・いだだだだ・・・!!」

マーラ【・・・あの、よかったらこれを・・・少しはマシになるんじゃないですか】

『徳川の印籠』

リッカ「あっ・・・!痛みがスーッと・・・!」

グドーシ「これは・・・?」

マーラ【まぁ、大奥専用礼装みたいなものです。・・・THE・徳川のようなものなので、少しはマシになるのでは・・・?】

はくのん『やっぱりカーマの裏じゃないか』

リッカ「ありがとう!すごく楽になった!でもものっそい震えてるの抑えてるから私抜きで会話お願いいたします!」

マーラ【はぁ・・・では、気を取り直して──こほん】

~二階層

男「・・・ケホッ。いい加減観念してはどうか、但馬守」

『柱』「くどい」

「ふ。さあばんとなる御霊であろうが、頑固さは変わらぬな」

「貴殿こそ乱心したか、『信綱』殿。幕府の老職にありながら、かような狼藉。徳川の禄を食むものとして言語道断。恥を知れ」

「ケホッ。──既に終わった話なのだ。これは。徳川幕府は、マーラ殿に敗れた。あの魔王の誘いに勝てし人はおらぬ。勝者に恭順するが、敗者の掟であろう」

「・・・・・・」

「魔王に、第六天魔王に人は勝てぬ。逆らう事など愚か。──そなたには、共に仕えてもらいたいのだが・・・」

「徳川に仇なす者に預ける健は持たぬ。この老体が邪魔なら、疾く首を跳ねられよ」

?『──其奴は動かぬ。無駄な勧誘は止めておけ。身体に障ろう、松平』

「ケホッ。・・・労りに感謝しよう、『武尊』殿。──待つにも限度があるぞ、但馬守。『大奥になってしまわぬうちに』決断してほしいものだ。そら、いつまでも禅の心得だけで耐えられるものではない──」

柱「──!!・・・!・・・!」

武尊『・・・・・・』

「悪趣味と嗤うか、武神殿」

『吾は防人であり、番人でしかない。そして、貴様を護る為に就いているに過ぎん。事の成り行きに口は出さん』

「ケホッ。──忝ない」

『案ずるな。不忠の報いは必ず受けよう。それまで、そなたは死なせんよ。この大奥も、壊させはせぬ。その為に、吾は在るのだからな──』


魔王に示す慈悲

【・・・死を何よりも憐れんだビーストⅠは満場一致の昇華を受け入れ、回帰を望んだビーストⅡは地球を飛び出し頭脳体は電脳防衛の中枢へ。比較を宿すビーストⅣは唯一無二の存在に未だに討伐され続けている獣の面汚しぶり。そしてビーストⅢ・・・ラプチャー、ラプス共々に。孵化どころか気配の段階で討伐を果たされる。──何処の時空を見渡しても、これ程の最善の結果を叩き出したカルデアは存在してはいないでしょう。それが、私の挑まんとしているカルデアの成し遂げた偉業。この私──マーラが討ち滅ぼすに足る楽園です。だから、私はこうして自らの時空で完全勝利を納めたのです。真なる獣に羽化するためにね】

 

圧倒的な威圧感と、畏怖を叩きつける魔羅の角を戴く美女、マーラ・・・ビーストⅢ・ラプス。楽園の時空ではキアラがエアに導かれた連鎖反応にて顕現したものの、リッカとグドーシの育んだ『愛』に討伐された存在。そんな運命を垣間見る奇跡に巡ることなく、マーラとして新生した獣は自信に満ちた笑みを見せる。其処には、勝者の余裕とも呼べる程の泰然が示されていた。

 

『マーラだなんて・・・!カーマの裏の顔たるマーラの顕現は、シヴァを始めとしたインドの神格が目を光らせています!顕現出来る筈が・・・!』

 

【パールヴァティー・・・ですよね、この耳障りな声は。よりによってこんな最悪な食べ残しをするなんて。現実を前に仮定が何の意味を有すると言うんです?良くは知りませんが、インドの神格が皆消え去るような異常事態でもあったのではないですか?残念ですねぇ?愛しのシヴァはもうこの地球にはおられない。御愁傷様、ざまぁみろです】

 

「其処は全く同感です。パールヴァティーはいくらでも不幸になってもいいと思っておりますので」

 

カーマ!?等と涙目になるパールヴァティーであるが、致し方無し。カーマは真実の愛を教えてくれた全てを愛しているだけで、博愛に目覚めた訳ではない。嫌いなもんは嫌いなのである。カップルを見ると舌打ちは欠かさない。だが、今はそれどころではない。目の前に、自身の醜態そのものが存在しているのだ。

 

「情けとして伝えておきますけど、楽園に喧嘩を売るなんて馬鹿な真似は止めておいた方がいいですよ?そこらのカルデアを滅ぼして、お山の大将で満足しておいた方がいいと思います。御釈迦様にボロ負けした万年敗北側の魔王様♪」

 

【はっ、随分とキラキラしていますね。反吐が出る程に。戦う前から人間と人形に負けたあなたに言われる筋合いはありません。あのビーストⅢラプチャーは骨の髄まで、魂の一辺まで焼き尽くされた。それほどの圧倒的な存在を愛し、堕落させる。愛なんて下らないものに膝を折った貴女には解らない崇高な偉業をあなたに理解できるとは思えませんね】

 

「する気もないし、理解したいとも思いません。あなたに私の心は永遠に理解できませんよ。求め与える、奪い堕落させる・・・そんなものを『愛』と履き違えている貴女には、永遠にね♪」

 

今度はマーラが不愉快に顔を歪める番だった。気に食わないのだ。『私は結婚してラブラブ幸せなんですけど、あなたはいつまで寂しい独り身なんですかぁwwww?』などという精神的優位からの見下しっぷりの物言いが。元はと言えば、愛を口にするのも考えるのも嫌と倦んでいた存在の癖に。たかが人間の何処に、そんな愛を産み出せるというのか。反吐が出るとは、比喩では無かった。吐き気を堪えながら、マーラは舌戦を続ける。

 

【・・・まぁいいです。ところでリッカさん、どうです?この大奥。一階層は自由に殺生が許されていました。よく言うでしょう?人は人を殺してはならないって。夏場に湧く蚊は叩き殺す癖にとんだ二枚舌だと思いません?】

 

「えっ私ですか・・・ちょっとそっとしておいていただけると助かります・・・!左腕が、左腕がちょっとまずいんで今・・・!」

 

【していい、許される。どうですか?禁を破る感覚は。【とっても気持ちがいいでしょう?】】

 

「『いいえ、ちっとも』。あのような人形を何体砕いたところで、ちっとも昂りはしませんもの」

 

マーラの自慢気な迷宮のカラクリを、元凶が出現し絶賛左腕抹殺エマージェンシーを堪えているリッカの代わりに、バッサリと一刀両断するキアラ。マーラからしてみれば、元ビーストが三人もいる節操の無さぶりに流石に閉口せざるを得なかった。

 

【・・・もう少し、人員をなんとか出来なかったんですか?】

 

『バケモンにはゲテモンをぶつけんだよ。勝手に戦え

 

BBを自分以外が虐めたという事実に殺意を以てサポートするはくのんの言葉をさらりと流し、キアラは微笑む。雑多な愛の仕立てなどで濡れる下着は無いと断じるキアラ。顔出しし牽制を図ってみればなんだか旗色が悪く、曇ってきたマーラに対し、次に問い掛けしはグドーシだ。

 

「もし、マーラ殿。一つ御忠告をよろしいか」

 

【えっ?あ、はい。・・・なんですか、あなた。忌々しいあの救世主にそっくりな・・・】

 

思案し、いえ、気のせいですねとマーラは思考を打ち切る。自身の天敵であるあの救世主が、世界の危機に来る筈がないのだ。あの救世主は人が滅びようと、それもまた世のうねりと静観を常とする。万物一切に救いが絶える程の末世でない限り、サーヴァントとしてすら現れる筈がない。度の過ぎた狂信者の類いとしながら、不思議と耳を傾けるマーラ。

 

「そなたは楽園を完全に敵に定めておりますが、それはまだ尚早にして性急と言うもの。まだ、そなたに挑む命は此処におりますのです」

 

【はぁ・・・?其処にいるデミ・サーヴァントと、平々凡々極まる男の子のことを言っているんですか?】

 

「然り。これは忠告にござる。己に課した業を蔑ろにしては、報いとなってそなたを破滅させましょうぞ。我等が此処にいるは、彼と彼女が決して諦めなかったが故。彼と彼女が、そなたに挑み大切な全てを取り返す事を決心したが故。我等が完璧な助力をどれだけしようと、それはあくまで助力。そなたを討ち果たすのは──今此処に在る二人の愛なのです」

 

立香とマシュの勇気はまだ死んでいない。ノウム・カルデアはまだマーラに挑んでいる。それを見落とし、楽園ばかりに意を向けていては考え得る最悪の結末を迎える事になるとグドーシは説く。

 

「マーラ殿、どうかこの二人に目を向けられよ。悲しみや苦しみ、無念に満ちながらも、一歩一歩を確かに積み重ねた──楽園とは異なりし、愛と希望の物語の紡ぎ手を。そなたを討ち果たすのは楽園にあらず、この二人なれば」

 

【──面白い事を言いますね。かの救世主を知っている私が太鼓判を押してあげます。あなたの仏陀のエミュレータ、とても真に迫っていますよ】

 

嘲笑──というよりは本当に愉快そうにマーラは嗤った。無理もない。龍と絢爛な楽園を前にして、目の前の地べたにて威嚇してくる虫ケラに気をつけろと説かれたのだ。ヘソで茶が湧くと言わんばかりに震わせる。身体も胸も。

 

「おっ・・・!!」

 

【達観した人間は解った気になって下らない事を言い出しますが・・・其処の、なんです?出来損ないのサーヴァントに、女の子の陰に隠れて偉そうにしている無様な男の子が私を倒す?もしかして狂人なんですか?あなたは】

 

「立香さんを侮辱しないでください!!」

 

「いいんだ、マシュ。言われ飽きたしよく自覚してる。オレは確かに、女の子の陰に隠れて偉そうにしている無様なマスターさ」

 

藤丸は静かに頷いた。事実を受け入れ、そして・・・もう一つの事実を告げる。

 

「そして──『大好きな女の子と世界を救った、世界一幸せなマスター』だ。名前は藤丸立香。・・・お前を倒しに来たマスターだ!覚えておけ!」

 

【──なんですか?龍華さんのような宿業も生い立ちも、人生も背負っていない舞台装置の分際で救世主気取りですか?】

 

本格的に、癪に触った。自身が食い散らかした残飯の分際で、愛する人間に殺生を要させている分際で、龍の少女と比べあまりにも薄っぺらい人間の分際で、魔王たる自身を倒すと宣ったのか?

 

「事実でござる、マーラ殿。此処に在りしリッカ殿に藤丸殿。優劣など微塵も無き事を受け入れられよ。そなたの在り様を変えし──」

 

──自身の失敗を、マーラは痛感した。実力伴わぬ者の凱歌と自慢程、耳障りなものはない。

 

【──解りました。よく解りました。申し訳ありません、楽園の皆様。あなた方に挑むというのに、このような不手際は愚かしさの極みでしたね】

 

グドーシの言葉と共に──マーラは四肢より、蒼き炎を噴き出した。

 

【あなたたちの言葉通り──そこの残飯を処理します。そして始めましょう、私と楽園カルデアの全面戦争を・・・!】

 

炎は荒ぶり、昂り・・・ノウム・カルデアの残骸を焼き尽くさんと燃え滾る──!




カーマ「なんと救い様の無い・・・グドーシさんの示した慈悲だったのに。垂らされた蜘蛛の糸すら見えないんですね・・・」

シオン『魔力、爆発的に増大!火に油注いでどうするんですか藤丸くーん!?』

立香「ご、ごめん!オレが誰にも負けないもの・・・ハッタリとかっこつけくらいだから・・・!」

はくのん『それでいい。それは自信になって君を助ける』

「岸波さん・・・!」

春日局「私だって言いたい事はあります!!よくもあんな誤解を招く大奥を!正座なさい!成敗します!!」

『落ち着いてください!?』

マーラ【そもそも前提が逆でした。楽園がノウム・カルデアを助けるなどと勿体無い。この物語も楽園の一頁にしましょう。それを焼き尽くした時こそ私の絶対性が揺るぎなくなりますから・・・!】

グドーシ「マーラ殿・・・どうか心を改められよ。端役などでは無し。彼等もまた主賓にして主役にござる」

燃え盛る炎。構えるグドーシ、マシュ。あわや緒戦と思われしその時──

リッカ「うわわわわわわわ!!?ダメちょっと待ってマーラ避けてぇー!!?」

マーラ【え、なっ──!?】

踞っていたリッカ──否。リッカの左腕に宿る龍哮村正が大きく天へと振り上げられた。天高く突き付けられた刃となりし左腕が、高まりに高まった徳川迷宮の核に目掛けアギトを下ろすが如く──

【っ、あぁあぁあぁあぁっ──!!?】

目にも止まらぬ、否。目にも映らぬ黒と紅の雷たる斬撃がマーラの片角を打ち据えた。無数極まる、甚大極まる健啖の一撃が、マーラの想定外の事態を引き起こした。

【ぐ、うっ・・・く・・・さ、流石ですね・・・こうでなくては・・・っ】

マーラの片角が──無数極まるヒビを刻まれていた。徳川迷宮と一体化していたマーラに叩き込まれた、徳川を害する刀の最高傑作。龍の血肉で磨がれた刃は、魔王の身体におぞましき歯跡を刻み込んだのだ。

リッカ「大丈夫マーラ!?こんな不意撃ちで死んでない!?」

マーラ【とんでもない反撃を受けてしまいました・・・いいでしょう、この一撃に免じて私は帰ります。──ノウム・カルデアの全てを取り返したいなら、最下層へどうぞ。お待ちしていますから。そして、次の階も楽しんでいただけるかと・・・!】

そうして、光が漏れ始めている角を抑え消え去るマーラ。大物に食らい付けて満足なのか、疼きはぐっと収まる。

グドーシ「マーラ殿・・・。いや、今はリッカ殿でござるな。大丈夫でござるか?」

リッカ「龍哮の震えが怖い・・・咀嚼してるみたいな、悦んでいるみたいな・・・」

カーマ「ナイスアンブッシュです♪さぁ、目障りな魔王も払いましたし、次に参りましょうか」

キアラ「うふふ、さぁ参りましょうかマスター。少年少女の底力、見せるときだと存じます」

立香「解ってる。・・・グドーシさん」

グドーシ「?」

マシュ「ありがとう、ございます。私達の事も、立てていただいて・・・」

グドーシ「礼などには及ばず。マーラ殿は気付くでござろうか・・・」

楽園を上、その他を下と見る限り、真なる勝利は有り得ない。・・・彼の慈悲は、魔王に届くかは未だ見えず。

一同は、次階層に向かう──
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