人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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???

?『許せんな』

?『それほどでしょうか』

?『実に許せん。奴等は見るに争わず、この争乱を治めるために動いている。身の程知らずの不遜と言わずなんという』

?『高潔な意志ではないかと』

?『いいや不遜だ!この宇宙を救うのは我々だ、無様で愚鈍な我等以外の命が息絶えようと構わぬが、未来を!未来を見据える事だけは許さん!貴様らに、人間が一歩進んだ視点に至ることなどおぞましい!』

?『嫌いを拗らせすぎだと思います』

?『えぇい、そんな事はない!俺は行くぞ!人間やサーヴァントごときが世界を背負うなどという思い上がり、銀河警察の生き残りごと仕留めてやる!』

?『まず間違いなく筋が通っていないのはこちらですが、他ならぬあなたがそう仰有るなら・・・ん?』

(・・・いない・・・)

『・・・次のシーズンを掴むのは、我々・・・そうなのですね・・・』


破滅の流れ星

「『残業殺しのジークフリート』。銀河警察の中でもエリート中のエリートで、頼まれた仕事を絶対にやりとげる職務忠実の規範として有能、有名の代名詞。次期署長候補として間違いはなかったと思われたが、背中がザックリとした服しか着れないため自主的に辞退。エレシュキガルの推薦を行った信用、信頼ともに完璧なセイバー・・・好評価ね、随分」

 

ジークフリートが飛ばされた星へのワープアウトを終え、通常航行モードに入ったリリィ組。これより彼女らは銀河警察セイバー、ジークフリートを助ける為に惑星ニーベルゲンの洞窟へと向かう。

 

惑星ニーベルゲン・・・グラズヘイム宙域にあるとされる結晶と財宝の埋もれる資源豊かな星であり、その性質は有名であるのだが同時に最も血にまみれた惑星とも言われている。その豊富極まる資源と財宝から開拓者、権利主張者、銀河警察、宇宙海賊が常に血みどろの抗争と戦争を繰り返しており、未だその財は誰にも手付かずのままに放置されているという。『皆殺し合い滅んだ』のだ。その星は理性を狂わせる魔性の黄金の惑星として、今尚畏怖と共に語られている。

 

「よりによってそんな俗な場所に飛ばされるとか、扱いと待遇が酷すぎませんか?やだ、将来の私就活失敗し過ぎ・・・?」

 

「恐らくだけど、無欲で真面目だからこそ其処に飛ばされたんじゃないかしら。銀河警察の資金源や開発出費。あるいは脱税や無法の金なんかもあったりして」

 

「なるほど!見せたくないもの、秘密にしておきたいものを託せるような信義の方なのですね、こちらのジークフリートさんと同じです!きっと頼もしく、心強い味方になってくれる筈ですよ、皆さん!」

 

断らない、裏切らない、騙さない。そしてエレシュキガルの大切なビジネスパートナーだというならば不安はない。一同は速度を上げ、ニブルヘイム、ムスペルヘイム宇宙帯を突破していく。

 

「もうすぐ目的地ですね。まっさ・・・協力対象のいる星へと辿り着きます!皆さん、降下体勢を取るように!」

 

X、イシュタルの宇宙船が降下の体勢を取る。あわててリリィも自分の席へと飛び退き、シートベルトを付け降下へと備える。

 

(自分の事を信じてもらうこと。誠実と誠意を宿し剣を振るうのですね!なんとしても、私達の事を信じてもらわなくては!)

 

決意と興奮を露に、シートベルトを付けたリリィ。──その時だった。

 

『熱源光速接近。熱源光速接近。ショックに備えてくださいショックに備えてください』

 

「!?熱源、敵襲ですか!」

 

「きゃぁあぁあぁあ!?」

 

瞬間、ドゥン・スタリオン号に激震が走った。何かに叩き付けられたような、ぶつかったような横殴りの衝撃。並の宇宙船では、粉々になるような一撃。横っ腹をかすめたのだ。何者かが光速で。それは、敵であり──

 

「熱源の大きさからしてサーヴァント!闇討ち騙し討ちとは卑怯な真似をしてくれます!アサシンの専売特許でしょう!私には関係ありませんが!」

 

そう、間違いなくサーヴァントの襲撃である。データベースを検索してみるが、当たり前ではあるが光速で動くサーヴァントなどデータにはない。楽園には招かれていないという事実だけが理解される。そしてその攻撃は、まだ終わっていない・・・!

 

『熱源転身、攻撃が飛来します。オート回避プログラム作動。迎撃推奨、対空防御機能自動展開』

 

『こちらイシュタル、どうやら攻撃を受けているようね。熱源は感知したけれど詳しいビジョンは捉えられていないわ。そちらはどう?』

 

「同じです!仮にもセイバーまみれの宇宙でアサシンめいた奇襲アンブッシュマニューバをこのヒロインXにかますなんて、相当新入りかつ粋がりのセイバークラスだと見ました!セイバーなら正々堂々戦いなさい!正々堂々!リリィも見ているんですよ──ッ!」

 

しかしイシュタル、ヒロインXの対処と楽園の整備もまた完璧だった。因果律予測装置を搭載した二種の最新鋭スペースシップを手足のように操縦し、光速の軌跡の襲撃を右へ左へとかわしていく二隻、それを行える二人のパイロットにより襲撃は致命的な傷をかわすことを可能としていたのだ。攻撃の勢いを増していく光の軌跡に、パイロットとしての腕前で張り合い、戦っているのだ。彼女ら二人の神業テクに、リリィはただ感嘆を示す他に無かった。

 

『光速で動くとはいっても、思考速度は光速とは限らない。それにサーヴァントだもの、宝具や逸話の奇跡にも限界はあるわ』

 

「具体的には、信頼できるマスターや仲間がいるかどうかですね!このまま甲板で仕留めても構わないんですが、悪質なスペース当たり屋に構っている暇はありません!このまま星に降ります!

 

「す、スペース当たり屋もこんな感じなんですか師匠!?」

 

「こんなものはいつもの事過ぎる出来事です!いちいち驚いていたら身が持ちませんよ!構うことはありません、降下地点入力からのワープで振り切ります!イシュタル!火力支援を!」

 

『もうやっているわ。ランデブー地点を送信する。其処をアンカーにするわ、逃げるわよ!』

 

火力支援を始め、離脱をカバーするイシュタルのスペースシップ。楽園改修を受けた最高技術が詰まったイシュタルの宇宙船は最高クラスの設備の塊であり、全ての武装は『当てると決めてから当てる』ものだ。いくら速かろうと、当たる地点を予測し撃ち込むのだ。完璧に避けられるのに必要なのは速さではない。本に書かれた物語を見るような三次元的思考、即ち正着が常に見える視点である。それを活かし、イシュタルはドゥン・スタリオンの離脱を助ける。

 

「先に行きますよイシュタル!リリィ、しっかり捕まっていなさい!このスペースシップ、オシャカにされては困るのです!」

 

「っ──!」

 

花火の様な火花と閃光が周りを彩り、激震が宇宙を震わす中、いよいよワープ着陸の準備が整う。

 

『ワープまで3、2、1・・・入力地点へ、ワープします』

 

瞬間、ワープシステムが起動。通常空間からワープドライブ空間に一瞬で移動し、所定された地点へとワープを完了する。目的地は目と鼻の先の為、ワープが速やかに間に合ったのである。超短距離ワープを、ヒロインXは成功させたのだ。残るはイシュタルのスペースシップのみであるが・・・

 

「しつこいわね。どうしたものかしら・・・自動操縦にして甲板で撃墜するのが得策・・・ん?」

 

まとわりつく光にイシュタルが対策を練っていると、突如宇宙空間がバリバリと裂け、ヘドロやドブのような色合いの攻撃が発せられる。サーヴァントユニヴァースにおけるダークマター、汚染エネルギー【サクラ】である。当たれば霊基が腐り始めるという代物、貿易禁止素材の劇物だ。

 

「──援護、助かるわ。この隙にずらからせてもらうわね!」

 

イシュタルは刀を収め、素早くコンソールを叩く。目標はヒロインX達のワープアウト地点。ランデブー地点との接触。ワープ確率100%、問題なく跳躍は可能。

 

「私の宿業というか、機械苦手が発動しませんように・・・ワープ!」

 

ワープが開始され、一瞬で完了される。残されたのは僅かなワープの粒子のみ。なんとか、追撃を逃れきったと言っていいだろう。

 

トラブルはあったものの、入力されていた座標へと向かった二人。待ち受けるは、ブラック企業におけるnoと言わない男との邂逅──




?『ちっ、おのれ忌々しい!薄汚い反応に鉄槌を下す筈が、まんまと逃げられるとは・・・!』

?『落ち着いてください。失敗したとしても、私達の目的は変わりません。あのおぞましき外宇宙の反応を持つ者達を速やかに排除する』

『あぁ。この宇宙の次のシーズンを作るのは我々だ。不相応な思い上がりは、俺が正さねばならん!』

『落ち着いてください。次は私がやってみます』

『まて、それは容認できん。お前にあの薄汚い血が跳ねるなどは許さん』

『えぇ、大丈夫。私はやり方を変えてみます。だから落ち着いて、『兄様』』

『ぬぅう・・・。いいだろう。ここはお前に免じ退くとしよう・・・』

『はい。どうせ、奴等は逃げませんから』 

忌々しげに吐き捨てた後、光は闇を照らす灯台が如くに消えていく。

──そして、その中途より『もう一つ』の光が合流し、流れ星の如くに消えていった──

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