エア ──・・・!(キュピン)
(エレシュキガルとマンドリカルドさんの霊基がどこかに!?店長もいなくなっている・・・まさか何者かの敵襲が!?)
──ギル!たいへ、ぶっ!?
メンテナンス中に突然頭を上げたエアは、バイクに頭をぶつけてしまった!
──~~~!迂闊、でした・・・・・・ッ・・・!
ギル《迅速に反応したは良いがまずは状況把握が先であろうが!秘薬と霊薬だ、迅速に服用せよ!》
──は、はい!あ、あれ?でも痛みが全然・・・?
フォウ(心配ない、エア!君が受けたダメージは全てボクが治した!プレシャスパワーある限り!例え即死だろうとキミを救ってみせるからねッ!キミを護り、助けるという覚悟は出来ている!)
──フォウ・・・!ありがとう・・・!
エルキドゥ「ねぇねぇギル、ちょっと借りたいものがあるんだけど」
「全く肝を冷やさせおって・・・。ん、珍しいな。何事だ?」
エルキドゥ「それがね──」
【うははははは!うはははははぁ!入ってきよった!わしの人斬りゾーンに!仕留めやすい女のランサーが!わしはついちゅう!流石FGO初出の大人気サーヴァントじゃ!運を味方につけとる!見たか龍馬ァ!わしこそが最強セイバーになる男じゃあ!】
謎の空間転移に巻き込まれたマンドリカルド、エレシュキガル。そこはリサイクルショップの休憩コーナーではなく、寂しげな道場の稽古広間に変貌していた。目の前には、紅き刃を握り笑う編笠を被った怪人が高らかに笑っている。疑うまでもなく、彼が下手人であることは明白。素早くマンドリカルドは木刀を抜き、エレシュキガルを庇う。
「ここ、まさか固有結界・・・!?閉じ込められたというの・・・!?」
「いえ、これは多分、使い捨て空間歪曲装置っす。一回きりだけど、空間を作り閉じ込められる・・・多分あいつが、ランサーを斬る為に作った空間なんでしょう。・・・セイバーとして、狩るために」
怪人としか言い様のない目の前の人斬りは、セイバーバッチを通したネックレスを誇示するように飾っている。そのひけらかしぶりからして、彼が積極的にランサーを狩るタイプの存在としてマンドリカルドは彼を推し量る。そしてそれは名答だった。
【そうや。地道に集めた掘り出し物を餌にリサイクルショップの店長を勤め、やって来たランサーやライダーを狩りながらバッチとアルトリウム、そして遺品を奪い売り飛ばす!掘り出し物で強うなろうと、楽をしようとする駆け出しを狩っちょったのよ!雑魚を狩って懐は潤う!バッチは集まる!店は繁盛!まさに一石三鳥じゃぁ!うはははははぁ!】
「・・・そうか。あの商品についていたなんかを拭き取っていた跡。あれは『返り血』か・・・!ランサーやライダーを狩った時の戦利品、ついた血・・・」
「なんてこと・・・!奪い取った品を商品にしていたの・・・!?」
【おおよ。リサイクルショップとはそういうもんじゃき。わしが使えんようわからん玩具を取り揃えたら新入りが目敏くかぎ分ける奴等がおる。そいつらを手頃に狩る!わしはそうやってバッチを集めて来たんじゃ!人斬りの面目躍如!これがわしの世渡りじゃあ!】
名声、富、それらを一気に奪う闇討ちの人斬り。希望に弾むセイバーや、ブロンズに逃げてきたランサーを招き、一気に討ち果たす。そうすることで戦利品とセイバーバッチ、アルトリウムを自分のものとし蓄える。宇宙のデブリやジャンクをかき集めていた頃からずっとずっと成長してきたのだ。宇宙の闇に潜む人斬りとして。そしてその刃が今、二人に向けられている。
【おまんらは羽振りが良さそうな連中じゃ。おまんらを仕留めた後に腕前を売り込み、寝首をかくために同行してやるぜよ。そんで頃合いを見て寝首を掻き!わしの地位と富は磐石と言う訳よ!笑いが止まらんきに!うはははははぁ!!】
「・・・おめでてー野郎っすね。もう俺らに勝った気でいるっすよ。羨ましいっす、その過剰な自信」
女のランサーに男のライダー。だめ押しに隔絶空間。助けも来ず、どう逆立ちしようと負ける要素が無いとばかりに哄笑を上げ続けるIZOに、マンドリカルドは呆れたように木刀を構える。
「まぁ俺はともかく・・・こちらのエレシュキガル女神様は待ってる方がいる女神様なんで、やらせるわけにはいかないんで。アンタを仕留めて帰らせてもらうっすよ」
せっかく楽しく巡っている人達がいるんだから、こんなしょーもない刺客にかかずらっていては台無しになってしまう。そして何より・・・
(女の子と二人きりで閉じ込められたりしたら死ぬ・・・間が持たなくて死ぬ!なんとしても俺がなけなしの勇気でイキッたナイト気取りのテンションを維持できてる内に倒さねーと・・・!)
陰キャとしての深刻極まるタイムリミットに恐れおののいていた。華もなく、技もなく、きらびやかな剣も無い。これではロマンチックな救出劇など出来よう筈もない。何とかして助けに来てもらうまでの時間稼ぎが出来たらなぁ、と後ろ向きな理由で彼はエレシュキガルを庇い立ったのだ。
【はっ。女の前でいいかっこするような男は切り刻み甲斐があるもんじゃき。容赦せんぞぉ!わはしはそういう・・・りあじゅー、ってやつが虫酸が走るくらいに嫌いなんじゃ!天誅下しちゃる!!】
「・・・残念だよ。出逢いが違ったら、絶対俺達は仲良くなれた。絶対だ。確信がある。アンタと俺は同じだ。もっとこう・・・深い所で」
リア充や大学サークルを見る度に「住む世界が違うんだよな」とため息を吐き、仲睦まじい恋愛や結婚を「別の次元の話だ」と肩を落とすマンドリカルドからしてみれば、大いに親近感が湧く相手だが・・・どうやら勘違いの果てに拒絶されているようだ。哀しきかな、最早戦う他に無いらしい。
【わしはあらゆる剣を見切り、覚える天下無双のセイバー!ゆくゆくはビームをも撃てるようになるゴールドセイバーとなり!金を稼いで星を買って過ごすんじゃ!わしを馬鹿にしないやつだけを集めた惑星IZOの夢の為に!死にさらせぇ!!】
「デカい夢の癖になんだってこんなみみっちい事をしてるんだ!くそっ──!」
いよいよもって戦闘が始まる──態勢に入った二人を、しかし赤い陰が制止した。
「待って!マンドリカルド、そして店長も!悪いことは言わないのだわ、すぐに私達を元の場所に戻して!」
「エレシュキガルさん・・・!」
彼女は必死に訴えた。一刻も早く解放して欲しい。そうしなければ大変な事になる。彼女は敵であるIZOに、必死に懇願を始めたのだ。
(・・・そりゃあ、そうだよな。木刀しか持ってねぇヤツに護られるなんて堪えられないよな。エレシュキガルさんも誇り高い女神なんだから、当たり前だよな)
「何か誤解させているかもしれないけれど!マンドリカルド、あなたに庇って貰えてとても嬉しかったのだわ!ありがとう!」
「あはは、すみません・・・でしゃば何ですと!?」
「そうじゃないの!そうじゃないのだわ!早く!早くしないと大変な事になってしまうのだわ!このままじゃ、このままじゃ危ないのはあなたなのだわ!だから早く!」
エレシュキガルは懸命に訴えた。危険なのはあなただと。だから今すぐこんな事は止めろと。それがIZOには、稚拙な命乞いにしか聞こえなかった。
──それが、運の尽きだった。
【訳の分からんことを。心配せんでもさっさと終わるきに。──おまんが死ねば万々歳よ!何も問題なぞありはせんがじゃ!】
「そうじゃないのだわ!『私達の傍にいた子が気付く前』に!今なら何もなかったと言えるのだわ!襲撃なんて無かったと庇える!だから早く!早く帰して!彼が気付く前に!」
【寝言は寝て言うのが当然じゃき!チェストォオォオォオォオ!!!】
「エレシュキガルさんっ!くっそ、楽園の皆様を傷つけさせるかよ──!」
素早く自らの愛馬を呼び寄せ、エレシュキガルを庇うために前へ出ようとするマンドリカルド。斬りかかるIZO。それでも説得を止めないエレシュキガル。
・・・彼女は何を恐れていたのか?敵襲?閉鎖?脱落?いや、それではない。他でもない『彼』が気付くこと。異常に感付いてしまうことだ。『敵対者』と認識してしまうことだ。彼に敵と思われてしまうことだ。マンドリカルドや自分だけではない。目の前にいる彼すらも護るために彼女は説得を試みたのだ。
『──あぁ、よかった。ギルからバニシングドライブ波(ワープした時に出る特殊な波動)探知機を借りて良かったよ』
そして──その懸念と不安は。
【!!?ぐはぁ!?】
「・・・あ、あぁ・・・」
「──僕の大切な仲間に、何をしているのかな?」
IZOの五体を鋭く貫いた鎖と、たおやかな緑の麗人の微笑みのエントリーを見て。『手遅れ』であることを。エレシュキガルは魂で理解したのだ・・・。
エルキドゥ「びっくりしたよ。たこ焼き買ってきたら二人がいないんだもん。もしかしたらと思って探知してみたら気配がさっぱり消えてるし。店長もいないし。慌てて探したら此処にいたね。まさか二人を襲うだなんてね」
IZO【な、なんじゃ、なんじゃこりゃぁ・・・!わ、わしの身体に鎖がささっちゅうがか!?い、痛・・・!】
エルキドゥ「大変だったね。後は任せて、よ」
【なんじゃあぁあぁああぁああぁああぁあ!!!】
両手両足に突き刺した鎖を思い切り後ろに引き、稼働範囲の限界を越えさせへし折る。エルキドゥは彼を一瞬で無力化させた。
【う、うそじゃ、こんな、こんな筈は・・・痛か、痛かぞ・・・痛か・・・】
「店長、残念だよ。僕は非常に残念だ。楽しいリサイクルショップを台無しにしようとしたあなたを、店長を僕は殺さねばならない」
【!?】
マンドリカルド(目が、目が笑ってない・・・)
エレシュキガル(あわわわわわ・・・)
「僕は僕の宝物を汚した輩を決して許さない性質でね。それに、君は闇討ちした者の商品を並べていたね?道理で拭き取り後が散見される筈だ。・・・リサイクルショップで訳あり品を掴まされたなんて洒落にもならない。回収騒ぎと信用問題だ。この事を知っているのはいまのところ僕とギルだけだ。部外者がいてはならないんだ。解るかい?」
【あ、ぁ・・・】
「だからね・・・」
笑顔のまま、言い聞かせるようにエルキドゥはそっと告げる
「ごめんね。『君に生きていられると困るんだ』。仲間に手を出したということで拷問の後に殺すから・・・次のシーズンではやっちゃダメだよ?」
【た、助け、龍──!】
「大丈夫。『なるべく苦しむように手を込ませるから』。もう、僕の仲間をいじめないでね?」
【い、嫌じゃ!嫌じゃあぁあぁあぁあぁあ!!】
・・・その後、人斬りIZOはエルキドゥが考案した『湧き出てきたラフムを泣きわめかさせる手法』を余すことなく体感させ、徹底的なお仕置きを行った。誰にも届かない場所だったので、エルキドゥは最後まで楽しげにIZOを弄び、激痛を与え続け反省を促した。
「あぁ、バッチになってしまった。爪の間に鎖はやりすぎだったかな。まぁこれで口封じは上手くいった筈だよね。さぁ、皆が気付かない内に帰ろっか♪」
「う、うん・・・エルキドゥ、助かったのだわ・・・」
(・・・しばらく夢に出そうっす・・・)
秘密裏に処理されたIZOさんと、護られた商品の仕入れルートに弾むエルキドゥ。楽園メンバーで、誰が最も無慈悲で残酷なのか。
それを、魂で理解したマンドリカルドであり。理解したが故に敵を説得という慈愛を懐いたエレシュキガルであった・・・──
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