人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ザビエル『どう?印籠と左腕を結びつけてみたけど・・・平気?』

リッカ「うん!すっごく楽になったよ!ありがと、はくのん!」

グドーシ「・・・・・・?」



徳川汚染度 0/100

村正満腹度 10/∞



グドーシ「・・・これは・・・」

カーマ(解りましたか、グドーシさん。これ、うっかりで渡してましたが・・・)

グドーシ(・・・どうやら、マーラ殿の掌は広く大きい模様。リッカ殿の村正なくば、使うものを大奥にて堕落する『徳川』へと変える仕掛けとは・・・。・・・──!)



これを手にした者よ。徳川は、魔王の手に落ちた。最早徳川の全ては魔王の手に──

だが、希望はまだ潰えてはおらぬ。花札を、そして忠臣を信じよ。徳川へ仕える者を信じよ──

女の声『駄目ですよ。ここではどうか楽になさってください。毎日のような大立回りに成敗三昧、疲れたでしょう。どうぞ、刀を置いて楽に──』

【───餌だ】



カーマ(今のは・・・あの印籠の思念と、・・・女の声?)

グドーシ(並びに、尋常ならざる存在の呻き。・・・どうやらマーラ殿の企みは、相当に用意周到と見受けられる。はてさて、どう説明したものか・・・)

キアラ(うふふ・・・)

リッカ「わ!?何このゲージみたいなの!?左腕に!左腕になんか書いてある!?満腹度・・・!?誰の!?」

藤丸「・・・何も書いてない、ような・・・?」

リッカ「あ、あれぇ・・・?気のせい・・・?」

(どうやら、獣の気配に敏感な方は見られるようですね。徳川化の呪詛が──)


不妄語戒階層(嘘をついてもいいんです)

「一階層目の誓いは不殺生戒、人を殺してはならない。では次は──」

 

マッピングされたタブレットを覗き込み、グドーシが考案を行う。盗めるようなカギはなく、堕落をさせる女はいない。酒気の気配もない。全体の空気を確認しながら答えを導く。

 

「不妄語戒、嘘をついてはならないでしょうかな。恐らく課された禁はそれかと思われまする」

 

『一階層のが、殺生をしてはならないでしたか。となるとマーラは、仏教の五戒を迷宮のテーマに組み込んでいると?』

 

恐らく。そうグドーシは断言を行う。先に進む為にはその誓いを破らぬようにするか、或いは破らねばならないと彼は分析を行う。

 

「恐らく本来のコンセプトは、禁を破らせながら迷宮の奥に辿り着き、マーラ殿の奥・・・即ち彼女の宇宙へと招き堕落させることが主であるのでしょう。そしてその印籠、徳川と化してしまったゴルドルフ殿。──予想としては、『使用するものを徳川とし、徳川を堕落させる大奥にて取り込む』のが彼女の本題だと思われまする」

 

禁を破り、印籠を使わせ徳川の呪詛を使用者に蓄積させ、マーラの宇宙へと招かせる。禁を破り、快楽を堪能させ、徳川の魂をパッケージングした印籠を使用させる事により、徳川の魂を愚弄する徳川としての定義を付けさせ、大奥と一体化したマーラが堕落させ取り込む。大まかの狙いをグドーシは導いた。何を隠そう、今の彼にはマーラとは因縁浅からぬもの。彼女の思考は手に取る様に解った。そしてそれは本来ならマーラも同じこと。形振り構わず藤丸を誘惑し、堕落させれば勝負は付くのだが──

 

「マーラ、グドーシさんがなんなのかまるで解っていませんからね。最高のタイミングでネタバラシしたいので私も黙ってますけど」

 

「五分かつ対等だと言うのに、まるで聞き入れてもらえませぬ。なんとかマーラ殿に、二人の侮りだけは正して貰いたいのですが・・・」

 

余程トラウマなのか、それとも熟知ゆえのうっかりなのか。マーラはグドーシに宿るものを見抜けていない。今の状態はまるで、カードゲームでマーラ側が自慢げに手札を晒しこちらの手札を見ようとしない状態にあった。おまけに大ダメージすら被り、暫く出てこれない程に出鼻をくじかれているおまけ付きだ。

 

「えっ!?じゃあこの印籠を使うのマズいって事!?マーラ頭いい!?」

 

リッカの左腕に結び付けられた印籠、グドーシの見立てではそれはマーラの誘惑にかかりやすくなる罠。本来なら使うべきではない危険な物体なのだが・・・

 

『問題無い。見たところ、徳川化を担当するブラックボックスの部分がぐっちゃぐちゃに壊されてる』

 

『いいえ、これは喰い千切られていると言った様相ですよ。もう復旧は不可能です・・・徳川スレイヤーブレイド恐るべし・・・』

 

二人の解析から、龍哮村正が仕組まれた徳川化の呪詛を問答無用で喰い荒らした事が伺える。徳川将軍の魂のパッケージングなど、村正にとって最高の供物にして餌という事か。その証拠に、印籠を手にしてからリッカの左腕は痛まない。

 

「リッカさんの左腕に宿る刀の鎮静に使えるやもしれませんね。マーラが用意した呪詛の罠こそが最大の供物になろうとは、やはり因果はもたらされるべき箇所にもたらされると確信いたしました」

 

「りゅ、龍哮の鎮静と補食の為に印籠を集めようだなんて悪趣味な事はしなくていいよ!?痛みくらい、堪えればいいんだから!」

 

「だーめーでーす。リッカさんの痛みの許容量は普通の人が死んじゃうくらいなんですから。痛いものは我慢しないで、楽園に飛び散った徳川の皆さんをどんどん食べさせていきましょうね♪」

 

「そ、その言い方は大変承服せざるものですが!徳川の将軍の皆様を喰らうなど大変恐ろしい刀ではありますが!・・・いたいけなおなごが、痛みに悶え苦しむを見てみぬふりはそれこそ天下の徳川の名折れ!此処は糧ではなく、共にあると解釈して集めるとしましょう!・・・リッカ殿、本当に大丈夫でございますか?」

 

「全然平気!ちょっとじゃじゃ馬だけど、龍哮は間違いなくこの特異点を攻略するのに役立ってくれる。だって私の、護り刀の一振りだから!」

 

「まぁ・・・!痛みを厭わず、自らに噛み付く刀すらも受け入れしその度量!なんと気高く麗しい女子でしょう!」

 

「辛い思いをさせてごめん。──もし、この大奥で堕落や相手の術中に嵌まるのが必要な時は・・・躊躇わず、オレがやってみせるよ」

 

「二人の藤丸殿は本当に素晴らしい方々です。泰平の世、この様な子達が育つとは・・・徳川の皆々様もきっと誇らしく感じておりますよ。えらい、えらい!」

 

二人の頭を、なでなでする春日局。リッカはにへらと笑い、立香は切なげに、嬉しげに目を細める。

 

「・・・人に褒められたの、久しぶりだな・・・」

 

「?どったの?」

 

「お、お嫌でしたか?私は乳母を勤めておりましたので、いい子にはついこの様に。不快でしたら申し訳ありませんね・・・?」

 

「ふ、不快だなんてそんな!ただ・・・ちょっと、ほっこりしちゃっただけです」

 

「ふふ、みょうちきりんな事を。善き事をしたなら褒められる。二十歳にもならぬ少年少女ならば尚の事ですよ、立香殿」

 

「・・・立香さん・・・」

 

春日局の優しい言葉に、立香はほんの一瞬・・・目を潤ませる。マシュだけが把握できるほどに完璧に笑顔の下に隠したそれをしまい込み、立香は前を向く。

 

「よーし!マッピングは出来てる、アイテムが落ちてないか見ながら行こっか!絶対役立つアイテムあるよ!広いし!」

 

『上様の印籠があるの、たのもしい。暴れん坊ヨシムネ』

 

「あ、暴れん坊?後世の将軍はどのような・・・?」

 

「あー!えっと!テレビで毎回見れるくらいには大人気なんですよ徳川さん!ね、カーマ!」

 

「はい、それはもう。仮面ライダーともコラボしたんですからね~。バイクに対抗意識を燃やして、お馬さんが興奮して大変だったみたいです」

 

(リッカ殿・・・後世の徳川の治世は伏せましたか)

 

それを語れば、最後は示さなくてはならない。徳川の治世の終わりを。だからこそ、リッカは詳しく春日局の知らない徳川の情報を秘匿したのだ。咄嗟の、春日局への配慮であった。

 

「成る程、全体の予定が狂うのですね?解りました、そういう事もありましょう!」

 

(・・・全体の、と来ましたか。歴史の全体を見る観の目。それを産まれながらに有する女傑。ならばこそ、最期は辛かったでしょう)

 

キアラは憐れむ。先も、全体を観れる眼ならば見えてしまうのだろう。乳母として、自らが育てていきたい徳川の将軍達を。──それらを観ておきながらも、乳母たる使命を果たせぬ無念は、臨終間際の心は如何程であったか。

 

「ささ!お話はこれまで!階層は丸々把握しておるのですから、後は進むのみにございますよ!いざや!進めぇ~!」

 

元気に音頭を取り、進む一行の先頭を行く春日局を見据え、キアラは静かに目を細める。

 

「──キアラ殿。そなたもまた救世の資格を持つもの。春日局とこの大奥の成り立ちを見据えるも容易では無いですかな?」

 

「えぇ。恐らく、マーラが大奥を選んだ理由も其処にあるのでしょう。──それらは、全ての決着にまで我等の胸にしまっておきましょう」

 

「然り。・・・恐らく、彼女こそが大奥の始まりにして終わり。マーラの『宇宙』に対抗すべき『概念』の殴り合いの手札なのでしょうからなぁ──」

 

超越の観点で語り合うキアラとグドーシ。キアラの言葉と振る舞いを眉一つ動かさず受け止める彼の在り方に、キアラは感嘆を示さざるを得ず多くを語らない。

 

・・・嘘をついてはならない。その手の階層に相応しく廁の場所に廊下が、押し入れに階段があり、扉に壁があったりと複雑怪奇に加え、しきりにお殿様かを聞き訪ねる女中カラクリが語りかけて来たのだが。

 

【わわわわ!?また!?】

 

リッカの左腕が問答無用で女中を喰らい尽くし、正しい道を指し示す。悩むなど愚かとばかりに最適解を導き、誘惑もろとも食らい尽くす。

 

「・・・・・・特例の特例で、愛の矢を使いますかリッカさん?どう見ても、首輪をつけておいた方がいい気がするんですよね・・・」

 

「あ、あはははは・・・徳川を害するのが村正の本懐みたいなところあるし・・・もうちょっと!もうちょっとだけ信じてあげよ!ね?」

 

敵だけにしか牙を剥かない龍哮、きっとマーラへの活路になると信じて──リッカ達はマッピングと龍哮の導きのままに進む。そして、辿り着きしは二階層の終わり──

は二階層の終わり──




二階層・広間

信綱「ケホッ。・・・どうやら、辿り着いたか」

春日局「信綱殿!?信綱殿ですか!?こんな大奥モドキで何をしているのです!?」

ザビエル『誰』

シオン『ジェネラル家光に仕えた老中、知恵伊豆の名を戴く知将であり重宝された家内だそうです。・・・まさか、マーラへの鞍替えですか?』

柱「・・・主殿か。不覚を取った。無様をさらす事、赦されよ・・・」

藤丸「柳生さん!?」

マシュ「柱と、一体化して・・・!」

シオン『・・・成る程。分析結果が出ました。この大奥の反応、材料は即ち・・・』

信綱「・・・明察、と言っておこう。マーラ殿は、貴様らの行動を全て『赦せ』と仰れた。前に進む意志を見せるなら、邪魔立てする理由もない」

春日局「こらー!?幼少から育てた私を無視するとは!福は哀しいです!哀しいですよ!」

カーマ「・・・今のあなた、顔がパールヴァティーなんですけど・・・」

「!!!」

信綱「戦うというなら、彼に奉ろう。後は任せ申した、『武尊』殿」

武尊「・・・」

リッカ「タケッ──えふんっえふんっ!!」

シオン『し、神霊反応!なんて強大な・・・!タケル!?まさか日本神衣にあの威風・・・!』

立香「ヤマト、タケル・・・なのか・・・!?日本の中の、大英雄の中の大英雄・・・!」

武尊「・・・あぁは言うが、吾の役目は大奥の守護と清掃。吾が滅ぼすべきは『大奥の破壊を以て先に進まんとするもの』。手順を踏んだお前達を倒す気はない」

カーマ(話が解りますね、タケちゃんさん。いないと思ったらこんなところに・・・)

リッカ(楽園のタケちゃんなの?別口の人?どっちなんだろ・・・)

タケちゃん「(───)」

リッカ(・・・唇が動いてる?会話の意志があるなら・・・!)

やりで てんまつ ははが しった えんご 

(あぁーー!!アマノヌマボコォー!!)

カーマ(???)

「先に進みたければ進むがいい。・・・そして、大奥に散らばっていたものを受け取れ」

『印籠』『花札・白』【花札・黒】

リッカ「くれるの!?」

タケちゃん「吾の使命は大奥の守護と維持。散らばるものをやるなとはマーラに言われていない。・・・どう使うかは任せよう」

グドーシ「力任せの抑止、という事ですかな?」

「死にたくなければ、破壊を伴う進撃はやめておけ。──死にたいのならば止めんがな」

カーマ「・・・行っちゃいました。はぁ・・・自分の天敵や危険も甘やかすとか、だからあなたはマーラなんですよねぇ──」

ザビエル『あ、花札を使えばりゅーたんさん助けられそう』

マシュ「す、すぐお願いします!!」

グドーシ「・・・得心いたした。この大奥──材料が『ノウム・カルデア』・・・並びに『徳川』の全てとは──」

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