ゴルドルフ「ぬぉおぉおぉお!?なんだねこのハムスターマシンは!?」
ダ・ヴィンチちゃん「ほらほら、暴飲暴食を続けていた君の健康診断結果はオールD-だったんだ。ここで頑張らないと本当に死んじゃうぞ~」
「くそぉおぉお!これだからレイシフトはろくなものじゃないと言ったんだー!!」
ムニエル「・・・なぁ、藤丸。提案なんだが、これからも、向こうのカルデアにもっと助けてもらうべきじゃないか?」
藤丸「ムニエルさん?」
ムニエル「正直、あっちのカルデアの戦力は尋常じゃない。これからのロストベルトの時も助けてもらえたなら、ずっと楽になるんじゃないか?少なくとも、気は楽になるはずだぞ。君や、マシュの・・・」
ホームズ「ふむ、それは確かに可能性や事実としては正しいだろう。しかしムニエル君。それは彼等と肩を並べ、彼等の引き立て役にならず同等の存在足り得る何かがある場合のケースだ。彼等がこちらに力を貸すメリット、我々のアイデンティティーの希薄というデメリットの話が浮上する」
ダ・ヴィンチちゃん「確かに彼等は圧倒的で、あまりにもまぶしい。でも、なんでもかんでも彼等が解決できちゃうならば私達のいる意味はどうなるのかな?」
ムニエル「それは・・・」
藤丸「楽園の皆にだって、楽園だけの旅路がある。俺達の重荷を、勝手に押し付ける訳にはいかない。・・・リッカちゃんは、ようやく笑えるようになったんだ。そんな笑顔を曇らせるのは、絶対に嫌だ」
マシュ「世界を救う戦いの時はいい、でも、世界を滅ぼす戦いは誰かに押し付けたい・・・。それは身勝手な考えです。苦悩もある、絶望もある旅路だけれど・・・それでも、私達が主役の旅路です」
藤丸「俺達の旅路を、誰かに押し付けても誰かに明け渡してもいけない。此処まで歩んできたのは──俺達なんだ。他の誰でもない」
マシュ「まだ私達は歩けます。歩いていけます。──リッカさんは、私達にとびきりの希望をくれました。今なら、前よりずっとはっきりと道が見えます」
藤丸「可哀想だなんて、余計な御世話だ。俺達は、自分の意思でこの道を進んでいるんだから。──またあの人達に会うときに、胸を張って自慢できるような俺達を見せたいじゃないですか」
ムニエル「・・・。・・・強くなったな、本当に」
シオン「えぇ、まだロスタイムが残ってます!諦めるには早いですよ!」
藤丸(世界を滅ぼす戦い。辛いけど・・・それは君だって同じだったもんね、リッカちゃん。君が笑顔でいてくれて、本当に良かった)
マシュ(約束、本当にありがとうございました。とびきりの私達を御見せできるように・・・私達は進んでいきますから!)
「うおぉお私にも何か言わせてくれないかねぇ!?」
ダ・ヴィンチちゃん「あははは!さぁ、少年少女に負けていられないぞぅゴルドルフくん!」
「ひぇえ!もうレイシフトなんて絶対やらないからなぁ──!!」
『もし。マーラ殿、聞こえまするか?今一度、どうか拙者の言葉に耳を傾けていただけたなら。マーラ殿、マーラ殿・・・』
燃え尽き、消え去った筈の魔王マーラ。己の敗北に目を閉じていた筈の魔王が、語りかけられる声な目を覚ます。
【ん、ぅ・・・、・・・っ、ここは・・・?】
目覚めた場所は、マーラの全く預かり知らぬ場所・・・しかしどこか知っているかのような雰囲気の場所。空には星が浮かび、遥か彼方には水平線より昇る太陽。後ろを振り返れば、曼荼羅を背負い後光を照らす巨大な人──
【・・・!掌の、上・・・!?】
正真正銘、マーラは青ざめと共に状況を理解した。包み込むように暖かく柔らかな床・・・そう思っていた場所こそは巨大な人の掌。此処に至り理解できぬ程愚かに非ず。
『名答にござる。ここは仏陀・・・如来の掌の上。如来が見据える涅槃にてござるよ。今はまだ拙者しか自由に来れないでござるが』
そして、いつのまにやら存在していた人形と蔑み続けた青眼黒髪の美男子。暖かい笑みを浮かべながら、マーラに手を差し伸べるもの。・・・マーラは、全てを理解した。彼の言葉に、何一つ嘘が無かったことを。
【・・・本当に、釈迦・・・救世主に選ばれた存在だったんですね。世界の焼却にも現れなかった彼がまさか、個人に手を貸すなんて有り得ないと決めつけていました】
『まぁ確かに。仏の目から見れば人の滅びも世界のうねり。悟りに至れば慌てることは無いのでしょう。どうせ救われるし的な余裕で』
【生きている人間は瞬間に固執しますからね。生命の執着ある限り人は悟れない。・・・ま、現代の聖人が入滅したところで仏の道は遠すぎるんですけど。・・・──あの時ですか】
自分が掬われたとするなら、あの時。マーラに叩き付けられた如来掌が炸裂した時しかないだろうと自己分析を行う。法師が全身全霊を懸けて行うそれとほぼ同等のウルトラ手押し。あの時、魂に糸を垂らされていたのだ。
【どうしちゃったんです?魔王にして宿敵の私を救うとか。利敵行為になりません?救世主様、いけないんだぁ?】
マーラの挑戦的な言葉を、グドーシはさらりと流し笑う。問題はない。そもそも認識の問題だ。
『拙者に、倒すべき敵などいないでござるよ。姫様を傍らに懐く王とは違う意味の、無敵というヤツでござる。そして拙者、そなたに向けられた慈悲に報いたのみ』
【慈悲ぃ?】
『ほら、拙者に真っ先に声を掛けていただいたでしょう。煩悩無量誓願断。そなたの愛の炎で他者の愛を焼かんとした誘い。拙者に真っ先に声をかけてくださったお陰で、楽園の皆様を護れました』
【あぁ、・・・あぁ・・・あ~~~ー!】
よりによって【あなたの家を燃やします】なんて宣言を天敵に宣言した愚策を思い出し、ゴロゴロと掌を転げ回るマーラ。初手にて詰みなるやらかしを恥じるマーラを、グドーシは静かに微笑み見守り続ける。それがやがて、ピタリと止まり・・・
【殺してください】
『駄目にござる。マーラ殿には御願いがあるでござるよ。大恩あるそなたへの御願いが。まぁこれは拙者というより、御釈迦様の恩義ですかな』
【はぁ?私、コレの修行の邪魔をしただけですよ?】
『そうとも限らず。拙者の中の仏は仰有られております。そなたがこの世の欲を全て見せてくれたからこそ、自身は悟りに至れたのだと』
グドーシは語る。マーラの誘惑は文字通りこの世の全てであった。ありとあらゆる欲を仏陀にぶつけ、そしてそれを仏陀は真摯に考え抜いた。
命はいずれ死ぬ。財はいずれ尽きる。人はいずれ老いる。世はやがて消える。ならば人が生きる意味とは何か?全てが無くなる中、何故命は生まれるのか?それは──
『まぁ、拙者は唯一の心残りで如来への覚醒を抑えておりますゆえにその答えは解りませんが。まさしくそれはマーラ殿のお陰。仏に代わり、深く御礼を申し上げまする。ありがたや、マーラ殿』
【・・・そんな、純度百パーセントの『塩を贈ってくれてありがとう』なんて言う人、初めて見ましたよ。・・・はぁ、もう。調子狂います】
マーラは諦めたように息を吐く。誰よりも知っている。目の前の存在が、何をしても変わらぬ、揺らがぬ存在であることは。身をもって体感した事実に、抵抗は最早無駄だった。文字通り、釈迦の掌の上。斉天大聖ですら逃れられなかったそれに、最早何をする気にもならない。
【それで、私は何をすればいいんです?まさか楽園に来いとか言いませんよね?】
『別に全然構わないでござるよ。誠心誠意、拙者も御願いするでござる。真なる五体投地を御覧に入れましょう』
【冗談です、冗談!早く本題を教えてください!本当にあなた、人を否定しませんね!】
『ははは、それが取り柄にござる。──マーラ殿、愛を護ってはみませぬか』
はぁ?首を傾げるマーラに、グドーシは静かに説く。
『そなたが愛に倦むは至極当然。愛に焼かれたそなたがそうなるも道理。しかし事実として、世は愛に満ちているのです。そなたが倦む、愛が。人類悪と呼ばれしものも、その本質は愛なのですからな』
【・・・それで?】
『愛に焼かれたのなら、そなたの傷を癒すも恐らくは愛。拙者は、そなたに少しでも癒しと安らぎを得てほしい。嫌いな相手を嫌いなまま愛する。その様な心理は余りにも労しくあられますれば。どうせ愛するならば、心より』
だから、そのきっかけを得てほしいという。楽園に来るのが嫌であるならば、愛にて絶望を越えるカルデアにて。
『喜ばしき事に、そなたを労り祈る声もちらほら。その想いを拙者は持ってきたのです。マーラ殿、此処は善徳を積むと思い、あの懸命に挑む少年少女を助けてはくださりませぬか』
誠心誠意、カルデアへの助力をグドーシは誓願した。このまま負けて消え去り、何の救いももたらされぬ悪としての終わりを、グドーシはよしとはしなかった。相対したならば、何とかしてきっかけを作りたい。今の自分より良くなるような、ほんのちょっとのきっかけ。それが完全なる仏陀への覚醒を封じ抑え、サーヴァントとしてギリギリを留めるグドーシの我欲。『慈悲』であった。実際、『もうどうにでもなるでござる』と一言言えば彼は即座に救世主として降臨出来る。サーヴァントの枠組みを容易く越えられるのだ。グドーシである限り、彼はずっと誰かを見守る存在なのである。
【・・・勝者に頭を下げさせるとか、私も恥くらいは知っていますよ。・・・ふぅん。私にチャンスをくれる、或いは罰ゲームをしろ、という事ですか?ゴミと罵った相手に、吐き気を堪えて誠心誠意仕えろと?】
『そうなりますな。まぁ心証の悪さは大抵自業自得なのですが、恥ずかしいとあらば今からノウム・カルデアの皆様に拙者の五体倒置を・・・』
【いいです!いいですから五体倒置!みんな畏れ多くて死にますよ多分!・・・えぇ、解りました。私、敗者ですから。勝者の取り決めには従います】
はぁ、と溜め息をつき粛々と従うマーラ。正直なところ、それくらいの罰は覚悟していた。どこぞのラプチャーの快楽の糧になるよりは、万倍マシである。
【まぁ?私としては助けの来ない空間で男女が二人。敗者の私の身体を堪能させろだなんて言われるかと覚悟はしていたんですけどね?】
『抱く身体がないでござろ?』
【ぐぬっ・・・!突然のマジレス本当に嫌いです!そうなんですけど!はいはい私は焼かれた女!身体なき者ですよーだ!】
ぷんすこ怒るマーラ、ニコニコ笑うグドーシ。ここだけ見れば、穏やかな一時。
【──ですが、後悔しないでくださいね?私、招かれたのなら全力であの方達を誘惑します。やがて私の努力が実った暁には、あなたたちの楽園に、もう一度侵攻致します】
『ほう?』
【その時、あなたは魔王を手引きした楽園陥落の立役者として槍玉に挙げられるでしょう。──再び会ったその時に、あなたがどんな顔をするか・・・楽しみですねぇ?うふふふっ・・・】
それでも、魔王としてのスタンスを隠さずに笑うマーラ。ノウム・カルデアを内から崩すのが狙いだと告げる彼女を、グドーシは静かに受け止める。
『こちらも楽しみにござるよ。マーラ殿が如何に変わり、如何に進化するのやら。拙者、柄にもなくドキドキしながら待っているでござる。御安心召されよ。何度でも、何度でも。そなたの襲撃を笑顔で退けてみせますれば。我等楽園、心よりそなたの逆襲を御待ちしておりまする』
【・・・あぁあ、もう!どうやったらあなたのその余裕綽々な態度を崩せるんですかっ!?誰か教えて欲しいんですけどー!!】
ああ言えばこう言う。暖簾に腕押し糠に釘。煽り耐性完備の救世主の手応えの無さに、マーラは悔しげに涅槃にて叫ぶのでありましたとさ──。
グドーシ『おっと、善は急げ。それでは縁を辿り、あちらに贈りまする。アルターエゴとして
サーヴァント登録・・・』
マーラ【・・・うぇえ・・・生暖かくて、生臭くて、塩辛い・・・なんですかこの感覚、こんな感覚で救世主やってるんですか・・・?気狂いですか?】
グドーシ『正気あらば、悟りなどには至れんでござる。どーも拙者、怒りも恨みもアニメ美麗作画の前に涙と一緒に流れ落ちたようで。うぅむ、チョロすぎますかな?』
マーラ【そうですね。誰も憎まず、怨まない、怒らない。それ、人間じゃまず無理なんじゃないでしょうか】
グドーシ『成る程ぉ。なら拙者は感謝しなくては。人の身ならざる拙者を選んだくださった仏様に、そして拙者を造ってくださった魔術師殿の皆様に。・・・せめて体臭は消してほしかったでござるが』
マーラ【はぁ・・・もう。・・・じゃあ、御別れですね。救世主さん?】
グドーシ『そうなりますな。では、お元気で。待っていますぞ』
マーラ【私はあんまりですが。・・・最後に一つ教えてあげます】
グドーシ『?』
【何故、あなたが救世主の資格を手に入れたのか。あんまりピンと来ていないようなので。・・・人は口を揃えて全を救うために奔走する。だから、全を構成するものが何か本当の意味でわからない】
グドーシ『・・・』
【あなたは、あのマスターという『一』を全てを懸けて救った。釈迦を救うため、火に飛び込んだうさぎのように。その行いと、あなたが救った女の子はやがて、『全』を救う輝きを持っていた。・・・要するに】
『・・・──何の幸運か。全を救うリッカ殿という一を、拙者が全てを懸けて後押ししたが故・・・』
【はい。あなたと、彼女でなくてはダメだったんです。・・・割と、カーマは見る目があったんですね。流石は愛の神。何十億と流れる歴史から、溢れる人から。瞬き以下の一瞬に出逢ったあなたたちを見付けたんですから──】
最後の答えを告げ、マーラは消えていく。きっと、招かれるのだろう。マーラ、或いはカーマとして。そしていつか、楽園の前に現れるのだろう。
『・・・拙者も、そう思うでござるよ。カーマ殿も、リッカ殿も。──本当に救われたのは、他ならぬ拙者にござった・・・』
善き、誠に善き事を聞いた。魔王より告げられた答えを懐きながら、グドーシは静かに涅槃を後にする。
救世主と魔王。いつかまた、道が交わると信じて──。
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