人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ワルキューレ『『『『『排除開始』』』』』

ヒロインX「撃ってきました!まさかスペースシップに対し攻撃が可能な個人がいるとは!ギルだけだと思ってました!ギルの専売特許をアバウトは生意気なっ!」

イシュタル『言ってる場合!?突撃モードに入っているわ。突っ切るしか無いわよ!』

ジークフリート「こうなればワープ強行しかあるまい。超短距離ワープの準備を!」

ヒロインX「無茶です!座標も無いのに!何処に飛ぶか検討もつきませんよ!」

ポルクス「心配はいりません。私がいます。ジークフリートさん、よろしくお願いいたします」

ジークフリート「──信じてはくれないか、ヒロインX」

ヒロインX「・・・解りました!ならば・・・!」

イシュタル『ワープするのね、それなら──』



やがて、二つの爆炎が燃え盛り、やがて収まる。それは、丁度宇宙船二つ分の爆発。

『『『撃墜、完了』』』

そう、今、宇宙船が二隻。・・・宇宙の塵と化す。

それを認め、ワルキューレが次々と星へと降下していった・・・


行え!スニーキング夫婦訪問!

「所詮は美少女ガワの北欧ドール!私の何から何まで計算づくの作戦にまんまとひっかかりましたね!そう!セイバー忍法『墜ちたふり』!!」

 

宇宙上空でワルキューレに襲われ、あえなく撃沈したカルデアスペースチーム。あわれ機体は爆発四散・・・したかに思われたのだが、やらかしと同じくらいのファインプレーにて無事に事なきを得る。やらかしとフォロー、イーブンというところである。

 

「やるわね。艤装の一部を派手に爆発させて爆発を偽って、超短距離ワープで上陸するなんて」

 

「俺がシグルド殿の居住地区座標を知っていたのが幸いした。更に・・・」

 

「我等ディオスクロイは航海を保証する神でもあるので。これくらいのワープなら成功率百パーセントです。えへん」

 

ヒロインXの機転によりワープ態勢に入り、ジークフリートがワープ先を入力。諸々のワープ環境をポルクスがクリア、保証し超短距離ワープを完遂させた。一人欠けたら失敗していた危険な綱渡りな事に変わりは無いが、それでも賭けには勝利した。遅れてワープが成功し、皆は此処にいる。ホテル街『ヴァルハラ』近くの立体宇宙船駐車場にジークフリートが着陸を計算したのである。イシュタルも即座にワープに続き、無事に追跡を逃れたと言うことだ。

 

「実際に降り立ってみると・・・素晴らしい環境です!青空も緑も、整頓された町並みも!まるで幻想の世界に紛れ込んだ様な感覚があるくらいです!」

 

かかるオーロラ、せせらぎの河川。咲き乱れる華に広がる草原。白い雲が流れるその光景は、一等レジャー・観光地や避暑地である事を理解するに十分なものだった。此処は確かに、精神や心を療養するには相応しい環境であり、シグルドが妻の療養に選ぶのも頷ける。見渡す限り、害となるものは無い──と、いう認識は甘いことを一同は理解する。

 

「くっ、上空をワルキューレ達が哨戒しています!なんとしつこいシステムガールたちでしょう。念には念を入れて、とでもいう気ですか!」

 

宇宙の爆発を疑ったのか、それとも不時着した可能性を考慮して捜索を行っているのか。多数のワルキューレが上空を浮遊し探索を行っているのをいち早く察知する一行。どうやら彼女らに、油断の二文字は無いようだ。英雄王にも見習ってほしい概念である。だが、探索のルーンを使わない辺り警戒と哨戒のレベルの域を出ていないのだろう。

 

「ワルキューレ達は神代のルーンを使いこなす。本気で探索するつもりなら、こちらが隠れられる事など出来ない。警戒のレベルを引き上げられる前にシグルド殿の自宅に赴くとしよう」

 

「船には隠蔽ジャミングをかけておくわ。私達は何処に行けばいいのか、あなたが導いてくれるんでしょう?」

 

「あぁ。隠蔽宝具【タルンカッペ】を使用する。この人数ならなんとかなる、筈だ。このまま隠れてシグルド殿の自宅に向かう」

 

タルンカッペ。ジークフリートが所有する姿隠しの外套。広げればすっぽり一行を覆うことができると彼は言う。そして告げるのだ。ブリュンヒルデに今の銀河の状況を知らせ、自身らを引き裂く者では無いことを告げる。

 

 

「ブリュンヒルデ殿は恐らく、銀河警察が崩壊した事実を知らない。長らく療養していた為、外界との関わりを断っていたためだ。懇切丁寧に、職場呼び出しではないという事情を説明しよう。銀河警察は崩壊した事を知らせれば・・・」

 

ブリュンヒルデの保護の名目は恐らく、夫をブラック企業から護る為であろう。一度再び出勤してしまえば向こう100年は会えない事は確定する。だからこそ、そもそも外界から夫を隔絶する為に厳重な警備態勢を強いている。ならば、既にブラック企業は滅んだ事を伝えたならば、きっと話を理解してくれる筈だ。シグルドの協力を快諾してくれる、筈だろう。

 

「そうです!誠心誠意話して、シグルドさんを誘拐しに来た訳では無いことを説明しましょう!」

 

「まずは誠実に話し合い。いい事ですね。ギリシャには言って解る相手などほとんどいないのが当たり前だったのです。話す前に屍が出来上がるのが通例ですから、素晴らしいと思います」

 

「そう上手く行けばいいんだけど・・・。話が通じる相手が仮にも夫を監禁なんてする?ギリシャは不祥事が、インドはインフレが有名だけど・・・北欧は復讐と悲恋が有名じゃなかった?」

 

北欧神話は華やかな逸話といった気色ではなく、殺伐と裏切り、或いは悲恋の彩りを見せる。所持した武器は作り手を殺害し奪い取ったものだったり、死に際に武器に呪いをかけたり、夫に記憶喪失の薬を服用させられたり、自身の妻を他人の男のものにさせるのを他ならぬ夫が手伝ったり、親友もろとも夫の殺害の関係者を国が傾くレベルで皆殺しにしたり、寝取りに荷担した夫を殺し自分も死んだり・・・

 

とにかく、血生臭く悲恋に満ちている。最終的にラグナロクで全てが滅び去る辺り、徹頭徹尾殺伐とした気色の神話なのだ。そしてその中のブリュンヒルデと言えば、惚れ薬で狂わされ最終的に夫を殺した筋金入りの悲劇のワルキューレであるのだ。単純な対話であるなら、リッカクラスの技術が必要不可欠であるのが想像に難くない。ましてや、それが夫を引き離すという説得であるのなら・・・

 

『あちらから反応、物音を感知』

 

『探知、探索に入ります』

 

「まずい・・・!迷っている暇はない!タルンカッペを使うぞ、一ヶ所に集まるんだ!」

 

素早く一ヶ所に集まり、タルンカッペを使用し隠蔽を行う一行。それと同時に、ワルキューレ二騎が周囲に降り立ち探索を開始する。

 

(動くな・・・動いてはならない・・・)

 

(物音を・・・)

 

(立ててはダメです・・・)

 

(・・・あっ!?リリィ!裾!裾!!)

 

(えっ!?あっ・・・!?)

 

慌てて一ヶ所に固まり隠れたはいいが、リリィの一部分がはみ出てしまっている。見るものからすれば不自然だ。耳無し法一が如く、一部分だけが浮いているに等しいのだから。

 

『むむっ、この裾は』

 

『これは匂います。隠れ惑うネズミの匂いが、プンプンします。対処を──』

 

(えぇい仕方ありません!一呼吸の内に首を跳ねます!南無三ッ!!)

 

いよいよもっと実力行使しか残されていない。そんな状況と定義付け、イシュタルとヒロインXが戦闘を行おうとした──その時だった。

 

「当て身ッ」

 

『『はうっ!?』』

 

瞬間、一瞬で躍り出たポルクスが音もなく忍び寄り、その鋭い当て身によってワルキューレ二人を叩き伏せた。気づかせもしないあまりにも速い手刀。ヘラクレスでなければ見逃していた。興味と感心を集めた隙を突き、ボクシング含め格闘技の神たるポルクスが的確に無力化させたのだ。余りにも鮮やかな手前、ワルキューレが気付く間も無く気絶していった。

 

「騒がれると面倒です。暫く寝ていてください。いつ起きれるかは解りませんが」

 

「・・・不法侵入に暴力沙汰は中々思うところはあるけれど、非常事態として後回しにしましょう。二騎を隠して進むわよ!」

 

イシュタルの指示に従い、一同は素早くホテル街へと向かっていく。見つからないようタルンカッペを纏い、歩幅を合わせて。

 

「気を付けろ・・・ばれないように・・・」

 

「はみ出てはダメですよ!大丈夫、はみ出るような面積は私達には無いはず・・・。・・・・・・・・・」

 

「自分で言ってダメージ受けてるんじゃないの!」

 

「スレンダーと言いましょう。兄様はそう言ってくださいました」

 

「いち、に、いち、に、いち、に!」

 

ムカデめいたゴージャスチーム達は、シグルド宅へと急ぐ──




ホテル街

リリィ「穏やかですね・・・」

ジークフリート「ワルキューレはあくまで維持機械であるオートメーションだ。自分から自発的に何かを行う自意識が芽生えている個体は数少ない。訪れる者がいなければそもそも閑古鳥を追い払う働きも出来ないのだ」

イシュタル「オーディン手製のオートメーションか・・・ブリュンヒルデは例外なのね」

ジークフリート「人を愛することで罰を受けたワルキューレである彼女は、自意識を手にした。それはワルキューレからしてみればバグであるのだろうが・・・ッ!?」

『巨大な魔法陣』

「何!?探索の──」

?「そうです。侵入者を探知、排除する為の陣」

?「お姉さまの邪魔はさせないよ!」

?「NTRルートは御断りします」

リリィ「なっ!?」

ヒロインX「あなたたちは・・・!」

オルトリンデ「私はワルキューレブラック・オルトリンデ」

ヒルド「ワルキューレピンク!ヒルド!」

スルーズ「ウルトラスペシャルデリシャスゴージャスエクストリームグレートマーベラスブロンドワルキューレゴールド・スルーズ。我等!」

「「「お姉さま応援隊!!」」」

「・・・はぁ?」

突如爆風をバックに現れた見覚えのあるワルキューレ達に、首を傾げるヒロインXだった・・・

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