人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ヒロインXX「えっ!?単独で銀河警察に調査を!?」

ナイア「皆様準備中、休息中です。データを抜くくらいの御使いに手を煩わせる必要はありません。パッといってパッと帰ってきます。少しでもこの場所を好きになってもらいたいですから」

ヒロインXX「ま、まぁ確かに艦隊から逃れるにはは少数が有効でしょうが・・・。あ、じゃあ私にいい考えがあります!」

ナイア「いい考え」

「はい、まずギルとニャル執事に私達の行動の許可を貰い、皆さんには私が『邪神居住区調査依頼』という名目のゆっくりしていってねコールを放ちます。そうすれば皆が調査という名ののんびりしている間、私達がデータを取り皆で共有すれば万々歳でしょう!」

ナイア「成る程・・・それで行きましょう。XX、お願いいたします」

ヒロインXX「任せておきなさい!全くもう、手間のかかる妹分なんですからもー!」

ナイア「友達の為に頑張る。これが・・・やりがい労働・・・」

ヒロインXX「そのブラック思考は止めましょう!ロクな事になりません!」

天空ビーチプール・プールサイド

ギル「チッ。好き勝手相場をかき乱し乱しおって。やはり赴き権利を買い取るしか他に無いか・・・」

ヒロインXX「報告しました!どうですかね?」

ギル「構わん。財宝があるならすぐに我等も向かい、危機を感じたなら我等を呼べ。よいな、我が身が第一、財が二の次だ。そも貴様らは我の財であることを忘れるなよ」

ナイア「御機嫌王様!(ガツッ)あっ!」

ヒロインXX「パソコンがプールにーっ!!?」

御機嫌王「案ずるな、耐水性だ。こうも相場が混沌ではベンチャービジネスも叶わぬ。さっさと最低限の秩序は取り戻すぞ!励めよ!」

「「はいっ!」」

エレシュキガル「ぷかぷかなのだわ~」

マンドリカルド「エレさーん。皆でバーベキューやるみたいっすよー」

スペースイシュタル(素振り中)

ニャル【ナイア、くれぐれも無茶はしないでおくれ。XX様、ナイアをよろしくお願いいたします】

ヒロインXX「任せてください!仕事関係の無い友達は一生モノ!では!行ってきます!」

ナイア「晩御飯までには帰ります。それでは!」



──銀河に、蒼と緋の軌跡が駆け抜けていった──



ラストポリスマスター・女神エレ

「こ、これが銀河警察の姿だというのですか・・・!一体どんな労働ストライキや暴動に遭えばこんな無惨な事になってしまうのですか!徹底的!徹底的に過ぎますよこれは・・・!」

 

 

XXの言葉と驚愕が示す通り、其処には銀河警察の本拠地・・・であったとしか言い様の無い有り様が広がっていたのだ。威風と秩序を示す白と青の巨大な建築物。大いなる土地を誇る領土のほぼ全てが、爆撃にでも遇ったように粉々に吹き飛ばされている。外装は砕け、戦車の砲撃や空襲、聖剣の一斉発射でも直撃したような廃墟。仮にも全銀河を護る秩序の総本山の成れの果てに、根が善良なXXはざまぁみろとの言葉すら出てこなかった。まさに、悪意に晒された破壊の跡がありありと残っていたからだ。

 

「秩序の番人、桜の代門を背負って好き勝手やったツケが回ってきたのでしょう。悲しい因果応報ではありますが・・・」

 

「うむむ、それにしたってこうはならないでしょう普通・・・執拗、執拗ですよ?火事にしてミサイルぶっぱなして艦隊砲撃食らわせないとこうはなりません。サーヴァントユニヴァースの住民の常識『収監と脱獄はワンセット』という観点からそう恨みは募らせないと思うのですが・・・」

 

「・・・。私は追い回されていた側なので解りませんが、XXは職場の付き合いもあったでしょう。心中、御察し致します」

 

前までならば『汚職とブラックなクソ企業が消し飛んだのですもの。ザマミロ&スカッとサワヤカですわ』と狩人トラッシュトークを飛ばしていただろうが、楽園の触れ合いと父の真意、沢山の友人達の触れ合いにて素の精神性が表層を占めているナイアは、まず友を労った。かつての仲間や同僚が消えていれば、思う所もあるだろうと。

 

「まだ通帳確認してないんですが、退職金しっかり振り込まれていますかね・・・?訴える前に物理的に倒産とか全然笑えないんですがそれは・・・」

 

「・・・。楽園の生活水準はどんな星の文明圏より上だと言うのに、まだ小銭を数える性根は健在なのですね・・・」

 

「当たり前じゃないですか!一円を笑うものは一円に泣くと言います!私は切実なOLやっていたんですからね!さ、行きますよナイア!徹底調査をいたしましょう!」

 

まぁ解ります、お父さんもたまに自販機の下を覗いてましたし・・・。そう首を振りながら、一丁前にセキュリティ音声を発する門前に立つ。

 

『こんにちは、今日もお日柄もよく。秩序と正義を護る業務を誇りを持って、誇りを持って、誇りを持って・・・』

 

「お疲れ様でした」

 

ナイアが介錯代わりに棺桶を叩きつける。沈黙したセキュリティは、最早音を発する事はなくなりゲートも問題なく通行が可能となった。敷地に入り、ズタボロになり骨組みだけになった施設を見上げると、かかっていた垂れ幕の文字が示されていた。

 

『祝!エレシュキガル一日署長就任!』

 

「スペースエレシュキガルと言えば、職務勤勉で真面目極まる監獄長であり、書記官でもある女神でした。一日署長というスポットライトが当たったのは喜ばしいですが・・・」

 

「お労しい事です。まさかラストポリスマスターになってしまうとは・・・話には聞いていましたから」

 

スペース・エレシュキガル。銀河警察の上層部メンバーにして監獄長と書記官を兼任する才色兼備のスーパーエリート。滅多に表メディアに露出しない職務の化身で、彼女の仕事への評価は並々ならぬものであり語り草だった。シーズン毎に多種多様な手段で脱獄を図るヴィランどもに涙目で対応に追われる姿が可愛いともっぱらの評判。よりによって一日署長の広告塔になった矢先の壊滅とは・・・流石のヒロインXXも、この星の巡り合わせの残酷さには手を合わせざるを得なかった。

 

「優秀な書記官ならば、現在の状況に何かしらの布石や対策を打ってある筈です。コントロールルームへと向かってみましょう。ゆっくり休んでいる王様達に、有益な情報を届けるのです」

 

「そう、ですね。・・・真面目で正直者がバカを見る。そんな宇宙は正さなくてはなりませんからね」

 

二人は意を決し、瓦礫をかき分け施設内部へと入る。目指すはコントロールルーム、銀河警察の中枢だ。部屋に通ずるワープシステムを動かさなくては起動しないものだが、ロンゴミニアドがあれば問題なく閲覧できるだろう。

 

「お父さんも常々銀河警察のテクノロジーやアーティファクトに興味を示していました。銀河警察丸々壊滅のこの隙に、機密をまとめていただいちゃいましょう」

 

「まぁ全滅したんで、所有権は誰にも無いからいいんじゃないですかね?楽園のスペース装備になるなら万々歳ですよ、はい!もしもの時はスペースシーズンの救世主としてごり押ししちゃえばいいのです!」

 

そして、崩れかけた廃墟の入り口ワープに飛び込むXXとナイア。しかし、その先にも容易な展開があるはずもなく──。

 

 

『おはようございます!今日も一日頑張りましょう!』

 

『こんにちは!今日も素晴らしい収監日和ですね!ヴィランを牢屋にぶちこみましょう!』

 

『タイムカードは押しましたか?押しましたか?押しましたか?』

 

一歩脚を踏み入れたならば、其処にはフレームや配線が剥き出しになったパトロールロボや警備システムが無数にお出迎えを行ってきたのだ。触れたものを粒子にする警棒、寸断レーザービーム、破壊用工業ロボなどといった防衛設備が展開し襲ってきたのである。誰も動かしておらず、メンテナンスをしている様子もないというのにだ。

 

「あり得る話です。銀河警察は基本ブラック!気付いてしまったのです・・・人間やサーヴァントよりも無限に働く奴隷めいたオートメーションの方が効率がいいと!失業率やリストラが四割にパワーアップした原因がこの優秀な警備ロボ!ライオンヘッドやキャプテン☆ニコラに無限動力でも仕込まれましたかね!」

 

「このままでは浮かばれませんね。破壊による休息、停止と言う安寧を。ブッ壊させていただきます」

 

棺桶をミサイルランチャーに変化させ片手に持ち肩に乗せ、左手に万能変形魔具アタッシュケース『パンドラ』をガトリングに変化させ行く手に蠢くロボット達に叩き込む。そして弾丸より速くXXが飛来し軌跡の全てをX字に切り裂き、眼前の一掃は完了する。だが、あらゆる場所からロボット達はやってくる。

 

『月月火水木金金!』

『やりがいが、君の報酬だ!』

『社会のオイルに!潤滑油になろう!』

『道具が意志を持つな!』

『愛でるためにまずは壊そう!私は労働を愛している!』

『キャリア組は出来たぞ?キャリア組は出来たぞ?キャリア組は出来たぞ?』

『出世できなきゃ人生ゴミだ!』

『所詮平社員は・・・使い捨ての歯車じゃけぇ・・・!』

『派遣に対する慈悲の気持ちは全くねー。頸を括ろうと一家心中しようと可哀想とは全く思わねぇ』

『働かざるもの!生きるべからず!』

 

「・・・・・・。これがあなたの職場の基本理念なのですか?」

 

「向き合いたくなかった労働理念!丁度いいです、壊したら給料天引きのガラクタパワハラロボット!残らずブッ壊して行きますよナイア!永遠の休暇を与えましょう!残らずスクラップ処分です!!」

 

(・・・狩人の仕事は、グロテスク耐性さえあればホワイトだったんですね。送り迎えもあり、ターゲットを達成すれば業務終了で賞金はまるごと貰えましたし・・・)

 

ある意味邪神より黒いかも知れない理念を吐き出しながら迫る呪詛ロボットを破壊しながら、ナイアはXXの働いていた場所と労働の大変さを労るのであった・・・。

 

「ありましたよナイア!ワープルームです!」

 

「向かいましょう」

 

そして、中枢コントロールルームへと躊躇いなく進み、核心へと迫る──




コントロールルーム中枢

ヒロインXX「にゅ、入念に攻撃されていますがやはり中枢。周りほど壊れてはいませんね。感心感心」

ナイア「・・・この破壊ぶりはいっそ異常とも言えませんか?何故、銀河警察だけこんなにも破壊されているのでしょう?邪魔というだけでしょうか。本当に?」

ヒロインXX「親でも殺されたとばかりの破壊ですからね・・・次シーズンのトラウマにならなければ良いのですが。起動しますよ!」

ロンゴミニアドを突き刺し、アーカイブを閲覧する。周りに電気が入り、其処には金髪の制服姿の女神の映像が流れ始めた。

『・・・この宇宙を正しく元に戻さんと願う善良な誰かの為に、この記録を残します。私はスペース・エレシュキガル。銀河警察の・・・うぅ、成り行きの最後の署長です。ラストポリスマスターなのだわ・・・』

ナイア(あっ・・・苦労人・・・)

涙と共に、銀河警察の書記官にして一日署長の記録は事のあらましを語り始める──

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