ギル「労働の後には宴と乾杯が相場が決まっている!長らくの労働、大儀であった!!食料と酒は我が振る舞う!存分に楽しむがいい!乾杯!!」
「「「「「かんぱーい!!!」」」」」
ロマン「いやぁ、寝てたら問題が解決だなんて凄いよねぇ。ブロンズ宙域はもうめぼしいセイバーはいないみたいだ。やっぱりシルバー辺りに集結しているみたいだね。ところでマーリン・・・」
妻「マーリン様!こちらのフルーツを♥️」
妻「マーリン様、こちらのピザはいかがでしょう♥️」
妻「マーリン様、ジョッキにビールを・・・♥️」
マーリン「いやぁ何か言ったかいアーキマン?いやはや、御婦人に大人気なグランドキャスターは辛いなぁ!嬉しいのだけれど!嬉しいのだけれどね!」
ロマン「・・・。まぁ、励ましが効を奏したんだと思っておくよ・・・」
ヒロインX「ウルク料理・・・行けますね!パクパク。古臭いと侮れません!」
ギル「ふはは、二重の意味で食事の際は口を閉じておくものだぞアルトリア」
エレシュキガル「うん。故郷の味・・・なのだわ・・・あれ?エルキドゥはどこかしら?」
マンドリカルド「イシュタルさんも姿がないっすね・・・どうしたんすかね」
イアソン「俺に充実を!充実を寄越せ!運転は気合いと気迫だからな!」
ダ・ヴィンチちゃん「え!?君たちメンテナンス出来るのかい!?」
夫達「「「「お任せください!!」」」」
フォウ(なぁに、心配はいらないさ。とりわけ、此処のイシュタルなら、ね──)
「どうやら、アフターケアも万全な様ね。人助けを主とする組織はそういう所を蔑ろにしがちだから・・・良かったわ」
夜明け、そして早朝。ブラック企業改革(物理)を済ませたイシュタル・・・或いはリンは、再会を果たした家族たちの歓声ともたらされた喜びのパーティーが行われる様子を、喧騒から離れた大樹の下にて見守っていた。助けたあとのアフターケアを、ゴージャスたるギルガメッシュが担当してくれたためのものだ。
今までピンハネされた分の労働賃金に加え、優秀な労働力を持つ個体の優秀さを評価した分のボーナス、精神的苦痛の慰謝料の肩代わり、コロンブスの溜め込んでいた財産の譲渡、分割。変換の際の記憶処理、そして『戸籍を死んだ事にして失わせ個人的にコキ使わせる』事を目的とした人物を変換させたままのアルトリウム、セイバーバッチを復元、元に戻し、労働者全員の解放、家の帰参。自分がやるべき事を、最大と最善の形で行ってくれたゴージャスには頭が下がる想いだった。そんな彼等は今、労働者の帰還の確認を兼ねた大パーティーの中心にいる。自分はそれを、そっと見守っているポジションだ。彼女は今、考え事をしていたのだ。
「スペース新陰流・・・どうやらヴィラン組織の一つだった様ね。そして、私はその組織の関係者・・・」
コロンブスが言っていた事。失われた記憶に関係する因果。それは意外にも、自身が悪の組織に荷担しているという割と衝撃的な関係性。もしかしたら、自分こそが悪の首領であり世界を荒らしていた存在であったのかもしれないという可能性を彼女は考えていた。
(実感は無いし、自分がそうなりたいとは思わないわ。記憶は欠けても、自分が確かに善の女神であることは私自身の体が、魂が知っている。悪を行う理由なんて何処にもない。・・・前シーズンではヴィランブームだったのかしら)
何かの間違い。そう考えてはいるが・・・万が一、万が一自分が悪に墜ちた場合。それを仮定した場合には自分はどうするか。はたまた、自身を悪にやつした存在がいるのだとしたなら自分はどうするのか。勝利の余韻を脇に置き、気難しく皺を寄せ、そんな事を考えていると・・・
「やぁ、イシュタル。考え事かい?能天気と痴呆と血迷いがデフォルトのこちらのイシュタルと違って、繊細で真面目なんだね。お疲れ様」
意外な人物がイシュタルに声を掛ける。イシュタルを毛嫌いする緑の鎖、エルキドゥ。彼はホットドッグを両手に持っている。一つどうかなと差し出してきた事から、心配してくれたのだろうか。
「エルキドゥ・・・ありがとう。あなた、私を毛嫌いしていたと思ったけれど」
「勘違いは哀しいな。僕は汎人類史のイシュタルを嫌悪しているのであって、君を拒絶した覚えは無いんだけどな。君の真面目さは知っている。イシュタルと似た存在であるのがちょっと残念だけど、それだけで距離を置くほど節操なしじゃないよ」
隣いいかい?と座り込むエルキドゥ。マイペースさは変わらない様で、気遣いなのかそうでないのか判断に困るが・・・だが、彼は兵器らしからぬ情緒と感情を有している。彼はやりたくないことは決してやらないだろう。こうして声を掛けてくれた彼の機微を、イシュタルは信じる事にした。
「・・・ねぇ。もし、もしもよ。失われた記憶がもし、大悪党の記憶だったらあなたはどうする?」
「あぁ、失われた記憶の手がかりにでも触れたかい?」
流石の鋭さに閉口するイシュタル。彼は楽しくとぼけているようでいて、その在り方と斧の様な鋭さは変わっていない。コロンブスとのやりとりを懸念された様だ。だが、彼の返答はあっけらかんとしていた。
「どうもしないさ。それが誇らしい記憶なら胸にしまい、受け入れがたい記憶なら忘れてしまえばいい。人間や神は忘れるという機能が備わっている。それは素晴らしい事なんだよ」
「・・・自分の本当の存在だとしても、かしら」
「現に君は善の女神として為すべき事を為しているじゃないか。くよくよ悩む前に君自身が為すべき事を選択している。ギルが言っていたけれどね。誰かの本性を知る際に記憶は必要無いんだってさ。だから、まっさらな状態から善を選んだ君は、間違いなく善の女神であるはずだよ。確信、断言してもいい。君は間違いなく善だ」
「・・・。う、嬉しい後押しだけど。根拠は何かあるのかしら?」
「君は『イシュタル』なんだろう?間違いないよ。イシュタルは『善』だからこそ傍迷惑だし、愚かだし、無様だし、迷惑だし媚薬臭いし投げつけたいし・・・」
歯に衣着せぬ物言いの後、ため息混じりに緑の人は端的に告げた。
「だからこそ、ウルクの民達の守護神なんだ。決して善から外れない女神。それが自分の善であるのが台無しだけど・・・だから、君が悪に関わっているのにも必ず理由があるはずだ。イシュタルが悪をやらなければならなかった理由が、きっとね」
だからそう心配することは無いよ、とエルキドゥは爽やかにそう言った。魂胆は変わらないものだ。今の君が本当なら、悪を成すにはきっと訳がある。・・・それは、イシュタルという存在を嫌悪するが故の理解なのかもしれない。だがその感情がどうあれ、彼はイシュタルを・・・スペースイシュタルを励ましたのだ。イシュタルという存在を気遣ったのである。知るものが知れば驚天動地の行い。彼女も当然驚き・・・そして、納得する。
「・・・そうね。そうよね。何はともあれ、今の私は善を貫こうという決意がある。そうするために戦う覚悟がある。・・・そんな覚悟を鈍らせる記憶なんて、今はいらないか」
「おやおや、流石の思いきりの良さだね。となると、記憶はいらないのかい?」
「いいえ。『どうせその内解るのだから、今必死になって追う必要はない』と言うだけよ。私は善の女神であること。今大事な真実はそれだけ。とりあえず、今シーズンの主役は私では無いのだから、自分探しで尺を取る訳にはいかないでしょう?」
・・・その在り方はなんの因果か、ゴージャスが面白がってつけた『トオサカリン』という名に通ずる颯爽とした割りきりだった。他にも迷い、というか自己探しと武者修行を行っている者が二人はいる。ならば自分は道を譲り、彼女等のサポートにまずは徹する。自分の事ですらあっさりとも言える割り切りに、エルキドゥは呆気に取られ・・・
「・・・ぷっ、あはははは!自分の事は後回し、かぁ。ますます君はイシュタルらしくないなぁ。うん、今のは凄く素敵な決意だったよ。凄く好感の持てる、ね」
ツボに入ったのか、けらけらと笑い転げるエルキドゥ。・・・ここまで来ると、悪評の方が気になると言うものである。
(そちらの宇宙のイシュタルは、どんな邪神めいた性格だと言うの・・・?)
若干頭の痛くなるような悪評ぶりに困惑するスペースイシュタル。そしてひとしきり笑った後、エルキドゥは素早く立ち上がる。
「なら、もう自己啓発は無用だね?じゃあ一緒にパーティーに行こうじゃないか。君はMVP、立役者なんだから見守るだけなんてダメダメ!」
「あ、ちょっと・・・」
「君だって、今は仲間だよ?遠慮なんていらないさ。さぁほら、早く早く!」
手をグイグイと引っ張るエルキドゥ。その自由っぷりに困惑しながら、彼女は呆れ混ざりに問う。
「あなた、相方の金ぴかよりずっとずっと危険人物だったりしない?」
「よく言われるよ。だけど平気さ。だって僕は『兵器』だからね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・あぁ、あの金ぴかの友達だわ、この子。彼女はその事実を言葉ではなく魂で理解した。
「あれ?解らなかった?じゃあもう一度。僕は平気さ。だって・・・」
「解った!わかったから速く行きましょう!ね?」
「あ、ちなみに今のは精神的な『平気』と天の鎖である『兵器』をかけた場をなごませるジョークで」
「ギャグを口でセルフ説明できる・・・そんな心胆の強さは間違いなく最強の兵器よね・・・」
それは宇宙くらい救えるわね・・・。彼女は魂で、その事を理解し、共に村へと戻るのだった・・・
村人「それでは、お気をつけて!」
村人(妻達)「「「「「マーリン様ー!お気をつけてー!♥️」」」」」
マーリン「ありがとう!麗しき御婦人達!どうか家庭円満を祈っているよー!」
イアソン「あいつらのメンテナンス技術、中々のもんだったな!食料もナビもバッチリだ!」
ギルガメッシュ「喜べエルキドゥ!次はおまちかねのリサイクルショップよ!」
エルキドゥ「本当かい!?」
エレシュキガル「途端にテンションMAXなのだわ!」
──そしてその後はいよいよシルバー宙域を攻略する様です!群雄は宙域・・・油断せずに参りましょう!
マンドリカルド「飲みすぎたっす・・・」
リリィ「必ず帰ってきましょう!勝利の凱歌と共に!」
一同は再び旅を続け、ブロンズ宙域の最後の地点待望のリサイクルショップへと向かう──
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