人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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──成る程、これはつまり・・・サーヴァントユニヴァースでは、常識に囚われてはいけないということですね!

フォウ(キミにこんなふざけた景色は見せたくなかった・・・!キミには、蒼き空を見てほしかった・・・!)

ギル《嘆いていては始まらぬぞ珍獣!耳を澄ませよ、荒事の気配は既に生まれている!》

チンピラめいた声「オラオラァ、テメェオラァ!いい加減にオラァ!」

「オラァア!!」

イアソン「酔っぱらいのケンタウロスみたいな下劣な声を上げやがって!リリィ!イシュタル!始末しに行け!俺達は別行動だ!」

ギル「ほう?よい慧眼ではないか。下敷きの醜態はやはり目の前に理想をぶら下げられたが故か」

イアソン「オケアノスの事は忘れろ、死にたくなる!」

ナイア「末端がいる以上、この星を根城にしている組織がある可能性が高い。イアソンさんはそう仰いなさるのですね?」

イアソン「少し考えれば解ることだ。ゴキブリはさっさと巣を潰すに限る!オレの活躍にアルゴノーツの面子がかかっているからな!少しはやる気を出してやる!行け緑の鎖にプラチナ王!オレは駐輪の場所を探す!」

エルキドゥ「あははっ、了解した。XX、手配書をおくれ。賞金首がいたら銀河警察に突き出してやろう。エレシュキガル、行くよ?」

エレシュキガル「任せるのだわぁあぁあぁあぁ!??(一緒に飛来)」

ヒロインXX「ギルからのボーナスゲットのチャンスですね!」

ヒロインX「いいですか、情報を吐かせてからですよ殺すのは!」

リリィ「は、はい!殺しはしませんが・・・!」

イシュタル「情報を聞くのは酒場が相場。善を執行するわ・・・!」

チンピラ基地

チンピラセイバー「あぁん!?なんだぁテメェはぁ!?」

エルキドゥ「さぁ──誰だと思う?」

チンピラセイバー「誰の許しを得て此処に来てんだぁ?着陸するなら出すもん出せや!」

ギル「成る程、出すものときたか。通行料というなら仕方あるまい」

──選別完了。えーと、入港の相場は・・・このくらいですね!

ギル「うむ、存分に受け取るがいい。手付金宝剣宝槍50門解放、無制限の取り放題よ。──幸福のあまり死んでくれるなよ?」

チンピラセイバー「は、はっ・・・?」

エルキドゥ「わぁい。動く財布だぁ──!」

・・・エレシュキガルの証言によると。港の役割を主張していた基地は、ギル達が脚を運んでから一分も保たなかったという──






止めろ!俺のカレーはうまいぞ!

「ヒャッハー!このサーヴァントユニヴァースでカレーショップなんて出してるヤツがいるなんてよぉ!」

 

「魂の物質化が完了したこのサーヴァントユニヴァースで食事の必要なんざねぇ!こんなカレーなんぞ、食べてぇヤツは誰もいやしねぇー!下らねぇカレーショップなんてぶっ壊して、セイバーバッヂ交換の足しにしてやるぜぇー!」

 

「や、止めてくれー!戦う理由はない!食べる必要が無いといって食事の充実感は変わらないんだ!命をいただくという事を思い出してくれ!俺はその心を伝えに宇宙からやってきたんだー!」

 

サーヴァントユニヴァース・外れの無法宙域にて暴虐が巻き起こる。開店間近のハジュン・カレーショップなる店には招かれざる客。エプロンを巻いた浅黒い肌の青年が、店を荒らすチンピラを前にあたふたと必死に説得を試みている。彼は波旬。別の宇宙・・・もっと言えばあらゆる宇宙を渡り歩く神格の魂を宿した少年。明朗快活でコミュ力に長け、他人を思いやり友達の数は無量大数。カレー料理が得意であり、カレーを食べ幸せそうにしている人々を見ることが幸せであると信じている、銀河カレー修行中の少年である。

 

「セイバーというだけで全てが許される世界、滅尽滅相の概念がこれ程恐ろしいものだとは・・・!映画の世界で本当に良かった!」

 

彼はとある世界の映画で【この世には自分一人あればいい、俺は俺で満ちているから俺以外のものはいらない】という誰もやりたがらない邪神を熱演した経験がある。映画はお陰で大反響だが、あまりの下衆っぷりに宇宙の全てからやっかみと非難を受けてしまい、元いた宇宙から去った経験がある。役と演者を混同するのはよくある事だ、仕方無いと彼は一人カレー修行の為に宇宙を放浪している。そしてサーヴァントユニヴァースに流れ着き、食事が不要となったサーヴァントユニヴァースの者達に、満腹の至福を教えてあげたいと店を構えた矢先に、セイバーのみが存在を赦された宇宙へと姿を変えた。そもそもサーヴァントですらない彼は、チンピラセイバー達に成すがままなのである。彼は全人類と友達になるのが目標なのだ。

 

「最強のセイバーになれば富も名声も思うがままだぜェ!俺らのボスが次のシーズンの覇者になるのよ!」

 

「ボス!?やはりお前達を纏めるボスが存在していたのだな!」

 

「その通り!ヒャッハー!こんなカレー、腹の足しにもなりゃしねぇぜー!俺たちはもう飯を食う必要も無いんだぜぇ!」

 

椅子や机を蹴り飛ばし、破壊し、暴虐の限りを尽くすチンピラ達。カレー神ハジュンは気付く。やはりこのチンピラ達には、統括する存在がいると。ならばきっと──

 

「ボスに、ボスに逢わせてくれ!一口、一口でいい!きっと心で理解してもらえる!争いなど必要ない、カレーを、魂に響き渡る食べ物はきっと・・・!」

 

「うるせぇ!ボスは甘いスイートパフェを可愛い子とたべるのが夢なんだよぉ!」

 

「こんな色の食べ物なんざ、運んだら殺されちまうぜ!毎朝の快便に見る色の食べ物なんざよぉ!」

 

チンピラ二人に突き飛ばされてしまうハジュン。彼は無念に歯を食い縛る。魂は高次元に達したとしても、これ程までに人の心は荒れ果ててしまうのか。生きているだけでは、人は満足できないというのか・・・

 

「黄金の宇宙・・・人が平穏に生きる希望は無いのか・・・?黄金とは、やはり修羅の天でしか無いというのか・・・?」

 

人の心を、本当の意味で動かすのは不可能なのだろうか。カレーで、真心で・・・宇宙を平和にする手助けする事は不可能なのだろうか?その領域に解脱することは、出来ないと言うのだろうか?そんな残酷な黄金の宇宙の前に膝を屈する中、チンピラ達の魔の手が店主へと伸びる。

 

「そぉらぁ・・・こいつで止めだァ!」

 

「お前をカレーに仕立ててやらぁ!!」

 

「ッ──無念・・・!!」

 

志半ばで果てる無念に、目をきつく閉じるハジュン。残虐なるセイバーダガーが、少年を貫き──

 

「ぎゃあっ!」

「うぎゃぁ!?」

 

否。暴虐たるセイバーの一撃が少年を貫く前に、響いたのは悪逆なる者達の絶叫。鮮血が飛び、もんどり打って倒れ転げ回る。

 

「!?」

 

目を開けたハジュンが見たもの。それは──白百合の様に輝かしき姫騎士。そして、黒き漆黒の剣士。

 

「セイバーにあるまじき暴虐無慈悲!これ以上の狼藉は決して見過ごせません!その人を離しなさい!」

 

「なんだテメェらはぁ!?」

 

「さぁ誰でしょう。あなた達の様な外道に、誇らしき女神の名を教える必要はありません」

 

素早く臨戦態勢を取り、チンピラ二人に向き直るリリィ、そしてイシュタル。その目には、悪を許せぬ怒りを燃やしている事は明らかだ。

 

「小娘二人がふざけやがって・・・やっちまえぇ!」

 

「気を付けろお前達!曲がりなりにもコイツらはセイバーだ──!」

 

ハジュンの心配は、一瞬にして杞憂となる。サーヴァントユニヴァースに殴り込みをかけた地球代表の組織達の華々しきデビュー戦は、チンピラ二人に妨害が敵うものでは無かったのだ。

 

「もっと速く!もっと強く!私達は決して、非道を見過ごしません!」

 

「う、美しい──ぐぎゃあぁあ!?」

 

「スペース新陰流・・・一刀両断!!」

 

「ぐわぁあぁ斬撃が何度も襲ってくるぅ!?何処が一刀両断だ詐欺じゃねぇかぁ!?」

 

「両断すれば同じよ。スペース新陰流・・・それは一刀両断(一刀とは言ってない)・・・」

 

華やかに跳び、跳ね、そして懸命。その一生懸命さが目を惹き付けるリリィの剣技。目にも止まらぬ居合い・・・一刀両断といいながらも一瞬で何度も切り刻むスペース新陰流。二人の白と黒の剣士による偽りのセイバーの討伐。

 

『ハジュン君!君はハジュン君だろう!楽園にカレーを振る舞ってくれた、神座シリーズの第六天波旬役のハジュン君だろう!?』

 

「お前はロマニ・アーキマン!?そうか、いよいよ・・・いよいよ楽園はサーヴァントユニヴァースに来たと言うことか、そうか・・・!」

 

『君のカレーは楽園でも随一!未だに再現すら叶わない至高のものだ!僕らが助太刀するよ!いや、もうしているけれどね!』

 

「さぁ!参りましたか!観念なさい!これ以上の悪事は止め、壊してしまった店の補修を一緒に行いましょう!」

 

「あなた達に拒否権は無いわ。敗者の責務と償いとして、全ての情報を吐き出し私達の役に立ってもらいます。さぁ、セイバーバッヂを出しなさい・・・!」

 

「「はい!すみませんでしたーっ!!」」

 

「・・・助かる!ありがとう!店の片付けが終わったら食べていってくれ。歓待の、俺のカレーを!」

 

「おや、終わったのかい?乗り遅れてしまったね。てっきり二人くらいなら遠慮なく脅迫と恐喝が出来たのに。運が良かったね、君達。優しく止めてもらえて良かった良かった」

 

「げっ!!!ぐぐ、グリーンモンスター・エルキドゥ!?ひ、ひぇえぇぇ・・・!なんで、なんで此処にいるんだ!?」

 

「あぁ、なんて酷い・・・!厨房に、皆の憩いの場がめちゃくちゃなのだわ!あなた達もへこんでないで手伝って!建て直さなくちゃ・・・!」

 

「あっ、あなたは赤い天使エレシュキガル・・・!?どうして此処に・・・!?」

 

「さぁ、僕達の事はどうでもいい。君達にはたっぷり役に立って貰うんだ。心から──働いておくれ?」

 

「「は、はいいっ!?」」

 

「そうか──いよいよ、お前達は地球から飛び出したのか・・・!」

 

感銘を受けながら、ハジュンは一同と共に清掃を行う。──此処に、彼女達の世直しの旅が始まる・・・!




数時間後

宇宙の陰キャ「あー・・・どこもかしこもセイバーセイバーって・・・嫌味かよ。どうせ俺は不帯剣の誓いを立てた半端もんですよ~。セイバーなんてとんでもない半端もんですよ~だ」

(こういう時はあれだな。偶然開店前に立ち寄れたカレー屋さんだな。開店前だったのにカレー振る舞ってくれたし・・・あれマジで宇宙一の旨さじゃねぇかな。まだ俺しか知らない穴場だし・・・俺みたいな日陰者には素敵な穴場ですよっと)

「シーズンが終わるまで、あそこでコソコソしてよう・・・ん?なんだ、この宇宙船の群れ・・・」

(これ、グルメリポートの取材か何かか?・・・そうだよな・・・うまいもんな・・・取材とか来るよな・・・そりゃそうだ・・・)

「・・・い、いや。あの店主を信じろ。陰キャの俺にも優しくしてくれたんだ。今更有名になったって俺への態度が変わったりしない、しない・・・筈だよな・・・」

(・・・どっかにセイバーバッヂ置いてないかな・・・)


第六天波旬カレー屋さん

「すぃませーん。やってま」


ギル「此度の初戦、基地を壊滅させ無事に治安を確保した!頭領はどこぞへ赴いていたがすぐに来るであろう!今は拠点の確保をこそ祝うときだ!ジョッキを持て!ゴージャスチーム、乾杯!!」

「「「「「「かんぱーい!!!」」」」」」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

ハジュン「おや、リカルド?来てくれたのか!いらっしゃい!」

「間違えました」

「何ィ!?」

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