――意識を覚醒させ、器を動かす
やりたいことができたため、魂を以て器を駆動する
「よし・・・オルガマリー。いるか」
オルガマリーを呼び出し、プラネタリウムに参じさせる
「はい、ギル。いかがいたしましたか?」
すぐにやってくるオルガマリー。好都合だ
「うむ。お前に一つ指令を渡す」
「し、指令・・・ですか?」
――そう。彼女には、一緒にやってほしいことがある
「うむ。何、簡単な話よ」
それは――
「休むぞ。我と共にな」
「はっ・・・休む?」
――そう。やりたい事、それは休息だ
一目見て判断するまでもなく、器とオルガマリーは働きすぎだ。片や至高なりし黄金の王、片や聖杯と一体化した奇跡の結晶。問題はないのかもしれない
――それでも、彼等が無理を通しすぎて倒れ果てるような未来は迎えたくない。少しくらい休んだって、文句は言われないだろう
「貴様は勤勉だが加減を知らぬ。貴様の活躍は聞き及んでいる。ここらで一息入れるがよい」
「よ、よろしいのですか?」
「よい、許す。我の傍で休息するがよい。――何故だか我も、無性に眠くてな・・・」
――不敬に当たるのかもしれない。余計なお世話なのかもしれない。王の判断を無視するものかもしれない
でも・・・今は、自分が誰よりも近くにいるのだから。自分が出来ることをしたいと思う
――この王を喪う未来は、誰も望んでいないだろうから。勿論、自分も
拒否され、弾き出されるのを覚悟で。制御をこちらに任せ、王には床についてもらう
――休むために、己を起こす。我ながら、変な試みだなぁと。暢気に思ってしまったのは内緒だ
「たまには怠惰を貪るも良かろう。星の輝きに包まれ眠るは、中々の心地よさだぞ?」
「――解りました。それがあなたの裁定ならば」
「ふはは、そう堅く捉えるな。単に昼寝だ。他愛のない休息だぞ?」
「はっ、はい」
――二人とも、本当にいつもお疲れさまです
自分が貴方達の余暇を護ります。だから今は、安らかな時間をお過ごしください
「では、寝るか・・・――何かあれば、起こすがよい」
「・・・はい・・・」
・・・程無くして、二人の安らかな寝息が、プラネタリウムルームを満たしていった・・・
――数時間が立った頃
(こんにちは。お昼寝かい?気が利くんだね、君は)
聞きなれた声に、魂を向ける
(やぁ。キミに会いに来たよ。フォウくんだ)
美しき獣、フォウだ
――こんにちは。キミも眠りに?
(それも悪くないけど、今は違う。いつもの確認さ)
いつもの・・・
(ローマ突破、おめでとう。まずは祝辞だね。また一つ、君は異変を蹴散らした。アイツの至宝も無事振るえたようで良かった良かった)
――至宝、乖離剣エアの事か
(まさかアイツがキミにそれを触れさせ、真価を示すことを許すとは。ボクは驚いたよ)
――そんな大それた事はしていない、と思う
その時に抜くべきと感じ、器はそれを赦した、それだけの話だと思うな
(フフン、驕りがないのはいい事だ。その調子で頑張るんだよ。・・・それで)
獣が語る。その言葉を紡ぐ
(辛くはなかったかい?もう、止めてもいいんだよ?)
――毎度の問い。甘い誘惑
(飽き飽きかな?でもごめんね。そういう慣例だからさ)
辛いなら止めてもいいという、単純にして甘美な誘惑
もし、首を縦に振ったら何が起こるのだろう?
(それは言えないよ。キミが諦めない限りはね)
――一つ解るのは、けしてろくなことにならない。その一点のみだ
・・・止めるつもりはない。まだ自分は、何も成し遂げてはいない
人理は焼け落ち、進む未来は消え去り。一歩一歩を踏み締めるのが精一杯な現状でも。まだ自分は、絶望に屈してはいない
いつか、『あの景色』を見る日まで――出来ることを、少しずつやっていきたいと思う
不安は、ちょっとだけ。恐怖も、ほんのすこしだけある
でも――それを上回る希望と信頼が、自分を庇護してくれる限り。逃げ出す選択肢は選ばない
――大丈夫だよ。フォウ。まだまだ、頑張れる
(――――)
――だって、自分には、キミや皆が
何より・・・世界で一番偉大な王様がついているんだから。だから、大丈夫。
辛くても進むよ。・・・いつもの王様と違って、魂は頼りないかもだけど・・・
(――そっか)
ピョコンと、肩に飛び移る
(なら、キミの物語はまだ続く。キミの足跡は、キミのものだ)
――うん。これからも、どうか
――偉大な王に、庇護される資格がある自分でありますように
(うん。・・・さぁて、シリアスな話は終わりにしようか)
?
(ビーストトークと行こうじゃないか。まずははい。カルデア大冒険日記、ローマ編を贈るよ)
枕元に置かれる、ネロを表紙にされた分厚い冊子
(ローマの活躍と旅路をまとめた二冊目さ。ボク視点でピックアップされた珠玉の一冊。改心の出来だ)
・・・表紙を見るに、ネロを取り上げた冊子なのか
(ぶっちゃけネロしかピックアップされてないと言っても過言でもないかな。ネロ専用の冊子、漢達の活躍をまとめたマッスルカーニバル編の二つだよ。キミには限定の初版をあげるよ。アイツが起きたら手にとってごらん。バスト、ウェスト、ヒップに注目し、ネロの総てをボクのコラムで解説した神祖含め歴代皇帝も太鼓判を押す至高の一品さ)
――あの情熱の皇帝の雑誌か。うん。楽しんで読ませてもらうとしよう
(むむ、落ち着いた反応だね。喜んでネロー!と叫んでもいいくらいなのに)
嬉しいとも。あの冒険がこうして、形になり残されるのはとても誇らしい
(・・・ところでキミ。好きな女の子はいるかい?)
好きな女の子?
(好みのタイプといった方がいいかな?キミが惹かれるような相手は今までいたかな?)
・・・好きな女の子、か
(たとえば、マスターやマシュはどうかな?)
うん。好きだ。快活なマスター、頑張り屋なマシュ、どちらも好きだと思える
(所長はどうだい?)
献身的で甲斐甲斐しい所長を、嫌う理由はないと思う
(ジャンヌやネロはどうだい?)
どちらも好きだ。使命に殉じたジャンヌの生きざま、情熱を以て世界を愛したネロ。どちらも大変好ましいと感じる
(マリーやジャック、ナーサリーは?)
マリーの在り方は、輝きを与える星のようだ。あんな素敵な王妃、時代を越えて愛されるのも道理だろう。ジャック、ナーサリーは無邪気で愛らしい。嫌いになる理由は無いと感じる
(・・・デオンは?)
美しく華やかな白百合の騎士。綺麗だと思う。綺麗なものを厭うほど、自分はひねくれてはいないみたいだ
(・・・スパルタクス、神祖は?)
反逆に命を懸けた凄まじい在り方、総てを肯定し、受け止める寛容さ。自分もいつか、あんな偉大な生き方に添える日がくるのだろうか
(・・・)
――?
(そうだった・・・キミはまだ、無銘だったね。趣味嗜好、フェチズムなんて持つべくもない、か)
???・・・なんの話・・・?偽りなく好みを告げたつもりだが・・・
(くそぅ!負けた気分だ!まさか一欠片もエッチな気分にならないなんて!そして眩しい!無垢さが眩しい!此処は撤退する事にする!だが見ていてくれよ、いつかボクのコラムでキミを劣情にたぎらせてみせるとも!美しき獣を甘く見るなよ――!)
哀しげな鳴き声をあげ、プラネタリウムルームから走り去る淫獣
――・・・何か、悪いことをしてしまったのだろうか。自分は、嫌いな者なんていないと伝えたかったのだけど・・・
――後で、スイーツを奢ってあげよう
そうして無銘は、器とオルガマリーの休息の警護へと戻った
「来るがよい、大英雄。貴様が相手なら、我が財の撃ち甲斐があると言うもの――!」
「いや――――!!なんで私がアレなのよ――!!」
「魔女だ!魔女がいるぞ!クソッ、どっちも酷い!何て日だ!」
「貴女と違い、私は今度こそ御守りするの。私のイアソン様を。幸福なままで、幸せなままで」
「――おい、英雄王、この最果ての海とやらの元凶、一つ余に任せてはくれんか」
「ほう?何か琴線に触れたか?征服王」
「うむ。オケアノスは我等が夢見た果て――断じて誰かが誂えたものを我等の終着するわけにはいかんのでな」
「撤退だ!撤退するよ!あのデカブツは、あの金ぴかに任せた!!」
「待って!いかないで!戻って!!ギル!ギル!!!」
「おう、さま・・・!」
――大丈夫。必ず追い付くから。歌でも歌いながら待っていてほしい
「何をやっているんだヘラクレス!!それでも英雄(オレ)たちの頂点か!!」
――こちらを侮ったな、船長。彼が頂点ならば、器たる英雄王は貴方達の原典だ――!!
「――これで11。いよいよ後がなくなったな、ヘラクレス」
――自分がいる限り、この王に無様な土などつけるものか――!!
「今こそ我等は!!古今無双の大英雄と共に!おぞましき魔神に勇姿を記す!!」
「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛――!!!!」
「武器の提供、我が受け持ってやろう!精々着飾るのだな、凡英雄ども!」
「今こそ赴くは星々の果て!いざや行かん!!偽りの最果ての海を――蹂躙せよ――!!!」
第三研鑽 英雄航海誌・オケアノス
――お前は、オレといる間は化け物じゃない
「へら、くれす・・・やっぱり、おまえは、いちばんだ」
「⬛⬛⬛⬛⬛――」
――未来の王を護る、大英雄だ
「おまえが、まけるわけ、ない・・・だって、おまえは、おれの――」
「――⬛⬛⬛⬛(眠れ、友よ)」
近日、投稿予定
どのキャラのイラストを見たい?
-
コンラ
-
桃太郎(髀)
-
温羅(異聞帯)
-
坂上田村麻呂
-
オーディン
-
アマノザコ
-
ビリィ・ヘリント
-
ルゥ・アンセス
-
アイリーン・アドラー
-
崇徳上皇(和御魂)
-
平将門公
-
シモ・ヘイヘ
-
ロジェロ
-
パパポポ
-
リリス(汎人類史)