人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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大奥

シオン『やった!ビーストⅢはもう終わりです!後は──』

ゴルドルフ「めめめ、目覚めたばかりで悪いがあれだよね!?次はあれだよね!?」

【ゴォアァアァアァアァアァァアァアァアァアァアァアァアァア!!!!】

「アレ!アレはどうするのかね!?なんで!?なんでライオン倒すためにグリズリー呼ぶみたいな事しちゃったの!?悪手!悪手だよこれ!?残った相手が私達の敵じゃない!?」

【グガアァアァアァアァアァァアァアァアァアァアァアァアァア!!!!】

「ひぃいぃい何とかしてぇ!?らららら楽園の諸君!アレ、アレなんとかならないの!?倒すとかどうみても無理ゲーだよね!?」

はくのん『問題ない。そして私は忙しい』

「はいぃ!?」

リッカ「龍哮ーーーーーーーーッ!!!!」

【!!!】

ゴルドルフ「!?」

立香「リッカちゃん!?」

「『生まれてきてくれて、ありがと』ーーーーーーーーッ!!!!!」

リッカが叫んだ、その言葉。──ビーストif・アジ・ダハーカを倒すのに、魔術も宝具も、資格すらも必要無い。ただ、一言だけあればいい。

【───ガ、ァ・・・・・・】

シオン『!ドラゴンが・・・!』

マシュ「虹色の、粒子に・・・」

霧散し、消え去っていくアジ・ダハーカ。中核たる村正は、静かにリッカの左腕の中へ。

「あなただって、私の一部だもん。弱点だって一緒だよ!ねっ、グドーシ!」

グドーシ『然り。──或いはこの龍こそ、逆接的に善と正義、素晴らしき愛を証明する龍なのかもしれませんなぁ・・・』

恐れず、拒絶せず。ただ当たり前の祝福を告げればいい。──無限の食と、一つの祝福を得た龍哮は今度こそ自然に、完璧にリッカの腕と一体化を果たしたのだった──

龍哮忠義度 ∞/∞

龍哮満腹度 1/1




魔王の最期、女神の自立

【どうして!?私は愛の、愛の魔王なのに!愛を欲する人間に届かない筈が無いのに!】

 

空中に、ラプチャーとは対照的に遥か天空に吹き飛ばされしマーラ、ビーストⅢラプス。己の敗北を、己の終焉を受け止められずに叫び続けるマーラに、春日局が──異なる女神二人に救われた魂が問いかける。

 

『えぇ、だから言ったでしょう。私は二人の愛の神に感謝しなければならないと。何の理屈もなく、何の見返りもなく。ただ当然のように私を救ってくださった御方。優しく、強く私を立ち上がらせてくださった御方。私にとっては、この方々こそが愛の神、愛の体現者』

 

その魂を有し、愛を示した女神の片割れ。生まれながらに夫と結ばれる運命を持ち、正真正銘の愛を司りし女神。

 

「マーラ、諦めなさい。愛とは一方的に与えるものでも、与えられるものでもないでしょう。・・・けれど明確な答えはなく、あるいは神である我々にも解ってはいない。でも・・・その答えに一番近い場所にいるのが愛の神であるあなたの筈です」

 

パールヴァティー。最強の破壊神の永遠の妻。漂っていた迷える魂を救いあげし、慈愛と永遠の愛の女神。

 

「短絡的な堕落の炎に飲まれてしまったあなたに!最後の餞として、『私達』の愛を伝えましょう!私の中にある最も純粋な、これだけは絶対に正しいと信じられる!偉大なる夫に対する愛!そして──カーマ!」

 

破壊神の槍を高々と掲げるパールヴァティーの背後に顕現する、巨大なる空間・・・愛の宇宙そのものたるカーマ。別にあなたの愛はどうでもいいんですけど、という言葉はグッと呑み込み・・・

 

『・・・まぁ、事此処にいたって無粋な事は言いません。私の半身、醜態にして汚点。敵の敵は味方ということで、吐き気を我慢し合わせましょう』

 

真なる愛の女神としての誇りと矜持を甦らせしカーマ。愛の全てを担う者として、真なる愛を見た者として。彼女もまた力を合わせる。胸に懐いた、たった一つの愛を胸に。

 

『冥土の土産に教えてあげます。私の愛──・・・私が愛する必要なんてない。誰かが愛してあげる必要なんてない。ただそこにいるだけでいい。ただ幸せに笑ってくれているだけでいい。ただ、一緒に生きていてくれるならそれでいい。なんの見返りも、何の報いもいらない・・・──大切な人達を、尊ぶ愛を』

 

破壊神の槍に集う雷と焔。パールヴァティーの愛を糧に威力を増すシヴァの破壊の力。形無き宇宙の全て、自らの存在全てを弓矢として、自らの本懐たる愛の矢として放つカーマの全身全霊。愛の神の二柱が、自らの胸に宿りし愛のカタチを顕現させ放つ一撃。それが今、愛の魔王にトドメを刺す!

 

「「いけぇえぇえぇー!!!」」

 

マスター二人の声援を、バックアップを受け放つその宝具の名は──!

 

「『恋見てせざるは愛無きなり(トリシューラ・シャクティ)』!!」

『『尊び護るもまた愛なり(ニルヴァーナ・カーマ)』──』

 

【うぅ、う、あぁあぁあぁああぁあぁああぁあぁあ!!!痛い、痛い痛い!シヴァにされたように、シヴァにされたときよりもずっと──痛い、ですぅう・・・!】

 

焔、そして雷。宇宙そのものを愛に纏め撃ち放ちし愛の矢。その熱量が、その威力がマーラを焼く。焼き尽くし、燃やし尽くす。シヴァの破壊の炎とは違う──乙女と女神が懐く、愛の焔。その愛こそは、シヴァの焔よりずっとずっと熱く、激しい。

 

『もう終わり。レガリオン・パニッシャーとは比べ物にならない宇宙そのものと破壊神の焔の全身全霊。ほら見て、あの顔』

 

【うぐ、うぐぐぐぅ・・・!!ひっ、ひっく・・・!うぅうぅ・・・~~~~~!!】

 

かつてのトラウマを、かつての苦痛を思い返したのか、思い出したのか。マーラの表情には先程の笑みや余裕は微塵も無く。大粒の──透き通るような大粒の涙が溢れ出していた。燃やされ、吹き飛ばされながら、空に涙の虹を描きながらマーラは泣き叫ぶ。哀しみと悔しさに、子供のように。

 

【なんで──!?なんで、あんな宇宙のゴミみたいな人達に負けるんですか私!?楽園の最大最強のボスになる筈だったのに!ちょっと自慢して、ちょっと弱気になって、ちょっと逃げ腰になって、ちょっと間違えただけなのに!あぁぁ、ひぃいぃぃ・・・!!】

 

あまりの苦痛、あまりの激痛。形のあるものが刻み込まれる熱量と熱さに、マーラは歯を食い縛る。其処にはもう──堕落を良しとする魔王の威厳は粉々に砕け散り、存在すらしていなかった。

 

【いたい、いたいぃい・・・!これだから、これだから体があるって嫌いです!だって、いつも被害者になる!地上に愛が少ないのは私のせいだって──】

 

『・・・・・・』

 

愛の女神(おまえ)が、愛の魔王(おまえ)が悪いって決めつけられる!なんでですかカーマ!あなただって私なのに!あなただって、私と同じ被害者なのに!なんでそんな加害者と一緒にいられるんですか!なんで、愛の矢を放てるんですか!あぁもうぐしゃぐしゃです、意味がわからなくて痛くて、ぐしゃぐしゃです・・・!】

 

『・・・そうですね。私とあなたは表裏一体。私を焼いたシヴァも、パールヴァティーも大嫌いです。知ったような口を聞いて私を詰る頭の湯だった人間は大嫌いです。一万三千人を除いて』

 

カーマは想う。もっと自分が愛を地球に満たせていたら、この世全てを背負わされた少女なんて産まれなかっただろうと。初めから失敗作の烙印を押された哀しい命は産まれなかっただろうと。愛の神としての不甲斐なさを、ずっとずっと悔やんでいる。

 

【わかってるくせに!愛を与える神や魔王には愛なんて与えられないって!だから愛するしかないんです!そうやって被害者気分を晴らすしか無いんです、マウントを取るしかないんです!あなただって、あなただって同じな癖に──!!】

 

マーラの言うことは正しい。誰にも愛されない魔王に女神。愛を求められるのは、いつだって誰かの為。だったら愛してやると開き直るしかない、魔王と女神の運命。

 

──でも。

 

『でも──私は『前に進めた』んです。私は愛されなくても、わざわざ口にしなくても。誰かが誰かを尊び、重んじる。そんな愛が、女神の手ではなく自然に産まれていたんです。なら・・・もう、いいかなって』

 

もう、女神が愛を渡さなくても。女神が愛さなくても。心を持った誰かが誰かを愛し、愛を育み、やがてそれが世界を救った。──カーマは、その事実を以て前に進んだ。辿り着いたのだ。真の答えに。神の在り方に。

 

『もう、私が愛さなくても大丈夫だなって。私はもう、いなくても大丈夫なんだって。地球の人達は、自分で愛を産み出せる。そして私は未来の果てでその愛を見ることが出来た。だから──もういいんです。シヴァに殺された事も、パールヴァティーに踏み台にされた事も、神々に弄ばれた事も、それが全部──』

 

そう。未来で出逢えたあの人たちに。ようやく、生きていて良かったと言ってくれたあの女の子に。ようやく巡り会えた男の子に出逢えたのなら。

 

リッカさんとグドーシさん(ほんとうのあい)に巡り会えたなら・・・全部、今の私に繋がっているのなら。これからも、見守っていけるなら。素直な、素直な気持ちで言えるんです。『私が女神(わたし)で、良かったな』って──』

 

その、笑顔が。その、誰よりも美しく華やかに笑うカーマの笑顔が。

 

──真の意味で、マーラの全てを打ち砕いた。

 

【あぁ、あぁあ、いや、こんな、みっともない・・・!誰よりも強くなったのに、誰よりも惨めだなんて!片割れの存在にすら、置いていかれるなんて・・・!!】 

 

『そういう事です。反省してくださいね。どうせなら──御釈迦様の掌で』

 

【お願いです、お願いですからもっと──!不出来で、大嫌いな人間達を──上から目線で、踏みにじるように──!!】

 

断末魔と共に。痛さと熱量が限界を突破したマーラはついに泣き叫びの表情が頂点に達する。小さな子供、或いはもっと──生まれたての赤ん坊のように。恥もなく、外観もなく。大口を開け、顔を真っ赤に、滝のように涙を流し。その涙で虹を作りながら遥か宇宙にまで届くように──

 

無限無尽(もっともっと)愛してあげたかったのにぃ!!こんなのってないですううぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!】

 

閃光、そして大爆発。煌めく粒子。飛び散る涙。尊厳破壊のなんたるか。愉悦にして優雅とはなんたるかを存分に示しながらマーラは爆発四散する。虹色の弓矢の軌跡が、遥か天空に伸びて蒼き空を彩り──

 

『・・・戻りましょうか。私は二人のところに戻ります。疲れました』

 

「ふふっ、素敵でしたよカーマ。まさに、最高最善の愛の女神でした!あと、その節は本当に本当に・・・」

 

『じゃあ、マーラは最低最悪の・・・いいですから。どうでも。・・・はぁ、じゃあこれから三人でディケイドと劇場版仮面ライダー剣を見るんですから──』

 

──魔王の涙が残した、虹が煌めいていた。

 




・・・愛する事は、確かに気持ちのよいこと。特に自分が庇護すべき自分より明確に弱い存在。子供のような者が相手なら尚更です。

自分が求められているような気がして。必要とされているような気がして。

だからそれを止めるのは怖いことなのです。

その、永遠に誰かを愛したいという欲望、執着。それを潔く捨て去ることこそが。子供に対してわたしたちがいつかやらねばならない愛。

──子離れ、というものなのかもしれませんねぇ・・・

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