人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ヒロインX「なんですって?よく分かりませんでした。もう一回言ってもらっていいですか?」

オルトリンデ「あっ、はい。では・・・ワルキューレ・ブラック!」

ヒルド「ワルキューレ・ピンク!」

スルーズ「あっ、えっと・・・ワルキューレ・ウルトラスペシャルデリシャスゴージャス・・・」

ヒロインX「・・・・・・」

「・・・ブロンドゴール」

「カリバ──」

イシュタル「ストップ!ストップよ話が拗れる!ジークフリート!リリィ!頼むわね!」

ヒロインX「むぐぐ!むぐむぐ・・・!」

スルーズ「・・・順番はどうでしたか・・・」


ワルキューレ・ドロップアウト

「・・・ねえ、やっぱりスルーズの名乗り長かったんじゃない?相手さんものすごい困惑しているっというか・・・」

 

「それは違います。私達の圧倒的な覇気みなぎる威風堂々とした名乗りに文字通り圧倒されているんです。それに名乗っている間は不可侵領域の世界として攻撃をしてくる事はありません。先手を取ることとして大事な事です」

 

「そ、そういうものなんですね。私はよくわかりませんが、スルーズがそういうならそうなのでしょう。私達は最後の砦。なんとしても阻まなければ。そう!」

 

「「「ブリュンヒルデお姉さまの夫婦生活の為に!いざ、御覚悟を!」」」

 

息ぴったりな様子で、ビシリと槍を突きつけてくるワルキューレ三姉妹。楽園でも観測されている個体、オルトリンデ、スルーズ、ヒルドの三騎である。みょうちきりんなポーズと爆風をバックに、一行をしっかりと阻む。彼女らはブリュンヒルデをお姉さまと慕っている。その夫たるシグルドを護る為に・・・

 

「お姉さまも嬉しいのは解るけどさぁ・・・でも赤ちゃんにしてまでやる必要はあるのかなぁ・・・」

 

「愛の形はまさに千差万別です。他人が口を出していいものではありません。バブみを感じ、おぎゃる・・・それが尊いのだと大神が仰有られていました」

 

「お、お姉さまがそう言うのなら間違いはない、んでしょうか・・・いえ、きっと大丈夫でしょう。スルーズは博識、御父様は知識に溢れた大神。きっと間違いないです。はい」

 

「・・・ブリュンヒルデの側近にして、隊長格の三人か。その様子からして、君達はシグルド殿を引き渡さない為にあの二人を護っているんだな」

 

ジークフリートは静かにその三人の様子を受け入れて頷いた。ワルキューレの在り方として、夫婦を護るのは至極当然の事だからだ。・・・しかし。

 

「いつの間に特撮めいた名乗りなんてみょうちきりんなものを取り入れたんです?北欧の皆様、特にワルキューレは随分と情緒豊かになったんですね?」

 

ヒロインXが怪訝に問い返すように、ワルキューレ三人娘の様子は若干ずれている様に思える。わざわざ爆発迄用意した大袈裟な名乗り、ポージング。まるで特撮ヒーローの様な様式美の御約束。本来のワルキューレは機械的で、そんな遊び心など有する筈も無いのだが・・・

 

「それは、その・・・シグルド様とブリュンヒルデお姉さまの漸くの邂逅なので、たくさん楽しんでもらおうと私達の権能を使って様々な娯楽を検索していたのです。そうしたら・・・」

 

「スルーズがいろんな娯楽にドハマりしちゃってさぁー。それで知識共有してた私達も引きずられるみたいにアレコレに興味が湧いちゃってさぁ・・・」

 

「今ではすっかりネットサーフィンと良さげなアーカイブのネタを歌ってみた踊ってみたを再現しお姉さまとシグルドさんと一緒に贈る日々・・・」

 

「あぁー・・・禁断の果実一気食いしちゃったわけですか・・・」

 

そう、せっかく帰ってきたシグルドに御執心なブリュンヒルデを、せめて自分達なりに支えてあげようとこの宇宙の様々な娯楽をアーカイブ検索して、自身らも勧める為にそれらを経験し、視聴や拝見を繰り返した結果・・・

 

「私はゲームと特撮に。オルトリンデはファッションに、ヒルドは食べ歩きとグルメリポート・レビューにドハマりしたのです。私達は今、完全に自意識を確立しました。そう、お姉さまと共に在る為に、何処までも何処までも知識を探求していった・・・そう、大神オーディンの如くに・・・」

 

「それ、大神オーディン最大の誤算とか言われないです?」

 

生真面目でありすぎる故に、片っ端から娯楽やらあれやこれやの禁断の果実たる人々の娯楽文化の知識を吸収していった結果。重大汚染・・・否、文明開化を三者三様に起こしてしまったのだ。善意故に、禁断の果実を楽園から取ってきてしまったのである。

 

「業務も使命も大事です。しかしそれは適切な報酬と娯楽あってこそ。それに気付いた今、あなた達にシグルド様を渡すわけにはいきません」

 

「そうよそうよ!疑問に思わなかったのがおかしいくらいにあんなの人が働く場所じゃないわ!」

 

「身柄を引き渡してしまえば、またお姉さまとシグルド様は数百年は離ればなれ・・・そんな悪夢を、認めるわけにはいきません。なんとしても、ここで阻止します。絶対に・・・!」

 

「ま、待ってください!私達は銀河警察の遣いでもなければ、シグルドさんとブリュンヒルデさんを引き離しに来たのでもありません!ただ、力を貸して欲しくて・・・!」

 

「その通りだ。銀河警察は既に滅んでしまった。そもそも銀河警察が存在していると言うのに、業務を残したまま職員を帰すという事があるだろうか。シグルド殿が帰宅を果たせたと言うこと。それが銀河警察が滅亡したという何よりの証左ではないだろうか」

 

(その仮定はあまりにも悲しいけれど・・・次のシーズンでは改革も考えなくちゃいけないのではないかしら・・・)

 

「俺は仕事人間だが、だからこそ混乱をさせる連絡網は回したりなどしない。だから、信じてほしい。この通りだ」

 

そうして、彼は誠意ある態度を取った。それは、背中が見える程の最敬礼。完璧な角度の御辞儀にて弱点を晒す。突き刺されでもすれば一たまりもない唯一無二の泣き所を、誠意として示したのだ。そのただ事ではない姿勢に、ワルキューレ達は顔を見合わせる。

 

「・・・銀河警察が?本当ですか?」

 

「いや、本当じゃなきゃジークフリートさんがここまでやったりしないよ絶対!背中だよ!?死んじゃうんだよ!?」

 

「・・・そこの白いセイバーの方。あなたの意見を聞かせてください。シグルドさんとお姉さまを害しに来た、のでは・・・無いのですね?」

 

リリィに問い掛けるオルトリンデ。その目線から決して目を逸らさずに、リリィは答える。

 

「はい!どうか信じてください!私達はこの宇宙に、自由と平和をもたらすためにやって来たのです!その為に、私達は力を貸してほしいのです。最高のセイバーの一人、シグルドさんの力を!」

 

「・・・。スルーズ、ヒルド。私は、信じてもいいのでは無いかと思います。私達の推しである二人を、この方達に託してもいいのでは無いかと」

 

オルトリンデの意見に、スルーズとヒルドも一定の理解を示す。そもそも、いつまでも引きこもっていられるものでもないということを彼女らは気付いていたのかもしれない。

 

「んー・・・そうだねぇ。どう、スルーズ?オルトリンデはこう言ってるよ?任せてみても、いいんじゃない?」

 

「・・・。まぁ、NTRに来たのではないのならいいでしょう。今の銀河の状況ではハネムーンにも行けませんからね・・・それでは不健康極まると言うものです。きちんとそういう健全な夫婦生活が送れる環境を保証するのが私達の役目。それと志を同じとするならば、阻む理由もありません」

 

ワルキューレは何より、まず対話を選んだその理性を信用した。言葉を尽くすその誠実さを信じたのだ。ジークフリート、そしてリリィの高潔さを信じたのだ。この者達なら、必ずやこの銀河を、そして宇宙の平和を掴む者達であると信じたのだ。

 

「ならば、案内致します。シグルド様とブリュンヒルデお姉さまのおわす住宅・・・愛の巣に」

 

信用を勝ち取る事の出来た一行は、案内と導きのままに向かう。二人が待つ、愛の巣と呼ばれし居住に──。

 




ヒロインX「むぐむぐ・・・ぷはぁ!?何をするんですかいきなり!?」

イシュタル「ごめんなさいね。あなたが口を挟むと絶対ややこしくなると思ったから・・・」

ヒロインX「失敬な!味方には後ろから切りかかりなんてしませんよ!抹殺リストには乗せますけれど!」

イシュタル「そういうところよ、そういうところ」

スルーズ「・・・会うというなら、忠告しておきます。シグルド様は非常に勇猛かつ聡明な御方です。これから見るものは、決して彼の本性でもなんでもないということを、彼の名誉の為に伝えておきます」

ヒルド「お願いだから誤解しないであげてね!本当にそんなんじゃないから!」

オルトリンデ「むしろ、そうでもしなかったらここには留まらないのは目に見えていたとお姉さまは分かっていたのでしょう」

イシュタル「・・・?なんだか、ただならぬことになっているような物言いね」

オルトリンデ「はい。かなり・・・です」

ヒルド「重点に守っていたのはそういうところもあるから!引かないでね!」

スルーズ「バブみ重点です」

リリィ「ば・・・バブみ・・・?」

ジークフリート「・・・何が起きているのか、不安だな・・・」

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