人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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宇宙船駐屯所

ロマン「君は行かないのかい、イアソン?」

イアソン「バカ言え。船ってのは駐留している時が一番危険なんだ。非戦闘員を護れる程度の戦力と見張りはいて当たり前だろうが。俺はカレーをデリバリーしてもらうからいいんだ!」

ロマン「本当、オケアノスの君は舞い上がってたんだね・・・」

ダ・ヴィンチちゃん「解析できたよ、ロマニ。このバッチはつけるだけで霊基を変質させ、ランサー以外の霊基をセイバーにさせるんだ。信じられるかい?これをつけるだけでだぜ?」

ロマン「尋常じゃない技術レベルだなぁ・・・さっきからアルトリウムを生成しようとしてるけど、上手くいかないし。サーヴァントユニヴァースを渡り歩くには、やっぱり惑星にいくらか留まる必要があるのかもね」

イアソン「それが普通の船旅だ。楽しまなきゃやってられないぞ。此処にいる奴等は絶対に死んではいけない組だ。くれぐれも弁えて行動しろよ!」

ロマン「勿論さ。結婚したばかりだからね!」

イアソン「いややっぱ半殺しくらいにはなれ」

ロマン「なんでだい!?」

~カレーショップハジュン

「どうだ?俺のカレーはうまいか?」

マンドリカルド「・・・・・・」

ギル「これは・・・!このカレー、我の口の運んだ中で最良のものよ!辛さは程好く、汗が出るにも関わらずスプーンが止まらぬ!」

──具の柔らかさも隠し味のハーブやチョコレートも、まろやかさも辛味も!まさに、まさに神の領域!こんなカレー、食べたことがありません!

フォウ(カレーうめぇ!カレーうめぇ!)

エルキドゥ「ハムッ、ハムッ、ハフハフ!ハフっ!お代わり!」

エレシュキガル「エルキドゥ!?十杯目なのだわ・・・!?」

ヒロインXX「知っていましたか?ナイア。牛乳を入れると美味しくなるんですよ。試してみます?」
ナイア「是非とも!これはもう、カレーなる関係なのでは・・・?」

ヒロインX「お残しは許しません!はいリリィ!背筋伸ばして御行儀よく!」

リリィ「はひっ!師匠!」

マーリン「厨房に秘訣があるのかな?よし、忍び込んでみよう!」

イシュタル「私の前で悪戯の算段とはよい度胸です。胸からアジの開きになりますか?」

マーリン「あははははは、冗談が通じない良家の令嬢って素敵だね!」

マンドリカルド「・・・これから、あの方々に説明会を開くっす」

ハジュン「それは素晴らしいじゃないか!」

マンドリカルド「・・・味がしないっす・・・一辛とはいえ・・・おかしいっすね・・・」

(不敬働いた時のために遺書かいとこう・・・)


陰キャ、楽園仮加入(デビュー)

「じゃああの、はい。自虐のライダー、スペースリカルドことマンドリカルドが知っている限りの事を御伝えするっす。わかりづらかったら、すんません」

 

宇宙を制覇すると意気込む楽園組が出逢ったサーヴァントユニヴァースの現地住民に相当する存在、自虐のライダーと名乗るマンドリカルドなる英雄はおずおずと視線を落としながら語り出す。一応は彼もやり手、シャルルマーニュ伝説の好敵手側の存在であるのだが・・・

 

「皆!マンドリカルドが話すのだわ、静かにしてあげましょう!キチンと聞いてあげるのだわ!」

 

「「「はーい!」」」

 

(やべぇ・・・神代サーヴァントの皆さんに物教えるとか何様だよ俺・・・あの緑の方間違いなくやべーヤツだよ・・・つまんない話だなってなったら殺されるやつだ俺・・・)

 

「よし語れ!簡潔、あるいは愉快かつ臨場感溢れる言の葉を掲げよ!案ずるな、食事代は我が持つ!」

 

「はひっ、あ、あざっす!(英雄王、英雄王だよなこの人・・・!別世界の英雄王に飯奢ってもらっちまったよ!もうめり込むくらいに頭下げたいんですけど・・・!)」

 

ぶっちゃけ何が不敬に当たるかわからないほどのビッグネームに囲まれ、機械的な報告じゃないと平静を保てない彼。バビロニア陽キャ軍団に少しでも有益な情報をもたらすため、カラカラになった口で懸命に言葉を紡ぐ。

 

「このサーヴァントユニヴァースってー場所は、其処にいるサーヴァント達の意向や意思でシーズンが変わるんす。サバゲーならサバゲーシーズン、ゾンビならゾンビシーズン。それでヴィラン連合が銀河警察とあれやこれややって死んだり殺されたり捕まったり脱獄したり・・・早い話ギャグ時空っす」

 

「知っています!カニファンタイムとも言いますね!」

 

「基本皆楽しくやってるんですが、強力なサーヴァントがたまにちょくちょくシーズンの方向性を決めたりするんですよ。このユニヴァースには未発見のエネルギーやら粒子やら、アルトリウムがあるわけで。それを掌握してシーズンの覇権を握ったサーヴァントがボスになりシーズンを作る。・・・今回作られたシーズンが、セイバーの選定。ギルガメスのギルガメスによるギルガメスの妃選定戦争。『セイバーウォーズ』っす」

 

ぬあぁあぁ!!と鳥肌を発生させヒロインXがカレーショップの外へと出ていった。宇宙規模の脈なし彼氏気取りのアプローチが嫌悪感キャパオーバーしたようである。放たれた黄金の光が雲海を引き裂いた。余りの規模にドン引きしながらマンドリカルドが説明を告げる。

 

「や、だから、あの、えっとですね・・・あの・・・」

 

「落ち着いて?お水は此処にあるのだわ」

 

「あざっす・・・(親しみやすいなこの人・・・)」

 

(この人、間違いなく冥界気質(根暗の意)なのだわ・・・御近づきになれたらいいけれど・・・)

 

「・・・で。ガチャ爆死したギルガメスはそもそも外れを無くそうと全宇宙のエネルギー、アルトリウムといった構成要素を掌握。自分以外のヴィラン連合、銀河警察を残らず叩き潰したっす。オレがルールだ、オレこそが主役だ。貴様らはいらん、不要だ消えよと。・・・お陰で銀河の治安は、各惑星と銀河の一人一人の裁量に。ギルガメスがばらまいた簡易霊基変換器『セイバーバッチ』により全宇宙民をセイバーにするシーズンが始まっちまった訳っすね」

 

「あははははは。ギルはそういう事やるよね」

 

──銀河をまるまる黄金に変えてしまう。これが人類最古の英雄王の全霊!凄まじいです!ガチャの腹いせという点に目を瞑れば!

 

「(すげえなこの人達・・・やっぱ陽キャ英霊は動じねぇんだ・・・)・・・んで、セイバーが増えまくった結果、ランサーはセイバーの餌食にされ数が激減、セイバーを狩るアーチャーはギルガメスの粛清でほぼ皆殺し。セイバーの殺し合いを、他ならぬ宇宙の覇者が容認しちまったんで・・・はい、大混乱っす」

 

「今の銀河情勢はどうなっているのかしら」

 

「まぁその、シーズンは宇宙の理みたいなもんなんで・・・サーヴァント達はなんだかんだでセイバー最強を決める戦いに勤しんでます。さっきのチンピラや海賊、ギルドらが幅を利かせる世紀末な下流ブロンズセイバー宙域。有名どころが真っ正面から争う群雄割拠のシルバーセイバー宙域。惑星を統治し、惑星全てのセイバーを自分のやり方で取り込んだ連中のいるゴールドセイバー宙域。さまざまな理由でセイバーにならなかったサーヴァント、或いはランサーが各宙域でちらほら反抗はしてますが・・・駄目っすね。ランサーはセイバーに弱いものって法則つけられて『セイバーじゃないヤツは人に非ず』みたいな扱いで狩られてます。俺もちらほらレジスタンスに助太刀はしましたが・・・」

 

状況は芳しく無く。逆転の目すら与えられないという。『最強のセイバー』でなくばギルガメスに挑む資格すら与えられない。そもそもの奇跡すらも摘み取られているのだ。番狂わせは起こさせないつもりだろう。

 

「質問、いいかい?リサイクルショップ巡りはできるかな?」

 

「り、リサイクル?・・・あ、あー、そっすね。各宙域に、ちらほらショップはあったっす。でも、当たり前っすけど上流宙域にしか品のいいものは置いてないですし、そもそもセイバー強化に使う物資やパーツは宇宙レベルで争奪戦何で品切じゃないでしょうかね」

 

「それはいいよ、殺して奪い取るから」

 

(こっわっ・・・!!)

 

「となると、僕達が進むべき道筋は見えたね。下流、中流、上流の宙域を制圧、奪還してセイバーバッチを集める。そして僕達の誰かを『最強のセイバー』として覚醒させギルガメスを倒し、このシーズンを終わらせる」

 

「ルールが敷かれているならば、ルールの上で叩き潰してこそ格の違いを示せると言うものよ。我等にはあつらえ向きに!いるではないかセイバーが!」

 

「あぁ!此処にまだ未熟で!半人前で!大いに夢いっぱいなセイバーがいるじゃないか!そう君だよリリィ!」

 

「ま、マーリン!歯に衣を着せてもらえないでしょうか!?」

 

そう、そのためのリリィ。未熟であれ、半人前であれ。彼女こそは生粋のセイバー。この宇宙で鍛え上げる事さえ出来れば発揮する筈だ。騎士王・・・ギルガメスを倒すべきコスモセイバーに。

 

──つまり!宇宙を旅しリリィちゃんを鍛えて勝ちまくり!バッチを集めて次の星へを繰り返すのですね!昨日の剣は明日の聖剣・・・!今、リリィちゃんのセイバー力が試されます!

 

(エアの・・・エアのテンションが高い・・・!)

 

「セイバーバッチで付け焼き刃的に強くなったセイバーと違い、こちらには生粋のセイバーがいる。それも原始宇宙に極めて近い時空からやってきた善のセイバー・・・。私達こそ、このシーズンを終わらせる存在ということね」

 

「ならば話は早かろう!我等はこれより下流、中流、上流の宙域を順に制覇!リリィを強力なセイバーへと成長させギルガメスを討つ!我等の武勇と名を宇宙に轟かせる事こそが此度のミッション!心せよ!!我等の敵が星の全てであるならば!目に付く全ての星を砕くまで!!

 

「はい。銀河警察も無くなった今、外宇宙より闇の者共も来る可能性があります。セイバーや闇の暴虐に苦しむ人々を、暖かき光を私達が護りましょう!」

 

「銀河警察に恩義の気持ちは全くありません。滅ぼされてカワイソーとは全く思いません。しかしこのまま見過ごし知らんぷりは、私とナイアの休暇に後味の良くないものを残します!」

 

「わ、私の剣がお役に立つのなら喜んでお力になります!やりましょう皆さん!この宇宙で、私はその、最強の、最強の・・・」

 

「ほぉーら、リリィ?大きな声で言ってごらん?マーリンお兄さんに誓ってごらん?」

 

「さっ!最強のセイバーになります!そして、善の概念を取り戻しますっ!ですから皆さん!御力を貸してくださーいっ!」

 

マンドリカルドの情報を得て、方針を定める一同。紛れもなく銀河全てが敵であっても、微塵も負けると思わぬ痛快野郎Gチーム。

 

「・・・勝てる気でいるんすか・・・銀河全てを蹴散らしたギルガメスに・・・」

 

「何、世に絶対は無いものだぞリカルド。最強を名乗り、特殊な能力など必要無いと言う輩程ワンパンで死ぬのだ。あ、これ撮影体験談だぞ」

 

「そうなんすか。・・・自分の宇宙でもないのに、こんなに楽しそうに宇宙を救おうだなんて、その」

 

・・・真似できない。とても真似できない領域の眩しい陽キャっすね。リサイクルショップの宙域を考えたり、素振りを始めたりする一同を見て、マンドリカルドは心底そう感じるのだった──




マンドリカルド「じゃ、じゃあ俺はこれで・・・」

ハジュン「む?帰ってしまうのか?」

マンドリカルド「あ、いや、その・・・手助けはもちろんしたいですけど、なんというか・・・俺みたいな一般サーヴァントがいていい集まりじゃないっていうか・・・」

(見れば解る、此処にいるのは間違いなくスペシャルチームだって。世界を、銀河を取り戻すなんて朝飯前な筈だ。・・・俺はその、下流でチンピラしばくくらいしかやれないから・・・)

「カレー、マジ旨かったっす。その・・・お元気で」

(邪魔にならない内に、さっさと帰るが吉っすよ・・・)

ハジュン「・・・(閃いた)皆!頼みがある!このカレーショップの用心棒にして広告塔!マンドリカルドを連れていってはくれないか!」

マンドリカルド「は・・・ちょ、はぁ!?」

「彼はライダーだが、俺の見立てでは彼もまた『セイバー』のような活躍が出来る筈だ。間違いなく世界を救う力になる!どうか頼む!」

「て、店長・・・!何を言って、そんな、俺なんかが・・・」

ギル「たわけ!!」

「ッ!?」

「我以外の輩が我の赦しなく価値を決める事は許さん!貴様が役立つか、貴様が一流か無能かを決めるは貴様ではない、この我よ!!

マンドリカルド「えっ、は・・・えぇ・・・?」

ギル「故に貴様を裁定するため、我等が大艦隊に迎えるものとする!拒否は許さん!うだつが上がらぬというのなら、我がチャンスをくれてやる!貴様の求める儚剣に恥じぬ貴様になるよう奮起せよ!其処なリリィとイシュタルと共にな!」

マンドリカルド「な、なんでそれ知って・・・」

リリィ「マンドリカルドさん!一緒に頑張りましょう!」

イシュタル「使えるものは使うわ。共にいいねを貫きましょう」

マンドリカルド「・・・・・・俺でいいんすか?」

──貴方じゃなきゃ、きっとダメなのです!

「!・・・・・・・・・・・・・・・わかり、ましたっす。いまんとこ、木刀しか持ってないっすけど・・・よろし」

ギル「話は纏まったな?ではロマン達に打電せよ!まずは下流に向かうとな!!」

「「「「おーっ!!」」」」

マンドリカルド「もう出発っすか!?」

エルキドゥ「もっとウェイウェイしていこうじゃないか。ね?リカルドくん?」

マンドリカルド「・・・・・・あー。その・・・なんというか、いま・・・『貴方じゃなきゃダメ』って、言われた気がしたんで・・・」

エレシュキガル「(⌒‐⌒)」

「頑張るっす。・・・よろしく、お願いします。店長、襷とか鉢巻もらえます?」

ハジュン「あぁ、行ってこい!俺のカレーは、皆を待っているからな!」

「・・・広告塔として、頑張るっす」

マンドリカルドが仲間になった!

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