人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ナイア「ええと、何処のパネルをいじればいいんでしょうか?」

ヒロインXX「あ、ハイテク苦手なんですかナイアって」

ナイア「狩人としての五感と感性、身体能力を極めているので、初体験の機器はちょっと・・・スマホ、やタブレット、もお父さんのカスタム品で脳波コントロールができるタイプなので」

ヒロインXX「・・・むしろそんなに至れり尽くせりでいけすかないワガママ娘にならないナイアのブレなさっぷりが一番凄いんじゃないかと思えてきました」

「?」

ヒロインXX「何でもないです!えーと・・・」


宇宙警察壊滅のあらまし

宇宙を救う為の手助け

ギルガメスの狙いの真相←安全圏で確認すること。ハッキング対策必須!

(親切ですね・・・)

ナイア「では指示に従いましょう。では周知であろう銀河警察壊滅から見るのはどうでしょうか」

ヒロインXX「同感です!では、せーの!」

「「ポチッとな!」」

『記録、再生開始──』


アースマザー・ブレッシング

『まず、私はとても人付き合いが下手で、説明も上手とは言えません。分かりにくい言葉選びであったのならごめんなさい。もちろん、記録の為返答といった事も出来ないから、了承をお願いするのだわ』

 

丁寧に前置きし、彼女・・・スペースエレシュキガルは語り出す。いくつかの項目、記録に当たった事柄を。先の言う通り、機密事項は安全圏に渡ってから閲覧するとの事で、まずは銀河警察壊滅のあらましを二人は選択した。女神は、語り出す。

 

『銀河警察壊滅の真相ね。・・・ギルガメスはいつものように全配信でセイバー召喚チャレンジを行い、スカウトに精を出していたみたい。私は見ていなかったわ。なんというか、一喜一憂しているのが痛ましく思えたから』

 

(愉悦部適正ゼロ。流石ですね)

 

『もう何度目かも解らない爆死の敗北。それがきっかけかどうかは解らないけれど。ギルガメスは全銀河からの一番のセイバーを選別する事に決めたのだわ。何故一番のセイバーと彼の目的が結び付くのか?という疑問には別の記録再生で説明するから安心してね』

 

そこはイシュタルも言っていた動機。それこそがこの非常に目に悪い宇宙の始まり。ギルガメスのセイバー欲しい欲求が流出し宇宙を塗り替えたのである。ハジュンの映画ではそんな座争いもあったとか無かったとか。ともかく、シーズンの方針は定まったのだ。この瞬間に。そしてギルガメスは、極めて効率的な足場作りとリソース確保を行った。

 

『その為のリソースや資源、戦い争う為の餌みたいなもの。最新鋭の機器や潤沢な資源、ノウハウが集う宇宙の施設の簒奪とリソースの確保、そして小賢しい権謀術数や悪巧みの排除。一斉にそれを行える手段がたった一つあったのだわ。ギルガメスはそれを行った。それが──銀河警察の壊滅、並びにヴィラン・サーヴァント達の今シーズンからの排除、リソースの確保を行うため、ギルガメスは徹底的な法の破壊を行ったわ。・・・巡りが悪いというか失策というか・・・私が一日署長就任のタイミングで浮かれ気分だった瞬間の日に・・・』

 

「なんと効率的、なんと運の悪い・・・」

 

そう、ギルガメスは無駄に賢くルールの穴をすり抜けてくるような小賢しいインテリサーヴァントを排し、同時に自身の目的の達成を邪魔するであろう銀河警察を滅ぼすことを決めたのだ。ちょうどエレシュキガル一日署長就任の為、非番で集まっていた警察の面々の間隙が最悪の形で突かれることになったのである。

 

「しかし、それでもこんなになります普通?まさか全権エレシュキガルに任せるなんてアホやらかす訳無いでしょうし、ギルガメスの外にもサーヴァントはいるんだからそんな・・・」

 

『困難を果たすには力を合わせるのが一番なのだわ。ギルガメスはそれをした。『銀河警察の面々と収監されていた大物ヴィランをランサーに変え、それを餌に全銀河へ大義名分を発信したの。ランサー、駆逐すべし』とね』

 

「「・・・・・・・・・」」

 

法の番人、そして宇宙を混乱に陥れるヴィラン達。それらを宇宙規模の生け贄にし大義名分を授けた。ランサーはいくらでも狩ってよい、仕留めてもよいと。犯罪者に幸せを踏みにじられた市民たちが、死刑を果たせるスイッチを託されたらどうなるか。何度も何度も企みを邪魔され、阻まれた目の上のたんこぶを排除する機会をもたらされたらどうなるか。二人の危惧は現実となった。

 

『全宇宙から集結した艦隊の一斉攻撃を受け、白兵戦でセイバーバッチを付けていたセイバー達に次々と職員達は倒されていきました。同時に収監されていたヴィラン達を消し去るために対設備兵器を惜しみ無く投与された基地はあっという間に機能停止を起こし、収監所や牢獄は跡形もなく破壊され、銀河警察本拠地は事実上の壊滅に陥ったの。人がいないし、ほぼ全てがダウンしてしまったのだもの。当然の結末なのだわ・・・』

 

そして、面倒な施設の始末は愚民に任せ自身はセイバー鎮圧に邪魔なアーチャーを仕留めて回り宇宙を間引いて行ったのだという。秩序も混沌も抑止も、複雑怪奇な悪巧みも排したシンプルな宇宙が出来上がった。それが、セイバーウォーズの始まり。セイバー達による争い、そして真のセイバーを花嫁にするギルガメスの妃探し。あまりにスケールの大きな争いと根回し、そして正義を得て残酷になった総意を聞き、二人は顔を見合わせた。

 

『私の出来た事は、せめて次のシーズンを切り拓ける力と成りうる数人のセイバーをポッドに乗せ脱出、そして銀河警察の技術とテクノロジー、ノウハウの流出を防ぐセキュリティロックの構築。そして、エルキドゥの執り成しでギルガメスと秘密裏に結んだ『次シーズンへの影響の完全無効化』。どうせ妃を迎えハッピーエンドで完結するのだふははとあっさり承諾したのが幸いでした。これで、ギルガメスを倒すことが出来れば次シーズンでは真っ白な状態で始められます。ヴィランがシーズンを握ったりすると戻ってこない人がいたりするから・・・ここはやっぱりギルガメス。挑む可能性は残しておいてくれました』

 

「なんと。それは紛れもなくファインプレーなのでは?」

 

『そして脱出を確認した後、私は一日署長権限を使用し銀河警察のリアクターを全て暴走させ、そのエネルギーで銀河警察周辺宙域の戦力を撃退し、同時にいくつかの備えを残し、銀河警察の設備にロックをかけ悪用されないよう封印したわ。・・・流石に自分が脱出できる気力も体力も無かったので、施設最深部でコールドスリープを行っています。かなり傷が深いから、きっと今シーズンは目覚められないと思うけれど、サーヴァントユニヴァースからロストしたとあるアーティファクトを鍵にしたため、誰かが訪れる事は無いでしょう』

 

「考えうる限りファインプレーしかしていないのではないでしょうか。完全な宇宙の閉塞を一日署長の権限で残し希望を護った・・・」

 

エレシュキガルは理不尽に晒されながらも、『未来を変える希望』だけは護りきった。どんな理不尽な宇宙でも、どんな困難な世界でも、『乗り越えられたなら正しい姿に戻る』。死後の安寧を護るように、『終わりの安らぎ』だけは護りきったのだ。乗り越えさえすれば、必ず明日が来るのだという希望が、はっきりと示された。

 

『このページの報告はこんな所かしら。・・・いつか、この宇宙を正しく元に戻したいと願う同志が現れることを願い、データコピーUSBの生成を可能にしているのだわ。其処の4DプリンターからデータとUSBを製作してちょうだい。あぁ、大丈夫。この場所には最深部で眠っている私の権限で善良な魂しか立ち入ることはできません。それに、銀河警察の装備は今はユニヴァースに無い『ロンゴミニアド』が必要だからロックは万全!・・・と、思うのだわ』

 

「やったじゃないですかナイア!善良な魂カウントされていますよ!」

 

「こ、光栄の至りです!成る程・・・お父さんがノウハウを奪えない筈です。こんな聡明な女神が護っていたのですから」

 

『もし質問や記録で解らないことがあったら、簡易人工知能を製作する事をお勧めします。記録媒体を核に使えば、きっと当時の事を答えてくれるのだわ。・・・最後に、これだけは』

 

「「?」」

 

『ギルガメスの行いは傍迷惑だけれど、それは報いの一つであったのでしょう。自業自得とはいえ、誰もがギルガメスの失態を笑い者にしていたのだから。この宇宙の混沌は、ある意味成るべくしてなったと私は考えています。嘲笑っていた側が、平等にツケを払っただけ。これが労りの声ばかりであったならギルガメスは流石にここまではしなかったと私は見ています。理不尽な話ではあるけれどね。誰かの不幸を笑う人間が今回は多かった。その報いを受けたのでしょう』

 

女神からの観点で、今回の事件を俯瞰したエレシュキガル。だが、それはあくまで自己責任とも。

 

『ギルガメスも配信していたので報いを求めるのはお門違い。故にこの宇宙は間違っているのだわ。だからこれを見たあなたが、せめて今日よりよい明日を望む誰かであることを祈ります。・・・冷凍睡眠中だから、祈るしか出来ないけれどね』

 

それだけを告げ、記録再生は終了した。同時に、USBが製作され託される。希望の詰まった、女神の祝福と共に──

 




ヒロインXX「・・・歴代の署長で一番優秀だったまでありますよこれ。土壇場で出来ること全部やってません?」

ナイア「銀河警察の戦力といえば、全宙域をカバーする大艦隊や最新スーツ礼装といったものですが・・・まさかそれらが本当に?」

ヒロインXX「となると、今二人で封印を解くのは危険ですね。一旦ギルに報告し、情報共有を行いましょう!」

ナイア「報連相、大事です!」

ニャル【目標は達成できたかな、二人とも】

ヒロインXX「げっ!」

「お父さん!?」

【これは通信だから安心なさい。私は入れないよ。ハッキングも無理だ。しかし娘の五感があるならば其処にワープゾーンと意志は放てる。尾行や追跡対策にワープゾーンを作るから、其処から帰っておいで】

ナイア「ありがとうございます、お父さん。私、女神様に善良と言っていただけました!」

ニャル【そうか。随分と見る目のある素敵な女神なんだろう。XXもバディ活動ありがとう。ボーナス振り込みますから口座を教えてくださいな】

ヒロインXX「やりました!ミッション完了ですねナイア!帰りましょう!」

ナイア「・・・また来ます。署長」

そして、二人はワープにより帰還する。入室後から、足がつかぬような裏技で。

宇宙警察門前

?【・・・どうやら離脱されたか】

待ち構えていた何者かの襲撃をかわし、二人は成果を得る──

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